品質保証とは、製品が一定の品質を確保できているかをチェックし、顧客に安心して製品を使ってもらうための活動です。品質保証が適切に行われていれば、企業のブランドイメージが向上し、顧客からの信頼を獲得することができます。
この記事では、品質保証の概要や品質保証の考え方、必要なスキルについて解説しています。
また、企業内で品質保証を難しくしている理由についても取り上げているため、プロダクト開発に関わるエンジニアの方や、品質保証の考え方についてインプットしたい方はぜひ参考にしてください。
品質保証の役割
品質保証とは、企画・設計段階から製造、販売、アフターサービスまで、製品に関わるすべての工程において品質を保証する包括的な考え方です。具体的には、品質データや顧客評価などを収集・分析し、製品品質の向上に努めます。さらに、トラブル発生時には関係部門と迅速に情報共有を行い、原因究明と改善活動を実施します。
品質保証は、製品が完成したときだけ行うものではなく、リリース後まで製品の品質を継続的に保証する取り組みです。IT分野においては、システムをリリースした後に、有効性や利便性などの品質を評価し、改善・向上に取り組むことが品質保証に該当します。
顧客との良好な関係構築と企業利益の保護という二つの側面において、品質保証は欠かせない活動と言えます。
品質管理との違い
品質保証と混同しやすいものに品質管理がありますが、品質管理は品質保証に含まれる活動の一つです。
品質管理とは、開発・製造する過程において、不具合が発生しないようにするための取り組みです。品質保証は、顧客が安心して製品を利用できるかどうかといった買い手目線であるのに対して、品質管理は、開発段階でのミスが発生しないようにする作り手目線の活動です。
品質管理では、過去の事例などを分析した上で工程の見直しなどを行い、製品の品質に影響を与えるようなミスが起こらない取り組みを行います。品質管理を徹底できれば、最終的に完成する製品の品質も担保できるため、結果的に品質保証にもつながります。
そのため、品質保証の考え方は、品質管理を含めて取り組むことを前提としておくことが大切です。
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品質保証の考え方で大事なこと
ここでは、品質保証の考え方において大切なポイントを解説します。自社製品の品質保証活動に取り組んでいる方はぜひ参考にしてください。
先手を打つ
製品の不具合が起こらないようにするためには、開発段階で先手を打つことが大切です。これは、設計や開発といった上流工程での取り組みが、製品不良の発生を未然に防ぐ鍵となるからです。レビューや試作を通して、ミスや不具合が起こらないかどうかを細かくチェックしておきましょう。
また、何かおかしいなといった違和感を覚えたら、まずは行動を起こすことが大切です。小さな問題であっても放置すれば、後工程で大きなトラブルに発展する可能性があります。早い段階で行動を起こしておくことで、不具合の発生を未然に防ぐことができます。
開発工程の理解
品質保証に取り組む上では、開発工程を正しく理解しておくことも大切です。なぜなら工程を理解できていないと、開発の過程で発生する不具合やトラブルの原因を把握できないためです。原因がわからないと適切な対策を講じることもできません。
製品の開発にあたっては、プロジェクトチーム内だけでなく、様々な部署や関連企業が関わります。ときには不具合を解消するため、他部署や関連企業の力を借りることもあります。しかし、そのようなときに工程を正しく理解できていないと、スムーズなやりとりが困難です。
品質保証においては、高いスキルや技術力を持っていることも大切ですが、それと同じくらい工程を理解しておくことも重要です。
関係者との信頼関係構築
先ほども触れているように、開発工程には様々な部署や関連企業が関わることになるため、品質保証に取り組む上では組織の垣根を超えた横断的な協力関係を構築する必要があります。
各部署、企業が単独で行動するのではなく、関係者と構想を練っておくことが大切です。トラブルや不具合が発生したときでも、横断的な協力関係が築けていれば、スムーズに対応できます。リカバリーのスピードが早ければ、被害を最小限に抑えられます。
過去の失敗例を確認する
過去の失敗例や不具合の事例を確認しておくことも品質保証においては重要なポイントです。例えば、過去に開発したシステムの不具合や原因を把握しておくだけで、対策を立てることができます。
また、顧客からのクレーム内容もチェックしましょう。特に、同じような内容のクレームが続いている場合は、大きな問題を抱えている可能性が高く、信用問題にもつながるため、早めの解決が求められます。
PDCAサイクルの徹底
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つの要素を繰り返していく、改善のためのフレームワークです。品質保証においても、このPDCAサイクルの継続で、課題の発見、改善に取り組むことが可能です。PDCAサイクルに取り組む際は、以下の点を考慮してください。
