「プロジェクト管理の資格を取得したいものの、種類が多く、どれを選択すべきか判断できない」「資格は本当にキャリアアップにつながるのか」…。このような疑問をお持ちではないでしょうか。
プロジェクト管理の資格は国内外に数多く存在し、それぞれに目的や位置付け、難易度の違いがあります。
本記事では、主要なプロジェクト管理資格を体系的に整理して解説します。資格取得は、自身の市場価値を高め、キャリアの選択肢を広げるための有効な手段です。ぜひ最後までご覧いただき、次の行動につなげるための判断材料としてご活用ください。
プロジェクト管理の資格を取得するメリット

プロジェクト管理の資格は、単なる肩書きではなく、PMやPMOが実務で安定した成果を上げるための基盤となるものです。
スキルと知識を客観的に証明できる
プロジェクト管理スキルは、デザインやプログラミングのように成果物として可視化しにくく、実力を客観的に示すことが難しい分野です。
しかし、資格を保有していれば、体系化された知識と一定水準以上のスキルを客観的に証明できます。資格の保有は、社内での昇給・評価や新規プロジェクトにおけるリーダー選任など、キャリア形成において有力な後押しとなるでしょう。
知識を体系的に学び、自己流から脱却できる
日々の業務を通じて得られる知識は断片的になりやすく、知らず知らずのうちに自己流の進め方に偏ってしまうケースも少なくないでしょう。
資格取得の過程では、プロジェクト管理の基礎から応用までを体系的に整理して学ぶことができます。体系知識を身に付けることで、日々の業務経験を理論と照らし合わせながらふりかえることができ、判断の精度を高められます。
キャリアの選択肢を広げ、収入アップにもつながる
多くの企業では、資格保有者に対して資格手当の支給や人事評価での優遇制度を設けています。
PMに留まらず、複数案件を統括するプログラムマネージャーや、IT戦略を担うコンサルタント、全社的なプロジェクト運営の改善を主導するPMOなど、より上流かつ戦略的な役割へとキャリアの幅を広げることも可能です。
主要なプロジェクト管理資格7選

本章では、国内外で評価の高い主要なプロジェクト管理資格について、概要と特徴を整理します。目的やスキルレベルに応じて適切な資格を選択できるよう、それぞれの強みを簡潔にまとめました。
【国際標準】PMP®(Project Management Professional)
PMP®は、米国の非営利団体であるPMI(Project Management Institute)が認定する、プロジェクトマネジメント分野における事実上の世界標準資格です。
知識体系である「PMBOKガイド」をベースとしており、業界や業種を問わない汎用性の高さと、グローバル環境で高く評価される点が大きな特徴です。外資系企業や海外案件では、応募条件としてPMP®の保有が求められるケースも少なくありません。
合格率は非公表ですが、一般的には50〜65%程度と推定されています。ただし、受験には大卒で3年以上(高卒の場合は5年以上)の実務経験と、35時間以上の公式研修受講が必須であり、受験資格を得るまでのハードルが高い資格です。
【国家資格】プロジェクトマネージャ試験(PM)
プロジェクトマネージャ試験(PM)は、経済産業省が所管するIPA(情報処理推進機構)が実施する国家資格です。情報処理技術者試験の中でも、最高難易度とされる高度区分(ITSSレベル4)に位置付けられています。
主にITプロジェクトを対象としており、計画立案、要件定義、品質管理、リスク対応など、プロジェクト全体を統括する責任者としての高度な知識と実践力が問われます。
合格率は例年13〜15%前後と非常に低く、特に午後Ⅱの論述試験が最大の難関です。受験資格として実務経験は求められませんが、合格には相応の現場経験が不可欠であり、国内IT企業における評価は非常に高い資格です。
【国内特化】P2M(プロジェクト&プログラムマネジメント)
P2Mは、特定非営利活動法人日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が認定する、日本発祥のプロジェクト管理資格です。個別プロジェクトの成功だけでなく、複数プロジェクトを束ねて組織全体の戦略目標達成を目指す「プログラムマネジメント」の考え方を重視している点が特徴です。
PMC、PMS、PMRなど複数のレベルが用意されており、初学者から実務経験者まで段階的にスキルを高められる体系になっています。公共分野や日本企業特有のプロジェクトに強く、国内環境に即した実践的な知識を身に付けたい方に適しています。
【PMO特化】NPMO認定資格(PMOスペシャリストなど)
NPMO認定資格は、一般社団法人日本PMO協会(NPMO)が認定する、PMO(Project Management Office)業務に特化した資格群です。
プロジェクトを直接推進するPMとは異なり、組織内の複数プロジェクトを横断的に支援・統制するPMOに求められる知識とスキルを証明できます。
資格はレベル別に分かれており、PJM-A™(合格率約75%)やPMO-S®(約55%)などが代表的です。PMOとして専門性を高めたい方にとって、キャリア形成上の有力な武器となります。
【欧州標準】PRINCE2®
PRINCE2®(PRojects IN Controlled Environments 2)は、英国政府が開発したプロジェクト管理手法であり、その知識を認定する国際資格です。特にビジネスケース(事業の正当性)を重視し、役割・責任・プロセスを明確に定義する、管理・統制型のアプローチを特徴としています。
ヨーロッパ圏での認知度が高く、学習や試験は英語が前提となりますが、グローバルキャリア、特に欧州企業や国際案件を視野に入れる場合には有力な選択肢です。
【初心者向け】CAPM®
CAPM®(Certified Associate in Project Management)は、PMP®と同様にPMIが認定する入門レベルの資格です。PMP®に必要な実務経験を満たしていない若手社会人や、これからプロジェクト管理分野に携わる学生などを主な対象としています。
PMBOKガイドに基づく基本用語や概念、プロセス理解が問われ、プロジェクト管理の共通言語を習得していることを示せます。将来的にPMP®取得を目指す上で、基礎固めとして最適な資格です。
【IT領域の基礎固め】その他の関連資格
IT分野でプロジェクトマネージャーとして活躍するには、プロジェクト管理だけでなく、IT技術全般への理解も欠かせません。技術的なバックグラウンドを証明し、開発チームとの円滑な連携を図るために、以下の資格も有効です。
●基本情報技術者試験(FE):ITエンジニアの登竜門とされる国家資格で、IT全般の基礎知識を体系的に学べます。
●応用情報技術者試験(AP):FEの上位資格で、技術力に加えて管理・経営の視点も問われます。プロジェクトマネージャ試験へのステップとして適しています。
●ITストラテジスト試験(ST):事業戦略に基づいたIT戦略策定能力を証明する、最上位レベルの国家資格です。
資格で得られる知識は現場でどう役立つのか

