本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第12回です。
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※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「5つのプロセス群」に着目。最終回は第7版のエッセンスも交えて「終結プロセス群」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行まで支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。各プロセス群の要諦を把握して、プロジェクト管理のレベルを上げましょう。
PMBOKの「終結プロセス群」とは、プロジェクトまたはフェーズの全作業を正式に完了させるプロセスのグループです。ここでプロジェクトの目標が達成され、その成果物が公式に引き渡されることを確認します。
PMBOKでは‟群”という階層に分類されていますが、属するプロセスは「プロジェクトやフェーズの終結」のひとつだけ。このなかに「契約の完了」「成果物の引き渡し」「教訓の文書化」「最終報告書の作成」など、複数の活動が含まれています。
▶関連項目:第8回記事 2-6「プロジェクトやフェーズの終結」
まずは終結の前提となる「完了基準」について解説します。これはプロジェクトの成功を客観的に判断するための、具体的な条件やメトリクス(指標・尺度)。通常、プロジェクト憲章やスコープ記述書に記載されます。以下4種類の完了基準を明文化し、プロジェクト完了に関する認識のズレを防止しましょう。
| 完了基準 | 各基準の概要 |
|---|---|
| 機能的完了基準 | 成果物が定義された要件を満たしているか、すべての機能が正しく動作するかなど、成果物の品質と機能を評価します。 |
| 非機能的完了基準 | パフォーマンス・信頼性・セキュリティ・使いやすさなど、成果物の特性を評価します。 |
| ドキュメント完了基準 | すべての必要な文書(設計書・テスト報告書・ユーザーマニュアルなど)が作成され、承認されていることを確認します。書類作成が目的化しないように、基準を最小限に設定しても構いません。 |
| 財務的完了基準 | プロジェクトの予算が適切に管理され、すべての支払いが完了していることを確認します。「領収書の取得」「会計部門への報告」といった具体的基準を定めておきましょう。 |
プロジェクトの完了基準を満たしたら、最終成果物を顧客やスポンサーへ正式に引き渡し、完了の公式な承認を得ます。システム開発の実務においては、運用部門の責任者が承認するケースも多いでしょう。
ここで必要不可欠なのが、引き継ぎです。そのチェックリストを作成し、成果物の移管先とミーティングを行ってください。以下に、標準的な引き継ぎ手順を紹介します。

上記のうち、特に重要なのは「障害対応プロセスの確立」です。できれば数ヵ月間、開発チームの中心メンバーが保守運用に伴走したほうがいいでしょう。
終結プロセスには「プロジェクトレビュー」も欠かせません。その目的はプロジェクトの成果とプロセスを客観的に評価し、将来のプロジェクトに活かすための教訓を抽出すること。チームが継続的な改善に取り組むことで、メンバーの責任感も醸成されます。
このプロジェクトレビュー会議は、反省会ではありません。個人の失敗を責めず、組織がより賢明になるための学習の機会にしてください。参加者はプロジェクトメンバーと主要なステークホルダーなど。プロジェクトマネージャーが進行役となり、以下4点を中心に話し合います。
これらの議論からプロジェクトの教訓を抽出し、「教訓登録簿」に追加します。将来のプロジェクトマネージャーやメンバーが参照できるように、組織のナレッジベースに保存しましょう。
なお、教訓はプロジェクトが終わる直前に慌ててまとめるものではありません。難航したプロジェクトほど終盤までトラブル対応に追われ、振り返りの機会を失いやすいもの。各工程が終わる(フェーズの終結)前にミーティングを行い、貴重な教訓を抽出・蓄積しましょう。なかでも開発工程は要員数が多いので、有意義な機会になるはずです。
▶関連項目:第8回記事 2-4「プロジェクト知識のマネジメント」
プロジェクトの終結時には、関連情報を体系的に整理して、文書化しなければなりません。組織の保管方針にしたがって、プロジェクト憲章・各種計画書・技術文書・品質文書などをデジタルアーカイブに保存しましょう。
ここで重要な点は、デジタルアーカイブを安全かつアクセス可能な状態にすること。セキュリティを担保しながら、情報の検索性を高めてください。そうすれば、将来の監査や保守、あるいは類似プロジェクトの計画時に素早く情報を取り出せます。
プロジェクトの終結プロセスにおいて、もっとも見落とされやすい活動があります。それはベネフィット(便益・利益など)の実現度評価。ビジネスケースに定義された目標が「どれくらい実現されたか」を検証します。これがプロジェクトの価値実現を判断する土台になります。
ベネフィットは以下の2種類に大別されます。売上などの財務指標は反映されるまでに時間を要するので、成果物の引き渡しから1年後に評価する場合もあります。
財務的ベネフィット
売上増加、コスト削減、ROI(投資収益率)向上など
非財務的ベネフィット
顧客満足度の向上、ブランドイメージの強化、業務効率の改善など
終結プロセスの大詰めは、最終報告書の作成です。ここでプロジェクトのパフォーマンスを客観的に評価し、その成果をステークホルダーに報告します。基本的な構成は以下の通りです。
エグゼクティブサマリー
プロジェクトの概要、主要な成果、成功・失敗の要因を簡潔にまとめます。
スコープと成果物
プロジェクトで達成されたスコープと、引き渡された最終成果物を列記します。
スケジュールとコストのパフォーマンス
上記2領域の計画と実績を比較します。納期遅延や予算超過が発生した場合は、その原因を分析します。
品質のパフォーマンス
受入テストやベータテストなどを経て、達成された品質基準と品質管理活動の結果(バグの数、顧客満足度調査の結果など)を記します。
リスクと課題
プロジェクト中に発生した主要なリスクと課題、およびその対応策の概要を記します。
教訓
教訓登録簿をもとに、プロジェクトを通じて得られた最も重要な教訓をまとめます。
この最終報告書を顧客やスポンサーに提出し、正式な承認を得ましょう。その後にチームを解散し、プロジェクトが完全に終結します。
全12回にわたる連載記事も、そろそろ終わりです。以下の「終結プロセス群のポイント」をもって、本連載の結びとします。読者のみなさんはPMBOKの学習自体を目的にせず、ぜひ実務に活用してください。

引き継ぎこそ、引き渡しの絶対条件
最終成果物を引き渡す際には、各種文書や業務の引き継ぎが必要です。運用部門にソースコードやシステム構成図などを引き渡し、ミーティングを行いましょう。そして、監視体制や障害対応プロセスを確立してください。
失敗を責めずに教訓を抽出
終結プロセスにプロジェクトレビューは欠かせません。その目的はプロジェクトの成果とプロセスを客観的に評価し、将来のプロジェクトに活かすための教訓を抽出すること。振り返り会議で個人の失敗を責めてはいけません。
効果測定は価値に焦点を
もっとも見落とされやすいのが、ベネフィット(便益・利益など)の実現度評価です。ビジネスケースに定義された目標が「どれくらい実現されたか」を必ず検証しましょう。これがプロジェクトの価値実現を判断する土台になります。
終結プロセス群では、プロジェクトまたはフェーズの全作業を正式に完了させます。主な活動は「①契約の完了」「②成果物の引き渡し」「③教訓の文書化」「④プロジェクト情報の文書化」「⑤ベネフィットの実現度評価」「⑥最終報告書の作成」。多忙な現場では③や⑤が軽視されやすいので、注意してください。
教訓登録簿とは、プロジェクトを通じて得られた成功や失敗の知見を記録した文書です。「何がうまくいったか」「何がうまくいかなかったか」「なぜそうなったか」「次回どう改善するか」の4点を中心に整理します。その作成時期はプロジェクト終了時だけではありません。設計や開発など、各フェーズが終わる度に教訓を抽出・記録してください。難航したプロジェクトほど終盤に余裕がなくなるため、最初から「教訓登録簿」という名称のファイルを作成し、振り返りの機会(工程完了会議など)をスケジュールに組み込んでおきましょう。
おもな理由は2つあります。ひとつは、旧来(PMBOK第6版まで)のプロジェクトのゴールが「成果物の引き渡し」に置かれていたため。PMBOK第7版から「価値の実現」を重視する考え方に変わりました。もうひとつの理由は、タイムラグが発生するため。売上増加などの財務的ベネフィットは、プロジェクト終了から評価までに1年を要する場合もあり、見落とされやすくなっています。
この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。
この資料でわかること<参考資料>
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第6版および第7版+プロジェクトマネジメント標準、PMI®
Ridgelinez株式会社
Technology Group Director 尾形 順一 氏
プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。
【保有学位】
経営管理修士(MBA)、国際情報通信修士(MS)
【保有資格】
日本プロジェクトマネジメント協会 プロジェクトマネジメントスペシャリスト、PMI PMP(Project Management Professional)、AXELOS PRINCE2 Practitioner、その他、日米欧6団体のアジャイル認定など20種類以上
Ridgelinez株式会社
Technology Group Senior Consultant 白田 智明 氏
富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。
【保有資格】
IPA 基本情報/応用情報/プロジェクトマネージャー、PMI PMP(Project Management Professional)、TOGAF9(Foundation/Certified)、SAFe®6 SPCなど、他多数
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第11回です。
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※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「5つのプロセス群」に着目。今回は「監視・コントロールプロセス群」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行まで支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。各プロセス群の要諦を把握して、プロジェクト管理のレベルを上げましょう。
PMBOKの「監視・コントロールプロセス群」とは、プロジェクトの進捗度を常に追跡し、計画との差異を特定・管理するプロセスのグループです。10の知識エリアにわたる合計12個のプロセスを通じて、パフォーマンスデータを分析。必要に応じて、是正処置や予防処置を講じます。
ここで有用なのが「情報ラジエーター」です。これはプロジェクトの完了作業やリスクを可視化し、タイムリーな知識共有を促進する仕組み。聞きなれない言葉かもしれませんが、プロジェクトの状況を可視化する「ダッシュボード」とほぼ同じ意味です。たとえば、以下のようなグラフを表示する仕組みを情報ラジエーターと呼びます。

重要なポイントは、タイムリーな情報共有です。PMBOKには明記されていませんが、統合的なプロジェクト管理ツールの活用が得策でしょう。
特に大規模プロジェクトの場合、各チームが表計算ソフトで情報を個別管理していると、報告の階層が上がるごとに再集計が必要になります。その結果、各チームから経営層へ情報が届くまでにタイムラグが生じ、迅速な状況把握が難しくなります。
プロジェクトの監視・コントロールにおいて、PMBOKではEVM(Earned Value Management:出来高管理)という手法が推奨されています。これはプロジェクトのパフォーマンスと進捗を評価するために、スコープ・スケジュール・コスト(資源)についての測定値を結びつける方法論です。
EVMを活用すれば、スケジュールとコストの差異を評価し、進捗状況を明確に把握できます。また、納期遅延や予算超過の予兆を検知することで、早期の対策が可能になります。以下に、EVMの基本要素とパフォーマンス指標を紹介しましょう。
| 基本要素 | 各要素の概要 |
|---|---|
| 計画値(PV) | 現時点までに完了すべき作業の予算 |
| 出来高(EV) | 現時点までに完了した作業の予算 |
| 実コスト(AC) | 現時点までに完了した作業に実際にかかった費用 |
上記3つの基本要素のうち、EVとACは「遅行指標」。過去の活動の結果や成果物を測定する指標です。
| パフォーマンス指標 | 計算式 | 各要素の概要 |
|---|---|---|
| コスト差異(CV) | EV-AC | 出来高と実コストの差。 この数値がプラスなら予算内、マイナスなら予算を超過している。 |
| スケジュール差異(SV) | EV-PV | 出来高と計画値の差。 この数値がプラスなら計画より進捗が早く、マイナスなら遅れている。 |
| コスト効率指数(CPI) | EV÷AC | この指数が1より大きければコスト効率が良く、1より小さければ悪い。 |
| スケジュール効率指数(SPI) | EV÷PV | この指数が1より大きければスケジュール効率が良く、1より小さければ悪い。 |
上記4つの指標のうち、CPIとSPIは「先行指標」。プロジェクトの変化や傾向の予測(兆候)を示す指標です。EVMの活用例として、以下にパフォーマンス指標のグラフを示します。

