アジャイル開発を実践する方法は、スクラムだけではありません。カンバンやエクストリームプログラミング(XP)、リーンソフトウェア開発など複数あり、それぞれ重視するポイントが異なります。
私はこれまで、ウォーターフォールとアジャイルの両方の現場でプロジェクトマネージャーを務めてきました。関わった現場では、手法の優劣よりも、プロジェクトの条件と手法の相性を十分に確認しないまま導入したことが、運用につまずく原因になっていました。
この記事では、アジャイル開発の代表的な手法を一覧で整理し、それぞれの違いと選び方を解説します。あわせてメリットとデメリット、ウォーターフォール開発との違いも紹介するため、自社に合う進め方を判断する際の参考にしてください。
執筆者:和田匠真
IT業界で20年以上の実務経験を持つプロジェクトマネージャー。プログラマー・SEを経てPMとなり、大手企業のシステム提案からデリバリーまで一貫して従事。PMP/認定スクラムマスター(CSM)保有。ウォーターフォール/アジャイル双方の現場経験をもとに、プロジェクト管理に関する記事を執筆。
アジャイル開発とは
アジャイル開発とは、変化への対応や顧客との協調を重視する価値観・原則に基づいた開発の進め方です。特定の手順を指す言葉ではなく、その考え方を実践するために、スクラムやカンバンなど複数の手法・フレームワークが使われます。
「アジャイル開発」と一つの手法のように語られることが多いものの、実際には、価値観・原則と、それを実践するフレームワーク・手法・プラクティスを分けて捉えることが大切です。この違いを押さえておくと、手法選びで迷いにくくなります。
変化に対応しながら開発と学習を繰り返す考え方
アジャイル開発では、価値を小さな単位で届け、利用者や関係者から得たフィードバックを次の計画や実装に反映します。
スクラムやXPなどの反復型の実践では、短い期間を区切って、計画・開発・検証・改善を繰り返します。一方、カンバンのように、固定した反復期間を設けず、作業の流れを継続的に改善する方法もあります。
ここで注意したいのは、アジャイル開発は単に開発期間を短くする取り組みではないことです。私が現場で見てきた失敗例の多くは、「早く作る手法」として導入し、検証と改善のサイクルを省いてしまったケースでした。
学びを踏まえて方向を修正していく前提が抜けると、単に細かく区切っただけの計画になってしまいます。アジャイル開発を成果につなげるには、学習と改善を日々の開発に組み込む必要があります。
アジャイルソフトウェア開発宣言の考え方
アジャイル開発の土台にあるのは、2001年に発表された「アジャイルソフトウェア開発宣言」です。ここで示された4つの価値が、各手法の共通の出発点になっています。
- プロセスやツールよりも個人と対話を重視する
- 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを重視する
- 契約交渉よりも顧客との協調を重視する
- 計画に従うことよりも変化への対応を重視する
宣言では、左側だけを選ぶのではなく、左側により価値を置くと表現されています。つまり、ドキュメントや計画を否定しているわけではありません。宣言にはこの4つの価値に加えて12の原則が示されており、いずれも現在まで公式サイトで公開されています。
(出典:アジャイルソフトウェア開発宣言)
この点を誤解すると、「アジャイルだからドキュメントは不要」といった運用に傾いてしまいます。何を重視するかの優先順位を示したものだと理解しておくことが大切です。
ウォーターフォール開発との違い
アジャイル開発とウォーターフォール開発の大きな違いは、計画の立て方と、変化を計画へ反映する方法にあります。
|
項目 |
アジャイル開発 |
ウォーターフォール開発 |
|
進め方 |
価値を小さな単位で届け、学びを次の計画へ反映する |
工程ごとの成果物を確認しながら段階的に進める |
|
仕様変更 |
優先順位・計画へ反映しやすい |
変更管理を通じて影響範囲を確認したうえで計画へ反映する |
|
成果の確認 |
短い周期で動く成果を確認する |
計画した工程やリリース単位で確認する |
|
計画 |
進行に応じて詳細化・更新をする |
初期段階で範囲・工程・成果物を定義する |
どちらが優れているという関係ではなく、プロジェクトの性質によって適性が変わります。要件が固まっており、契約上 スコープを動かしにくい案件では、ウォーターフォール開発のほうが管理しやすいでしょう。
