yukia
redmineエバンジェリストの会所属。Redmine Free Salon主催。
ある日、苦しみながら使っていたRedmineのことを理解し、
noteで記事を書いて以降、色々な人と仲良くなって現在に至る。
note:https://note.com/eastwest Twitter ID:tw_yukia
はじめに
世の中には、本当に沢山のタスク管理ツールがある。
私は、おすすめのタスク管理ツールを教えてください!という質問をよく頂くのだが、実はこの質問に正確に答えるための構造は、「面白い漫画を教えて下さい!」という質問に答えることと、よく似ていると思っている。
というのも。
漫画は読んでみないと面白さがわからない。
自分が面白い漫画を教えるのは簡単だけど、その人が本当に読んで面白いと思ってもらうためには、そもそもその人がどんな漫画が好きで、どんな漫画を読んでみたいかを知らないと、結果的にその人のためにはならない。
タスク管理ツールも同じで、(漫画と違って値段がピンキリだけども)使ってみないと中身がわからない。
自分が好きなツールを教えるのは簡単だけど、その人が、おすすめしたツールを便利だと思ってもらうためには、誰とどのようにお仕事をしているか、どんなふうに仕事をしたいかを知らないと、結果的に、使われないツールが導入されてしまうことになる。
タスク管理ツールの「ジャンル」
私の名前はyukiaという。
redmineエバンジェリストの会に所属していたり、Redmine Free Salonを運営している、Redmineを推すものの一人である。
私自身は、いままで自分の仕事の中で様々なタスク管理ツールに触れたり、導入をしたりして、楽をしたり苦しめられてきたが、漫画は作品それぞれによって全く違う個性を持つのと同様、タスク管理ツールも、ツールによって個性が全く異なると思っている。
恋愛ものが大好きな人に北斗の拳を薦めても、ほぼ間違いなくジャギ様まではたどり着きそうもないのと同様、チームや仕事の状態に合わないツールを勧めても、せっかく導入したツールが使われなくなることは目に見えている。
ただ、タスク管理ツールには「恋愛もの」に該当するような「ジャンル区分」がない。
ので、考えて整理してみた。
タスク管理ツールには3つの主要なジャンルがあって、それはこういう時におすすめだよ、というのが今日のお話。
漫画における「恋愛もの」「スポ根もの」「ファンタジーもの」といったジャンルは、当然ながらそれがどういうお話なのか、というテーマに即した区分けがされている。
タスク管理ツールの本懐は、課題の解決である。
とするなら、「誰が」という主語こそが、タスク管理ツールのジャンルになるべきであり、結論としては「個人」や「チーム」、そして「組織」の3つにジャンルを分けることができると考えている。
漫画も、児童向けの漫画→少年漫画→青年誌と年齢によって楽しいと思う作品が変わってくるように、タスク管理ツールにおける主語も、仕事の内容や規模の変化によって、個人からチームへ、そしてチームから組織へと移り変わっていく。
前置きが長くなったが、それぞれのジャンルで有効だと思えるツールと、その理由を紹介しようと思う。
ただそうすると、当然ながら、「こういう時はRedmineよりも他のツールがおすすめ」という特にアジャイルウェアにとってシビアな話も記載をすることとなるが、お伝えしたいのはプロダクトの良し悪しではなく、向き不向きであり、この記事については筆者であるyukiaの個人的な見解であることはご了解を頂きたい。
この記事を読み終わった時、あなたに必要なツールのジャンルが分かることを望んでいる。
「個人」向けのジャンルに該当するタスク管理ツール(ToDo,カンバン系)
個人のジャンルに属するツールは、まずはTodoistやGmailのTodoなど、やるべきことをリストで管理することができる「Todo」系と呼ばれるツールと、PlannnerやTrello、Jottoなどの「カンバン」系のツールが該当する。
え?PlannnerやTrelloって、個人じゃなくて複数人で使うものでしょ?という話は、もちろんその通りなのだが、あえて個人にジャンル分けをしている理由は後ほど説明する。
もし、タスク管理ツールが世の中になかったとしたら、メールやチャットツールなど、そのままほっておくと流れていってしまうものしか、世の中に残らないことになる。
未読や記憶は忘れるまで忘れないが、量が増えると流れていったり忘れてしまうので、リストをメモして忘れないようにする必要がある。
そのリストは、メールやチャットとは違い、作業が終わったら自分で消し込まない限りはリストとして残り続けてくれる。
他の人に共有することができず、ボール(あるいはバトン)のやりとりはできないが、個人がやるべきことを忘れないためのリストを提供してくれるのが、Todo系のツール、という定義ができる。
個人のタスクを管理するのが目的なので、他人とやりとりをする時に便利なガントチャートやタスク割り、議論過程の表示・・などの機能性は、当然ない。
カンバンは、この複数人のToDoを可視化するためのボードとして生まれた。
(引用:トヨタ自動車75年史 第4項 トヨタ生産方式の構築と展開)
引用画像は元町工場で導入された文字通りの「かんばん」だった。
元々「ジャスト・イン・タイム」、つまり他の人のタスクの進捗状況を見て、自分のやるべきことを管理するための目的で、タスクについて議論をしたり、どのような手順でやるべきかを確認するという目的は、形状から見ても分かる通り、持ち合わせていない。
つまり、その仕事をどう進めるべきか、という議論をする必要のあるチームには不向きであり、かんばんが定着するチームは、自分が何をするべきか分かっている、定型的な業務の完遂を短いスパンで求められるといったチームとの親和性が高いと考えられる。
米ソ冷戦後の世界観を表した「VUCA時代」という単語が最近脚光を浴びつつあるが、IT/Webの開発の歴史はたかだか40年程度であり、変化と進化による複雑化によって今日の発展があることは言うまでもなく、定型的なお仕事のほうが貴重と言える。