資格で学ぶ理論は、机上の知識に留まらず、現場で発生する課題と密接に結び付いています。本章では、PM/PMOが直面しやすい代表的な課題と、それぞれの改善に有効な理論を整理します。
管理可能なスケジュールの立案により適切に遅延を防ぐ
「なぜかプロジェクトが常に遅延する」といった課題の多くは、初期計画の精度不足に起因します。資格学習で扱うWBSやクリティカルパス法などの計画手法は、この問題に対する有効な解決策です。
WBSを用いて作業を漏れなく分解し、タスク間の依存関係を整理することで、現実的かつ管理可能なスケジュールを立案できます。これにより、ボトルネックを事前に特定し、リソースを適切に配分できるようになり、場当たり的な遅延対応から脱却できます。
ステークホルダー管理で手戻り・要件ブレを防ぐ
要件の誤解や期待値のズレは、手戻りや再作業の大きな要因となります。
関係者分析やコミュニケーション計画といった理論は、こうした問題を防ぎ、合意形成を円滑に進めるための指針となります。
リスク管理で場当たり対応から脱却
プロジェクトには、予期せぬトラブルが付きものです。しかし、問題が発生してから対処する姿勢では、影響が拡大しやすくなります。
リスク管理の知識は、このような状況を未然に防ぐための重要な武器です。リスクの洗い出し、評価、監視といった一連のプロセスを理解することで、トラブルの予兆を早期に捉え、計画的な対応が可能になります。
品質計画で成果物のばらつきを抑える
「担当者ごとに成果物の品質が異なる」「レビューで同じ指摘が繰り返される」といった課題の背景には、明確な品質基準の不在があります。品質マネジメントの知識は、この問題に対して体系的な解決アプローチを提供するものです。
品質計画やレビュー基準を明確にすれば、成果物の品質を安定させることができ、結果として再作業の削減にもつながります。
プロジェクトにおける勝ちパターンの再現性
資格学習で得た体系的な知識は、過去のプロジェクト経験を整理し、成功・失敗の要因を分析するための物差しです。過去の事例をPMBOKなどのフレームワークに照らして分析すれば、成功要因を論理的に抽出でき、組織の勝ちパターンとして形式知化が可能になります。
勝ちパターンを可視化することで、個人の経験則への依存を抑え、組織全体としてプロジェクト成功の再現性を高められます。
資格の知識を「実務運営」へ落とし込むためのステップ