一方、市場の反応を見ながら機能を決めていく開発では、変更を計画へ取り込みやすいアジャイル開発が力を発揮します。両者を組み合わせるハイブリッド型の進め方もあり、実務では選択肢の一つになっています。
アジャイル開発に関連する手法・フレームワーク・プラクティス
アジャイル開発に関連するものは、すべてが同じ階層に並ぶわけではありません。チームの仕事の進め方を定義するフレームワーク、開発の進め方を示す手法、技術的な実践を支えるプラクティスなど、役割の異なるものが混在しています。
この違いを整理せずに一覧だけを眺めると、「スクラムとテスト駆動開発(TDD)のどちらを選ぶか」といった、本来は比較の対象にならない検討をしてしまいます。
ここでは階層を意識しながら、代表的なものを紹介します。
スクラム
スクラムは、アジャイル開発を実践する代表的なフレームワークの一つです。公式の「スクラムガイド」で、責任・イベント・作成物などが定義されています。
スクラムガイドは、スクラムを複雑な問題に対応しながら価値を生み出すための軽量級フレームワークと定義し、スクラムチームは通常10人以下としています。
スクラムは、次の3つの要素で構成されています。
- 3つの責任:プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者
- 5つのイベント:スプリント、スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブ
- 3つの作成物:プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメント
スプリントは1か月以内の固定された期間で、ほかの4つのイベントを含む枠組みとして機能します。
(出典:Scrum Guides「スクラムガイド」)
スクラムの特徴は、仕事の進め方の枠組みを明確に定めている点にあります。技術的な実装方法までは規定していないため、その部分は各チームごとで選ぶことが一般的です。
エクストリームプログラミング(XP)
エクストリームプログラミング(XP)は、技術的なプラクティスを具体的に定めたアジャイルソフトウェア開発のフレームワークです。コードの品質を保ちながら変更に対応し続けることを重視します。
XPが定める代表的なプラクティスには、次のようなものがあります。
- ペアプログラミング:2人1組でコードを書き、その場でレビューする
- テスト駆動開発(TDD):失敗するテストを先に作成し、実装とリファクタリングを繰り返す
- 継続的インテグレーション:変更を頻繁に統合し、動作を確認する
- リファクタリング:動作を変えずにコードの構造を整える
(出典:Agile Alliance「Extreme Programming (XP)」)
XPは計画づくりや顧客の参加、短いリリースサイクルも扱いますが、ほかの手法と比べて技術面の実践まで踏み込んでいる点が大きな違いです。設計や実装の品質が課題になっているチームと相性が良いフレームワークといえます。
カンバン
カンバンは、作業の流れを可視化し、仕掛かり量を管理することで進行を改善する方法です。トヨタ生産方式のカンバン方式を、ソフトウェア開発などの知識労働に応用したものです。
カンバンの代表的な実践には、次の3つがあります。
- 作業の流れを定義し、見える状態にする
- 仕掛かり中の作業数(WIP)を制御し、作業項目を管理する
- フローの状態を確認し、継続的に改善する
(出典:Kanban Guides「The Kanban Guide」)
仕掛かりを制限すると、あちこちに手をつけて何も完了しない状態を防げます。私が支援した現場でも、WIPの上限を設けただけで完了までの時間が短くなった例がありました。
なお、カンバン自体は、新たな役割やイベントを必須としていません。そのため、現在の仕事の進め方を維持しながら、作業の流れを改善したいチームでも取り入れやすい方法です。
リーンソフトウェア開発
リーンソフトウェア開発は、ムダを取り除いて価値の流れを最大化する考え方を、ソフトウェア開発に適用した手法です。トヨタ生産方式の考え方を土台にしています。
7つの原則が示されており、内容は次のとおりです。
- ムダをなくす
- 品質を作り込む
- 知識を作り出す
- 決定を遅らせる
- 早く提供する
- 人を尊重する
- 全体を最適化する
なかでも実務で意識しやすいのは、判断に必要な情報がそろうまで選択肢を残し、責任を持って判断できる最後の時点で決定するという原則です。情報が不足している段階で仕様を確定させない考え方を指します。
