組織横断プロジェクトを成功させる方法|PMとメンバーの役割・進め方・成功要因

部門横断で複雑な課題に挑む「組織横断プロジェクト」は、今多くの企業で重要視されています

本記事では、組織横断プロジェクトの基本、PMとメンバーが担う役割、効果的な進め方、成功のポイントをわかりやすく解説します。

関係者が多く調整が難しい場面でのコツもご紹介するため、推進担当の方はぜひ参考にしてください。

組織横断プロジェクトとは

本章では、組織横断プロジェクトの基本的な概念と目的、関連する用語との違いを明確に解説します。

定義と目的:全社で価値を生む仕組み

組織横断プロジェクトとは、特定の目的を達成するために、複数部門からメンバーを選抜して編成される一時的なチームによる取り組みです。日常の業務ラインとは切り分け、プロジェクト単位で課題解決を進める点が特徴です。

目的は、各部門ごとの最適化=部分最適に留まらず、全社最適(企業全体として最大の成果を出す状態)を実現することにあります。

プロジェクト推進における現場部門の役割

現場部門は、日々の業務や顧客接点に最も近い立場として、プロジェクトの実効性を左右する重要な役割を担います。

現状で起きている課題や運用上の制約、顧客からの声など、一次情報を把握しているため、実態に合った改善策の立案・実装に欠かせない存在です

課題の特定と情報提供
現場で実際に発生している課題、制約、顧客要望、既存プロセスなどを整理し、プロジェクトに共有します。

専門知識の提供
業務フロー、制度、システム、利害関係者など、自部門が持つ知見を提供し、要件定義や意思決定の精度を高めます。

実装と運用展開
決定した施策や新たな業務フローを現場で実行し、関係者への周知・教育を担当します。

進捗・フィードバック
実行状況や課題を定期的に報告し、改善策をPMや関係部門とすり合わせます。また、受入テスト(UAT)にも主体的に参加し、品質や実運用との適合性を確認します。

現場部門は、一次情報の提供・実装・改善のサイクルを担うことで、組織横断プロジェクトを「現場で動かせる形」へ導く中心的な存在です。

クロスファンクショナルチーム(CFT)との違い

組織横断プロジェクトとCFTは混同されがちですが、対象の範囲が異なります。

組織横断プロジェクト
特定の目的達成に向けて、複数部門が連携して取り組む活動全体を指します。開始・終了が明確で、成果(KGI/KPI)に向けて進行します。

クロスファンクショナルチーム(CFT)
上記のプロジェクトを遂行するために、異なる部門のメンバーで構成されるチームそのものを指します。

つまり、CFT(チーム)が、「組織横断プロジェクト(活動)を推進する」といった関係性です

なぜ今「組織横断プロジェクト」が重要なのか

DXの推進や新たなビジネスモデルの創出といった複雑な課題は、一つの部署だけでは対応しきれないため、組織横断プロジェクトの重要性はますます高まっています。

本章では、組織横断プロジェクトが企業・参加メンバーにどのようなメリットをもたらすのか解説します。

企業が得られるメリット

組織横断プロジェクトは、企業に多岐にわたる恩恵をもたらし、競争力を高める原動力となります。

メリット 詳細
イノベーションの創出 異なる専門性や視点が交わることで、単一部門では生まれにくい新しいアイデアや解決策が生まれる
意思決定の迅速化 ・部門間の情報共有が円滑になり、課題発見から解決までのプロセスが短縮
・市場の変化に素早く対応できる
組織の活性化 ・普段かかわりのない社員同士のコミュニケーションが生まれ、組織の風通しが良くなる
・従業員のエンゲージメント向上にもつながる
人材育成 複雑な課題解決や部門間調整の経験を通じて、次世代のリーダー候補となる人材が育つ

メンバーにとってのメリット

組織横断プロジェクトは、参加するメンバー自身のキャリア形成にも大きく寄与します

メリット 詳細
視野の拡大 他部門の業務・課題を深く知ることで、全社最適の視点や構造的な課題認識が身につく
ポータブルスキルの習得 異なる利害を持つ関係者を調整する過程で、調整力・交渉力・リーダーシップなどの汎用スキルが鍛えられる
社内ネットワークの拡大 他部署のキーパーソンとの接点が生まれ、日常業務や将来の取り組みに活きるネットワークを形成できる