実際の仕事の多くはゴールが明確ではないし、要件や過程に相談や議論が必要であり、人間一人に出来ることに限りがあるのであれば、一緒に働くチームでは沢山の話し合いが必要になる。
そうであれば、ToDoやカンバンでは必要性が薄かった議論をするという壁を超えて、チームのゾーンに適したツールを使うことが求められることになる。
議論の壁の先にある、「チーム」のジャンルお話(Backlog、Asanaなど)
「チーム」のジャンルに適したツールは、多くの企業にとってのボリュームゾーンであり、チームの関係性がフラットであり、このツールに対しての運用負荷は低ければ低い方がよく、すぐに簡単に始められる、いわば「軽いBTS/ITS」が活躍するゾーンになる。
繰り返しになるが、前述したToDoやカンバン系はタスクに関しての意見交換や議論などには不向きであるため、何度かの往復を要する業務においては、議論の壁を超えたツールが求められることとなる。
このゾーンに該当するのがbacklog、Asanaなどになり、タスクをシンプルに一覧で表示する、タスクの詳細画面にコメントをしてやりとりができる、WBSでスケジュールや進捗を確認するなど、他者と何度もやり取りをしながら仕事をすすめるために必要なUIが使いやすく搭載されることとなる。
本格的なタスク管理ツールに挑戦したい、ということであれば、まずはbacklog、Asanaなどのツールがおすすめといえる。
また、これらのツール群は、システム機能からあえて複雑性を排除して、難しいことが出来ないようにしている。
いわば、細かい統制やルールは「利用者同士が運用でカバーしあう」ことを前提としている代わりに、利用を開始するまでの設定、運用道中の追加変更幅が初めからそんなに無いなどの特徴により、運用者の負担を少なく始めて、使い続けることができる。
一方で、業務や組織、会社が事業とともに成功していくと、「運用でカバー」していたことが、段々と難しくなってくるということが往々にしてある。
例えばOJTが不十分なメンバーが増えて、今までの運用ルールを守れない状態で更新がされてしまったり、肥大化した工程を組織単位で分割した結果、確認をより明示的にしないと言った・言わないになったり、場合によっては監査ログとして承認者・承認工程を明示的にするため、責任者しか特定のステータスに変更できないようにする必要がでてくる、といったケースだ。
チームとして、自分たちの効率を最大限にすることの次に待っているのは、会社に「組織」として持続的・安定的に求められるアウトプットを提供することが求められる。
チームが組織になるためには、統制の壁を超えていく必要がある。
当然、その壁を乗り越えなければならないチームにとっては、非常に窮屈な話なのだが、その会社が、ミッションとかパーパスに掲げている社会課題を全社一丸で持続的に解決することを志向するなら、どうしたって避けては通れない壁だと思える。
ここまで来たのなら、その先の要請に応えることが出来るツールを使うべきであり、それが次の「組織」のゾーンにジャンル分けが出来るツール群だと考えている。
統制の壁の先にある、組織のお話(RedmineやLycheeRedmineなど)
このゾーンにあるツールは、簡単に使えることを犠牲に、複雑な要請に応えることを選んだツール群である。
このジャンルのツールは、システムの管理者がしっかりと運用設計を設定に落とし込むことで真価を発揮する。
組織が何をしたいかを理解し、運用設計として、それをツールでどのように表現するか考えることを求める。
だから、BacklogやAsanaのように簡単に使いはじめることは出来ないし、いざシステム管理者権限を持って管理者画面を開いたら、謎ばかりだと思うのだが、そういうジャンルのツールである。
実際の旅客飛行機をゲームのコントローラーでは飛ばさないように、専門家が使うツールというのは、その力を引き出すために複雑にできている。
簡単には使えない。だけど、このジャンルのツールを使いこなさないと実現できないことがある。
もし、この記事を読んでいるあなたに思い当たる節があるのなら、このジャンルのツールを使いこなすしかないので、勇気をもって一歩を踏み出してほしい。
私は、沢山のタスク管理ツールの中で、Redmineは「最後に選ばれるタスク管理ツール」だと思っている。
まとめ
タスク管理ツールの観点から「個人」「チーム」「組織」のジャンルで、やや乱暴にジャンル分けをしてみたが、この記事を読んでいるあなたがもしツールをお探しなのであれば、必要なジャンルのあたりがついている、という状況だと嬉しい。
なお厳密には、議論の要否はチームかどうかは関係がなく、カンバンを使うチームも立派なチームであると思っている。
また、チームから組織への変化もタックマンモデルにおいては標準期への変遷であると考えている。
「組織だから偉い」などといった良し悪しをつけたい訳では無く、本記事はあくまでタスク管理ツールをジャンル化して説明をするために単純化して分類したことをコメントしておきたい。
最後に、Redmineついては、このジャンルにおけるパイオニア的なプロダクトであり、その歴史も長い。
Redmineを提供している有志、Redmineをホスティング、あるいは拡張したサービスを提供しているアジャイルウェアやファーエンドテクノロジーといった主要な会社、プラグインを開発する開発者、利用者が集まってノウハウを共有しあうredmine.tokyoやRedmine Japanなどのユーザー会、SlackのオンラインサロンであるRedmine Free Salonなど、みんな立場が違えど、この「組織」というジャンルの課題を解決するために生まれたRedmineというツールを一人でも多くの人に使ってほしいと願っている。
今は、私もその中の一人だ。
もし、この記事を読んでいるあなたが、その一歩を踏み出したいと思っていただけるのなら、私も、私達も、非常に嬉しく思う。平たく言えば、めっちゃ応援しちゃう。
それでは、またどこかで。