プロジェクトの進捗が計画通りに進んでいるか、一目で確認できずに不安を感じたことはありませんか。チームメンバーや関係者へ進捗状況を正確に共有するのに苦労している方も多いでしょう。
そんな悩みを解消してくれるのが、アジャイル開発で広く活用されている「バーンダウンチャート」です。
本記事では、バーンダウンチャートの基本概念から具体的な作成方法、日々のプロジェクト管理への活用法までを徹底解説します。
バーンダウンチャートとは?作業進捗を可視化してプロジェクトを管理する方法

本章では、バーンダウンチャートの定義と役割について解説します。
バーンダウンチャート(BurndownChart)の定義とプロジェクト管理での役割
バーンダウンチャートは、プロジェクトやスプリントにおける「残りの作業量」を時間の経過とともにグラフ化したものです。
マラソンのゴールまでの残り距離を示すように、プロジェクトの完了までの道のりを視覚的に示します。アジャイル開発の中でも、特にスクラムフレームワークで頻繁に利用されます。
バーンダウンチャートを用いることで、チームは「計画通りに進んでいるか」「遅れが生じていないか」を客観的なデータで把握することが可能です。
また、プロジェクトの進捗状況を透明化し、チーム内外の関係者全員が共通の認識を持つ役割も担います。これにより、問題の早期発見と迅速な意思決定をサポートし、プロジェクトの成功確率を高めることが可能になります。
基本構成要素(作業量・進捗・期間・理想線・実績線)
バーンダウンチャートを正しく理解するには、構成要素の役割を把握することが欠かせません。チャートは主に以下の5つの要素で構成されており、それぞれがプロジェクトの進行状況を読み取るうえで重要な意味を持ちます。
作業量
プロジェクト全体で完了すべき作業の総量を示します。タスク数・ストーリーポイント・作業時間など、定量的な単位で表され、「縦軸(Y軸)」に配置されます。
進捗
プロジェクトの進行に伴って減少していく残り作業量を表します。作業が完了するたびに数値が減り、完了までの道のりを可視化します。
期間
プロジェクトの開始から終了までの予定期間を示します。「横軸(X軸)」に表示され、日付や日数単位で設定されます。
理想線
プロジェクトが計画どおりに進行した場合の、作業量の減少を示す目安線です。開始時点の総作業量から終了時点のゼロまでを直線で結び、計画進行の基準となります。
実績線
実際の作業進捗を表す線で、日ごとの作業完了量を記録して描かれます。理想線と比較することで、進捗が順調か遅れているかを判断可能です。実績線が理想線より上なら遅延、下なら計画以上のペースで進んでいることを示します。
バーンアップチャートとの違いと作業内容に応じた使い分け
バーンダウンチャートとよく似たグラフに「バーンアップチャート」があります。2つの最も大きな違いは、縦軸が示す内容です。
| 項目 | バーンダウンチャート | バーンアップチャート |
|---|---|---|
| 縦軸の意味 | 残作業量を表す(減っていく) | 完了作業量を表す(増えていく) |
| グラフの向き | 右肩下がり | 右肩上がり |
| 主な目的 | スプリント完了に向けた進捗の追跡 | プロジェクト全体の進捗とスコープ変動の把握 |
| 適した場面 | スプリントなど期間・作業量が明確な管理 | スコープ追加・変更が多い長期プロジェクト管理 |
バーンダウンチャートは、ゴールまでの残り作業量(距離)を示す指標であり、スプリントの目標達成に集中したい場合に最適です。
一方で、バーンアップチャートは積み上げた成果の推移を可視化できるため、仕様変更が多いプロジェクトでも全体の進捗状況を正確に把握するのに役立ちます。
バーンダウンチャートを導入するメリット

バーンダウンチャートの活用で、プロジェクト管理はよりスムーズで効果的になります。単に進捗を可視化するだけでなく、チームの生産性向上や問題解決にもつながるメリットについてご紹介します。
作業進捗を一目で把握できる
一つ目のメリットは、作業進捗のわかりやすさです。理想線と実績線を比較するだけで、プロジェクトが「計画通りか」「遅れているか」「前倒しで進んでいるか」が直感的に理解できます。
視覚的なわかりやすさは、専門知識のない関係者への進捗報告を非常に簡潔かつ明確にします。複雑な数値を並べるよりも、グラフ一つで説得力のある説明が可能になるのです。
プロジェクト遅延の予兆を早期に発見できる
バーンダウンチャートは、プロジェクトに潜む問題の早期発見に非常に有効です。例えば、実績線が何日も水平のまま進んでいる場合、何らかの障害によってタスクが停滞しているサインかもしれません。
また、実績線が理想線から徐々に離れていく傾向が見られれば、チームの生産性が想定より低い、あるいは見積もりが甘かった可能性があります。
このように、チャートの動きから問題の予兆をいち早く察知し、手遅れになる前に対策を講じられることがメリットの一つです。
チーム全体で作業状況を共有し、士気を高める
バーンダウンチャートをチーム全員が見える場所に掲示することで、プロジェクトの進捗を「自分ごと」として意識できるようになります。全員が同じ情報を共有し、「順調に進んでいる」「少し遅れが出ている」などの状況を即座に把握できるため、共通認識を持って行動できます。
また、日々の取り組みによって実績線が着実に下がっていく様子を可視化できる点も大きなメリットです。成果を実感しやすくなり、チームの達成感やモチベーションの向上につながります。
ゴールに向けて一丸となるチームの一体感を育むうえで、バーンダウンチャートは非常に効果的なツールです。
【実践編】バーンダウンチャートの見方|進捗パターンで問題を発見