リーンソフトウェア開発は具体的な手順よりも原則を重視するため、ほかの手法と併せて土台となる考え方として取り入れられることがあります。
フィーチャ駆動開発(FDD)
フィーチャ駆動開発(FDD)は、利用者にとって意味のある機能単位(フィーチャ)を軸に、設計と構築を繰り返す手法です。機能を細かく分割し、短い期間で完成させていきます。
FDDは次の5つの活動で進みます。
- 全体モデルを開発する
- フィーチャリストを構築する
- フィーチャごとに計画する
- フィーチャごとに設計する
- フィーチャごとに構築する
FDDの特徴は、最初に全体のモデルを描いてから個別の機能に取りかかる点です。全体像を早い段階で共有できるため、比較的規模の大きい開発でも進行を管理しやすくなります。役割分担が定義されている点も、体制を整えやすい要素です。
クリスタル
クリスタルは、チームの規模やプロジェクトの重要度に応じて進め方を変える手法群です。単一の手順ではなく、条件によって使い分ける複数の方法をまとめた考え方を指します。
たとえば数人規模の開発と、数十人が関わる開発では、必要な文書の量や意思疎通の方法が変わります。クリスタルは、この違いを前提として、状況に合う進め方を選ぶ枠組みを提供します。
代表的なものとして、少人数向けのクリスタル・クリアがあります。
すべてのプロジェクトに同じやり方を当てはめないという発想は、手法を検討するうえで参考になる視点です。
関連するプラクティス・アプローチ(TDD・DevOpsなど)
アジャイル開発の文脈でよく登場するものの、スクラムやXPとは階層が異なるものもあります。混同しやすいため、位置づけを整理しておきます。
- テスト駆動開発(TDD):開発のプラクティスです。失敗するテストを先に作成し、実装とリファクタリングを繰り返します。
- DevOps:組織・運用のアプローチです。開発と運用が協働し、リリースまでの流れを改善する文化と実践を指します。
- SAFe:スケーリングの枠組みです。複数チームで大規模にアジャイルを適用するための体系です。
TDDは、XPのプラクティスの一つとして位置づけられる技術的な実践です。DevOpsは、開発と運用の連携を扱う組織的な取り組みであり、開発の進め方を定める手法とは目的が異なります。
これらは、スクラムやカンバンと選択関係にあるものではなく、組み合わせて用いるものです。スクラムで仕事の進め方を整えながら、TDDで技術品質を支え、DevOpsでリリースの流れを改善するといった併用が実際の現場では行われています。
アジャイル開発の主要手法の違い
主要な手法の違いは、何を重点的に定めているかに表れます。スクラムは仕事の進め方の枠組み、XPは技術的な実践、カンバンは作業の流れと、それぞれ力点が異なります。
一覧を眺めるだけでは選びにくいため、ここではスクラム・XP・カンバンの3つを対象に、3つの観点から横断的に比較します。手法を並列に評価するのではなく、自社の課題がどの観点に当たるかを確認しながら読み進めてください。
重視するポイントの違い(検査と適応・技術品質・作業の流れ)
スクラム・XP・カンバンでは、改善の起点として置いているものが異なります。
- スクラム:検査と適応を重視し、スプリントゴールに向けて何を届け、何を学ぶかを起点にします
- XP:技術品質を重視し、変更に耐えられる実装になっているかを起点にします
- カンバン:作業の流れを重視し、どこで作業が滞留しているかを起点にします
スクラムは、期間を固定して区切ることで検査と適応のリズムを作ります。期間を固定し、スプリントゴールを維持しながら、必要に応じて扱う内容を調整します。
XPは、テスト駆動開発やリファクタリングなどのプラクティスを通じて、変更に対応しやすいコードを維持することを重視します。 仕様が変わり続ける前提では、実装の品質が落ちると変更のたびに手戻りが増えるためです。
カンバンは、固定長の反復を必須とせず、作業の流れそのものに注目します。どこで作業が滞留しているかを見えるようにし、そこを改善していく発想です。運用や保守のように、依頼が随時発生する仕事とも相性が良い方法です。
定義されている責任・イベント・作成物・プラクティスの違い
手法ごとに、あらかじめ決められている要素の範囲が異なります。ここを把握しておくと、導入時に何を自分たちで決める必要があるかが見えてきます。
- スクラム:3つの責任・5つのイベント・3つの作成物を定義し、技術プラクティスは規定しません
- XP:価値・原則・役割に加えて、技術プラクティスまで具体的に示します