上図の場合、EV(出来高)よりもAC(実コスト)の値が大きく、CV(コスト差異)はマイナス。つまり、予算をオーバーしています。同じように、EV(出来高)よりもPV(計画値)の値が大きく、SV(スケジュール差異)はマイナス。つまり、スケジュールが遅れています。
とはいえ、わずかな予算超過と計画遅延ならば、許容されるかもしれません。そこでポイントになるのは、判断基準となる‟閾値”の設定。CPIやSPIなどに閾値を設定し、赤・黄・青(危険・注意・良好)などのシグナルと指数をセットで表示しましょう(下図参照)。すると、プロジェクトの状況がひと目でわかり、「いま対策を打つべきか」を即座に判断できるようになります。

プロジェクト管理において、パフォーマンスデータの測定は欠かせません。PMBOKには、その際の‟落とし穴”が紹介されています。以下6つの落とし穴を認識し、悪影響を最小限に抑えましょう。
ホーソン効果
何かを測定すること自体が、人や組織の振る舞いに影響を与える効果です。たとえば、アジャイル開発でベロシティ(チームの作業消化量)を測定する場合。その目標値を達成するために、タスクのストーリーポイント(仕事の重さ)を甘く見積もってしまう場合があります。
メトリクス(測定指標)の誤用
さまざまな誤用のうち、特に深刻なのはデータの改ざんです。たとえば、プロジェクトマネージャーが納期遅延を許さない場合。メンバーの担当業務が期日内に終わっていなくても「進捗率100%」というデータが入力される場合があります。
バニティメトリクス(虚栄の指標)
意思決定に役立たないデータです。たとえば、システム更改時にオンプレミスのシステムを単純にクラウドリフトする場合、コーディングの「バグ密度」は虚栄の指標といえます。クラウド移行時は多くの既存コードを流用するため、分母となるコーディングの実装量が少なく、有効な指標になりません。
士気の低下
達成不可能な目標が設定されると目標未達が続き、チームや個人の士気が低下します。また、過度な原因追究も望ましくありません。ミスや不具合が起きるたびに報告書を作成させると、士気の低下を招きます。
確証バイアス
自らの先入観を支持する情報を探し、それに反する情報を軽視する傾向です。たとえば、CPIが危険信号を示しているのに、他の主要指標は良好な場合。類似プロジェクトの成功体験から「CPIの閾値設定ミス」などと思い込み、予算超過の兆候を見過ごすような心理現象をさします。
相関関係と因果関係の混同
(同時に変化している関係)と因果関係(一方の変数が別の変数の直接的な原因となる関係)を混同することです。たとえば、コーディングの実装量とバグの数には相関関係がありますが、「コードを短くしたからバグが減る」という因果関係はありません。

プロジェクトの状況を可視化
監視・コントロールプロセス群では、プロジェクトの進捗度を常に追跡し、計画との差異を特定・管理します。ここでポイントになるのが「情報ラジエーター」。ダッシュボードなどでプロジェクトの状況を可視化し、タイムリーに情報を共有しましょう。
EVMでズレの予兆を検知
EVMを活用すれば、納期遅延や予算超過の予兆を検知できます。重要な先行指標に閾値を設定し、赤・黄・青(危険・注意・良好)などのシグナルと指数をセットで表示しましょう。すると「いま対策を打つべきか」を即座に判断できるようになります。
測定の落とし穴に注意
パフォーマンスデータの測定には、いくつかの落とし穴があります。たとえば、測定自体が人の振る舞いに影響を与えるホーソン効果。また、達成不可能な目標が設定されると目標未達が続き、士気が低下します。こういった落とし穴を認識し、悪影響を最小限に抑えましょう。
EVMは「Earned Value Management」の略称であり、「出来高管理」を意味します。これはスコープ・スケジュール・コスト(資源)を統合して、プロジェクトのパフォーマンスを評価する手法です。計画値(PV)・出来高(EV)・実コスト(AC)の3要素から、コスト差異(CV)やスケジュール差異(SV)などを算出します。この手法を活用すれば、納期遅延や予算超過の予兆を早期に検知し、迅速に対策を打てるようになります。
閾値の設定と可視化によって、問題の早期発見と意思決定がしやすくなります。たとえば、CPIとSPIに「0.9未満は危険」「0.9~1.0未満は注意」「1.0以上は良好」という閾値を設定し、赤・黄・青(危険・注意・良好)のシグナルを表示します。これにより主観や経験に頼らず、「いま対策を打つべきか」をひと目で判断できるようになります。
PMBOKでは6つの落とし穴が示されています。①測定自体が行動を変える「ホーソン効果」②データ改ざんなどの「メトリクスの誤用」③意思決定に役立たない指標の「バニティメトリクス」④達成不可能な目標が招く「士気の低下」⑤先入観に合う情報だけを採用する「確証バイアス」⑥複数の事象の関係を誤解する「相関関係と因果関係の混同」。これらの落とし穴を認識して、適切な測定方法を設計しましょう。
この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。
この資料でわかること<参考資料>
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第6版および第7版+プロジェクトマネジメント標準、PMI®
Ridgelinez株式会社
Technology Group Director 尾形 順一 氏
プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。
【保有学位】
経営管理修士(MBA)、国際情報通信修士(MS)
【保有資格】
日本プロジェクトマネジメント協会 プロジェクトマネジメントスペシャリスト、PMI PMP(Project Management Professional)、AXELOS PRINCE2 Practitioner、その他、日米欧6団体のアジャイル認定など20種類以上
Ridgelinez株式会社
Technology Group Senior Consultant 白田 智明 氏
富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。
【保有資格】
IPA 基本情報/応用情報/プロジェクトマネージャー、PMI PMP(Project Management Professional)、TOGAF9(Foundation/Certified)、SAFe®6 SPCなど、他多数
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第10回です。
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※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「5つのプロセス群」に着目。今回は「計画プロセス群」と「実行プロセス群」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行まで支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。各プロセス群の要諦を把握して、プロジェクト管理のレベルを上げましょう。
PMBOKの「計画プロセス群」とは、プロジェクトの目標達成に向けた詳細な行動指針を策定するプロセスのグループです。10の知識エリアにわたる合計24個のプロセスを通じて、具体的な計画を立案します。そして、それらを統合してプロジェクトマネジメント計画書を構築します。
ここで把握すべきなのが「計画変数」。プロジェクト計画の実施方法や目標達成に大きな影響を与える要素です。PMBOKには、以下の5項目が記されています。
開発アプローチ
どのように、どの程度、そしていつ計画するかに影響を与えます。たとえばウォーターフォール(予測型)の場合、初期段階から綿密に計画を立てる必要があります。
成果物
プロジェクトの成果物によっては、計画手法が限定されます。たとえば大規模な基幹システムを開発する場合、段階的詳細化などの手法が求められます。
組織の要求事項
組織のガバナンス・方針・手続き・プロセス・文化によっては、特定の計画の成果物を作るように求められます。たとえば、詳細な品質管理計画書やリスク登録簿などの作成が必須の場合があります。
市場の状況
市場の競争環境などによっては、重視する項目が変わります。たとえば競争の激しい環境の場合、予算遵守よりも市場投入までの期間短縮を優先する場合があります。
法律または規制による制限
規制機関や法令によっては、特定の計画文書の提出を求められます。プロジェクト期間中に制限が変わる場合もあるので、動向を注視しましょう。
プロジェクトの計画に際して、他にも重要な「考慮事項」があります。それは以下の10項目。計画変数と重なる部分もありますが、いずれも計画時に必ず確認すべき項目です。
内部と外部の環境要因がプロジェクトと成果物に影響を与える可能性
内部の環境要因とは、組織文化やガバナンスなど。外部の環境要因とは、市場の状況や法規制などをさします。たとえば社内の風通しが悪い場合、問題が生じても上司に報告しづらく、プロジェクトに悪影響を与える可能性があります。
所要期間に影響を与える要因
たとえば、メンバーの能力差がこの考慮事項に該当します。コーディングなどの生産性は、新人と熟練エンジニアで大きく違うもの。チームの人数だけでなく、各人の能力などを考慮して、所要期間を見積もりましょう。
コスト見積もりと予算化の方針・手続き・ガイドラインの有無
これらの有無によって、予算計画の裁量範囲が変わります。たとえば予備費のガイドラインが設定されている場合、プロジェクトマネージャーの判断では多額の予備費を積めない可能性があります。
適応型アプローチを使用する場合のコスト見積もり方法
適応型アプローチとは、アジャイルのこと。予測型アプローチ(ウォーターフォール)と異なるコスト見積もり方法が求められるので、PMBOKでは別項目に記されています。
主要な調達の回数
いわゆるマルチベンダーの問題です。さまざまな納入者が関わる複数の調達が存在すると、調達プロセスが複雑化します。
調達に関する現地の法規制の組織調達方針への統合化、および契約の監査要求事項への影響
オフショア開発を含め、海外から資源を調達する際の考慮事項です。その場合、現地の法規制を会社の調達ルールに織り込まなくてはなりません。そもそも顧客との契約で禁止されていたり、各種監査の基準が厳しくなったりする可能性もあります。
価値の測定方法
プロジェクトの目的は成果物の提供ではなく、価値の実現です。ステークホルダーが求める「価値」を明確に定義し、その測定方法を考えておきましょう。
財務的価値と非財務的価値の尺度の有無
売上やROI(投資収益率)などの財務的価値は尺度が明確ですが、企業ブランドや顧客満足度などの非財務的価値は尺度が不明確です。プロジェクトの成否を判断するためにも、測定可能な指標を定義しましょう。
プロジェクトの実施中と完了後における、ベネフィット実現に関連するデータ収集方法とレポート作成方法
「ベネフィット実現に関連するデータ」とは、KPI(重要業績評価指標)や作業パフォーマンスのデータなど。これらを関係者に報告するため、データ収集とレポート作成の方法を考えておきましょう。
プロジェクト状況報告への要求事項
たとえば現場と経営層では、求める報告の頻度や指標などが異なります。報告の対象や目的を整理して、プロジェクト状況の適切な報告を計画しましょう。
プロジェクトの計画プロセスでは、目標や目的に応じたメトリクス(指標・尺度)が必要です。その際に重要なのが「SMART基準」。以下の5項目をふまえて、適切な指標を定義しましょう。