また、プロジェクトの仕組みが整うことで、優先度と責任者が明確になり、判断・対応が速くなる という実務メリットも得られます。

さらに、KPIの可視化や手順の標準化により成果や課題を早期に把握でき、改善サイクルを素早く回せるため、経験学習の機会が増え、成長が加速しやすい点もメリットです。

単独部門での取り組みが難しい理由

単独部門では、縦割り組織に起因する制約により、取り組みに限界が生じます。

情報がサイロ化し、断片的になる
必要なデータや知見が部門内に閉じ、他部門へ共有されにくいため、正しい判断がしづらくなります。

部分最適に偏りやすい
部署ごとのKPIを優先しがちで、全社視点の課題解決につながりにくくなります。

権限を超えた調整が必要になる
他部門の協力が不可欠でも、調整に時間と労力がかかるため、意思決定や対応スピードが低下します。

結果として、必要なリソースが分散し、変化への対応が遅れ、全社的なイノベーションや施策の推進が滞りやすくなる点が大きな課題です。

失敗から学ぶ|組織横断で陥りやすい5つの壁

本章では、多くのプロジェクトが直面する5つの壁をご紹介します。

利害対立・優先順位が揃わない

各部門が背負っている独自の目標(KGI/KPI)は、プロジェクトの目標と一致しないことがあります

例えば、開発部門は「品質と安定性」を最優先するのに対し、営業部門は「納期と市場投入のスピード」を重視するかもしれません。優先順位の違いが対立を生み、プロジェクトの進行を妨げる大きな要因となります。

目的の曖昧さ・経営層のコミット不足

プロジェクトの「目的・成果指標」が不明確なまま進むと、メンバーの認識が揃わず、議論や施策が迷走しがちです。結果として、プロジェクトの優先順位が下がり、実行フェーズで足踏みが発生します。

さらに、経営層の十分なコミットが得られない場合、部門間調整が滞ってもトップダウンの判断が下されず、必要なリソースも確保できないため、途中で失速しやすくなります。

当事者意識の欠如・リソース不足

プロジェクトメンバーが「やらされ仕事」と感じてしまうと、成功は遠のきます。特に、通常業務と兼任するメンバーは、「多くの業務を抱えているのに、さらにタスクが増えた」と感じ、当事者意識が希薄になりがちです。

さらに、プロジェクトへの貢献が人事評価に正しく反映されない場合、モチベーションも低下します。結果として、積極的なアイデア出しや貢献が見られなくなり、プロジェクトは停滞してしまいます

情報・判断の属人化

組織横断プロジェクトでは、特定のキーパーソンに情報や判断が集中しやすく、属人化が生じるリスクがあります。例えば、リーダーや専門知識を持つ担当者が不在だと、会議が進まない・意思決定できないといった停滞が発生します。

また、情報が十分に共有されない状態が続くと、他メンバーの理解や当事者意識が薄れ、チーム全体の推進力低下にもつながるでしょう。

コミュニケーション・情報共有の不足

部署ごとに使われる専門用語が違ったり、暗黙の了解が異なったりすることで、コミュニケーションの齟齬が起きやすくなります

また、議事録がきちんと共有されなかったり、最新資料の保存場所がわからなかったりなど情報共有の仕組みが確立されていないことも、非効率や手戻りの原因です。

成功のポイント|組織横断プロジェクトを進める基本

本章では、プロジェクトを成功に導くための5つの基本を解説します。

全社視点での目的・KPIを最初に揃える

「なぜ取り組むのか(Why)」と「何を達成するのか(What)」を明確に言語化し、関係者で合意します。

また、目標は具体・定量的なKPIまで落とし込み、進捗を測れる状態にすることが重要です。例:「業務効率化」ではなく、「半年後までに〇〇業務の処理時間を20%削減」と設定することで、判断や優先度付けが容易になります

PM・メンバーの役割と責任を明確に

組織横断プロジェクトでは、誰が何に責任を持つのかを明確にすることが重要です。役割が曖昧なままだと、タスクの押し付け合い、判断遅延、手戻りが発生しやすくなります

そのために有効なのが、RACIチャートなどの役割整理フレームワークです。タスクごとに関係者の役割を定義することで、意思決定がスムーズになり、運営負荷を抑えられます。

役割 意味
実行責任者(R) 実際にタスクを実行する担当者
説明責任者(A) タスク完了に対して最終責任を持つ人物(各タスク1名)
協業先(C) 専門知見を提供し、議論に参加する人物(双方向)
報告先(I) 進捗・結果の報告を受ける人物(一方向)

意思決定フローを早期に固める

組織横断プロジェクトを滞りなく進めるには、「誰が・何を・いつまでに決めるのか」といった意思決定フローを事前に合意しておくことが不可欠です

  • 現場リーダーが判断できる範囲(費用上限・影響範囲など)
  • 上位決裁に上げる条件(ステアリングコミッティなどへエスカレーションする基準)
  • 意見が対立した場合の最終決定者