- カンバン:ワークフロー・WIP・フロー指標を定義し、現在の仕事の進め方に適用しやすい方法です
スクラムは責任・イベント・作成物を定めていますが、実装方法には踏み込みません。そのため、技術面の品質をどう保つかはチームが別途決めることになります。
一方のXPは、技術プラクティスまで具体的に示します。カンバンは役割やイベントを必須としないため、現在の体制のまま始められることが特徴です。
定義が多い手法は導入時の指針が明確な反面、既存の体制との調整が必要になります。定義が少ない方法は柔軟に始められますが、判断基準を自分たちで作る負担が生じます。どちらが良いかは、チームの状況によって変わることを理解しておきましょう。
向いているプロジェクト・チーム条件の違い
手法の適性は、チームの人数だけでは決まりません。要件の変わりやすさや、事業側が関与できる頻度なども判断材料になります。
- スクラム:要件の変化が多く、事業側が定期的に関与できる場合
- XP:技術的な品質が課題で、開発者の裁量が確保されている場合
- カンバン:依頼が随時発生し、期間で区切りにくい場合
スクラムは、スプリントごとに関係者が成果を確認する前提で成り立ちます。事業側がレビューに参加できない状況では、検査と適応の仕組みが機能しにくくなる点に注意しましょう。
XPは、実装方法をチームが決められる環境が必要です。外部の制約で技術選定が固定されている場合、プラクティスを取り入れにくくなります。
カンバンは、期間で区切りにくい仕事に適しています。運用・保守や問い合わせ対応のように、依頼が読めない業務では選択肢になりやすいでしょう。
私の経験では、事業側がフィードバックを返せる頻度が、手法選びで最も見落とされやすい条件です。開発側の体制だけを見て決めると、導入後の運用が安定しにくくなります。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発の大きなメリットは、要件が固まりきらない段階でも、優先順位を見直しながら開発を進められることです。作りながら方向を修正できるため、想定と実際のニーズのずれを早く見つけられます。
ここでは、実務で効果を実感しやすい3つのメリットを紹介します。
要件の変更に対応しやすい
アジャイル開発は、変更を例外ではなく前提として扱うため、途中で要件が変わっても計画を組み替えやすいことが特徴です。
次の反復で優先順位や計画を見直せることから、変更を開発計画へ取り込みやすい利点もあります。
ただし、変更内容によっては、既存機能や設計への影響が広がります。開発手法にかかわらず、変更による影響範囲を確認することは必要です。
新規サービスの開発のように、市場の反応を見ながら機能を決めていく案件では、この特性が特に有効です。
早い段階から価値を届けやすい
アジャイル開発では、価値の高い機能を小さな単位で完成させ、早い段階から関係者に示せます。リリースの条件が整っていれば、利用者へ段階的に提供することも可能です。
スクラムなどでは、反復ごとに利用可能な成果を作ることを目指します。関係者は、すべての機能が完成する前から動く成果を確認し、次の判断に活かせます。
私が関わった案件でも、中核となる機能だけを先に公開し、その後の追加機能を利用状況を見ながら決めていく進め方が有効でした。全機能を揃えてから公開する計画に比べ、優先度の判断に実際のデータを使えるようになります。
ただし、優先順位づけが曖昧なままでは、この利点は活かせません。何を先に届けるかを決める役割が明確であることが前提として必要です。
利用者のフィードバックを継続的に取り入れやすい
スクラムなどの反復型の実践では、短い周期で成果を確認する場が設けられるため、フィードバックを開発に反映しやすくなります。
スクラムであれば、スプリントレビューがその場に当たります。動くソフトウェアを関係者に見せ、意見を受けて次の計画に反映する流れです。
文書だけで仕様を確認する方法と比べ、実際に操作してもらうと認識のずれが見つかりやすくなります。「想定していた使い方と違った」という指摘は、動くものを見て初めて出てくることがほとんどです。
このサイクルが回ると、完成時点での認識のずれを小さく抑えられます。関係者が定期的に参加できる体制が整っていれば、アジャイル開発の効果を実感しやすくなるでしょう。
アジャイル開発のデメリット
アジャイル開発には、注意すべきポイントもいくつか存在することが事実です。ただし、導入前に対策を整えておけば、デメリットによる影響を抑えやすくなります。