バーンダウンチャートは、実績線の動きによってプロジェクトの進行状況を可視化する指標です。本章では、現場でよく見られる代表的なチャートパターンを分析し、それぞれの背景要因と適切な対策について詳しく解説します。
計画通りに進むケース
実績線が理想線に沿うように、あるいはそのすぐ下を推移している状態です。これは、見積もりの精度が高く、チームが計画通りに安定してタスクを消化できている理想的なパターンです。
この状態が維持できている場合、チームの生産性は安定しており、スプリントの目標達成が期待できます。ふりかえりでは、この良いペースを維持できた要因を確認し、次のスプリントにも活かすことが重要です。
遅延が発生しているケース
実績線が理想線よりも常に上側を推移している場合、プロジェクトが計画より遅れて進行している、明確なサインです。このような状況が見られた際は、早急に原因を特定し、適切な対策を講じる必要があります。
考えられる原因
- タスクの見積もりが楽観的すぎた
- 技術的な課題や手戻りが発生した
- メンバーの急な欠勤や他業務へのアサインによる稼働不足
対策例
- デイリースクラムでボトルネックを特定し、解消に向けた具体策を検討する
- 残タスクの優先順位を見直し、スコープやスプリント目標を再調整する
- ペアプログラミングやモブプログラミングを活用し、課題解決を迅速化する
このように、チャート上の遅延サインを早期に察知し、チーム全体で対応を図ることが、スプリント計画の安定とプロジェクト成功につながります。
順調に前倒しで進むケース
実績線が理想線よりも常に下側を大きく離れて推移している状態です。一見すると非常に良い状況に見えますが、背景の分析も重要です。
考えられる原因
- タスクの見積もりが過大だった
- チームの生産性が想定を大きく上回った
- タスクの完了定義(Definition of Done)が甘く、品質が担保されていない可能性がある
対策例
- なぜ前倒しで進んだのかをふりかえり、次回以降の見積もり精度を向上させる
- 品質が担保されているか確認し、完了定義をチームで再確認する
- 余った時間を活用し、バックログの追加タスクや技術的負債の返済にあてる
このように、「順調に進んでいる」状態でも、なぜそうなったのかを検証し、学びに変えることがプロジェクト全体の成熟につながります。
停滞して進まないケース
実績線が数日間にわたって水平に推移し、残作業量がまったく減らない状態を指します。これはプロジェクトが停滞している危険なサインであり、背後に深刻な問題が潜んでいる可能性があります。
考えられる原因
- 特定のタスクで技術的な障壁(ブロッカー)に直面している
- 他部署や外部パートナーからの返答待ちで作業が進められない
- タスクの仕様が不明確で、誰も着手できない状態になっている
対策例
- スクラムマスターが中心となって障害要因を特定し、速やかに排除する
- チーム全体で停滞の要因を共有し、解決策を議論する場を設ける
- 仕様や依存関係を再確認し、関係者と緊急で調整を行う
停滞を放置すると、後半で一気に負荷が集中し、品質や納期に悪影響を及ぼします。早期に原因を見つけ、全員で解消に動くことが重要です。
バーンダウンチャートの作成方法|基本の3ステップ