このルールを早期に定めることで、判断の遅延を防ぎ、意思決定スピードと実行精度が向上します。

共有ルール(文書/課題/議事録)を統一

組織横断プロジェクトでは、文書や課題の管理方法が部門ごとに異なると、情報の散在や認識のズレが生じ、手戻りが発生します

「議事録フォーマット・保管場所」「ファイル命名規則」「課題管理ルール」「経営層への報告頻度」を事前に統一することで、コミュニケーションコストを大幅に削減できます。

負荷可視化と調整ルール

兼務メンバーが多い組織横断プロジェクトでは、個々の負荷を可視化し、調整する仕組みが不可欠です。

そのため、プロジェクト管理ツールなどを活用して、各メンバーがどのタスクにどれくらいの時間をかけているのかを可視化します

特定のメンバーに負荷が集中している場合は、タスクの再配分や、上長と連携して業務量の調整を行うなどルールを事前に決めることが重要です。

下記の記事では、プロジェクト管理に便利なツールを詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

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成功へのロードマップ|具体的な5ステップ

本章からは、プロジェクトを実際に推進していくための具体的な5つのステップを解説します。

1.計画:目標設定と合意形成

最初に、目的・KPI・スコープ・主要ステークホルダー・予算などを整理し、基本方針を文書化します

このプロセスを通じて関係者の認識を揃え、公式な合意を得ることで、後の手戻りや優先度の不一致を防ぎ、円滑な推進につなげます。

2.体制:PM・メンバーの役割定義

合意内容を踏まえて、PMを任命し、必要なスキルを持つメンバーを各部門から選出します

その上でキックオフを実施し、目的・役割・進め方・コミュニケーションルールを共有することで、チームとしての一体感と共通認識を形成します。

3.実装:タスク着手・進捗更新・課題の一次対応

WBSでタスクを細分化し、担当者や期限を設定します。

カンバンやガントチャートで進捗を可視化し、日次/週次で短い打ち合わせを行い、状況確認・課題共有・当面の作業計画を整理してください

現場で解決できる課題は一次対応し、早期に手戻りを防ぎます。

下記の記事では、WBSの基本的な知識、無料でダウンロードしてすぐに使えるWBSテンプレートを解説しています。ぜひご参照ください。

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4.推進・意思決定:優先度調整・ボトルネック解消・エスカレーション

定例レビューで進捗と課題を確認し、優先度の見直しやリソース再配分を行います

部門調整が必要な問題や、現場で判断できない事項は、あらかじめ定めた意思決定フローに沿って速やかに上位へエスカレーションし、ボトルネックを早期に解消します。

5.評価:ふりかえりと再現可能性向上

プロジェクト完了時や主要マイルストーン後に、成果・課題・改善策をチームで整理し「ふりかえり」を実施します

良かった点・問題点・次のアクションを明確にし、学びを文書化してナレッジとして蓄積することで、再現性を高め、次のプロジェクトへ確実に活かせます。

組織横断プロジェクトを成功させるには「管理ツール」が不可欠

組織横断プロジェクトを、Excel・メール・口頭連絡のみで管理するのは非効率で、情報分散や更新漏れが発生しやすくなります。

タスク・進捗・課題を一元管理し、関係者が同じ情報をリアルタイムで共有できるプロジェクト管理ツールの活用が不可欠です

なぜ必要?:情報分散・属人化の防止

プロジェクト管理ツールが必要な最大の理由は、「信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)」を作ることです。チャットやメールに散らばる議論や決定事項、資料を一元化することで、認識ズレや情報探しの手間を防げます。

また、タスクの担当・期限・進捗が可視化され、遅延の兆しを早期に把握できるほか、特定の担当者に情報が偏る“属人化”も回避できます。

選ぶ基準:WBS/ガントチャート/課題/工数の一体管理

組織横断プロジェクトで使うツールを選ぶ際には、プロジェクト全体を俯瞰できる機能が備わっているかが重要です

機能カテゴリ 重要なチェックポイント 選定理由(なぜ必要か)
計画・スケジュール管理 WBS/ガントチャート ・タスクの漏れを防ぎ、全体像と依存関係を把握できる
・遅延リスクを早期発見できる
タスク・進捗管理 カンバンボード/ステータス管理(未着手/進行中/完了) ・複数部門のタスク状況を一目で確認できる
・止まっている作業を即把握できる
情報共有機能 コメント機能/ファイル添付/通知ファイル ・資料/議事/判断を集約し、認識のズレを防ぐ
・Slack/メール依存から脱却できる
工数・リソース管理 工数入力/リソース状況の可視化 ・兼務メンバーの負荷を把握し、タスク再配分ができる
・属人化と過負荷を防げる