ここでは3つのデメリットを挙げ、それぞれに補う進め方をあわせて紹介します。導入前に把握しておくことで、想定外の事態を減らせるでしょう。
全体スケジュールや最終成果の見通しを立てにくい
アジャイル開発では、進行しながら計画を調整するため、着手時点で最終的な完成形やスケジュールを固定しにくくなります。
反復のなかで優先度を見直すため、当初想定していた機能の一部が後回しになる場合も少なくありません。予算の承認や社外への公表時期が先に決まっている案件では、この特性が課題になりやすい部分です。
補う進め方としては、期間全体を見通せる情報を別に用意しておくことが有効です。具体的には次のような方法があります。
- 大きな節目(リリース時期や主要機能の完成目標)を先に定める
- 反復ごとの実績から、今後の見通しを継続的に更新する
- 全体の予定と反復単位の計画を、それぞれ別の粒度で管理する
私の現場では、反復ごとの計画とは別に全体の予定を管理し、両方を並べて確認できるようにしていました。反復の柔軟性を保ちながら、関係者への説明に必要な見通しも示せます。
関係者の継続的な関与が必要になる
アジャイル開発は、事業側や利用者が定期的に関与することを前提とした手法です。関与が途切れると、優先順位の判断やフィードバックが得られなくなります。
反復ごとに「次に何を作るか」を決める必要があるため、判断できる人が不在の場合、優先順位や仕様の確認が滞り、開発の進行に影響します。レビューに誰も参加しない状態では、検査と適応の仕組みも成り立ちません。
このような状況を避けるため、 次の3点を導入前に決めておくことをおすすめします。
- 優先順位を最終判断する責任者を明確にする
- レビューに参加するメンバーと開催頻度を事前に合意する
- 判断が必要な事項と、チームで決めてよい事項の範囲を線引きする
とくに効果が大きいのは、判断の範囲を先に線引きしておくことです。すべてを事業側の確認待ちにすると開発が停滞するため、チームで決められる範囲を広げておくと進行が安定します。
チームの経験や自己管理能力に結果が左右されやすい
アジャイル開発では、チームが自ら計画し、状況に応じて進め方を調整します。そのため、経験の少ないチームでは判断に迷い、成果にばらつきが出やすい傾向です。
指示を待つ働き方に慣れている場合、「自分たちで決める」という前提そのものが負担になることも否めません。役割が曖昧なまま始めると、責任の所在が不明確になりがちです。
これ補う進め方としては、下記のように範囲を絞って始めるのが現実的です。
- 適用範囲を1チーム・1プロダクトに限定して始める
- 経験者を配置するか、外部の支援を一定期間受ける
- 反復の振り返りで、進め方そのものを定期的に見直す
最初から全社へ広げず、小さな範囲で運用方法を確立してから対象を広げると、導入時の混乱を抑えやすくなります。ふりかえりの場を確実に設けておけば、進め方の課題を早い段階で修正することが可能です。
アジャイル開発の手法を選ぶときのポイント
手法を選ぶときは、要件の変わりやすさと関係者の関与度を最初に確認することをおすすめします。チームの人数だけで決めると、導入後に定着しにくくなるためです。
ここでは判断の順序を意識しながら、5つの観点を紹介します。
要件の変化や顧客の関与度から選ぶ
最初に確認したいのは、要件がどれくらい変わるか、事業側が継続的に関与できるかという2点です。
要件が固まっており、契約上 スコープを動かしにくい案件では、反復して調整する利点が出にくくなります。この場合は、ウォーターフォール開発や、一部にアジャイルの考え方を取り入れる進め方が有効です。
一方、要件が変わりやすく、事業側が定期的にレビューへ参加できる案件なら、スクラムが適しています。なぜなら、スプリントごとに成果を確認し、次の優先順位を決める流れが機能するためです。
事業側が定期的なレビューに参加しにくく、依頼が随時発生する運用・保守業務などでは、固定したイベントを増やさずに、作業の流れを可視化できるカンバンが選択肢になるでしょう。
ただし、カンバンを用いる場合でも、優先順位を判断する関係者との連携は必要です。
チームの規模・役割構成から選ぶ
次に確認するのは、チームの人数と役割分担です。手法によって想定している規模が異なります。
- スクラム:通常10人以下の小さなチームで密に連携する前提
- FDD:機能単位で分担するため、比較的規模が大きい開発にも対応しやすい
- カンバン:人数の前提がなく、既存の体制のまま始められる