プロジェクトを成功に導くには、学んだ知識を個人の理解に留めず、日々の業務で誰もが実践できる「仕組み」として定着させることが不可欠です。本章では、そのための具体的な4つのステップを整理します。
Step1:WBSで作業を分解し標準化する
まず、プロジェクトのゴール達成に必要な作業を、WBSを用いて階層的に分解します。これにより、タスクの抜け漏れを防ぎつつ、各作業の担当者と責任範囲を明確にできます。
重要なのは、この分解方法をテンプレート化し、類似プロジェクトで再利用できる形にすることです。作業の標準化が進めば、計画立案の属人化を防げるだけでなく、チーム全体の計画精度と再現性も高まります。
Step2:リスクと対応フローを事前に整備する
過去のプロジェクトで発生した問題や、今後想定されるリスクを洗い出し、リスク管理台帳として整理します。その上で、それぞれのリスクに対して「誰が」「いつ」「どのように対応するか」という対応フローをあらかじめ定めておきましょう。
こうした準備により、リスクが実際に顕在化した場合でも、迅速かつ的確な初動対応が可能となります。リスク対応を標準化し、組織のナレッジとして蓄積することで、場当たり的な対応から脱却し、プロジェクト運営の安定性を高められます。
Step3:報告ライン・会議体を明確にする
プロジェクト運営においては、コミュニケーションのルールを明確に定義することが欠かせません。
例えば、以下の点を具体的に決めておきます。
- 日次の進捗報告は誰から誰へ行うのか
- 週次の定例会議の目的・議題・参加者は誰か
- 仕様変更などの重要な意思決定を、どの会議体で、どのようなプロセスで行うのか
報告ラインや意思決定プロセスを明確にすることで、情報伝達の遅れや認識の齟齬を防ぎ、無駄な調整コストを大幅に削減できます。
Step4:工数の基準値(ベースライン)を持つ
過去のプロジェクトにおいて、「どのタスクに」「誰が」「どれくらいの時間を要したか」といった実績工数データを蓄積・分析します。そのデータを基に、タスクごとの標準工数、すなわち「ベースライン」を設定します。
ベースラインは、計画の妥当性を評価し、進捗状況を測定するための基準となるものです。これを持つことで、経験や勘に依存した曖昧な見積もりから脱却し、データに基づいた客観的かつ精度の高いリソース計画やスケジュール立案が可能になります。
プロジェクト管理資格で得た理論を「組織改善」へつなげる ┃ Lychee Redmineの活用

資格学習で身に付けた「正しい進め方」を現場に定着させるには、ツールによる仕組み化が欠かせません。Lychee Redmineは、資格で学んだ理論と親和性が高く、実務への橋渡しとして効果を発揮します。
WBS×ガントチャート連携で計画変更に強くなる
作成したWBSをガントチャートへ自動反映できるため、タスク間の依存関係のズレを即座に把握できます。
変更管理がプロセスとして定着し、手戻りや遅延のリスクを抑えられます。
横断ビューで複数プロジェクトの負荷・遅延を一望
PMOに求められる「全体最適」の視点を実現できます。
進捗状況やリソース負荷、遅延の兆候を横断的に可視化でき、部門間の調整も円滑に進められます。
予定/実績工数を蓄積し、見積もり精度を継続改善
資格学習によって理論は身に付くものの、自社の実情に即した工数見積もりは、実績データの蓄積なしには精度が高まりません。
Lychee Redmineでは工数データを自動で集計できるため、リソース配分や計画精度の継続的な改善に役立ちます。
課題・議事録・資料をチケット単位で一元管理
Lychee Redmineでは、課題や議事録、関連資料といった情報を、個別のタスク(チケット)に紐付けて一元管理できます。
情報が集約されることで必要な記録をすぐに確認でき、監査対応や資料提出もスムーズになります。
プロジェクト管理資格は「理論」を学ぶ場、価値が生まれるのは「実務適用」から

プロジェクト管理資格は、キャリアアップを目指す上で有効な手段ですが、それ自体がゴールではありません。資格で学ぶ理論は、あくまで「正しい進め方」を理解するための基盤であり、真の価値は実務でどのように活かすかによって決まります。
資格取得を通じて自己流の進め方から脱却し、世界標準の体系的な知識を身に付けることで、プロジェクトを判断するための確かな物差しが得られるでしょう。さらに、その知識を管理ツールによって仕組み化し、組織全体で実践すれば、個人のスキルは組織の力へと昇華します。
その結果、プロジェクトの成功は再現性を持ち、組織全体の生産性も継続的に向上するでしょう。資格取得を自己投資の第一歩と捉え、実務適用を通じてプロジェクト管理力を次の段階へ引き上げてください。
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