Specific(具体的)
あいまいな目標を立てると、達成の可否が判断できません。たとえば「生産性の向上」をめざす場合、「労働生産性を10%向上させる」といった具体的な指標と向上率を決めておきましょう。
Measurable(測定可能)
たとえば「メンバー全員がコスト意識を高める」という目標を立てると、進捗状況も達成可否も測定できません。「年間1,000万円のコスト削減」という目標に変えれば、進捗状況も達成可否も測定できます。
Achievable(達成可能)
チームのリソースやプロジェクトの期間などを考慮し、現実的な目標を立てましょう。達成不可能な目標を掲げると、チームの士気が下がったり、不正を招いたりしかねません。経営層などから目標必達が厳命されている場合、特に注意してください。
Relevant(関連性)
プロジェクトの目標は、組織全体の目標やビジョンに関連していなければなりません。その関連性が低いほど、組織にとってプロジェクトの価値が低くなります。
Time bound(期限付き)
目標達成の完了期限を設定しましょう。明確な期限を設けることで具体的な計画立案が可能になり、行動を促します。「できるだけ早く」といった表現は避けてください。
以上、5項目の頭文字をとって「SMART基準」と呼ばれます。
また、この基準はフェーズゲートにおいても重要です。そもそもの目標がSMART基準にそっていなければ、ビジネスとしてプロジェクトを続ける妥当性が判断できません。
PMBOKの「実行プロセス群」とは、プロジェクトマネジメント計画書に基づいて実際の作業を遂行し、プロジェクトの成果物を開発するプロセスのグループです。7つの知識エリアにわたる合計10個のプロセスを通じて、チームメンバーの指揮、コミュニケーションの実施、調達活動の進行、品質保証の適用など、多岐にわたるタスクを実行します。
この実行プロセス群にも、いくつか考慮すべき事項があります。PMBOKには、以下の11項目が記されています。
組織文化や複雑さなどの要因に基づいた、最も効果的なマネジメントプロセス
PMBOKはプロジェクト管理の標準的なモデルです。自社のカルチャーや組織の力学などをふまえて、マネジメントプロセスを最適化(テーラリング)しましょう。
協働的な作業環境を育むため、マネジメントされる知識
「マネジメントされる知識」とは、すべてのプロジェクトメンバーが活用できるように整理された知識のこと。個人の知識をチームのナレッジとして共有し、協働的な作業環境を整えましょう。
全期間と終了時点で収集すべき情報。情報の収集、マネジメント方法。情報や作成物の生成・記録・送信・検索・追跡・保存技術
ここでの「情報」とは、工数実績や各種ログファイルなど、未加工の生データをさします。システム障害や監査への対応、組織のナレッジ蓄積などに必要なデータ項目を洗い出し、適切な記録・保存方法を考えておきましょう。
将来のプロジェクトに利用できる過去の情報や教訓
ここでの「過去」とは、進行中のプロジェクト(の過去)も含みます。その場限りの対応で終わらせず、将来に有用な情報や教訓を残しておきましょう。
組織の正式な知識マネジメントリポジトリの有無、およびチームが使用する必要性と利用の容易さ
「知識マネジメントリポジトリ」とは、組織のナレッジを一元管理するデータベース。文書管理のプラットフォームや社内Wikiなどが該当します。また、利用しやすさも重要です。どれほどナレッジを蓄積しても、使いにくければ宝の持ち腐れになります。
組織の要求事項マネジメントシステムの有無
「組織の要求事項マネジメントシステム」とは、誰が何を求めているかを管理するための仕組み。要件定義書、課題管理システム、変更管理のルールなどが該当します。
組織の妥当性確認とコントロール方針・手続き・ガイドラインの有無
「組織の妥当性確認」とは、品質マネジメントやフェーズゲートなどで行われる社内チェックです。その方針やルールをふまえて、組織のガバナンスを遵守しましょう。
組織の品質方針と手続きの有無、および組織で使用している品質ツール・技法・テンプレート
「組織の品質方針と手続き」とは、システムのリリース判定チェックリストやセキュリティ監査などをさします。これらの手続きに必要な期間を見込んで、プロジェクトを管理しましょう。
業界特定の品質標準の有無、および行政・法律・規制上の制約
「業界特定の品質標準」とは、金融システムに求められる安全対策基準、ISOなどの国際基準です。後段の「行政・法律・規制上の制約」はプロジェクト進行中も目配りしましょう。
要求事項が不安定なプロジェクト領域の有無、および不安定な要求事項に対処するための最善の方法
要件を完全に定義できるプロジェクトはほとんどありません。たとえば、システム画面の構成(ボタンや入力フォームなどのレイアウト)は定義が難しく、抽象的な要望を受ける場合も。「使いやすく」「わかりやすく」といった不安定な要求事項に対処するために、具体的な方法(作成途中のサンプル画面を見せるなど)を考えておきましょう。
プロジェクトマネジメントやプロダクト開発の持続可能性
「持続可能性」の対象には、人や組織も含みます。たとえばエンジニアの長時間労働を前提とした計画を実行すると、途中でメンバーが倒れたり、離職したりしてしまうリスクが高まります。プロジェクトの繁閑調整などを行い、無理なく働き続けられるペースを維持しましょう。

社内外の環境要因を考慮する
PMBOKには、プロジェクトを計画する際の考慮事項が記されています。そのひとつが「内部と外部の環境要因がプロジェクトと成果物に影響を与える可能性」。なかでも、不寛容な組織風土は要注意です。問題が生じても上司に報告しづらく、プロジェクトに悪影響を与える可能性があります。
目標設定はスマートに
プロジェクトの目標は、単なるスローガンではありません。実行性の高い計画に落とし込むために「SMART基準」を活用しましょう。これはSpecific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Relevant(関連性)・Time-bound(期限付き)の5項目を満たす基準です。
あいまいな要望への対処法を
要件を完全に定義できるプロジェクトはほとんどありません。たとえばシステム画面の構成は定義が難しく、「使いやすく」といった抽象的な要望を受ける場合も。不安定な要求事項に対処するために、具体的な方法を考えておきましょう。
SMART基準は目標設定のフレームワークです。Specific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Relevant(関連性)・Time-bound(期限付き)の5項目を満たす基準をさします。プロジェクト管理においては、あいまいな目標を排除し、実行性の高い計画に落とし込む際に活用します。
計画変数とは、プロジェクト計画の実施方法や目標達成に大きく影響する要素です。PMBOKには「①開発アプローチ」「②成果物」「③組織の要求事項」「④市場の状況」「⑤法律・規制による制限」の5項目が挙げられています。たとえば開発アプローチがウォーターフォールかアジャイルかによって、計画の詳細度や立案のタイミングが大きく変わります。
プロジェクトの中長期的な成功に欠かせないからです。「持続可能性」の対象は自然環境だけでなく、人や組織も含まれます。たとえばエンジニアの長時間労働を前提とした計画を実行すると、途中でメンバーが倒れたり、離職したりするリスクが高まります。PMBOKは、無理なく働き続けられるペースの維持を推奨しています。
この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。
この資料でわかること
Ridgelinez株式会社
Technology Group Director 尾形 順一 氏
プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。
【保有学位】
経営管理修士(MBA)、国際情報通信修士(MS)
【保有資格】
日本プロジェクトマネジメント協会 プロジェクトマネジメントスペシャリスト、PMI PMP(Project Management Professional)、AXELOS PRINCE2 Practitioner、その他、日米欧6団体のアジャイル認定など20種類以上
Ridgelinez株式会社
Technology Group Senior Consultant 白田 智明 氏
富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。
【保有資格】
IPA 基本情報/応用情報/プロジェクトマネージャー、PMI PMP(Project Management Professional)、TOGAF9(Foundation/Certified)、SAFe®6 SPCなど、他多数
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第9回です。
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※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「5つのプロセス群」に着目。今回は、その全体像と「立ち上げプロセス群」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行まで支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。プロセスの体系を理解して、再現性の高いプロジェクト管理を実現しましょう。
前回までは、PMBOKの知識エリアごとにプロジェクトマネジメントの方法を解説してきました。ここからはプロセスをベースに、PMBOKの理論と実践についてお伝えします。
まずはキーワードの解説から。類似語句が多いので、混同しないように注意してください。
プロジェクトライフサイクル
プロジェクトの開始から完了に至るまで、プロジェクトが経験する一連のフェーズです。
プロジェクトフェーズ(以下、フェーズ)
プロジェクトライフサイクルを管理しやすい単位に区切った段階です。プロセスとの違いは、作業ではなく区間を表すこと。システム開発の場合、「要件定義」「設計」「開発・実装」「テスト」などの各工程がフェーズに相当します。
プロジェクトマネジメントプロセス(以下、プロセス)
最終的な成果を生み出すために、系統的に実行する作業(一連のアクティビティ)です。たとえば、スコープマネジメントの最初のプロセスは「スコープマネジメントの計画」。これを含む3つのプロセスが「計画プロセス群」というグループに属します。
プロジェクトマネジメントプロセス群(以下、プロセス群)
プロジェクトライフサイクル中のマネジメント活動を体系的に整理したグループです。これは具体的な作業ではなく、分類の枠組み。後述する5つのプロセス群に分けられます。
プロジェクトマネジメント知識エリア(以下、知識エリア)
プロジェクト管理に必要とされる専門知識の領域です。スコープ・スケジュール・コストなど、10の知識エリアがあります。プロセス群との違いは、分類の切り口。下図のようにプロセス群は活動目的(横軸)、知識エリアは対象分野(縦軸)で分類しています。

上図はPMBOKにおけるプロセスの体系を示しています。つまり、合計49個のプロセスが横軸(5つのプロセス群)と縦軸(10の知識エリア)の格子図に分類されるわけです。具体的なプロセスを記載すると、下図のようになります。

プロジェクトマネジメントにおける「5つのプロセス群」は、プロジェクト開始から一直線に進むわけではありません。各プロセス群が相互に連携し、反復的に適用されることでプロジェクトを効果的に管理します。それぞれの概要は以下の通りです。
立ち上げプロセス群
最初期のプロセス群です。プロジェクト開始の認可を得て、新規プロジェクト(または既存プロジェクトの新しいフェーズ)を明確に定めます。
計画プロセス群
立ち上げに続くプロセス群です。作業全体のスコープを確定し、目標を定義して洗練させます。そして、目標達成に必要な一連の流れを規定します。
実行プロセス群
計画に続くプロセス群です。プロジェクトの要求事項を満たすために、プロジェクトマネジメント計画書に規定された作業を完了するために実施します。つまり、計画通りに実行しなければなりません。
▶関連項目:第10回記事「PMBOKに学ぶプロジェクトの計画・実行」
監視・コントロールプロセス群
実行と並走するプロセス群です。プロジェクトの進捗やパフォーマンスを追跡し、レビューし、調整を行います。また、計画変更が必要な領域を特定し、変更への対処を始めます。
▶関連項目:第11回記事「PMBOKに学ぶプロジェクトの監視・コントロール」
終結プロセス群
最終期のプロセス群です。ここでプロジェクトやフェーズ、または契約を正式に完了・終結させます。多忙な現場では軽視されがちですが、引き継ぎや教訓の抽出など、重要な活動が詰まっています。
▶関連項目:第12回記事「PMBOKに学ぶプロジェクトの終結」
PMBOKでは、5つのプロセス群の関係を下図のように表しています。

最初の「立ち上げプロセス群」と最後の「終結プロセス群」は一直線に並んでいますが、中央の3つのプロセス群は循環したり、並走したりしています。これは継続的な改善を意味します。
先ほどの図表はウォーターフォール(予測型)を前提にしており、アジャイル(適応型)のプロセスには該当しません。しかし、いずれの開発アプローチにおいても、根本的な考え方や管理すべき対象は共通しています。
そこで、統合的なプロジェクトマネジメントのフレームワーク(下図)を紹介します。これはPMBOKの枠組みではなく、本稿の監修企業Ridgelinezが作成したものです。ハイブリッド型のアプローチを含め、プロジェクト管理の参考にしてください。

「プロセスの体系」の視野を広げて、プロジェクトマネジメントにおける重要な概念を説明します。それは「フェーズゲート」。各工程の終了時点で実施するレビューの仕組みです。要件定義や設計など工程の最後に関門を設けて、次のフェーズへの継続や修正を伴う継続、あるいはプロジェクトの中止を判断します。
マイルストーンとの違いは、進捗や品質管理の目印ではなく、意思決定のポイントであること。PMBOKよりもPRINCE2(英国政府が開発した国際的なプロジェクト管理手法)の定義が明快なので、そちらの記述も交えます。
このフェーズゲートでは”ビジネスの継続的正当性”を確認します。言い換えると、ビジネスとしてプロジェクトを続ける妥当性のチェック。法規制や競合企業の動向など、外部環境の変化も考慮します。PMBOKには適切な概念図がないので、フェーズゲートとほぼ同じ概念(ステージバウンダリー)を表すPRINCE2の図表を以下に紹介しましょう。