スクラムを選ぶ場合は、プロダクトオーナーとスクラムマスターの責任を誰が担うか、事前に決めておく必要があります。両方を同じ人が担う場合は、価値判断とチーム支援の責任が衝突しやすいため、役割分担を慎重に設計しなければなりません。
スクラムを大規模に適用する場合は、複数の小規模なチームに分け、共通の目標やバックログ、チーム間の連携方法を設計することが重要です。
重視する要素から選ぶ
自社が優先したい価値から、逆算する方法もあります。課題として感じている部分に対応する手法を選ぶ考え方です。
- 短い周期で成果を確認し、優先順位を調整したい場合はスクラム
- コードの品質と変更への耐性を高めたい場合はXP
- 作業の停滞を減らし、流れを改善したい場合はカンバン
たとえば、リリースはできているものの、変更のたびに不具合が増えている状況では、XPのプラクティスが改善に役立ちます。テスト駆動開発や継続的インテグレーションを取り入れることで、変更に耐える土台を作れます。
一方、複数の作業を同時に進めすぎて、完了する作業が少ない状態が続くなら、カンバンで仕掛かり量を制限する方法が有効です。自社の課題がどこにあるかを言語化してから手法を見ると、選択の理由が明確になります。
チームの習熟度から選ぶ
責任やイベントが細かく定義された方法を導入する場合は、それらを理解するための学習負荷が生じます。
スクラムは責任やイベントが明確な反面、その通りに運用するための学習が必要です。役割の理解が不十分なまま始めると、形だけを真似た運用になりかねません。
経験が少ないチームが、段階的に導入する一例は次のとおりです。
- カンバンで作業の流れを可視化する
- 定期的に振り返り、進め方を改善する
- 固定長の反復や明確な責任が必要になった場合は、スクラムの導入を検討する
この順序は一例であり、カンバンからスクラムへの移行を前提とするものではありません。
私が支援した現場でも、まず作業を見えるようにするだけで課題が明らかになり、次の改善につながったケースが多くありました。
複数の手法を組み合わせて使う
手法を一つに限定する必要はありません。実務では、解決したい課題に応じて、複数の手法やプラクティスを組み合わせる場合があります。
代表的な組み合わせとして、スクラムとカンバンを併用するスクラムバンが挙げられます。この手法はスプリントで期間を区切りながら、ボード上で仕掛かり量を管理する方法です。
スクラムで仕事の進め方を整え、XPのテスト駆動開発で技術品質を支える組み合わせもあります。
ただし、無計画に混ぜると運用が複雑になります。組み合わせる際は、次の点を意識しましょう。
- 解決したい課題を先に特定し、それに対応するプラクティスを追加する
- 一度に複数を導入せず、効果を確認しながら追加する
- 何のために取り入れたのかをチーム内で共有する
各手法の目的を理解したうえで、自社の課題に必要なプラクティスを取り入れることが重要です。
アジャイル開発の運用を支える管理ツールの役割
手法を選んだあとに課題となるのは、決めた進め方を日々の運用に落とし込むことです。管理ツールの選定と運用ルールは、日々の管理のしやすさに影響します。
アジャイル開発の運用では、優先順位、日々の進捗、全体の見通しを関連づけて管理することが必要です。
スクラムを採用する場合は、スプリントの進捗も管理対象になります。表計算ソフトやチャットだけで管理すると、情報が分散して現在の状況がつかみにくくなります。
なかでも難しいのは、反復単位の計画と全体の予定を並行して管理する部分です。反復単位の計画と全体の予定を別々の場所で管理する場合、「全体の見通しを立てにくい」という課題が生じるかもしれません。
バックログの優先順位、スプリントの進捗、全体スケジュールを同じ環境で関連づけて確認できると、情報の確認や更新にかかる負担を抑えやすくなります。手法の選定と並行して、管理ツールの選定方法と運用ルールも、あわせて検討する必要があります。
アジャイル開発を実践するならLychee Redmineがおすすめ
アジャイル開発の運用を支える環境をお探しなら、当社が提供するLychee Redmineをぜひご検討ください。7,000社を超える企業にご利用いただいているプロジェクト管理ツールです。
Microsoft 365などの特定の環境に依存せず、クラウド版とオンプレミス版のどちらも選べます。ここでは、アジャイル開発の運用でお使いいただける機能をご紹介します。
Lychee Redmineでできること
Lychee Redmineには、スクラムを中心としたアジャイル運用に役立つ機能があります。
- Neoバックログ:バックログの優先順位とスプリント計画を管理する
