ベロシティとは?アジャイル開発における活用法とイテレーション・プロジェクト管理のポイントを徹底解説

アジャイル開発において、「ベロシティ」はチームの生産性を測る上で非常に重要な指標です。チームが1スプリント(一定期間)でどれだけの作業を完了できたかを数値化するもので、開発の進捗や見積もりの精度を高める際に欠かせません

しかし、「ベロシティの意味がわからない」「正しく計算して生産性や計画精度を高めたい」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ベロシティの基本概念や計測方法、さらにアジャイル開発の現場での活用法まで徹底解説します。ベロシティを正しく理解し活用すれば、スプリント計画の精度が高まり、チームの改善やプロジェクト成功につながります。

アジャイル開発におけるベロシティとは

ベロシティ(Velocity)とは、もともと物理学で「速度」を意味する言葉です。単なる「速さ(Speed)」ではなく、どの方向にどれくらいの速さで進んでいるかを示す「向き」と「大きさ」を持つベクトル量として定義されます。

つまり、進む勢いや方向性を含めた概念であり、その考え方は多くの分野で指標として応用されているものです。特にIT分野のアジャイル開発では、ベロシティはチームの生産性を測る重要な指標として活用されます。

1スプリント(通常1〜4週間)という一定期間内に、チームがどれだけの作業量を完了したかを数値で示すもので、この値を把握することで次回以降のスプリント計画を現実的に立てられるようになります。

ベロシティと関連する重要指標(アジャイル開発の評価基準)

ベロシティは単独で評価するだけでなく、他の指標と組み合わせて分析することで、プロジェクトの状況をより深く多角的に把握できます。チームのパフォーマンスや進捗を正確に理解するためには、次のような関連指標もあわせて確認することが重要です

指標名 概要 ベロシティとの関係性
バーンダウンチャート スプリント期間中に残作業量をグラフ化し、進捗を可視化する指標 ベロシティが高くてもグラフの減少が遅い場合は、タスク見積もりの精度やスプリント計画に課題がある可能性を示します。
サイクルタイム 一つのタスクに着手してから完了までに要した時間 サイクルタイムが長いタスクが多い場合、プロセスにボトルネックが存在し、ベロシティ低下の要因になっている可能性があります。
リードタイム タスクがバックログに追加されてから完了するまでの総所要時間 リードタイム短縮にはベロシティの向上だけでなく、プロセス全体の改善が求められます。

ベロシティは、アジャイル開発における重要な生産性指標ですが、それだけでチームの状態を正確に判断することはできません。

バーンダウンチャートやサイクルタイム、リードタイムといった関連指標とあわせて分析することで、計画の妥当性・プロセスの効率・価値提供のスピードを多面的に把握できます。

これらを組み合わせて活用することで、より精度の高い改善と持続的なチーム成長につなげられます。

下記の記事では、バーンダウンチャートの基本概要と作成方法を詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

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ベロシティの活用方法とプロジェクト管理への効果

数値をプロジェクト管理に取り入れることで、より効果的に活用できます。アジャイル開発の現場では、主に3つの目的でベロシティを用いており、その活用法を理解することでチームの生産性を高め、プロジェクトの成功につなげられます。

スプリント計画で作業量を予測しイテレーションを最適化

ベロシティの最も基本的な活用方法は、次のイテレーション(スプリント)計画を立てる際の指標として活用することです。過去のスプリントでの実績から平均ベロシティを算出することで、チームが現実的に達成できる作業量を予測できます。

例えば、チームが過去3回のスプリントで完了した作業量(ストーリーポイント)が以下の通りだったとします。

スプリント 完了ストーリーポイント
スプリント1 25ポイント
スプリント2 30ポイント
スプリント3 28ポイント

この場合、平均ベロシティは (25 + 30 + 28) ÷ 3 = 27.6ポイント です。つまり、チームは1イテレーション(スプリント)あたりおよそ 27〜28ポイント分の作業を安定して完了できていることになります。

この平均値をもとに「次のイテレーションでは約28ポイント分のタスクを計画する」と判断すれば、過剰な負荷を避けつつ生産性を維持できる計画を立てられます。結果として、チームの疲弊や過剰な余裕による停滞を防ぎ、持続的な改善と成果の積み上げにつなげられるのです。

下記の記事では、スプリントの基本概念からメリット・デメリット、導入手順までを詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

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進捗管理で残作業量とベロシティを比較し、プロジェクト全体を可視化

ベロシティは、プロジェクト全体の完了時期を見通すためにも役立つ指標です。プロジェクトに残っている作業量(総ストーリーポイント)を、チームの平均ベロシティで割ることで、完了までに必要なおおよそのスプリント数(イテレーション数)を簡単に見積もれます。

  • 計算式:残りスプリント数=プロジェクト全体の残ストーリーポイント÷平均ベロシティ

例えば、残りの作業量が200ポイントで、平均ベロシティが25ポイントのチームであれば、約8スプリント(200÷25)でプロジェクトが完了すると予測できます。この予測は、ステークホルダーへの報告やリソース計画において非常に重要な情報となります。

