インタビューに答えていただいた林 将広氏(中央)と、株式会社アジャイルウェアの川端光義代表(左)、水口崇(右)
日清食品株式会社
社名
日清食品株式会社 様
事業内容
即席麺等の製造および販売
使用機能
Lycheeガントチャート
食品従業員数:1000名〜スタンダードプラン

カップヌードル、チキンラーメンなど誰もが知るトップブランドを有する日清食品株式会社。
22年ぶりとなる国内工場新設プロジェクトは、総設備投資655億円という規模はもちろん、ロボットやIoTなど最新技術を駆使する「次世代型スマートファクトリー」として、メディアなどでも大きな話題となっている。敷地面積約10万m2、日産400万食の生産能力を持つ国内最大級、世界最新鋭の食品工場である「関西工場」(滋賀県栗東市)は、2018年10月に操業開始、2019年内に完成する。
 創業以来最大となる、前例のないプロジェクト推進のため、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)としてLychee Redmineを活用した林 将広氏(日清食品株式会社 事業構造改革推進部 SCM企画部 課長)にお話を伺った。(取材日:2019年8月27日)

前例のない巨大プロジェクト、Lychee Redmine での「見える化」が大きな助けに

大規模ながら、タイトなスケジュールで進められた「関西工場」プロジェクトのPMOに着任した林氏は、『日清食品流』のプロジェクト管理手法を新たに構築するという難題に立ち向かった。
自身にとって初めてのPMOという立場で、各部門のスペシャリストとギリギリの調整を行うためには、部門横断的に情報をまとめ、プロジェクト全体を「見える化」することが必要不可欠だったと語る。

林 将広氏

「前例のない規模、最新システムの導入など、未経験のリスクが多数想定され、マクロな視点で全体管理する必要がありました。
海外工場新設や、既存工場ライン立ち上げなど、社内には豊富なプロジェクト経験があり、QCDS(クオリテイ・コスト・デリバリー・スコープ)のうち、クオリティとスコープは各部署がしっかり仕上げてくれると信頼していました。

そこで、PMOとしては、とにかくコストと納期の管理に注力しようと、担当ごとに情報を集めたのですが、Excel、PDFなどで個別管理されており、統合が非常に難しかった。
数年間というプロジェクトの長さ、発注数千件というタスクの膨大さなど、Excelなど既存のやり方での全体管理は到底無理、やはりプロジェクト管理に特化したツールが必要ということになりました。」(林氏)

「社内ではプロジェクト管理ツールは未使用でしたが、Redmineの存在は知っていました。他ツールではMSプロジェクトなども検討しつつ、Redmineの無料相談会にいってみたところ、『ユーザーインターフェイスが良くて、入力が簡単、操作も直感的。拡張性もある』とLychee Redmineを勧められたんです。
調べてみると、チケットだけでなくガントチャートがあり、クラウド管理もできる、新機能がどんどん追加されるなど、非常に使いやすそうで、『このツールなら、やりたいことができそう!』とLychee Redmine導入を即決しました。イメージ通りの使い心地で、良い決断だったと思っています。」(林氏)

チケットとガントチャートで、全体スケジュールを管理

本プロジェクトで、林氏がLychee Redmineを特に活用したのは、設備発注と設備納入の2つのフェーズ。この重要なフェーズに、タスクや見積り、スケジュールなどの情報をLycheeガントチャートで「見える化」した。

「Redmineは、みんなでタスクを共有し、管理するツールだと知っていましたが、プロジェクトメンバーは少数精鋭、プロジェクト管理について研修する時間もない。また、メンバーには設備の設計など担当業務に専念してほしいという思いも強く、Lychee Redmineの管理はPMOが一括して行いました。設備開発を担う研究施設をはじめ、各部署を足で回って掻き集めた資料をもとに、数千ものタスクを構造化し、その全てを入力する作業が甚大で、今振り返っても本当に大変な時期でした。」(林氏)

大変なPMO立ち上げ期、Lychee Redmineのどのような機能が助けになったのか?

