システム開発などに携わるエンジニアにとって、プロジェクト管理は決して容易な業務ではありません。
一方で、納期遅延はクライアントからの信頼低下に直結するため、進捗を定期的に確認し、状況を把握し続けることが不可欠です。そのような場面で有効なのが「クリティカルパス」の考え方です。
本記事では、クリティカルパスの基本的な概要から、具体的な見つけ方までをわかりやすく解説します。記事を読み進めることで、プロジェクト管理におけるクリティカルパスの重要性を理解できるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
クリティカルパスとは

クリティカルパスとは、プロジェクトのタスクを結んだうち、期間が最長の経路のことです。クリティカルパスがプロジェクト全体の納期を決定するため、クリティカルパス上のタスクに遅延が生じると、プロジェクト全体のスケジュールも遅れてしまいます。
そのため、クリティカルパス上のタスク管理は、プロジェクト全体にとって非常に重要な役割を持つと言えるでしょう。
プロジェクト管理によるクリティカルパスの重要性
クリティカルパス上のタスク遅延はプロジェクト全体の遅延につながります。最悪の場合、納期遅延や予算増加などの事態を招き、クライアントへ多大な迷惑をかけてしまいます。
プロジェクトは、クリティカルパス上の工程がすべて完了するまで終わりません。遅れが発生しているなら、クリティカルパスの工程を改善する必要があります。
もしクリティカルパスに遅れがあると感じれば、プロジェクト管理者は早期に問題点を発見して改善しましょう。計画通りにプロジェクトを進めるためにも、クリティカルパスは非常に重要な存在です。
クリティカルパスとクリティカルチェーンの考え方

クリティカルパスとクリティカルチェーンは、いずれもプロジェクト全体の完了時期を左右する重要な概念ですが、前提となる考え方が異なります。本章では、両者の違いを整理した上で、ITプロジェクトの実務においてどのように捉え、使い分けるべきかを解説します。
クリティカルパス:依存関係と所要時間ベース
クリティカルパスは、タスク同士の依存関係と所要時間のみを基準に、プロジェクト全体で最も時間がかかる経路を特定する考え方です。理論上は、この経路上のタスクが遅れるとプロジェクト全体の納期に直結します。
ただし、人や設備といったリソース制約は考慮されないため、実務では「計画上は問題ないが現場では回らない」といった乖離が生じやすい点が課題です。
クリティカルチェーン:資源(リソース制約)ベース
クリティカルチェーンは、タスクの依存関係に加えて、人員や設備などの資源制約を織り込んだ上で、実際に遅延へ直結する経路を特定する手法です。
複数タスクを同一メンバーが兼務する現場を前提にしており、理論ではなく実行可能性を重視します。さらにバッファ管理を用いることで、遅延を早期に検知し、全体最適で調整できる点が特徴です。
どちらを使うべきかの判断基準
ITプロジェクトでは、人的リソースが最大の制約条件になるケースがほとんどです。そのため、クリティカルパスとクリティカルチェーンを別物として扱う場合、実務ではクリティカルチェーンを前提に計画・進捗管理を行うのが合理的です。
依存関係のみで判断するクリティカルパスは補助的な概念と捉え、資源制約を含めて全体を把握できるクリティカルチェーンを主軸に据えることが、現実的な運用につながります。
クリティカルパスとWBSの関係

クリティカルパスを正しく算出するためには、事前にプロジェクトの作業内容を明確に整理しておく必要があります。その基盤となるのがWBSです。密接に関係するWBSとクリティカルパスについて解説します。
WBSは「クリティカルパス特定の前提作業」
WBSとは、プロジェクトを進めるために必要な作業を細かく分解し、一覧として整理する方法です。作業の抜け漏れを防ぎ、全体像を把握するために使われます。
クリティカルパスは洗い出された作業を基に計算されるため、WBSはクリティカルパスを特定する前の重要な準備段階となります。
WBSが不完全だとパス計算も不正確になる
WBSに不足している作業があったり、作業粒度にばらつきがあると、後続の依存関係整理や所要時間の設定が正確に行えません。
その結果、本来優先すべき工程を見誤ったり、実際にはボトルネックでない作業を重点管理してしまうなど、計画全体のリスクが高まります。
WBS → 依存関係整理 → パス特定のプロセス
一般的な流れとしては、まずWBSで必要な作業を整理し、次に作業間の順序や依存関係を明確にします。その上で所要時間を見積もることで、最も時間を要する経路、すなわちクリティカルパスが特定されます。
このプロセスを押さえることで、工程上のボトルネックを正確に把握でき、現実的で無理のないスケジュール管理が可能になるのではないでしょうか。
下記記事では、WBSの基本から種類、活用目的やメリット、具体的な作成方法まで詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
クリティカルパスの見つけ方・特定方法