上図の青い点線および黄色い点線がフェーズゲートを示します。
青い点線はフェーズの区切りで「工程完了会議」「工程判定会議」などを実施。一方、黄色い点線はプロジェクト期間中の任意の期間(四半期毎など)で実施します。おもな目的はプロジェクト自体の判定です。「このまま進めても期待するビジネス価値が生み出せない」と評価されると、プロジェクトを中止する場合もあります。
PMBOKの「立ち上げプロセス群」とは、新しいプロジェクトの開始を正式に承認する活動を中心とするプロセスのグループです。
その内訳は、2つの知識エリアにおける合計2個のプロセス。まずはプロジェクトの目的と実現可能性を明確化し、主要なステークホルダーを特定します。並行してプロジェクト憲章などの公式文書を作成し、プロジェクトの方向性を組織全体で共有します。これらのプロセスについては、各知識エリアの解説記事に詳述しています。
▶関連項目:第7回記事 2-2「ステークホルダーの特定」
▶関連項目:第8回記事 2-2「プロジェクト憲章の作成」
ここでは、プロジェクトの立ち上げに関する重要事項を解説します。それは「ビジネスケースの作成」。PMBOKの定義では立ち上げプロセス群に含まれませんが、プロジェクト開始に欠かせない事前作業です。実務上はプロジェクトマネージャー(の候補者)が担う場合が多いでしょう。
ビジネスケースとは、プロジェクトに投資する価値を財務的・非財務的な観点から説明する文書。いわゆる企画書・概要書・稟議書に近い役割を担っています。おもな構成要素は以下の通りです。
このビジネスケースが顧客やスポンサーに承認されると「プロジェクト憲章の作成」に移ります。いわば、ビジネスケースはプロジェクト憲章の叩き台。プロジェクト立ち上げの根拠となる重要なインプットです。
プロジェクトマネージャーにとって、プロジェクトの立ち上げは序盤の難所です。ここでつまずくと、後々に深刻な事態を招きかねません。そこで、知っておくべき典型的な失敗例と解決策を紹介します。
<失敗例> スポンサーの関与不足による目標のズレ
プロジェクト憲章は承認されたものの、その後の意思決定会議や重要なレビューにスポンサーがほとんど参加せず、プロジェクトの目的や優先順位が曖昧に。複数の利害関係者が異なる目標を要求し、スコープの境界が揺らぎ始めた。
<解決策> スポンサーの責任を明確化し、定期的に状況を報告
プロジェクト憲章にスポンサーの具体的な責任を明記し、正式な署名を得る。また、プロジェクトマネージャーがスポンサーに対して、定期的なブリーフィングを実施。プロジェクトの価値と現状の課題について、常に意識させる。
上記の他にも、さまざまな失敗のパターンがあります。教訓登録簿などの知識資産を参照し、過去の事例や教訓などを把握しておきましょう。
▶関連項目:第8回記事 2-4「プロジェクト知識のマネジメント」

各プロセス群の関係を理解する
プロセス群とは、プロジェクト開始から完了までのマネジメント活動を体系的に整理したグループ。「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」の5つのプロセス群に分類されます。これらは相互に連携し、反復的に適用されることでプロジェクトを効果的に管理します。
工程ごとにPJの継続可否を判定
フェーズゲートとは、各工程の終了時点で実施するレビューの仕組みです。「工程完了会議」「工程判定会議」などを通じて、ビジネスの継続的正当性(このプロジェクトを続ける価値があるか?)を確認します。法規制や競合企業の動向など、外部環境の変化も考慮しましょう。
始まりはビジネスケースから
プロジェクトの開始には「ビジネスケース」が欠かせません。これはプロジェクトに投資する価値を財務的・非財務的な観点から説明する文書。プロジェクト憲章の叩き台になります。実務上はプロジェクトマネージャー(の候補者)が作成を担う場合が多いでしょう。
プロセス群は「活動の目的」による分類で、立ち上げ・計画・実行などの5つがあります。一方、知識エリアは「対象分野」による分類で、スコープ・スケジュール・コストなど10の領域があります。この2軸を組み合わせることで、PMBOKの49個のプロセスが体系的に整理されます。
どちらもプロジェクトの節目ですが、その目的が違います。マイルストーンは進捗や品質管理などの‟目印”であり、主目的は計画とのズレを確認すること。一方、フェーズゲートは各工程の終了時点の‟関門”であり、主目的は「プロジェクトを続ける価値があるか」を判定すること。後者は意思決定のポイントなので、プロジェクトの中止を判断する場合もあります。
ビジネスケースは「プロジェクトに投資する価値があるか」を財務的・非財務的に説明する文書です。まだ企画段階のため、PMBOKの定義では立ち上げプロセス群に含まれません。このビジネスケースが承認された後、(立ち上げプロセス群のひとつとして)プロジェクト憲章が作成されます。これはプロジェクトマネージャーに権限を与え、プロジェクトの目的・目標などを定める文書。プロジェクトの正式な開始を承認する公式文書です。
この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。
この資料でわかること<参考資料>
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第6版および第7版+プロジェクトマネジメント標準、PMI®
Ridgelinez株式会社
Technology Group Director 尾形 順一 氏
プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。
【保有学位】
経営管理修士(MBA)、国際情報通信修士(MS)
【保有資格】
日本プロジェクトマネジメント協会 プロジェクトマネジメントスペシャリスト、PMI PMP(Project Management Professional)、AXELOS PRINCE2 Practitioner、その他、日米欧6団体のアジャイル認定など20種類以上
Ridgelinez株式会社
Technology Group Senior Consultant 白田 智明 氏
富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。
【保有資格】
IPA 基本情報/応用情報/プロジェクトマネージャー、PMI PMP(Project Management Professional)、TOGAF9(Foundation/Certified)、SAFe®6 SPCなど、他多数
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第6回です。
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※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「10の知識エリア」に着目。今回はプロジェクトの3要素と密接に関連する「品質マネジメント」、そして「調達マネジメント」「資源マネジメント」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行まで支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。各分野の専門知識を身につけ、プロジェクト管理を強化しましょう。
これまでの記事では「スコープ」「スケジュール」「コスト」のマネジメントについて解説してきました。この3要素と「品質」は密接に関連しています。それを示すのが、プロジェクトの“鉄の三角形”。中心に「品質」が位置しています(下図参照)。

ウォーターフォール型の場合、プロジェクトの計画段階で機能(スコープ)を固定します。左図の正三角形がプロジェクト管理の基本です。本来必要な予算(コスト)や期間(スケジュール)を無理に縮減すると、右図の三角形のように品質が悪化します。つまり、プロジェクトの3要素が品質に影響を与えるわけです。
「品質マネジメント」とは、成果物とプロジェクト自体の品質を管理する一連の活動です。その主眼は計画段階で品質を作りこみ、失敗を減らすこと。そして、予防と改善を繰り返すことです。PMBOKには、以下5つの基本項目がまとめられています。
たとえばシステム開発プロジェクトにおいて、開発側の独断で品質は定義できません。発注側の品質要求事項にそった要件を満たしたとき、はじめて成果物が品質基準に達したことになります。
ここでの「プロジェクト開始前」とは、プロジェクトの計画段階をさします。成果物の品質を客観的に評価するために、あらかじめ品質の測定基準を定めます。
プロジェクト自体の品質を担保する項目です。事前に計画・承認された方法通りに、品質管理を行います。
成果物ができあがる前に、多角的な観点から品質を検証・確認します。この項目は事前確認の大原則を示すものであり、最終検査に重点を置くわけではありません。
計画書などに定めたプロセスにしたがって、品質管理のPDCAサイクルを回します。他のマネジメント領域においても、継続的な改善は重要です。
5つの基本項目の他に、品質マネジメントの基本方針があります。それは「検査よりも予防」という考え方。品質は検査によって実現されるものではありません。事前に品質を計画・設計し、プロジェクトマネジメントそのものに組み込むことが重要です。
たとえば、金融機関のシステムは本番障害が許されず、厳格な最終検査が行われます。その大詰めで重大な不具合が見つかり、設計からやり直すケースも少なくありません。品質マネジメントとして、これは最善の方法でしょうか? 最終検査に時間と予算を費やすよりも、予防(上流工程の計画やレビューなど)に注力するほうが効率的に不具合を防げるでしょう。
「品質マネジメント」のステップは、以下の3段階に分けられます。

シンプルな構造に見えますが、単線的な流れではありません。各段階で作成する文書や成果物などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

注目すべき点は、第2ステップ「品質のマネジメント」と第3ステップ「品質のコントロール」が循環していること。これは品質コントロールの測定結果を踏まえて、改善を繰り返すことを意味しています。
また「品質のマネジメント」のアウトプットとして「品質報告書」も欠かせません。これは成果物の品質をステークホルダーに伝える文書。チェック項目にそって、品質の達成基準を満たしているかどうかを確認します。
品質マネジメントにおいて、もっとも重要なプロセスは計画です。以下の内容を「品質マネジメント計画書」に明記して、第三者のレビューを受けましょう。第三者とは、プロジェクトマネージャー以外の人や組織(品質保証部やPMOなど)。計画書の精度を高めて、事前に品質を作りこんでください。
特に重要な項目は、3つめの「品質に関する役割と責任」 。どの段階で誰が品質を確認するのか? 責任の所在を明確化して、ステークホルダーと認識を一致させましょう。ここが不十分だと、品質のみならず、スケジュールやコストにも悪影響を与えかねません。
たとえば、成果物のリリース前に上長の承認を得るとき。品質の責任範囲を定めておかないと「ウチはOKだけど、他の部署にも申請して」など、想定外の工程が生じる場合があります。
品質マネジメントでは、計画・実行・コントロールの各段階でさまざまなツールと技法を活用します。たとえば下図(特性要因図)は、問題や結果の因果関係を整理し、原因を追究するためのツール。その形状から「魚の骨ダイアグラム」とも呼ばれます。これ以外にも多様なツールと技法があるので、適宜調べて活用してください。

ここからは「資源マネジメント」について解説します。PMBOKにおける「資源」とは、プロジェクトを成功裏に完了させるために必要なリソースのこと。人的な要素全般をさすチーム資源と、物理的な要素全般をさす物的資源に大別されます(下図参照)。

「資源マネジメント」とは、プロジェクトに必要な資源を計画・獲得・管理する一連の活動です。具体的なステップは、以下の6段階に分けられます。

特筆すべきなのは、実行プロセス群です。「資源」という日本語からはイメージしづらいかもしれませんが、いわゆる人材育成(チームの育成・マネジメント)を含みます。各段階で作成する文書などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

第1ステップ「資源マネジメントの計画」では、2種類の重要文書を作成します。ひとつは「資源マネジメント計画書」。プロジェクト資源をどのように識別・獲得・管理、そして最終的に解放するかを明文化したものです。実務的には「プロジェクトマネジメント計画書」の一部(補助計画書)として作成する場合が多いでしょう。
もうひとつの重要文書は「チーム憲章」。プロジェクトチームの価値観、コミュニケーションや会議のガイドライン、行動規範などを定めた合意文書です。なかでもチームの価値観と合意は欠かせません。「多様性を大切にする」「革新的な製品開発をめざす」といったチームの方針を明文化し、メンバー全員の合意を形成しましょう。
第2ステップ「アクティビティ資源の見積もり」では、プロジェクトの各作業に必要なチーム資源と物的資源を見積もります。そのアウトプットとして「資源要求事項」を作成。必要な資源の種類・数量、利用可能な時期などを文書にまとめます。
第3ステップ「資源の獲得」では、プロジェクト遂行に必要なチームメンバー、施設、機器、材料などの人的・物的資源を確保します。組織内部や外部から適切な資源を特定し、プロジェクトへ割り当てます。
▶関連項目:5「調達マネジメントとは? PMBOKの基礎知識」
第4ステップ「チームの育成」では、プロジェクトマネージャーがメンバーのキャリア形成などを支援します。人は作業ロボットではありません。メンバーのやる気やパフォーマンスを高めるためにも、一人ひとりの志向とプロジェクトの担当業務をすり合わせましょう。
たとえば、生成AIなどの先端技術を活用するプロジェクトの場合、その分野のスキルを伸ばしたいメンバーと面談し、プロジェクトにおける個人目標を設定します。さらに、人事部門や開発部門と連携。キャリア計画書やスキルマトリックスなどを活用して、各メンバーを育成しましょう。
第5ステップ「チームのマネジメント」の目的は、プロジェクトチームのパフォーマンスを最大化すること。そのために、チーム運営や人間関係を円滑化します。なかでもコンフリクトマネジメントは欠かせません。これはチーム内の衝突や対立を解決したり、その悪影響を緩和したりすること。以下にコンフリクトを解消する方法をまとめます。

