プロジェクト管理図とは?種類・選び方・活用法を徹底解説|現場で「使い続けられる」管理図を作るための完全ガイド

プロジェクト管理図は、計画共有の不足や全体像の不透明さ、役割の曖昧さといった「情報の分断」を解消し、チームの認識を揃えるための基盤です。

ただし、種類や目的を理解しないまま導入すると形骸化し、運用が続かないこともあります

本記事では、主要な管理図の特徴と選び方、現場で活きる活用法を徹底解説し、Excel管理が破綻しやすい理由や「管理図を使い続ける」ための運用ポイントも併せて解説します。

なぜプロジェクト管理図が必要なのか? ┃ 現場で起きている課題を理解

まずは、現場で実際に発生している課題を踏まえ、プロジェクト管理図が必要となる理由をわかりやすく整理します。

プロジェクト管理図がないと、なぜ計画通り進まない?

管理図がない状態では、各タスクがプロジェクト全体の中でどの位置にあり、どの工程へ影響するのかが把握できません。その結果、優先順位を誤ったり、ボトルネックとなる作業の発見が遅れたりして、全体計画がずれ込みやすくなります。

プロジェクト全体を俯瞰できないことが、最終的な遅延の大きな原因となります。

プロジェクト管理図が導入されず属人化するのはなぜ?

役割や責任範囲が管理図で整理されていないと、担当者が不在の際に業務が滞ったり、重要タスクの引き継ぎが適切に行えなかったりします

判断やノウハウが個人に依存する状態が続くため、タスクの抜け漏れや品質のばらつきが発生し、チーム全体としての成長にもつながりません。こうした背景から、属人化が固定化してしまいます。

プロジェクト管理図が不足すると遅延・手戻りが起きるのはなぜ?

プロジェクトの初期段階で関係者間の認識が揃っていないと、後工程での手戻りが頻発します。管理図によって全体像やスケジュール、体制を視覚化して共有できれば、早い段階で認識のズレを解消でき、前提条件を共通化しやすくなります。

これにより、合意形成がスムーズに進み、計画通りにプロジェクトを進めるための土台が整うのです。

プロジェクト管理図とは何か? ┃ 定義・役割・導入効果

プロジェクト管理図とは、タスク・スケジュール・リソース・体制などを視覚的に整理し、プロジェクト全体を把握するための図表です。関係者の認識を揃え、計画策定や進捗管理を効率化する役割を担います。

プロジェクト管理図の目的とは?

プロジェクト管理図の目的は大きく次の2点に集約されます

目的 詳細
可視化による認識統一 プロジェクトの全体像・依存関係・主要スケジュールを可視化し、関係者が同じ情報を共有できる状態を作ることで、初期の認識齟齬を防ぎ、判断基準を揃えられます。
計画精度の向上と進捗管理の高度化

タスクを体系的に整理して時間軸へ落とし込むことで実現性の高い計画を立てられます。計画と実績を比較すれば進捗を客観的に把握でき、遅延やボトルネックも早期に発見して対処できます。

プロジェクト管理図を導入するメリットとは?

プロジェクト管理図を適切に整備・運用することは、プロジェクトマネジメントの各知識エリアにおける統制力を高め、計画遂行の確実性を向上させます。主なメリットは、以下の通りです。

メリット 具体的な内容
計画・スケジュール管理 ・タスクを整理して、現実的なスケジュールを組み立てられる
・クリティカルパスを把握し、重点管理すべき工程を明確化できる
進捗・課題管理 ・計画と実績を比較して進捗を客観的に把握できる
・遅延の兆候を早期に察知し、迅速に是正対応へつなげる
チームマネジメント ・役割と責任範囲が明確になり、指揮系統を整理できる
・担当者が一目でわかり、コミュニケーションロスを防げる
コスト・リソース管理 ・タスクごとの必要工数を把握しやすく、コスト計画の精度が高まる
・リソース配分を最適化し、過負荷や不足を防ぐ

プロジェクト管理図がない場合に起きる問題とは?