本章では、プロジェクトにおけるクリティカルパスの見つけ方と特定方法を解説します。初心者の方にも理解しやすい内容で整理していますので、ぜひ参考にしてください。
PERT図を作成
まずクリティカルパスを見つけるには、PERT図を作成することからはじめます。PERT図とは、プロジェクトにかかわるタスクを丸で記入して工数や期間とともに矢印で結んだ図です。
IT業界では「アローダイアグラム」と呼ばれています。
上の図の通りPERT図に記載するタスクは、番号を丸に囲んでタスクの順番を決定します。タスクを①からスタートして次のタスクに入るまでの時間を矢印で結び、最終的に一番時間がかかるタスクを見つけます。
クリティカルパスの特定
次はクリティカルパスの特定です。クリティカルパスの特定は、①から右に工数時間を足すことで進められます。
PERT図を基にチェックしてみましょう。
①→②→③→④→⑦→⑧までにかかる時間は合計135分。
続いて①→②→④→⑦→⑧の時間は合計180分です。
最後に①→⑤→⑥→⑦→⑧にかかる時間は125分です。
結果として一番時間がかかる工数は①→②→④→⑦→⑧の工程なので、こちらがクリティカルパスとなります。
このようにPERT図で工程ルートを洗い出せば、全体の遅延をなくせるクリティカルパスが見つけられます。プロジェクトによっては複雑なものもあるため、プロジェクト管理者は見落としがないようにPERT図を作成することがポイントです。
クリティカルパスを理解する2つのメリット

クリティカルパスは、プロジェクトを指揮する管理者にとって非常に重要です。クリティカルパスを理解する2つのメリットをご紹介します。
- 作業優先度を決められる
- 効率的にスケジュール管理が可能
それでは順番に説明します。
1.作業優先度を決められる
クリティカルパスを見つければ、作業の優先度を決められます。
クリティカルパスを把握すれば、プロジェクトに重要な作業が何かを理解できるので、進行中のトラブルも回避が可能です。
また、クリティカルパスの遅延は、プロジェクト全体の遅れにつながります。プロジェクトをスムーズに進めたい管理者にとって、クリティカルパスの理解は大きなメリットです。
2.効率的にスケジュール管理が可能
クリティカルパスを明確化すれば、プロジェクト全体のスケジュールを効率的に管理できます。また、タスク作業に取り掛かるメンバー全体が、作業日数と工数時間を把握できるため、納期を守る意識作りにもなります。
クリティカルパスの作業を早急に終わらせることによって、全体のスケジュールに余裕を持たせることも可能です。プロジェクトを成功に導きたい企業にとって、クリティカルパス上のタスクを遅延させないように管理することは大切な要素となります。
クリティカルパスを運用する際の注意点(限界と誤解しやすいポイント)

クリティカルパスは、プロジェクト全体のスケジュールを把握する上で有効な手法です。ただし、前提条件や限界を理解せずに運用すると、「計画通りに進まない」「現場の実態と合わない」といったズレが生じやすくなります。
本章では、運用時に誤解されやすいポイントと注意点を解説します。
リソース制約まではカバーしない
クリティカルパスは、作業の順序と所要時間を基に算出されるため、人員や設備の同時利用といったリソース制約は考慮されません。
実務では、同一の担当者が複数作業を並行して抱えることも多く、計画上は成立していても、現場では実行できないスケジュールになる場合があります。
スケジュール変更時は再計算が必要
作業の追加や順序変更、期間の見直しが発生すると、クリティカルパスも変化します。そのため、再計算を行わなければ、どの作業が遅延リスクを持つのかを正しく把握できません。
変更が生じた際は、その都度見直す運用が求められます。
タスク数が多いと運用負荷が増える
タスク数の多い大規模プロジェクトでは、依存関係や所要時間の管理自体が複雑化します。更新や調整に手間がかかり、形式的な管理に陥ってしまったりするケースも少なくありません。
そのため、タスクを適切な粒度で整理する工夫が不可欠です。
不確実性の大きいプロジェクトでは精度が低下しやすい
要件変更や技術的な不確定要素が多いプロジェクトでは、所要時間の見積もり精度が下がり、算出されたクリティカルパスの信頼性も低下しがちです。
そのため、状況に応じて柔軟に見直す姿勢が重要になります。
クリティカルパス発見におすすめのツール5選