上記5つのうち、「撤退や回避」「強制や指示」は望ましくありません。理想的な方法は「協力や問題解決」ですが、丁寧な対話と合意形成に時間を要する場合があります。ときには「鎮静や適応」「妥協や和解」が得策でしょう。
ここからは「調達マネジメント」について解説します。PMBOKにおける「調達」とは、プロダクトやサービスなどをプロジェクトチームの外部から取得すること。資源マネジメントにおける「資源の獲得」のうち、外部との取引や契約をともなう行為をさします。
つまり、調達の主体である「購入者」はチームの内部、「納入者」はチームの外部に存在します。両者を左右に配置し、調達の全体像を下図に示します。

PMBOKにおける「合意書」は契約書や注文書などを含む幅広い概念です。この文書で納入者が購入者に提供する製品・サービス、成果物、前提条件などを明確化し、法的な拘束力をもたせます。口頭でも法的な契約は成立しますが、後々のトラブルを招きかねません。プロジェクトマネージャーと法務部門が連携し、正式な合意書を作成しましょう。
購入者と納入者の契約には、さまざまなタイプがあります。PMBOKでは以下の3種類に大別しています(いずれも欧米における一般的な類型であり、日本の法律で定められた契約形態ではありません)。
納入者側のコストにかかわらず、契約で定めた金額を支払う契約です。「完全定額契約」以外にも、成功報酬の条件を定める「定額インセンティブフィー契約」、経済状況の変化に応じて最終調整を行う「経済価格調整つき定額契約」などがあります。日本の「請負契約」の多くは、定額契約に該当します。
納入者が請負った作業の全コストに、固定額や成功報酬などを加えて支払う契約です。成功報酬の条件を定める「コストプラス・インセンティブフィー」、購入者の主観で報奨金を判断できる「コストプラス・アワードフィー」などがあります。
定額型と実費償還型の特徴をもつ複合型の契約です。意訳すると、実費精算契約。要員補強など、作業範囲を明確に決められないときに交わされる場合が多いでしょう。
契約タイプによって、購入者・納入者のリスクは変動します。下図を参照し、それぞれのリスク特性を把握してください。

最上部の「定額契約」は購入者のリスクが低く、納入者のリスクが高くなります。ただし、上図が示すのはウォーターフォール型におけるコスト面のリスク。アジャイル型における定額契約の場合、購入者(発注者)はスコープ面のリスク(製品の機能削減など)が生じます。プロジェクトの優先順位や開発アプローチの特性を踏まえて、適切な契約を選びましょう。
「調達マネジメント」とは、調達を計画・実行・管理する一連の活動です。具体的なステップは、以下の3段階に分けられます。

各段階で作成する文書などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

第1ステップ「調達マネジメントの計画」では、同分野の計画書と調達文書を作成します。後者は必要な製品・サービス、提供要件、評価基準などを明示する文書。おもな内容は以下の通りです。
情報提供依頼書(RFI)、見積依頼書(RFQ)、提案依頼書(RFP)などの総称です。官公庁の入札などで利用されています。
納入者が明確に回答できるように、調達で求める内容(目標・要求事項・成果など)を詳細に記した文書です。RFPなどの入札文書に盛り込まれる場合もあります。
納入候補者などから提出された見積もりの妥当性を検証する手段です。購入者が独自に情報を収集し、必要なコストを見積もります。広義の相見積もりと解釈してもいいでしょう。
価格と品質だけで発注先(納入者)を選ぶとは限りません。納期遵守率、財務基盤、障害対応、情報セキュリティ、サステナビリティ、ISO対応など、重視する選定基準を定めておきましょう。これを明文化しておかないと、内部監査部門や株主などから調達の適正性を問題視される場合があります。
PMBOKは欧米の商慣習を背景にしているため、購入者と納入者の対等な関係を前提にしています。しかし、日本の商取引は対等な関係ばかりではありません。多重下請け構造による上下関係が生まれ、重大な問題が起こりやすくなっています。そこで、PMBOKがカバーしていない調達の注意点を補足します。
たとえば、元請けが開発プロジェクトの再委託を行う場合、十分な予算や期間を確保しない場合があります。二次請け以降の受注者は立場が弱く、予算増加や期間延長を求めにくい状況に置かれています。かといってスコープの縮小も許されず、やがて品質にしわ寄せが及びます。こうした構造が、システム障害の頻発につながる一因になっている可能性もあります。結果として、発注者・受注者(購入者・納入者)双方に不利益をもたらしています。
法律から「下請け」という言葉が消えても、その構造自体は消えません。発注者は受注者に圧力をかけず、必要な予算や期間を確保しましょう。対等な関係を築かなければ、PMBOKの前提自体が崩れます。

品質は検査によって実現されるものではありません。システムの最終検査に時間と予算を費やすよりも、予防(上流工程の計画など)に注力するほうが効率的に不具合を防げます。第三者のレビューを受けて、品質マネジメント計画書の精度を高めましょう。
PMBOKにおける「資源」は、物的資源とチーム資源に大別されます。後者のマネジメントに欠かせないのが「チーム憲章」。チームの価値観、各種ガイドライン、行動規範などを定めた合意文書です。この憲章に「多様性を大切にする」「革新的な製品開発をめざす」といった方針を明文化し、メンバー全員の合意を形成しましょう。
調達マネジメントの第一歩は、調達文書の作成。その際に「発注先の選定基準」を定義しましょう。価格、品質、納期遵守率、財務基盤、障害対応といった基準を明文化しておかないと、内部監査部門や株主などから調達の適正性を問題視される場合があります。
PMBOKの各マネジメントは、単体ではなく「チームでどう回すか」が重要です。
その具体的な進め方や、実務での活用イメージをまとめた資料をご用意しています。理解をさらに深めたい方は、あわせてご覧ください。
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<お役立ち資料> Lychee RedmineでできるPMBOK この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。 この資料でわかること
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次回は、「ステークホルダー・コミュニケーション・リスクマネジメント」について解説します。
<参考資料>
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第6版および第7版+プロジェクトマネジメント標準、PMI®
品質マネジメントとは、成果物とプロジェクト自体の品質を計画・管理・改善する一連の活動です。PMBOKでは、上流工程の計画段階から品質を作り込み、失敗を未然に防ぐことが重視されています。品質は下流工程の検査で実現されるものではありません。
最終検査に依存すると、不具合の発見が遅れ、手戻りやコスト増加につながりやすいからです。検査に時間と予算を費やすよりも、予防(上流工程の計画やレビューなど)に注力するほうが効率的に不具合を防げます。
まずは契約タイプごとのリスク特性を理解すること。そして、発注先の選定基準を明確にすることがポイントです。
価格だけで判断すると、品質やスケジュールなどに悪影響を及ぼす可能性があります。組織やプロジェクトが重視する項目を整理して、総合的な観点で判断しましょう。
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Ridgelinez株式会社 プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。 【保有学位】 【保有資格】 |
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Ridgelinez株式会社 富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。 【保有資格】 |
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第7回です。
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※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「10の知識エリア」に着目。今回はプロジェクトを円滑に進めるための「ステークホルダーマネジメント」「コミュニケーションマネジメント」「リスクマネジメント」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行までを支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。各分野の専門知識を身につけ、プロジェクト管理を強化しましょう。
「ステークホルダー」とは、あらゆる利害関係者のこと。社内の関係者はもちろん、サプライヤー・顧客・エンドユーザー・規制機関などもステークホルダーです(下図参照)。

上図からわかるように、プロジェクトには多種多様なステークホルダーが存在します。その性質を整理するため、以下に3つのポイントを示します。
さらに「影響を受けるかもしれない」と思っている人もステークホルダーです。したがって、ステークホルダーマネジメントを成功させるカギは、すべてのステークホルダーを適切な方法で特定し、関与させること。そして、早急にステークホルダー参与のプロセスを開始することです。
ここでの「関与」「参与」は「エンゲージメント」の和訳です。つまり、PMBOKにおけるステークホルダーマネジメントとは、利害関係者のエンゲージメント管理を意味します。この適切な関与を獲得・維持するためには、ステークホルダーとの継続的なコミュニケーションに焦点を当てることが重要です。
「ステークホルダーマネジメント」とは、ステークホルダーを特定し、その関与方法を計画・実行・監視する一連の活動です。「利害関係者の支援を獲得し、維持するためのプロセス」と言い換えてもいいでしょう。具体的なステップは、以下の4段階に分けられます。

注目すべき点は、第1ステップ「ステークホルダーの特定」が立ち上げプロセス群に分類されていること。これは各種計画の策定に先立ち、早期にステークホルダーを洗い出すことを意味しています。各段階で作成する文書や補足事項などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

右上の「ステークホルダー登録簿」は各段階とつながっています。これらの矢印が意味するのは、ステークホルダーを特定して関与を促すサイクルを回すこと。プロジェクトが新たな段階へ移行する際、大幅な組織変更が実施された際など、何度も反復的に行います。
プロジェクトを立ち上げる初期の段階で「ステークホルダー登録簿」を作成します。これは単なる名簿や一覧表ではありません。プロジェクト関係者の基本情報・役割・関心・期待・影響度などを詳細に記録するリストです。繊細な情報が含まれるので、厳重に管理してください。おもな内容は以下の3種類に大別されます。
名前、組織内の立場、場所と連絡先、プロジェクトにおける役割など、ステークホルダーを識別する基本情報です。
要求事項や期待、プロジェクトの成果に影響を与える可能性など、ステークホルダーを評価する情報です。
関与度・影響度・権力などの指標を組みあわせて、ステークホルダーを分類する情報です。詳細は後述します。
なお、上記の情報を“登録して終わり”にしてはいけません。ステークホルダーの動向を注視し、登録簿の情報を随時更新しましょう。自社の業績変動や人事異動にともない、ステークホルダーの要求事項や期待などが変わる場合もあります。
ここからは、ステークホルダーの代表的な分類法を紹介します。まずは下図をご覧ください。

左上のグリッドは「権力」と「関心度」を軸にした分類法です。注意深くマネジメントする対象はB。権力も関心度も高いステークホルダーです。一般的な分類法は「権力」と「関与度」を軸にした中央のグリッドですが、「権力」「関心度」「関与度」の3つを指標にしても構いません。その場合は各項目に点数をつけて、一覧表を作成します。

突出モデルは、ステークホルダーを「権力」「正当性」「緊急度」の3軸で分類する手法です(上図参照)。見落としやすいのは、5番の“危険”なステークホルダー。正当性がないのに、権力と緊急度が高い関係者です。
たとえば、他部門を管掌する役員が該当するかもしれません。そんな関係者に情報共有を怠ると「俺は聞いていない」といった理由だけで反対され、プロジェクトが止まる場合もあります。そういった優先度の高いステークホルダーを早めに特定し、密な報告や事前調整などを行いましょう。