バーンダウンチャートの作成は、決して難しいものではありません。基本的な3つのステップを押さえれば、誰でもプロジェクトの進捗を可視化できます。
残作業量と期間を設定する
初めに、バーンダウンチャートの縦軸と横軸を設定します。
横軸(期間)
- プロジェクトまたはスプリントの期間を設定します。
(例:2週間のスプリントであれば、1日目から10日目までを横軸に取る) - 各日ごとの進捗を記録できるよう、日単位または週単位で区切ります。
縦軸(残作業量)
- プロジェクト開始時点での総作業量(見積もりポイントや工数など)を設定します。
- スプリント内で完了したタスクが増えるたびに、この値が減っていくイメージです。
この2つの軸を設定することで、バーンダウンチャートの基本的な枠組みが完成します。なお、縦軸に設定する初期値は、次のステップで見積もる全タスクの合計作業量になります。
各タスクの作業量を見積もる
次に、プロジェクトに含まれるすべてのタスクについて、完了までに要する作業量を見積もります。この工程は、バーンダウンチャートの精度を左右する重要なステップです。
主な見積もり単位
- ストーリーポイント:タスクの複雑さ・労力・不確実性を相対的に評価する単位
- 理想時間:他の割り込みが一切ないと仮定した場合に、タスク完了にかかる時間
見積もり時のポイント
- マネージャーが一人で決めず、実際に作業を担当するメンバー全員で合意形成する
- チーム全体で見積もることで、精度と納得感が高まる
このように、見積もりは単なる数値決定ではなく、チーム全体の理解と合意を形成するプロセスとして行うことが重要です。
日々の進捗を記録し、グラフを更新する
最後に、日々の進捗をバーンダウンチャートに反映していきます。進捗を継続的に更新することで、チームの状況を正確に把握できます。
実施タイミング
- 毎日の朝会(デイリースクラム)など、決まった時間に進捗確認を行う
- その日に完了したタスクの作業量(ストーリーポイントや理想時間)を集計する
更新手順
- 前日の残作業量から、完了した作業量を差し引く
- 算出した値をその日の実績値としてグラフに記録する
- この作業をスプリント最終日まで毎日繰り返すことで、実績線が描かれていく
ポイント
- 記録の精度を保つため、担当者自身が進捗を申告する仕組みを整える
- 実績線の変化を確認しながら、遅れや停滞を早期に発見・対応する
継続的な更新を習慣化することで、バーンダウンチャートは単なる記録ではなく、チームの健康状態を可視化する重要な管理ツールになります。
Excel・Googleスプレッドシートでのバーンダウンチャート作成

本章では、ExcelやGoogleスプレッドシートでバーンダウンチャートを作成する具体的な手順と、すぐに使えるテンプレートの項目をご紹介します。
テンプレートに必要な作業項目一覧
まず、以下のような項目でデータ入力用の表を作成します。作成した表がバーンダウンチャートの元データとなります。
| 日付 | スプリント日数 | 理想残作業量 | 実績残作業量 | 日々の消化量 |
|---|---|---|---|---|
| 2025/07/01 | 0日目 | 100 | 100 | – |
| 2025/07/02 | 1日目 | 90 | 90 | 10 |
| 2025/07/03 | 2日目 | 80 | 75 | 5 |
| … | … | … | … | … |
| 2025/07/12 | 10日目 | 0 | (実績値を入力) | (実績値を入力) |
- 理想残作業量:初日の総作業量 −(1日あたりの平均消化量 × 経過日数)
- 実績残作業量:前日の実績残作業量 − その日の消化量
グラフ作成の4ステップ
データ表が準備できたら、グラフを作成します。
- データ範囲の選択:「スプリント日数」「理想残作業量」「実績残作業量」を選ぶ
- グラフの挿入:「挿入」→「グラフ」→「折れ線グラフ」を選択
※複合グラフが使える場合、「理想・実績」は折れ線、「日々の消化量」は棒グラフにすると見やすい - 横軸の設定:「スプリント日数」を横軸に設定
- 書式設定:タイトルを「〇〇プロジェクト バーンダウンチャート」に変更し、凡例や軸を整える
Excelやスプレッドシートでは、手動更新の手間やリアルタイム共有の難しさが課題です。必要に応じて、専用ツールやプロジェクト管理ツールの利用も検討しましょう。
バーンダウンチャートを形骸化させないプロジェクト運用の注意点