プロジェクト管理においてクリティカルパスを見つけられるおすすめツールは、以下の5つです。
-
- Lychee Redmine
- Backlog
- みんなでガント.com
- Brabio!
- jooto
それぞれの特徴を順番に説明します。
なお、料金やサービス内容は変更される場合があるため、最新の情報は必ず公式サイトでご確認ください。
1.Lychee Redmine

Lychee Redmineは、豊富なプロジェクト機能が備わっているプロジェクト管理ツールです。約7,000社以上の企業が導入しており、信頼性の高いクラウドツールです。
ガントチャートをはじめカンバンやタイムマネジメント・リソースマネジメントなど豊富な機能が備わっています。
プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」を使ってみる。(30日間無料・自動課金なし)
Lychee Redmineにはガントチャート上に「クリティカルパス」の設定項目があるので、クリックするだけで簡単に表示可能です。

タスクを「チケット」という名称で管理し、一番遅いチケットを判定してクリティカルパスを見つけ出してくれます。さらにクリティカルパスの余裕期間を設定できるので、プロジェクトの完了に余裕をもたせられます。
誰でも簡単に利用できるので、プロジェクト管理初心者にもおすすめです。
無料プランは基本機能(ワークフロー・通知設定・ファイル共有・Wiki)とカンバン機能の限定された機能しか利用できませんが、有料プランはガントチャートをはじめさらに多くの機能が利用できます。
有料プランは30日間の無料トライアル期間を提供しているので、リスクなくはじめられ、その価値を実感できるはずです。ぜひ一度お試しで使い、操作性を確かめてみましょう。
| プラン | 月額料金 | 利用機能 |
| フリー | 無料 |
|
| スタンダード | 900円 |
|
| プレミアム | 1,400円 |
|
| ビジネス[無料トライアルはこちらをお試しできます] | 2,100円 |
|
2.Backlog