ステークホルダー関与度評価マトリックスは、関与度の現状と目標のギャップを可視化するツールです。第2ステップ「ステークホルダーエンゲージメントの計画」で用いられます。
上図の場合、「支持」しているのはステークホルダー3のみ。ステークホルダー1の現状は「不認識」、ステークホルダー2の現状は「中立」です。したがって、2名のステークホルダーを目標である「支持」に変えていく必要があります。それぞれの現状(不認識・中立)を踏まえて、適切なコミュニケーションプランを立案しましょう。
ここからは「コミュニケーションマネジメント」について解説します。まず、コミュニケーションの方法は「双方向」「プッシュ型」「プル型」の3通りに大別されます(下図参照)。

そして、主要なコミュニケーション手段と性質は次のように分類できます(下図参照)。

大切なのは、適材適所で使い分けること。たとえばステークホルダーの支持を得る場合は、原則として双方向コミュニケーションが必要です。ときには言葉による説得だけでなく、非言語コミュニケーションが有効な場合もあるでしょう。
「コミュニケーションマネジメント」とは、プロジェクトとステークホルダーの情報ニーズを満たすためにコミュニケーションを計画・実行・監視する一連の活動です。チーム内の対話や情報共有も含みますが、主眼はステークホルダーとのコミュニケーション。具体的なステップは、以下の3段階に分けられます。

特に重要なのは、第1ステップ「コミュニケーションマネジメントの計画」。ステークホルダーの情報をもとに、同分野の計画書を作成します。つまり、事前にステークホルダーを特定し、ステークホルダー登録簿を作成しておく必要があります。各段階で活用・作成する文書を追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

コミュニケーションマネジメント計画書は、ステークホルダーとの情報交換・伝達・共有方法などを定めた文書です。その内容は多岐にわたるため、3つの重点事項にしぼって解説します。
プロジェクトの関係者が求めるコミュニケーションの方法や頻度などです。たとえば、権力と関心度が高い関係者の場合。その要求事項にもとづいて「プロジェクトの目的を対面で説明」「その後は月次会議の議事録を共有」といった詳細な計画に落とし込みます。
エスカレーションとは、上位者に指示を仰いだり、報告したりすることです。上司への相談とは限りません。たとえば、会議や電子メールもエスカレーション手段のひとつ。「予算超過の兆候が週次会議で報告された場合、その議事録を部長に送付」といったプロセスを定めておきます。
独自の社内用語や略語を多用すると、認識の齟齬が生じかねません。社外から派遣されたプロジェクトメンバーも理解できるように、キーワードの意味や使い方を整理・共有しましょう。
ここからは「リスクマネジメント」について解説します。PMBOKにおける「リスク」とは、目標達成に影響をおよぼす可能性があり、発生が不確実なものごとを意味します。一般的にはマイナスのリスク(脅威)を思い浮かべますが、プラスのリスク(好機)も含みます。したがって、リスクマネジメントの目標は次の2つになります。
当然ながら、すべてのプロジェクトにリスクは潜んでいます。そしてプロジェクト期間を通して、さまざまなリスクが継続的に発生します。リスクを想定して先手を打てる人こそ、優秀なプロジェクトマネージャーです。問題が起きてから対処法を考えるのは、望ましくありません。「このプロジェクトにはリスクがない」と思い込んでいる方は、認識を見直しましょう。繰り返しますが、リスクのないプロジェクトはありません。
ただし、リスクを回避すべきとは限りません。PMBOKは「組織はリスクと報酬のバランスを保ちながら価値を創出するために、制御された意図的な方法でプロジェクトのリスクを取ることを選択すべき」と訴えています。
PMBOKでは、プロジェクトのリスクを「個別」と「全体」に分類しています。それぞれの定義を以下にまとめます。
上記はリスク管理における便宜上の分類です。いずれも最終的な責任者はプロジェクトマネージャーですが、全体リスクの対応は上級管理職が判断する場合もあります。
「リスクマネジメント」とは、プロジェクトの目標に対する不確実な影響を特定し、分析・計画・実行・監視する一連の活動です。具体的なステップは、以下の7段階に分けられます。

特徴的なのは、計画プロセスで5つのステップを踏むこと。各段階で作成する文書や補足事項などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

はじめてPMBOKを学ぶ人は、各矢印の詳細をすべて理解しなくても構いません。「リスクは継続的に発生するため、分析・計画・実行・監視のサイクルを回し続ける」という全体像を把握すればいいでしょう。
リスクマネジメントの計画を策定した後、第2ステップ「リスクの特定」を行います。そのアウトプットはリスク登録簿とリスク報告書。前者は特定したリスクとその詳細(要因・影響・対応計画・担当者など)を記録し、管理するための文書です(下図参照)。

この段階でリスクの発生確率は考慮しません。まずはプロジェクトに影響を及ぼす脅威・好機を徹底的に洗い出してください。その羅針盤となるのが、知識エリアの分類。「スコープ」「スケジュール」「コスト」「品質」といった分野ごとに整理すれば、漠然としたリスクを特定しやすくなります。
ただし、ステークホルダー登録簿と同じく、“登録して終わり”は禁物です。その後のプロセスの結果を踏まえて、情報を更新しましょう。更新のコツは、仕組みをつくること。たとえば、定例ミーティングの議題に「リスク報告」を組み込みます。すると、担当者がリスクの監視と特定を行い、自ずと登録簿が更新されます。
リスク報告書は、リスクに関する全体的な概要(リスクの状況、傾向、対応措置の有効性など)を記録する文書。プロジェクトの全体リスク要因に関する情報と個別リスクに関する要約情報を記録します。さらにプロジェクトの進行にともない、その後のプロセスの結果を追加。リスクの具体的な対応策やその結果も盛り込みます。
リスク登録簿との根本的な違いは、報告の頻度に応じて作成すること。たとえば、経営陣に対して四半期ごとの報告を行う場合、年間4本のリスク報告書を作成します。一方、リスク登録簿は常に最新版しか存在しません。
リスクの特定を終えたら、「リスクの分析」を行います。定性的分析の代表的な手法は「リスク発生確率・影響度査定」。下図のように、個別リスクの発生確率と影響度を分析します。

リスクの査定はインタビューや会議を通じて行いますが、すべての発生確率を割り出す必要はありません。火災リスクや為替リスクなど、影響度の大きい項目のみを査定すればいいでしょう。
定量的分析の代表的な手法は「感度分析」。プロジェクト目標に最も大きな影響を与えるリスクを特定し、優先順位をつける手法です。他のすべての不確実な要素をベースライン(基準値)に固定した状態で、個々の不確定要素が目標に与える影響を調べます(下図参照)。

PMBOKは定量的分析を推奨していますが、緻密な分析には時間もコストもかかります。プロジェクトの規模などに応じて、定性的分析で代替してもいいでしょう。
リスク分析の次は「リスク対応の計画」を策定します。具体的な計画はプロジェクトによって異なるため、PMBOKは基本的なリスク対応の戦略を示しています。
まず「脅威に対する戦略」は以下の5種類に大別されます。
上位者に指示を仰いだり、報告したりすることです。丸投げになりかねないので、抑制的に活用しましょう。
リスクの原因自体を取り除くことです。法規制のリスクなど、脅威の発生確率と影響度が極めて高い場合、プロジェクトの中止も回避策のひとつです。
リスクを取り除かず、第三者に移すことです。たとえば、火災保険に加入して、火災リスクを保険会社に転嫁します。
リスクの発生確率や影響度を下げることです。たとえば、防火壁や防火扉を設置して、火災リスクを軽減します。
特段の対応をせず、リスクを受け入れることです。脅威の発生確率も影響度も低い場合、有力な選択肢のひとつです。
次の「好機に対する戦略」は以下の5種類に大別されます。脅威への戦略と重なる項目もあるので、初出の項目のみを解説します。
リスクを確実に発生させるため、積極的に行動することです。たとえば、新製品のリリース時期を前倒しして、市場シェア拡大の好機を捉えます。
好機から得られる利益を第三者と分かち合うことです。たとえば、新たな成長市場から利益を得るため、競合企業と業務提携を結びます。
リスクの発生確率や影響度を上げることです。たとえば、市場での評価を高めるため、顧客の声を聞いて製品の機能を強化します。
いずれの戦略も個別リスク・全体リスクの双方に適用できます。分析結果を踏まえて、適切な対応を計画しましょう。