プロジェクト管理図を使用しない場合、以下のような問題が発生します。

認識の齟齬
プロジェクトの目的・スコープ・成果物に対する共通認識が形成されず、関係者間で異なる前提のまま作業が進み、後工程で大規模な手戻りが発生します。

非現実的な計画の立案
タスクの洗い出しや依存関係の整理が不十分なため、実行可能性の低いスケジュールや工数計画が作成され、初期計画そのものが機能しなくなります。

進捗の不透明化
計画と実績を比較する基盤がないため、遅延兆候を早期に把握できず、納期直前に重大な遅延が判明するなど、監視・コントロールが困難になります。

責任の所在の不明確化
役割と担当範囲が明確に定義されないまま進むことで、問題発生時に誰が対応すべきか判断できず、対応の遅延や責任所在の曖昧化を招きます。

プロジェクト管理図の種類とは? ┃ 種類別の特徴・違いを理解

プロジェクト管理図には多様な形式があり、プロジェクトの規模・複雑性・進行状況に応じて適切に使い分けることが重要です

本章では、プロジェクトマネージャーがまず理解しておくべき代表的な5種類の管理図について、その役割・特徴・使い分けのポイントを整理します。

WBS(基本的な管理図)をどう活用する?

WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトの成果物および作業内容を階層構造で体系的に分解した管理図です。プロジェクトスコープを明確化し、作業の全体像を把握するための基礎的な手法として位置付けられます。

項目 内容
特徴

・成果物を基点に作業を上位から下位へ細分化し、階層構造で整理する
・「何を実施するか(What)」を網羅的に洗い出すことに特化する

向いている状況

・立上げ/計画段階でスコープを明確化したい場合
・作業漏れを防ぎ、全体構造を把握したい場合

注意点

・WBSは時間軸や依存関係を扱わないため、スケジュール管理にはガントチャートなどの併用が必要
・分解の粒度が不揃いだと管理負荷が増え、統制が難しくなる

WBSについて、詳細は以下の記事で解説しています。

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ガントチャート(代表的管理図)の強みとは?

ガントチャート(Gantt Chart)は、WBSで定義されたタスクを時間軸にマッピングし、開始日・終了日・期間を視覚的に表示するスケジュール管理図です

PMBOKにおける「スケジュール開発」プロセスで広く活用される代表的手法です。

項目 内容
特徴

・タスクの期間や進捗を一目で把握できる
・依存関係を明示でき、遅延時の影響範囲を把握しやすい

向いている状況

・全体スケジュールを関係者と共有し、共通認識を持たせたい場合
・日次/週次で進捗を管理し、計画と実績の差異を継続的に確認したい場合

注意点

・大規模プロジェクトでは情報量が増え、視認性が低下しやすい
・依存関係が複雑な場合は、ガントチャートよりネットワーク図(PERT/CPM)が適する場合がある

ガントチャートをさらに深く理解したい方は、合わせて以下の記事もご参照ください。

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PERT/ネットワーク図はどのようなときに活用する?

PERT(Program Evaluation and Review Technique)やネットワーク図は、タスク間の先行関係・後続関係をノード(イベント)と矢印(アクティビティ)で表現し、作業順序を体系的に可視化する管理図です

プロジェクトのクリティカルパス(最長経路)の算出にも使用されます。

項目 内容
特徴

・タスクの依存関係を明確化し、クリティカルパスを特定しやすい
・最短完了期間を算出でき、遅延リスクを把握しやすい

向いている状況

・タスク依存が複雑で、時系列だけでは管理しにくい場合
・納期厳守が必須で、遅延リスクを早期に把握したい場合

注意点

・作成には専門知識が必要で、規模が大きいほど作図負荷が増える
・タスクの進捗率を視覚的に把握する用途には不向き

バーンダウンチャートは何を示す?

バーンダウンチャートは、縦軸に「残作業量(工数・ストーリーポイントなど)」、横軸に「時間(スプリント日数・期間)」を取り、残作業がどの速度で消化されているかを推移で示す管理図です

理想線と実績線を比較することで、進捗の健全性を即座に判断できます。

項目 内容
特徴

・残作業量の減り方を視覚化し、完了ペースを定量的に把握できる
・理想線との比較で、進捗遅延や過負荷の兆候を早期に察知できる

向いている状況

・アジャイル(特にScrum)のスプリント進捗管理に適している
・残作業量を共有し、日次で改善ポイントを把握したい場合に有効

注意点

・スコープ変更で作業量が増えると残作業線が上昇し、進捗判断が難しくなる
・見積り精度が低い場合、グラフの信頼性が低下する

RACI(役割整理の管理図)が役立つケースとは?