- P:目標とする品質はどのようなものかを計画する
- D:計画内容に沿って実行する
- C:実行した結果、目標とする品質に到達したのかをチェックする
- A:改善点を見出し、次の計画に反映する
PDCAに継続して取り組むことで、継続的な品質保証の改善が期待できます。
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ファクトを用いる
品質保証においては、ファクトコントロールが重要な役割を果たします。ファクトコントロールとは、データによる管理のことです。数値などの客観的なデータ(ファクト)を活用することで、状態を把握でき、改善点を見つける上で役に立ちます。
開発にあたっては、長年の経験や直感など、主観的な要素に頼ってしまうケースがありますが、属人化を招きやすく、後々大きなトラブルにつながる恐れがあります。
主観ではなく客観的な事実に基づいた取り組みであれば、顧客も納得してくれる可能性が高まります。
企業内での品質保証を難しくしている理由
品質保証は、製品を開発する企業にとって重要なものですが、様々な要因によって品質保証に取り組むことが難しくなっています。ここでは具体的にどのような要因が品質保証を難しくしているのか解説します。
細部への対応が発生する
製品に対する細かい要望が届くことが、品質保証の改善を難しくしている恐れがあります。
品質保証に取り組む場合、工程管理や品質管理など、様々なポイントをチェックしながら不具合が発生しないように対応しなければなりません。また、トラブルや発生したときには迅速な対応が求められます。
しかし、短納期、低コストでの開発を強いられている中で、細部への対応を求められると、ファクトに基づいたデータ収集」コストオーバーや、プロジェクトメンバーの業務負担が大きくなる恐れがあるため、素直に応じることはできません。
この状況を打破するためには、関係者間の連携強化や、効率的な品質保証ツールの導入など、抜本的な対策が不可欠です。
目標とするレベルが高すぎる
高品質な製品の提供は大切ですが、求める品質の基準が高すぎるために、現場で対応しきれない可能性があります。
品質に上限はないため、より高いレベルを追求しようと思えばいくらでもできてしまいます。しかし、実際の現場では、コストや納期、人的リソースなどの条件がある中で対応しなければなりません。このような理想と現実のギャップが品質保証を難しいものにしている可能性があります。
リソースを把握した上で、実現可能なレベルを見定めて品質保証に取り組むことが大切です。
品質保証に必要なスキル
ここでは、品質保証に取り組むにあたり、どのようなスキルが求められるのか解説します。実際に品質保証業務に取り組む方は、自分のスキルと照らし合わせながらチェックしてください。
細かい部分まで確認できる能力
品質保証に取り組む場合、データ収集、分析など細かい作業が多く発生します。そのため、細部まで確認できる能力は欠かせません。
実際に不具合などのトラブルが発生したときは、原因を把握するために、開発工程を隅々まで遡ってチェックする必要があります。原因を明確にできるまで調査は続くため、細かい作業をコツコツと続けられる人の方が品質保証の業務に適しています。
手を抜いてしまうと、品質の低下、さらには顧客からの信用低下にもつながるため、どの作業にも徹底して取り組むことが大切です。
論理的思考力
品質保証に取り組む人には、論理的思考力が求められます。これは、製品に不具合が発生した際に原因を追求し、原因にもとづいて適切な対応をしなければならないためです。
正しく状況を把握、整理しなければ、最適な解決策は見出せません。状況が整理されれば、原因となる部分がどこなのか推測できます。製品の開発には原因と結果があるため、それらの関係を論理的に考えられる人が品質保証の業務に向いています。
品質管理の考え方を理解したら実行あるのみ
今回は、品質保証の概要や品質保証の考え方などについて解説しました。
品質保証とは、開発した製品が一定の品質を確保できているかどうかをチェックし、顧客が安心して製品を利用してもらうための活動です。顧客からの信頼を獲得するためにも、企業が利益を得るためにも重要な活動だといえます。
品質保証に取り組むにあたっては、常に先手を打つこと、開発工程を正しく理解する、関係者との良好な関係を構築する、といったことが大切です。また、品質保証業務では、細部まで確認できる能力や論理的思考力が求められます。
一方で、すべてをマンパワーでカバーしようとすると、無理が生じる可能性があります。高い品質を保つためにはプロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。
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