ステークホルダー管理のカギは、すべてのステークホルダーを適切な方法で特定し、関与させること。そして、早急にステークホルダーの特定と参与のプロセスを開始することです。重要な関係者に情報共有を怠ると、プロジェクトが止まるケースもあります。
コミュニケーション管理とは、プロジェクトとステークホルダーの情報ニーズを満たすための活動です。ステークホルダー登録簿などをもとに、関係者が求めるコミュニケーションの方法や頻度などを計画書に整理しましょう。ステークホルダーの多様な意向を無視して、画一的な対応をしてはいけません。
すべてのプロジェクトにリスクは潜んでいます。そのリスクを特定・分析し、適切な対応を計画しなければなりません。また、リスクはプロジェクト期間を通して継続的に発生します。リスク登録簿を更新する仕組みをつくり、リスク管理のサイクルを回し続けましょう。
PMBOKの考え方を理解しても、現場では関係者調整や情報共有、リスク対応でつまずくことは少なくありません。
こうした課題を防ぐには、チームで回る仕組みが重要です。PMBOKを実務に落とし込む方法をまとめた資料をご用意しています。ぜひご覧ください。
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<お役立ち資料> Lychee RedmineでできるPMBOK この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。 この資料でわかること
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次回は、「PMBOKに学ぶ統合マネジメント」について解説します。
<参考資料>
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第6版および第7版+プロジェクトマネジメント標準、PMI®
ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトに影響を与える利害関係者を特定し、その関与方法を計画・実行・監視する一連の活動です。
PMBOKでは、ステークホルダーのエンゲージメント(関与)を適切に管理することが、プロジェクト成功の重要な要素とされています。
ステークホルダーごとの情報ニーズに応じて、適切な方法・頻度・手段でコミュニケーションを行うことです。つまり、利害関係者が求めるコミュニケーションの把握と個別対応が重要です。このポイントを押さえれば、認識のズレやトラブルを防ぎやすくなります。
プロジェクトに影響を及ぼす脅威と好機を洗い出し、リスク登録簿に記録することです。この文書がリスクマネジメント(分析・計画・実行・監視)の土台となります。ただし、リスクは一度特定して終わりではありません。プロジェクト期間を通じて継続的に見直し、情報を更新しましょう。
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Ridgelinez株式会社 プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。 【保有学位】 【保有資格】 |
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Ridgelinez株式会社 富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。 【保有資格】 |
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第8回です。
→ 連載一覧を見る
※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「10の知識エリア」に着目。その締めくくりとして、プロジェクト全体のプロセスと活動をまとめる「統合マネジメント」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行までを支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。すべての知識エリアを統合的に理解し、プロジェクトの立ち上げから終結まで適切に管理しましょう。
「統合マネジメント」とは、プロジェクト開始から終了まで全体の計画・実行・監視・コントロール・終結を統合する一連の活動です。プロジェクト全体のプロセスと活動をまとめ、矛盾なく調整する中心的な役割を担っています。
いわば、プロジェクト管理の司令塔。その周りを他9つのマネジメント領域(知識エリア)が取り囲むようなイメージです。まずは全体像を把握するため、以下に概要を列記します。
※フェーズ:プロジェクトを管理しやすい単位に区切る段階。システム開発においては「要件定義」「設計」「開発・実装」「テスト」などの各工程がフェーズに相当する。
「統合マネジメント」のステップは、以下の7段階に分けられます。
他のマネジメント領域との大きな違いは、立ち上げから終結まで、すべてのプロセスを一貫して管理していること。そして「統合変更管理」というプロジェクト管理の要所を含んでいることです。各段階で作成する文書や成果物などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。
このフローチャートこそ、プロジェクト管理の基本図。すべてのメンバーが把握すべき全体像です。左上の「ビジネス文書」とは、プロジェクト立ち上げの理由、プロジェクトで得られる便益・利益などを記載した書類一式をさします。これらを基盤に「プロジェクト憲章」を作成します。
「プロジェクト憲章」とは、プロジェクトマネージャーに権限を与え、プロジェクトの目的・目標などを定める基本文書です。スケジュールやコストの計画を盛りこむ必要はありません。スコープの大枠を示し、ステークホルダーと共通認識を形成します。
この憲章の作成こそ、プロジェクトの始まり。PMBOKには「プロジェクトマネージャーの決定と任命は、常に計画策定に先立ち、プロジェクト憲章の作成中に行うのが望ましい」と記されています。しかし、実務的には憲章の作成前にプロジェクトマネージャーを任命しておくほうがいいでしょう。
その理由は、プロジェクトのスポンサー(顧客や上級管理職など)とプロジェクトマネージャーが共同で憲章を作成するため。そうすれば、プロジェクトの目的・目標、期待される便益・利益などをプロジェクトマネージャーがより深く理解できます。
プロジェクト憲章を作成した後、第2ステップ「プロジェクトマネジメント計画書の作成」に移ります。この計画書はプロジェクトの計画全体を統合し、実行・監視・コントロール・終結の指針となる文書。スコープマネジメントやスケジュールマネジメントなど、各領域の補助計画書を含む場合もあります。
必須の内容は、プロジェクト3要素の基本情報。少なくとも、スコープ・スケジュール・コストのベースライン(参照基準)を定義します。たとえば「機能は100個」「期間は1年」「予算は1億円」といった基準値を決定します。この後は第6ステップの「統合変更管理」を通さなければ、ベースラインを変更できません。
第4ステップ「プロジェクト知識のマネジメント」とは、プロジェクトの成功例・失敗例・注意事項などを集約して、知識資産として活用することです。たとえば「どの段階で、どんな問題が生じ、どう乗り越えたのか?」といった実例の因果関係を整理して「教訓登録簿」にまとめます。
これは全社的な知識資産です。プロジェクトごとに個別管理せず、組織全体で共有しましょう。この教訓登録簿が蓄積・更新されるほど、組織全体のプロジェクト管理能力が向上します。
第6ステップ「統合変更管理」では、プロジェクトの計画やベースラインに対する変更要求を評価・承認・管理します。
その特徴はすべての知識エリアの変更要求を文書化し、統合的な方法で検討すること。そして、変更が引き起こすプロジェクトの全体リスクに対処することです。スコープ・スケジュール・コストなど、相互に影響する変更要求を統合的に評価して、全体最適をめざします(下図参照)。
この統合変更管理は、プロジェクトマネージャーの独断で行ってはいけません。PMBOKは「変更管理委員会」の設置を推奨しています。委員選びのポイントは、客観性と多様性。品質保証部・経営企画部・監査部など、チーム外からも委員を任命しましょう。チーム内のメンバーばかりが委員を務めると、客観的な判断が難しくなります。
変更管理委員会の役割は、変更要求の可否を判断するだけではありません。変更を承認した場合は、成果物やプロジェクト文書などへの変更を適切に反映します。その後、変更内容などの決定事項をステークホルダーに伝達します。
最後のステップは「プロジェクトやフェーズの終結」。すべての活動を完了させ、契約を終了し、最終成果物や教訓を引き渡します。システム開発プロジェクトの場合、そのソースコードやシステム構成図、障害対応マニュアルなどを運用部門に引き渡します。
その際のポイントは引き継ぎチェックリストを作成して、運用部門とミーティングを行うこと。課題が残っている場合は、その詳細と対処法を共有しましょう。飛ぶ鳥、跡を濁さず。引き継ぎが不十分だと、後々のトラブルが生じやすくなります。
コミュニケーションが必要なのは、最終成果物を引き渡す部門だけではありません。すべてのステークホルダーを終結プロセスに関与させてください。関与の適切な方法は、関係者ごとに異なります。ステークホルダーエンゲージメント計画書などを参照し、最終報告会への出席依頼、議事録の送付などを行いましょう。
最後の仕上げは、ステークホルダー満足度の測定。会議やアンケート、インタビューなどの手法を用いて、関係者の満足度を測定します。プロジェクト単位ではなく、組織全体で取り組んだほうがいいでしょう。
「プロジェクト憲章」はプロジェクトの目的・目標などを定める基本文書です。プロジェクトマネージャーの任命時期について、PMBOKは憲章の作成中を推奨していますが、実務的には憲章の作成前がいいでしょう。そのほうが、憲章に対するプロジェクトマネージャーの理解が深まります。
「統合変更管理」とは、プロジェクトの計画やベースラインに対する変更要求を統合的に評価・承認・管理すること。その主体として、PMBOKは「変更管理委員会」の設置を推奨しています。客観的な評価を行うため、プロジェクトチームの外部からも委員を任命しましょう。
プロジェクトの終結は、全業務の完了を意味しません。システム開発プロジェクトの場合、最終成果物などを運用部門に引き渡します。その際に引き継ぎチェックリストを作成し、運用部門とミーティングを行いましょう。課題が残っている場合は、その詳細と対処法を共有してください。
PMBOKの統合マネジメントは、プロジェクト全体をつなぐ重要な考え方です。しかし実際の現場では、計画やルールがあっても運用がバラバラになるケースも少なくありません。
こうした課題を防ぐには、チームで回る仕組みが欠かせません。PMBOKを実務に落とし込む方法をまとめた資料をご用意しています。ぜひご覧ください。
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<お役立ち資料> Lychee RedmineでできるPMBOK この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。 この資料でわかること
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<参考資料>
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第6版および第7版+プロジェクトマネジメント標準、PMI®
統合マネジメントとは、プロジェクトの開始から終了まで、計画・実行・監視・コントロール・終結のすべてを横断的に調整・管理する活動です。
PMBOKでは、各知識エリアを個別に管理するのではなく、全体最適の観点で統合する中心的な役割として位置づけられています。
ひとつの変更が、プロジェクト全体や他の領域にも影響を及ぼす可能性があるからです。たとえばプロダクトの機能を増やす場合、予算の増額や期間の延長が必要になる可能性もあります。つまり、スコープ拡大の個別評価だけでは、その変更が引き起こすプロジェクトの全体リスクを見極められません。
統合変更管理では、すべての変更要求を文書化し、それらの影響を統合的に評価します。そのうえで承認・手直し・却下などの意思決定を行い、プロジェクトの全体リスクを抑え、ガバナンスを担保します。
原則として、統合マネジメントの責任者はプロジェクトマネージャーです。ただし、変更管理などの重要な判断は例外事項。PMBOKでは、変更管理委員会や上級管理職を含めた体制による客観的な判断が推奨されています。
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Ridgelinez株式会社 プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。 【保有学位】 【保有資格】 |
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Ridgelinez株式会社 富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。 【保有資格】 |
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第5回です。
→ 連載一覧を見る
※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「10の知識エリア」に着目。今回はプロジェクトの利益を左右する「コストマネジメント」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行までを支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。各分野の専門知識を身につけ、プロジェクト管理を強化しましょう。
「コストマネジメント」とは、プロジェクトを承認済みの予算内で完了するための一連の活動です。具体的なステップは以下の4段階に分けられます。

PMBOKを学んでいない方も、各ステップを実行しているはずです。各段階で作成する文書や管理手法などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

コストマネジメントの計画を定めたら、必要なコストを見積もります。プロジェクトの特性に応じて、適切な見積もり技法を使いましょう。以下に代表的な手法を紹介します(スケジュールマネジメントで用いられる技法と同じです)。
類似のアクティビティやプロジェクトにおける過去のデータをもとに、コストを見積もる技法です。手軽なため、さまざまなプロジェクトで幅広く用いられます。精度にバラつきはありますが、プロジェクトの初期段階で有効です。
「最頻値」「楽観値」「悲観値」の3つの値をもとに、コストを見積もる技法です。特に有効なのは、3名以上のプロジェクトリーダーがいる場合。三者三様(現実的・楽観的・悲観的)の見積もりを行うと、個人の主観に偏りません。労力はかかりますが、高い精度が期待できます。
過去のデータとプロジェクトのパラメーター(変数)をもとに、コストを見積もる技法です。適切なパラメーター設定が難しく、類推見積もりのほうが有効な場合もあります。
一つひとつのアクティビティに必要なコストを集計して、全体のコストを見積もる技法です。見積もりに手間はかかりますが、高い精度が期待できます。
コストの見積もりは、これで終わりではありません。PMBOKでは予備コストの確保が推奨されています。2種類(既知/未知)のリスクに備えて、2段階の予備コストを設定しましょう。
第2ステップ「コストの見積もり」において“既知”のリスクに備えるための予備費です。既知のリスクとは、想定されるトラブルや遅延など、不確実でも予測可能なリスクをさします。コストベースライン(プロジェクト予算の基準値)に含まれるため、プロジェクトマネージャーの裁量で使えます。
第3ステップ「予算の設定」において“未知”のリスクに備えるための予備費です。未知のリスクとは、不確実で予測できないリスクをさします。コストベースラインに含まれず、プロジェクトマネージャーの裁量では使えません。上級管理職の承認が必要です。
多くの日本企業では2段階の予備コストを区別せず、あいまいな「予備費」として一括りにしています。そのせいでバッファが不十分になり、予算超過・進捗遅延・品質低下などの危険性を高めています。
なお予備コストの割合について、PMBOKは基準値を示していません。本稿を監修する尾形順一氏(日本プロジェクトマネジメント協会の講師)の場合、コンティンジェンシー予備・マネジメント予備ともに「プロジェクト予算全体の10%前後」を目安にしています。あくまでも目安なので、各プロジェクトの特性や過去のデータなどを考慮しましょう。
予備コストの設定は、コスト管理の第2ステップ「コストの見積もり」と第3ステップ「予算の設定」を縦断しています。その関係を整理するため、コストの積算手順とプロジェクト予算の構成を下図に示します。

下部の2段が「コストの見積もり」に相当します。ここでプロジェクト全体の作業(アクティビティやワークパッケージ)に必要なコストを見積もり、コンティンジェンシー予備を加算します。
次の「コントロールアカウント」とは、コストを管理するための基本単位。上段のコストベースラインと同じです。ここにマネジメント予備を加えたものが、いわゆる「プロジェクト予算」です。つまり、上部3段のコスト積算が「予算の設定」に相当します。
当然ながら、いずれの予備費も値引きの原資ではありません。顧客からの受注を最優先して、予備コストを削るのは禁物です。やがて現場にしわ寄せが及び、システム障害などが起こる危険性が高まります。上級管理職は大局的な観点に立ち、適切な予算を確保してください。
予算の設定が終わると、実際にプロジェクトが動き出します。そこで重要になるのが、第4ステップ「コストのコントロール」です。具体的な手法として、PMBOKではEVM(Earned Value Management:出来高管理)が推奨されています(下図参照)。

これはプロジェクトのパフォーマンスと進捗を評価するために、スコープ・スケジュール・資源についての測定値を結びつける方法論。相互に影響するスケジュール管理とコスト管理を同時に行いながら、将来の予測にも活用できます。
EVMは複雑な手法なので、本稿では概略の説明に留めます。下図において、特に重要な指標はEAC(完成時総コスト見積もり)。プロジェクトの進捗状況をもとに、最終的コストを予測した数値です。比較対象となるのはBAC(完成時総予算)。計画時に定めたプロジェクト完了までの総予算です。