RACIチャートは、プロジェクト内の各タスクに対して、関係者が担う責任と関与度を体系的に整理するためのマトリクス図です。縦軸にタスク、横軸に担当者(または部署)を配置し、各セルに以下4種の役割のいずれかを設定します。

  • R (Responsible)実行責任者
  • A (Accountable)説明責任者
  • C (Consulted)協業先(相談先)
  • I (Informed)報告先
項目 内容
特徴

・タスクごとの責任範囲を明確化し、重複や抜けを防げる
・承認者/相談先が明示され、意思決定プロセスを標準化できる

向いている状況

・部門横断で関係者が多いプロジェクト
・承認先や最終責任者が不明瞭な状況

注意点

・タスクが多いと作成/更新の負担が増え、運用が形骸化しやすい
・役割を固定しすぎると、プロジェクトの柔軟性が低下する

プロジェクト管理図の種類はどう選べば良い? ┃ プロジェクト属性で使い分け

管理図ごとに適した用途が異なるため、最適な図はプロジェクトの規模や複雑さ、依存関係の強さ、関係者の多さといった特性によって決まります。

規模・複雑さに応じて種類をどう選ぶ?

プロジェクトの規模や複雑さは、管理図選定の基本的な判断軸です。単一の図に依存するのではなく、特徴の異なる管理図を組み合わせて活用することで、計画と統制の精度を高められます

プロジェクトの規模・複雑さ 推奨される管理図の組み合わせ 選び方のポイント
小規模・シンプル ガントチャート
WBS

・まずはガントチャートでスケジュールを可視化

・タスク数が50を超える場合は、WBSで作業を整理してから計画化すると効率的

中規模 WBS
ガントチャート
RACIチャート

・WBSでタスクを網羅的に抽出し、ガントチャートでスケジュール化

・関係者が増えてきた段階でRACIチャートを導入し、役割と責任を明確化

大規模・複雑 WBS
PERT図
ガントチャート
RACIチャート

・WBSで全体構造を設計し、PERT図でクリティカルパスを特定

・詳細スケジュールはガントチャートで管理し、RACIで指揮系統・責任範囲を整理

依存関係が複雑な場合、どの種類が最適?

タスク間の依存関係が複雑なプロジェクトでは、PERT図が最も有効です。タスクの前後関係を網羅的に整理し、クリティカルパス(最短完了経路)を特定できるため、遅延リスクの早期発見に役立ちます

さらに、PERT図で全体構造を把握したうえで、ガントチャートで個々のタスク群のスケジュール・進捗を管理すると、マクロとミクロの視点を両立できます。

状況共有が多い場合、どの種類が有効?

クライアントや上司への進捗報告、チーム内のデイリー共有など、リアルタイムで状況を共有する頻度が高いプロジェクトでは、視覚的に理解しやすく更新が容易な管理図が適しています

  • ガントチャート:全体のスケジュールや重要マイルストーンを俯瞰して共有するのに最適
  • カンバンボード:担当者別の作業状況を「見える化」でき、日々の状況共有(例:朝会)に最適
  • バーンダウンチャート:残作業量の推移が直感的にわかり、ゴールまでの距離感を素早く共有できる

これらの管理図を状況に応じて使い分けることで、関係者間の認識統一が進み、プロジェクト運営がスムーズになります。

プロジェクト管理図をどう実務へ落とし込む? ┃ 今日から始める導入ステップ

本章では、管理図を単なる形式的な資料で終わらせず、実際にプロジェクトを推進する力へと変えるための具体的な導入ステップを解説します。

最初に作るべきプロジェクト管理図の種類は?

最初に作成すべき管理図は 「WBS(作業分解構成図)」です。WBSは、プロジェクトで行う作業を網羅的に洗い出す基礎となる図であり、その内容がガントチャートやPERT図など、後続のすべての計画の土台になります

WBSを作らずにスケジュールを組むと、タスクの抜け漏れや粒度の不整合が生じ、計画の大幅な修正が必要になるため、まずはWBSの作成から始めることが重要です。

プロジェクト管理図を作成する際のポイントは?

プロジェクト管理図を効果的に作成するためには、次のポイントを押さえることが重要です

ポイント 詳細
目的を明確にする 管理図は「誰が・何のために使うか」で最適な形式が変わります。経営層にはマイルストーンを把握しやすいガントチャート、現場にはタスクと担当が明確なWBSが適しています。
チームで作成する PMが一人で作るのではなく、担当者を巻き込むことで、現実的で納得感のある管理図になります。
タスクの粒度を揃える 「担当者1名・2日〜1週間程度」で統一するなど、粒度の基準を決めて分解レベルを揃えると管理しやすくなります。
完璧を求めず、更新しながら育てる 初期段階で完璧を求めず、まず作り切り、進行に合わせて継続的に更新していくことが重要です。

プロジェクト管理図の運用が続かない理由とは?