本章では、チャートが形骸化しないための5つの重要な注意点を解説します。
バーンダウンチャートは「進捗共有のきっかけ」として活用する
最も重要なのは、バーンダウンチャートを単なる報告資料で終わらせないことです。実績線が理想線から離れたとき、「なぜ差ができたのか」「どうすれば軌道修正できるか」をチームで対話するための「きっかけ」として活用します。
毎日のデイリースクラムでチャートをスクリーンに映し出して状況を確認し、課題を共有する文化を作ることが成功のポイントです。
作業の「完了定義(DefinitionofDone)」を明確にする
「タスクAは完了しました」と報告があったとき、「完了」が何を意味するのか、チーム内で共通の認識がなければチャートは信頼性を失います。
例えば、「プログラミングが終わっただけ」なのか、「コードレビューと単体テストまで完了した」のかでは、作業の残り具合が全く異なります。
スプリントを開始する前に、「完了定義」をチーム全員で合意し、明文化しておくことが不可欠です。
作業見積もりはチーム全員で行う
タスクの作業量見積もりを、プロジェクトマネージャーや一部のシニアメンバーだけで行うのは避けましょう。見積もりの精度が低くなるだけでなく、担当するメンバーに「押し付けられた」という感覚を与えてしまいます。
作業に関わるすべてのメンバーが参加し、それぞれの専門知識や経験を共有しながら議論することで、現実的かつ精度の高い見積もりを作成可能です。また、チーム全体の責任感と結束力を高めることにもつながります。
個人評価ではなくプロジェクト進行のために使う
バーンダウンチャートの進捗状況を、個人の能力評価や人事評価に直接結びつけるのは好ましくありません。進捗の遅れを個人の責任として追及するようになると、メンバーは問題を隠したり、正直な進捗を報告しなくなったりする可能性が高まります。
あくまでチャートは「チームの健康状態」を測るためのものであり、問題があればチーム全体で解決するという姿勢を貫くことが大切です。
スコープ変更は計画全体への影響を考慮する
スプリントの途中で安易に新しいタスク(スコープの変更)を追加すると、バーンダウンチャートの縦軸が変動し、計画の前提が崩れてしまいます。
チームの混乱とモチベーション低下を招く大きな原因となるため、スコープの変更はどうしても必要な場合にのみ行いましょう。また、影響(他のタスクを諦める、期間を延長するなど)をチーム全体で慎重に検討し、関係者の合意を得てから行うことがポイントです。
アジャイル開発のプロジェクト進捗管理ならLycheeRedmineの活用がおすすめ
ExcelやGoogleスプレッドシートでも管理は可能ですが、プロジェクトが複雑になるほど更新の手間や共有の難しさが増します。リアルタイムで進捗を把握しづらい点も課題です。
より効率的に進捗を管理するなら、専門ツールの導入がおすすめです。中でも「Lychee Redmine」はアジャイル開発に最適な機能を備えています。ここでは、Lychee Redmineを活用すべき5つの理由をご紹介します。
WBSとガントチャートを連動させて作業進捗を可視化
Lychee Redmineでは、WBS(作業分解構成図)とガントチャートが連携しています。タスクの親子関係や依存関係を直感的に設定でき、進捗状況もガントバー上にリアルタイムで表示されます。
これにより、プロジェクトの全体像を正確に把握でき、バーンダウンチャートと併用すれば全体(マクロ)と個別(ミクロ)の両面から進捗管理が可能です。
工数・課題・文書と一体でプロジェクトを管理
プロジェクト管理では、タスクやスケジュールだけでなく、工数・課題・ドキュメント(文書)など多くの要素が関わります。
Lychee Redmineなら、それらを一元管理できるため、情報の分散を防ぎ、常に最新の状態をチーム全体で共有可能です。さらに、工数管理機能により「誰が・何に・どれだけ時間を使ったか」を可視化でき、今後の見積もり精度向上にも役立ちます。
ベースライン比較で計画と実績の差分を把握
Lychee Redmineでは、当初の計画(ベースライン)を保存し、現在の計画や実績と簡単に比較できます。
どこでズレが生じたかを明確に把握できるため、ふりかえりや次回の計画立案に活用できます。
複数プロジェクトを横断してリソースを最適化
LycheeRedmineのプロジェクトレポート機能では、組織内の全プロジェクトを横断して状況を把握できます。
さらに、リソースマネジメント機能により、各メンバーの負荷状況を可視化し、特定の人に作業が集中するのを防ぎ、リソースを最適に配分することが可能になります。
30日無料トライアルで実際のプロジェクトに作成・検証可能(稟議にも最適)
LycheeRedmineは、すべての機能が試せる30日間の無料トライアル期間を提供しています。実際のプロジェクトデータを使って使用感を確かめられるため、導入後のミスマッチを防ぐことが可能です。
トライアル中に作成したデータや使用感のレポートは、導入を決定するための社内稟議の説得力ある資料としても活用できます。
バーンダウンチャートを作成し、作業進捗を予測してプロジェクトを成功へ導く

プロジェクトを成功させるには、バーンダウンチャートで実績を記録するだけでなく、日々の進捗の可視化と将来の問題予測が欠かせません。そのためには、アジャイルプロジェクト管理ツールの活用が効果的です。
Lychee Redmineは、ガントチャート・カンバン・バックログ・ダッシュボードなどを備え、タスク管理から工数・進捗の一元管理まで対応します。さらに、EVM(Earned Value Management)機能により、コストやスケジュールのズレを早期に検知できるのも特長です。
現在、30日間の無料トライアルを実施中です。実際のプロジェクトでその効果をぜひ体感してください。
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