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チームパフォーマンス評価とベロシティの活用

ベロシティを継続的に記録し、その推移を観察することで、チームの成長やプロセス改善の進捗を把握できます。ベロシティが安定して右肩上がりに推移している場合は、チームのスキル向上や作業プロセスの改善が着実に進んでいる証拠です。

一方で、数値が不安定または低下傾向にある場合は、タスクの見積もり精度やコミュニケーション、リソース配分などに課題を抱えている可能性があります。

そのような場合は、チーム全体で原因を分析し、改善策を検討・実践するきっかけとして活用すると効果的です。

ベロシティの注意点と誤用例(アジャイル開発における課題)

ベロシティは便利な指標ですが、使い方を誤るとチームの本来の目的を見失うリスクがあります。数値だけを追いかけるあまり、真の生産性向上やチームの健全な改善に結びつかないこともあるでしょう

ここでは、アジャイル開発でベロシティを活用する際に陥りやすい誤用例と注意すべきポイントを整理し、正しく活かすための対策を解説します。

チーム間で数値を比較するリスク

「Aチームのベロシティは50なのに、Bチームは30しかない」といった比較は、最も典型的な誤用と言えます。ベロシティはチームごとの前提条件に基づく相対的な指標であり、他チームとの単純な比較には向きません。

メンバー構成や扱う技術、プロジェクトの性質が異なれば、同じ作業であってもストーリーポイントの付け方が変わるため、数値を横並びで比べても正しい評価にはならないのです。

比較する場合、各チームの過去との比較(成長度)に焦点を当てることが重要です。

個人評価に使う誤用とその問題点

ベロシティはチーム全体の生産性や作業量を示す指標であり、個々のメンバーの貢献度を評価するためのものではありません

この数値を人事評価や個人の成果指標として用いると、メンバーが評価を上げるためにストーリーポイントを過大に見積もったり、品質を犠牲にしてタスクを完了させようとしたりする恐れがあります。

その結果、チーム内の協力関係が損なわれ、技術的負債の蓄積や品質低下など、長期的にプロジェクトへ悪影響を及ぼす可能性があります。

ベロシティはあくまでチームの改善を促すための指標として活用し、評価においては品質への貢献・チームワーク・課題解決への姿勢など、より多角的な観点から判断することが重要です。

ベロシティ数値を上げること自体を目的にする誤用

マネジメント層が「次のスプリントではベロシティを10%上げよう」と指示するような運用は、アジャイルの本質から外れた誤ったアプローチだと言えます。ベロシティは結果を示す指標であり、目標そのものではありません。

数値の向上を目的化してしまうと、チームは品質保証やテストを軽視し、短期的な成果を優先する傾向に陥ります。その結果、バグの増加や技術的負債の蓄積など、長期的な生産性を損なうリスクが高まります。

本来、アジャイル開発の目的は「持続可能なペースで高品質なプロダクトを継続的に届けること」です。数値だけにとらわれず、チーム全体が顧客価値と品質を重視した改善を続ける姿勢が重要です。

ベロシティ変動の要因とプロジェクトへの影響

ベロシティは常に一定ではなく、様々な要因によって変動します。なぜベロシティが変動したのか、その背景を理解することは、プロジェクトのリスク管理や将来予測の精度を高める上で非常に重要です。3つの影響を解説します。

メンバーの追加・離脱によるイテレーションへの影響

チームのメンバー構成が変わると、ベロシティは大きく影響を受けます。新しいメンバーが加わった場合、チームの文化や開発プロセスに慣れるまでの期間(オンボーディング)が必要となり、一時的にベロシティは低下する傾向があります

一方、経験豊富な中心メンバーがチームを離れた場合、知識やスキルが失われるため、ベロシティの低下が避けられません。

技術的負債やインフラ問題が進捗に与える影響

目に見えにくい技術的な問題も、ベロシティが変動する大きな要因です。過去の開発で残された、古いコード、不十分なテストなどの技術的負債が蓄積すると、新しい機能の追加や修正に余計な時間がかかり、生産性が低下します

また、開発環境やテスト環境といったインフラに問題が発生すると、開発作業そのものが中断され、ベロシティは直接的なダメージを受けます。

要件や法規制の変更など外部からの影響

チームがコントロールできない外部からの影響も、ベロシティを変動させる要因です。プロジェクトの途中で顧客からの要件が大幅に変更されると、それまでの作業が無駄になったり、計画外のタスクが発生したりしてベロシティが低下します

同様に、法規制が変更された場合も、システム対応のために追加の作業が必要となり、計画していたタスクの進捗に影響が出ることもあります。

ベロシティを安定・向上させるポイント(活用の実践法)

本章では、ベロシティを安定させ、さらに継続的に向上させていくための具体的な4つのポイントをご紹介します。

大きなタスクを小さく分割してイテレーション効率を改善

「ユーザー管理機能を実装する」といった大きすぎるタスクは、見積もりが不正確になりやすく、進捗の遅れにも気づきにくくなります。

そのため、タスクを「ログイン画面を作成する」「パスワード再設定機能を実装する」など、1〜2日で完了できるイテレーション単位にまで細分化しましょう。タスクを小さく分けることで見積もりの精度が高まり、手戻りを防ぎやすくなります。