とにかく、全ての情報が反映されたガントチャートが必要で、Lycheeガントチャートで実現できました。慣れないPMOとして情報収集から始め、Lycheeガントチャートでその情報をババッ!と「見える化」してプロジェクトメンバーに見せた時に、「これはすごい!」と驚かれたのを覚えています。
ガントチャートの基本機能を中心に使いましたが、予定通り進捗しているチケットは緑、期日過ぎると赤というのも誰でも一目瞭然だし、現状を示すカミナリ線、重要予定を示すマイルストーン、クリティカル・パスの設定など、全てをガントチャート画面で直感的に操作でき、ツール操作のストレスもなかったです。Lycheeガントチャートで「見える化」してはじめて、プロジェクトの全体進捗を左右するスケジュールのズレが見つかったことも。チケットのコピーや、注記機能も便利でしたし、チケットの期間を日単位や週単位で入れたとしても、最終的には1ヶ月ごとのサマリで確認ができるので非常に助かりました。」(林氏)

新工場には即席麺の生産ラインが10本あり、製麺、包装など工程ごとに最新設備を導入。さらに、ロボットや検査機器など自動化・効率化を担う設備を集中監視・管理する「NASA室」(Nissin Automated Surveillance Administration室)やガスコージェネレーションシステムなどユーティリティ施設と、生産ライン全てがIoTシステムで繋がるなど、食品工場として前例がない難易度の高いプロジェクトで、PMOの責任も重大だった。

「数千件の発注情報などをベースに200チケット程度に構造化し、プロジェクト全体をLycheeガントチャートで「見える化」することで、個々の進捗がどのように全体スケジュールに影響するかを、担当者に直感的に理解してもらいました。ところが予定期日を過ぎても発注されないなど、進捗しないチケットが続出。確認すると、各部署で計画時点でスケジュールにバッファーを持たせていることが判明しました。
しかし、プロジェクトには後工程のために全ての前工程が同時に完了しているべきタイミングがある。それをLycheeガントチャートで「見える化」できたことで、『PMOには、全ての情報を速やかに共有しよう』というコミュニケーションの流れができました。」(林氏)

「次世代型スマートファクトリー」ならではの予期せぬ場面でも、Lycheeガントチャートを活用した

設備納入フェーズでは、これまでのライン立ち上げと異なりシステムとの連携テストが必須でしたが、設備メーカーも社内担当者もこの規模のシステム連携は未経験。
そこで、全ての機械の納入スケジュールをLycheeガントチャートに入力し、各部門と連携しテスト期間を算出しました。すると、稼働予定日に間に合わせるには、複数テストを並行させるなどテスト期間の短縮が必須とわかり、Lycheeガントチャートでのシミュレーションを元に、各メーカーに納期の前倒しやテスト期間短縮などを依頼し、なんとか調整することができました。」(林氏)

経営陣へのレポート、コストシミュレーションなど様々な場面でLychee Redmineが活躍

全社を挙げての巨大プロジェクトとして、経営陣への確実な報告や、管理部門の業務にも、Lychee Redmineが役に立った。

「Lycheeガントチャートのサマリー画面をPDF化し、社内報告資料としても活用しました。FACTを「見える化」することで、経営陣にも一目で進捗やリスクを認識してもらえたと思います。
また、655億円という総設備投資額なので、キャッシュアウトについても精度高いシミュレーションが必要でしたが、財務の担当部署でも、私たちの作ったLycheeガントチャートを元に、キャッシュアウトタイミングを把握していたと聞き、プロジェクトを「見える化」することのメリットを、様々な場面で実感しました。」(林氏)

Lychee Redmineとともに、さらに精緻なプロジェクト管理を目指す

現在は、新工場プロジェクトを含め4つのプロジェクトに関わっている林氏。今後もプロジェクトの「見える化」にLychee Redmineを使い、さらに成功事例を増やしていきたいと語る。

厳しいスケジュール・予算にも関わらず、新工場プロジェクトが計画通りに進んだことが評価され、PMOのような第3者的な全体管理は必要だと社内の雰囲気が変わったこと、プロジェクト管理のために情報を迅速に共有するコミュニケーションが確立されたことなど、PM的にも大きな成果がありました。
現在、新プロジェクトで部下がPMOを担当、Lychee Redmineでデータを作り、準備を進めています。さらに精緻なプロジェクト管理をしていくために、事例を増やしていきたいです。将来的には、テンポラリーなPMではなく、担当部門にPM的な役割を配置できたらいいですね。」(林氏)

「このような最先端の工場新設プロジェクトを、Lychee Redmineがサポートできたことは、本当に嬉しいです。最近、建設業界でもLychee Redmineを導入いただいていますが、建設会社・設備メーカーなどでも参考にしていただける、非常に興味深いお話が聞けました。本日はありがとうございました。」(アジャイルウェア 川端)

「関西工場」エントランスロビーにて

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