機能を一体で管理できるツールを選ぶことで、プロジェクトの状況を多角的に、かつ正確に把握できます。

推奨:LycheeRedmineが選ばれる理由

前述した選定基準を高いレベルで満たすのが、プロジェクト管理ツール「LycheeRedmine」です。

LycheeRedmineが選ばれる理由は、組織横断プロジェクトで必要となる機能がオールインワンで揃っている点にあります

強み 内容
複数プロジェクトの横断可視化 進捗/遅延/ボトルネックを一覧管理し、リソース配分や優先順位を最適化できる
WBSとガントチャートの自動連携

・タスク分解〜スケジュール調整までを一画面で完結

・依存/担当/期限を即時更新

工数管理・負荷可視化 チケットに工数/担当/進捗を紐付け、メンバーの負荷と進行状況を見える化
課題・Wiki・ドキュメントを一元管理

・仕様/議事録/資料を集約し、情報分散を防止

・API連携も可能

直感的操作

・Redmine UIを踏襲し、IT部門でも扱いやすい

・教育/定着のコストを抑えられる

これらの強みにより、プロジェクトの計画から実行、評価までの全プロセスをシームレスに管理できます

【Lychee Redmine導入成功事例】「人が増えても破綻しない」チケット標準化が生んだ横断プロジェクト成功の裏側

インタビューに答えていただいた株式会社クレディセゾン 松下様(左) 氏原様(中央) 長南様(右)

Q1. まず、導入前に感じていた課題を教えてください。

内製開発の拡大により関係者が増え、Excel起点の進捗・課題管理が分散していました。更新漏れや粒度の不統一が起きやすく、週次会議のための資料作成も負担でした。

Q2. Lychee Redmineを選んだ決め手は何でしたか。

チケット中心で履歴と証跡を一元化できる点と、WBSからガントチャートへの展開が速い点です。部署横断の権限・ワークフローも設計でき、混在プロセスでも運用が揃えやすいと判断しました

Q3. 実際の使い方を具体的に教えてください。

まずチケットの標準化(担当・期日・完了条件・コメント様式)を行い、ガントチャート+ダッシュボードで進捗と負荷を週次レビューしています。会議ではガントチャート画面をそのまま使うため、別資料の作成が最小化されました。

Q4. 多数部署・ベンダー連携で効果を感じたポイントは?

コミュニケーションがチケットに集約され、やり取りの経緯や添付ファイルを含めて追跡しやすくなりました。案件横断で遅延検知とリソース再配分がしやすくなり、意思決定が速くなりました

Q5. 導入後の会議運営はどう変わりましたか。

週次の定点観測で、遅延・負荷・予実を同じ指標で見られます。ガントチャート画面で論点を共有できるので、報告資料の準備が最小限になり、会議は「次の打ち手」の議論に集中できています

まとめ(編集部より)

クレディセゾン様は、チケット×ガントチャートを共通基盤に据えることで、部署・ベンダー横断の可視化と会議生産性を両立させました。資料作成の負担を抑えつつ、週次での意思決定スピードを高めています。

Lychee Redmineは、これまでに7,000社以上の企業様に導入いただいております。業務改善・活用事例をチェックして、自社での再現イメージにお役立てください。

【導入事例】業務改善・活用の事例をご紹介します。

組織横断プロジェクトに関するよくある質問(FAQ)

最後に、よくある質問にお答えします。

Q.組織横断プロジェクトとCFTはどう使い分ける?

明確に区別するより、CFT(部門横断チーム)が組織横断プロジェクトを推進する関係と捉えるのが自然です

Q.メンバー選定はどの部門・職種が担う?

基本は、プロジェクトオーナー/PMが中心となり各部門と協議して選出します

必要に応じて、人事部門が調整役として関与することもあります。

Q.組織横断プロジェクトにPMOはどのような場合に必要?

以下の状況ではPMOが有効です

  • 複数の組織横断プロジェクトが同時進行
  • 管理手法を全社で標準化したい
  • リソースやナレッジを横断で集約したい

Q.組織横断プロジェクトで管理ツールは導入すべき?

規模にかかわらず導入を推奨します

メールやExcelでは情報が分散しやすく、更新負担も大きいからです。ツールを使えば、進捗の可視化・情報共有・意思決定の迅速化が進み、成功確度が高まります。

組織横断プロジェクトを成功に導き、企業の成長につなぐ

組織横断プロジェクトを成功させる鍵は、以下の4点です。

  • 明確な目的とゴールの設定・共有
  • 経営層の強力なコミットメントとリーダーシップ
  • 円滑なコミュニケーションと情報共有の仕組み
  • 進捗を可視化し、推進を支援するツールの活用

中でも、進捗管理/意思決定の迅速化/属人化防止を支えるツールは、成果を左右する重要な要素です。

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