また、完了タスク数が増えることでチームの達成感が高まり、短いイテレーションの中で確実に成果を積み上げるサイクルが生まれ、結果としてベロシティの安定にもつながります。

定期的なふりかえりを実施しプロジェクトの精度を高める

アジャイル開発において、スプリントごとに行う「ふりかえり(レトロスペクティブ)」は非常に重要です。ふりかえりの場で、チーム全員が「今回のスプリントで上手くいったことは何か」「もっと良くできることは何か」を話し合います

出てきた課題に対して具体的な改善アクションを決め、次のスプリントで試すというサイクルを回すことで、チームは継続的に成長し、ベロシティも自然と向上していきます。

技術的負債を解消して、安定したベロシティを確保

目先の機能開発ばかりを優先していると、システムの内部は徐々に複雑化し、変更が難しい状態になる「技術的負債」の影響が出ます。

負債が溜まると、簡単な修正にも時間がかかり、ベロシティは継続して低下してしまいます。技術的負債を計画的に返済する時間(リファクタリングなど)をスプリントの計画に組み込むことで、長期的に安定した開発ペースを維持することが可能です。

チームのスキルアップ支援でベロシティを向上

チームの生産性は、個々のメンバーのスキルに大きく依存します。特定のメンバーしか対応できないタスクがあると、その人がボトルネックとなり、チーム全体のベロシティが頭打ちになります。

「ペアプログラミング」や「モブプログラミング」を通じて知識を共有したり、勉強会を開催したりするなど、チーム全体のスキルレベルの底上げが重要です。属人化を防ぎ、チームはより柔軟にタスクに対応できる結果、ベロシティの向上につながります。

ベロシティ活用によるLycheeRedmine導入の効果(アジャイル開発の支援)

ベロシティを正確に計測し、プロジェクト管理に活かすためには、適切なツールの導入が不可欠です。プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」は、これまでに7,000社以上の導入実績を持ち、多くのアジャイル開発チームを支援してきました

日本のビジネス環境に適した設計と豊富な機能を備えており、ベロシティの可視化・分析・改善を一貫して支援します。チームの進捗をリアルタイムで把握しながら、より精度の高いスプリント計画と継続的な改善を実現できる点が大きな強みです。

ガントチャートとWBSでイテレーションを見える化

Lychee Redmineのガントチャート機能では、WBSで作成したタスク構造が自動的に反映されるため、進捗状況を視覚的に把握できます。これにより、計画立案から進捗管理までを一元的に管理でき、計画と実行の乖離を防止することが可能です

さらに、タスクのスケジュールや依存関係を直感的に把握できるため、より精度の高いスプリント計画を立てられる点も大きな特徴です。

工数管理でベロシティと稼働リソースを調整

ベロシティを活用する際は、ストーリーポイントだけでなく、実際の作業時間(工数)を記録・分析することも重要です。LycheeRedmineでは、チケットごとに予定工数と実績工数を記録し自動で集計します

ベロシティの数値と実績工数を照らし合わせることで、「ポイントの割に時間がかかりすぎているタスクはないか」といった分析が可能になり、見積もり精度の改善につながります。

課題管理で進捗とリスクを同時把握

LycheeRedmineでは、チケットごとに予定工数と実績工数を自動集計しリソースの過剰・不足をリアルタイムに把握できます。スプリントの進行を妨げる課題を特定し、迅速に対応することで、ベロシティの低下を防ぐことに役立ちます。

また、すべての情報が一元管理されるため、報告・承認・共有をLychee Redmine上で完結することも可能です。チーム内外での情報共有もスムーズに行えるでしょう。

下記記事では、LycheeRedmineのチケット機能について詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

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複数プロジェクト横断で平均ベロシティを俯瞰

複数のアジャイルチームを抱える組織では、各チームの状況を横断的に把握する必要があります。

LycheeRedmineのプロジェクトレポート機能では、複数プロジェクトのタスク・リソース・進捗など、プロジェクトを横断したダッシュボードを作成できます

各チームのベロシティの推移などを一覧で確認できることで、マネジメント層は組織全体のリソース配分や開発状況を的確に判断できるでしょう。

ベロシティを正しく理解し、アジャイル開発のプロジェクト管理に活かす

ベロシティは、チームの生産性を可視化し、将来の予測精度を高めるために欠かせない指標です。ただし、数値の意味を正しく理解し、適切に管理できなければ、かえってチームの負担増加や誤った判断につながる恐れがあります。

ベロシティを正しく理解し、効果的に活用することで、アジャイルチームは作業効率を高めながら精度の高い予測を立て、より良い成果を継続的に生み出すことが可能になります

アジャイル開発のプロジェクト管理をさらに効率化したい方は、ぜひLychee Redmineの導入をご検討ください。Lychee Redmineは、ベロシティの計測・分析に加え、ガントチャート・カンバン・リソースマネジメントなど、アジャイル開発に必要な機能を幅広く備えています。

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