- Neoカンバン:スプリントゴールと日々の進捗をチームで共有する
- ガントチャート:中長期の計画や複数プロジェクトの予定を確認する
Neoバックログで「次に何を届けるか」を整理し、Neoカンバンでスプリントの進捗を共有し、一連の運用を支援できます。スプリントゴールが画面上に表示されるため、日々の作業が届けたい価値につながっているかをチームで確認しながら進めることが可能です。
異なる進め方のプロジェクトをまとめて管理できる
Lychee Redmineでは、ガントチャートを使うプロジェクトと、Neoバックログ・Neoカンバンを使うプロジェクトを、同じ環境で管理できます。
そのため、部門やプロジェクトごとに異なる進め方を採用している組織でも、情報を一つの環境に集約できます。アジャイル開発とウォーターフォール開発が併存している場合でも、管理する場所を分ける必要がありません。
現在、Lychee Redmineでは、実際の使用感を現場で試してもらうために、30日間の無料トライアルをご用意しています。まずは実際の運用に近い形でお試しいただき、自社の進め方に合うかをご確認ください。
アジャイル開発の手法に関するよくある質問
ここでは、アジャイル開発の手法に関するよくある質問をまとめました。導入前の疑問解消に役立てください。
スクラムとアジャイルの違いは何ですか?
アジャイルは価値観・原則に基づく開発アプローチで、スクラムはその考え方を実践する代表的なフレームワークです。
両者は選択関係にはなく、アジャイルという考え方のなかにスクラムが位置づく関係です。スクラム以外にも、カンバンやXP、リーンソフトウェア開発などがアジャイルの実践方法として使われています。
アジャイル開発とウォーターフォールは併用できますか?
アジャイル開発とウォーターフォールは併用できます。 両者を組み合わせる進め方は、ハイブリッド開発と呼ばれています。
たとえば、要件が固まっている基幹部分はウォーターフォールで進め、利用者の反応を見ながら決めたい機能はアジャイルで開発する形です。全体の枠組みは計画的に管理し、個々の開発単位で反復を回す方法もあります。
アジャイル開発は大規模プロジェクトでも使えますか?
大規模プロジェクトでも適用できますが、複数チーム間の依存関係や意思決定の仕組みを設計する必要があります。 代表的なスケーリングの枠組みとして、SAFe、LeSS、Scrum@Scaleなどがあります。
最初から大規模に展開するのではなく、まず小さな範囲で実践を安定させ、その後に対象を広げる進め方が現実的です。
アジャイル開発は時代遅れですか?
アジャイル開発は、発表年だけを理由に時代遅れとは判断できません。 2001年に示された4つの価値と12の原則は、現在も公式サイトで公開されています。変化への対応や顧客との協調を重視する考え方は、現在の開発でも判断の土台になります。
時代遅れと言われる背景には、手法そのものが古くなったというより、形骸化した運用や関係者の負担感によって、本来の価値が伝わりにくくなっている状況です。
まとめ|アジャイル開発の手法はプロジェクトとチームの条件に合わせて選ぶことが重要
アジャイル開発に関連する代表的なフレームワークや手法には、スクラム・XP・カンバン・リーンソフトウェア開発・FDD・クリスタルなどがあります。
手法を選ぶときは、要件の変わりやすさと事業側が関与できる頻度を最初に確認しましょう。そのうえでチームの規模や役割構成、習熟度を踏まえて絞り込むと、導入後の運用が安定しやすくなります。
なお、「スクラムしか使わない」というように、一つの手法に限定する必要はありません。課題を特定し、必要なプラクティスを追加する方法も有効です。自社の条件に合う進め方を選び、継続的に見直すことが、アジャイル開発を成果につなげるうえで重要です。
決めた進め方を日々の運用に定着させるには、優先順位づけからスプリントの進行、全体の見通しまでを同じ環境で確認できる仕組みが役立ちます。
Lychee Redmineでは30日間の無料トライアルをご用意しています。プロジェクト管理を効率的に進めたい方は、自社の進め方に合うツールなのかをお試しください。
30日無料トライアルをはじめる
- 多機能ガントチャート/カンバン/バックログ/リソース管理/CCPM/レポートなど
- ・ クレジットカード登録不要
- ・ 期間終了後も自動課金なし
- ・ 法人の方のみを対象
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシーと利用規約が適用されます。