引用元:Backlog
Backlogは、2006年からサービスを開始した国産の老舗プロジェクト管理ツールです。企業や個人の利用者数は143万人を突破した日本国内において最大級のサービスとなります。
Backlogの特徴は、シンプルでわかりやすい操作性です。はじめてプロジェクト管理ツールを使う方も簡単に扱うことが可能です。
また、メンバー間のコミュニケーション機能も備わっているため、やり取り用のツールとしても優秀です。
基本的なガントチャート機能には、課題と紐付けてプロジェクトの進捗や実績をリアルタイムで確認できます。フリープランや30日の無料トライアルがあるので、まずは性能を確かめてみたい方にもおすすめです。
|
プラン |
料金(月額) |
ユーザー数 |
使える主な機能 |
サポート |
容量 |
|
フリー |
0円 |
10 |
カンバンボード |
メール AIチャットボット |
100MB |
|
スターター |
2,970円 |
30 |
カンバンボード |
メール AIチャットボット |
1GB |
|
スタンダード |
17,600円 |
無制限 |
カンバンボード |
メール AIチャットボット |
30GB |
|
プレミアム |
29,700円 |
無制限 |
カンバンボード |
メール AIチャットボット |
100GB |
|
プラチナ |
82,500円 | 無制限 |
カンバンボード |
メール AIチャットボット |
300GB |
3.みんなでガント.com
引用元:みんなでガント.com
みんなでガント.comは、会員登録やインストール不要で使えるプロジェクト管理ツールです。パナソニック株式会社をはじめ大手企業も多く導入しており、日本国内でも人気のサービスとなっています。
みんなでガント.comの特徴は、ガントチャートごとにTODOや課題を管理し、全体メンバーの作業状況を簡単に把握できることです。また、作成したガントチャートはPC、iPhone、Android上で管理することができでMicrosoft Excelに出力することもできます。
インターネット環境さえあればどこででもガントチャートを閲覧・編集ができることも特徴の一つです。また、日本語表示と英語表示を切り替えられるので、海外拠点とのガントチャート共有も可能です。グローバル展開する企業にとって嬉しいポイントでしょう。
会員登録不要なので、試しにガントチャートを作成してみたい方にもおすすめです。
|
プラン |
料金(月額) |
ユーザー数 |
使える主な機能 |
容量 |
|
トライアル |
1,800円(3カ月) |
10 |
ToDo管理 |
– |
|
エントリー |
4,800円(6カ月) 8,600円(12カ月) |
20 |
ToDo管理 |
– |
|
ビジネスS |
9,600円(6カ月) 17,600円(12カ月) |
20 |
ユーザー管理 メール通知機能 ToDo管理 ToDoファイル添付 |
5ファイル(添付ファイル数の上限) 3MB(添付ファイルサイズの上限) 80MB(添付ファイル合計サイズの上限) |
|
ビジネスM |
19,200円(6カ月) 36,000円(12カ月) |
50 |
ユーザー管理 メール通知機能 ToDo管理 ToDoファイル添付 |
5ファイル(添付ファイル数の上限) 3MB(添付ファイルサイズの上限) 80MB(添付ファイル合計サイズの上限) |
|
ビジネスL |
38,400円(6カ月) 72,000円(12カ月) |
100 |
ユーザー管理 メール通知機能 ToDo管理 ToDoファイル添付 |
5ファイル(添付ファイル数の上限) 3MB(添付ファイルサイズの上限) 80MB(添付ファイル合計サイズの上限) |
4.Brabio!
引用元:Brabio!
Brabio!は、直感的な操作で使いやすさが特徴のプロジェクト管理ツールです。プロジェクト管理初心者の方に特化したツールとなっており、クラウド上のプロジェクトツールとしてシェアNO.1を誇ります。
Brabio!の特徴は、プロジェクトごとにユーザーの権限を変更できるので、社内秘や社外秘の情報共有・情報管理をしっかり管理できる点にあります。
また、ブラビオ・プロジェクト機能を利用すれば、面倒な進捗管理も管理者の代わりに行えることも特徴の一つです。さらに、クライアントの報告用として、ガントチャートをMicrosoft Excelのシートに一括出力も可能です。
会員登録はメールアドレスでできて、5人までならプロジェクト数無制限で利用できるため、初心者向けのプロジェクト管理ツールを使ってみたい方におすすめです。
|
プラン |
料金(月額) |
ユーザー数 |
プロジェクト数 |
サポート |
容量 |
|
フリー |
0円 |
5 |
無制限 |
メール 通話 |
50MB |
| エントリー |
3,300円〜 |
10〜50 |
無制限 |
メール 通話 |
1GB |
|
ミッドレンジ |
33,000円〜 |
100〜300 |
無制限 |
メール 通話 |
1GB |
5.jooto
引用元:jooto
jootoは、直感的なレイアウトとシンプルなデザインが特徴のプロジェクト管理ツールです。操作はドラッグ&ドロップだけで、操作が苦手な方でも直感的に利用できます。
また、Googleカレンダー、Chatwork、Slackと連携もできるため、スピーディーかつ円滑にプロジェクトを進められます。ガントチャート機能は4名まで無料で使えるなどコスト軽減にも最適なツールです。
まずは少数規模でプロジェクト管理を進めてみたい方におすすめです。
|
プラン |
料金(月額/ユーザー) |
ユーザー数 |
使える機能 |
容量(1ファイルあたり) |
|
フリー |
0円 |
1 |
基本機能 |
10MB |
|
スタンダード |
417円 |
1~ |
基本機能 外部連携 |
300MB |
|
ビジネス |
980円 |
1〜 |
基本機能 |
1GB |
|
タスクDX |
要問い合わせ |
無制限 |
基本機能 |
1GB |
クリティカルパスを把握して作業効率を上げましょう

今回は、クリティカルパスの詳細や見つけ方についてご紹介しました。クリティカルパス上のタスクを把握しておくことは、プロジェクトの遅れを見定める上で重要です。
プロジェクト管理者の方は、必ずプロジェクト開始前に準備を整えておきましょう。タスク作業によっては複雑化することもあるので、クリティカルパスの発見は難しいこともあります。
クリティカルパスを見つけることが困難な方は、ご紹介したおすすめツールの利用がおすすめです。
Lychee Redmineなら複雑なプロジェクトも、簡単に管理が可能です。有料プランも30日間無料で使用できるので、ぜひ導入を検討してみてください。
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