作成した管理図が更新されず、次第に形骸化してしまうケースは珍しくありません。主な要因は次の通りです。

原因 詳細
更新作業の負荷が高い Excelなどの手動更新では、わずかな変更でも修正負荷が大きく、次第に更新が滞りやすくなります。
日常運用に組み込まれていない 定例会議での確認や日々の入力といった運用ルールがないと、管理図は参照されず習慣化しません。
計画と現実が乖離している 計画が現実とかけ離れたり、最新状況を反映しないまま放置されたりすると、信頼性が失われ、管理図は使われなくなります。

Excelでプロジェクト管理図を作ると何が限界? ┃ 複数PJ・変更に弱い理由

Excelは小規模なら問題ありませんが、プロジェクトが複雑になるほど限界が表面化します

変更に弱い理由

Excelのガントチャートはタスク間の連動性がなく、一つの遅延が発生すると後続タスクをすべて手作業で修正する必要があります

修正漏れが起きやすく、更新負荷も大きくなります。

複数案件で破綻しやすい理由

プロジェクトごとにファイルが乱立し、最新版管理や横断的なリソース把握が困難になります

結果として、特定のプロジェクトやメンバーに負荷が集中しやすくなります。

属人化を防ぐ方法

Excelは作成者依存になりやすく、更新されなくなると一気に形骸化します

属人化を避けるには、誰でもアクセス・更新できるクラウド型ツールを活用し、情報を一元管理することが有効です。

プロジェクト管理図を「使い続ける」には? ┃ Lychee Redmineで運用が回り出す

プロジェクト管理図を継続的に使うには、「更新しやすい環境」を整えることが重要です。Lychee Redmineは、管理図が止まる原因を根本から解消します。

WBSとガントチャートはどう使うと「運用が続く」?

Lychee Redmineでは、WBSで作ったタスク構造がそのままガントチャートに自動反映されます

タスクの期間変更や依存関係の調整もドラッグ&ドロップで完結し、関連タスクの更新も自動です。更新作業に時間を取られないため、運用が止まりません。

工数×課題を一体管理するメリットは?

ガントチャート上で実績工数を入力したり、課題(チケット)を紐付けたりでき、進捗・工数・課題を一つの画面で統合管理できます

状況判断が速くなり、リスク対応の精度が上がります。

複数プロジェクトを「横断」で見られると何が変わる?

複数プロジェクトを抱えるチーム向けに、メンバーごとの負荷状況を横断的に表示できます

その結果、適切なリソース配分が行え、過負荷や遅延を未然に防げます。

プロジェクト管理図に関するよくある質問(FAQ) ┃ 種類・選び方の疑問を解消

本章では、プロジェクト管理図に関してよく寄せられる質問と回答をまとめました。

管理図はどの程度の頻度で更新すべき?

プロジェクトの進捗が動くタイミング(タスク完了・計画変更・リスク発生時)に即時更新するのが理想です

更新頻度を「定例会議の直前」などに限定してしまうと、現場の状況と図が乖離し、管理図が形骸化しやすくなります。

どの管理図から導入すべき?

最初に取り組むべきはWBSです。WBSがなければ、ガントチャートもPERT図も作りようがありません。

まず「何をやるか」を洗い出し、その後でスケジュール・役割・依存関係へと順に落とし込むとスムーズです。

管理図を複数使うと複雑にならない?

用途が異なる図同士を無理に統合しようとすると複雑化します

WBS=作業の全体像、ガントチャート=スケジュール、RACI=役割分担というように、目的ごとに役割を固定し、必要な場面だけ参照することで、シンプルに運用できます。

プロジェクト管理図の種類を理解し、次のアクションへ進もう

プロジェクト運営をさらに楽に、そして再現性の高いプロセスへと進化させていくことが、チーム全体の成果向上につながります。

まずはWBSの作成から始め、必要に応じてガントチャートやRACIへ展開しながら、管理図を「使い続けられる仕組み」にしていきましょう

Excelでの管理に負担を感じたタイミングが、専用ツールを試す絶好の機会です。スケジュール変更の自動反映や複数プロジェクトの横断管理など、運用効率が大きく変わる体験を実感できます。

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