上図ではEACがBACを超過しており、VAC(完成時コスト差異)が生じています。つまり、計画を超えるペースで予算を使っているわけです。横軸を見ると、完成予定日も遅くなる見込み。このような予算超過や納期遅延の予兆をEVMで検知すれば、早期に対策をとることが可能です。

楽観的な見積もりは予算超過に直結します。それぞれの作業タスクに必要なコストを“現実的に”見積もってください。有用なのは、類似のプロジェクトデータや専門家の知見など。プロジェクトの特性に応じた見積もり技法を活用し、適切な予算を設定しましょう。
PMBOKでは、2種類の予備設定が推奨されています。ひとつは予測可能なリスクに備える「コンティンジェンシー予備」。もうひとつは予測できないリスクに備える
受託開発などのプロジェクトを進める場合、受発注の上下関係が生まれやすくなります。しかし、あくまでもプロジェクト管理の主体は開発側です。発注側の圧力に押されて、無理な予算を組んではいけません。プロジェクトマネージャーとビジネスアナリストが連携し、必要な予算を発注側に明示しましょう。
ここまでコストマネジメントの考え方と進め方について解説してきました。スケジュールとあわせてコストを管理し、プロジェクト全体を適切にコントロールすることが重要です。 PMBOKの考え方を実務でどのように活かすか、Lychee Redmineでの活用イメージとあわせてまとめた資料もご用意しています。
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<お役立ち資料> Lychee RedmineでできるPMBOK この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。 この資料でわかること
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<参考資料>
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第6版および第7版+プロジェクトマネジメント標準、PMI®
・類推見積もり(類似のアクティビティや過去のデータをもとに推定)
・3点見積もり(最頻値・楽観値・悲観値をもとに算出)
・パラメトリック見積もり(過去のデータとプロジェクトの変数をもとに算出)
・ボトムアップ見積もり(小さな作業単位を積み上げて算出)
各プロジェクトの特性に応じて、適切な技法を使い分けましょう。そうすれば、見積もりの精度が高まります。
前者の「コンティンジェンシー予備」は予測可能なリスクに備える費用で、プロジェクトマネージャーの裁量で使えます。後者の「マネジメント予備」は予測できないリスクに備える費用で、上級管理職の承認が必要です。2種類の予備費を設定することで、予算超過・進捗遅延・品質低下などの問題を未然に防ぎます。
PMBOKではEVM(出来高管理)という手法が推奨されています。この管理手法を用いれば、コスト効率指数(CPI)や完成時コスト見積もり(EAC)などの指標を通じて「計画通りに進んでいるか」などをひと目で確認できます。EVMを実践するには、Excelやプロジェクト管理ツール、BIツールなどが必要です。
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Ridgelinez株式会社 プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。 【保有学位】 【保有資格】 |
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Ridgelinez株式会社 富士通システムソリューションズに入社後、フィールドSEとして流通業や運輸業などの基幹システム再構築プロジェクトに参画。富士通へ転籍後、プロジェクトマネージャーとして、総合商社・専門商社の基幹システム再構築プロジェクトを担当。2021年、アジャイル開発プロジェクトの実践経験を活かし、部門全体のアジャイル普及に向けた商談プロセス・商材の標準化や、アジャイル研修の設計・作成と講師などの活動を行う。2024年より現職。 【保有資格】 |
本記事は「専門家が教えるPMBOKの理論と実践」第4回です。
→ 連載一覧を見る
※本記事は、Ridgelinezのプロジェクトマネジメント専門家が監修しています。
PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系がまとめられたガイドブックです。第7版では原理・原則ベースの構成に変わりましたが、旧版の実用性は損なわれていません。プロジェクトマネジメントの実務において、第6版の知識体系は現在も有用です。
そこで本連載では、第6版に記された「10の知識エリア」に着目。今回はプロジェクト管理の基本である「スケジュールマネジメント」について解説します。記事の監修者はRidgelinez(戦略から実行までを支援する総合プロフェッショナルファーム)のプロジェクト経験豊富なエキスパートたち。同社の尾形順一氏は、日本プロジェクトマネジメント協会および大学の講師も務めています。各分野の専門知識を身につけ、プロジェクト管理を強化しましょう。
スケジュールマネジメントの全体像を理解するために、まずは下図をご覧ください。これはプロジェクトスケジュールの作成を表した概念図です。

左の楕円がさまざまなスケジュール法、右の楕円がプロジェクト固有の情報を表しています。固有の情報には、スコープマネジメントの際に作成したWBS(作業分解構成図)が含まれます。この左右の楕円を重ね合わせて、プロジェクトのスケジュールを作成します。
その際に重要なのは、ひと目でスケジュールがわかること。アクティビティリストやバーチャート、ネットワーク図など、誰もが理解しやすい形式で表現しましょう。

ここからは「スケジュールマネジメント」について、詳しく解説します。それはプロジェクトの段取りや予定表などを作成し、所定の時期に完了させるための一連の活動。具体的なステップは以下の6段階に分けられます。

特徴的なのは、計画プロセス群が多いことです。「スケジュールの作成」を含めて、5つのステップを踏む必要があります。各段階で作成する文書やスケジュール技法などを追加し、それぞれの関係を下図に整理しましょう。

第2ステップ「アクティビティの定義」とは、WBSを構成するワークパッケージ(作業項目)の細分化です。ここでは代表的な技法を解説します。まずは下図をご覧ください。

成果物の作成プロセスなどを管理しやすい小さな要素に分解する技法です。PMBOKではワークパッケージを要素分解したものを「アクティビティ」と呼びます。いわゆる「作業タスク」と解釈してかまいません。各用語の厳密な定義よりも「より小さな作業タスクに分解する」という方法論の理解が重要です。
この技法では、まず予測しやすい直近の作業を詳細に分解します。上図の場合、明確な5つのワークパッケージを計10個のアクティビティに分解します。そして、予測が難しい将来の作業(PP212)は、大まかな計画(プランニングパッケージ)に留めておきます。プロジェクトの進行にともない、後でアクティビティを定義(段階的に詳細化)するわけです。
「アクティビティの定義」を通じて、さまざまなアウトプットが生み出されます。特に重要なのは、以下2種類のリストです。
作業タスクの一覧表です。それぞれの作業範囲を確実に理解できるように「いつ、誰が、何をするのか」を詳しく記述しましょう。ただし、プロジェクトの進行にともない、作業タスクが増減する可能性があります。アジャイル開発やローリングウェーブ計画法を使用する場合、定期的にリストを更新してください。
マイルストーンとは、プロジェクトの中間目標や節目です。「開発完了」「テスト完了」など、重要な意味を持つ時点やイベントをさします。これはスケジュールマネジメントの必須要素。必ずリスト化して、契約上必須のものか、任意の節目なのかを分類しましょう。たとえば、顧客から「今期末までに予算を使い切りたい」という要望を受けた場合、期末日から逆算して複数のマイルストーンを設定します。
すべてのアクティビティをリスト化したら、それぞれの作業順序を設定します。ここで重要なのは、各アクティビティの依存関係。すべての作業を同時並行で進めるわけではなく、物理的な制約や作業効率などを考慮して適切な順序を決めます。下図のように、ひと目でわかるように整理しましょう。

アクティビティの順序を設定したら、全体の所要期間を見積もります。プロジェクトの特性に応じて、適切な見積もり技法を使いましょう。以下に代表的な手法を紹介します。
類似のアクティビティやプロジェクトにおける過去のデータをもとに、所要期間を見積もる技法です。手軽なため、さまざまなプロジェクトで幅広く用いられます。精度にバラつきはありますが、プロジェクトの初期段階で有効です。
「最頻値」「楽観値」「悲観値」の3つの値をもとに、所要期間を見積もる技法です。特に有効なのは、3名以上のプロジェクトリーダーがいる場合。三者三様(現実的・楽観的・悲観的)の見積もりを行うと、個人の主観に偏りません。労力はかかりますが、高い精度が期待できます。
過去のデータとプロジェクトのパラメーター(変数)をもとに、所要期間を見積もる技法です。適切なパラメーター設定が難しく、類推見積もりのほうが有効な場合もあります。
一つひとつのアクティビティに必要な期間を集計して、全体の所要期間を見積もる技法です。見積もりに手間はかかりますが、高い精度が期待できます。

スケジュール管理の基本は、具体的な作業の明確化です。WBSを構成する作業項目(ワークパッケージ)を、より小さな作業タスク(アクティビティ)に要素分解しましょう。そうすれば、所要期間の見積もり精度が飛躍的に向上します。予測が難しい将来の作業は、大まかな計画に留めてもかまいません。
すべての作業タスクを明確化したら、それぞれの順序を整理します。ここで重要なのが、各タスクの関係。たとえば、設計と開発の間には「設計が終わらないと、開発を始められない」という依存関係があります。「前の作業が完了しないと始められない作業」と「同時並行で進められる作業」を区別し、適切な論理的順序を設定しましょう。
楽観的な見積もりはスケジュールの遅延に直結します。それぞれの作業タスクに必要な期間を“現実的に”見積もってください。有用なのは、類似のプロジェクトデータや専門家の知見など。プロジェクトの特性に応じた見積もり技法を活用し、実現可能な期間を設定しましょう。リスクに備えて、予備期間を確保することも重要です。
受託開発などのプロジェクトを進める場合、受発注の上下関係が生まれやすくなります。しかし、あくまでもプロジェクト管理の主体は開発側です。発注側の圧力に押されて、無理なスケジュールを組んではいけません。プロジェクトマネージャーとビジネスアナリストが連携し、必要な期間を発注側に明示しましょう。
ここまでスケジュールマネジメントの考え方と進め方について見てきました。これらを踏まえ、プロジェクト全体の流れを可視化し、実務で活用していくことが重要です。 スケジュール管理をはじめとしたPMBOKの考え方を、Lychee Redmineでどのように実践できるのかについては、資料でもわかりやすくまとめています。
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<お役立ち資料> Lychee RedmineでできるPMBOK この記事で紹介した「PMBOK(ピンボック)」と、Lychee Redmineの活用方法を結びつけて解説した資料です。 この資料でわかること
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次回は、「見積もり・予備コストの設定・EVM」について解説します。
スケジュールをもとに、どのようにコストを見積もり、進捗を管理していくかを実務に即して詳しく見ていきます。
スケジュールマネジメントとは、プロジェクトを所定の時期に完了させるために、作業の順序・期間・進捗を体系的に管理する一連の活動です。PMBOKでは、スケジュールの計画・作成・コントロールなどを6つのステップに分けています。これらの実施により、納期遅延やリソースの偏りを防ぎ、効率的にプロジェクトを進めることができます。
WBS(Work Breakdown Structure)は、スケジュールマネジメントの基盤となる作業分解構成図です。まずスコープマネジメントで作成したWBSをもとに、ワークパッケージ(作業項目)を小さなアクティビティ(作業タスク)に分解します。そのうえで各作業の順序設定や期間見積もりを行い、プロジェクト全体のスケジュールを作成します。
▶関連項目:第3回記事「WBSの作成」PMBOKでは、以下のような見積もり技法が紹介されています。
・類推見積もり(類似のアクティビティや過去のデータをもとに推定)
・3点見積もり(最頻値・楽観値・悲観値をもとに算出)
・パラメトリック見積もり(過去のデータとプロジェクトの変数をもとに算出)
・ボトムアップ見積もり(小さな作業単位を積み上げて算出)
各プロジェクトの特性に応じて、適切な技法を使い分けましょう。そうすれば、見積もりの精度が高まります。
プロジェクトの遅延を防ぐには、所要期間の現実的な見積もりと作業の論理的な順序設定が不可欠です。発注側の圧力に押されて、無理なスケジュールを組んではいけません。PMBOKでは、作業タスクの依存関係を明確化し、定期的な進捗確認とリスク対応を推奨しています。
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Ridgelinez株式会社 プロジェクトマネジメントおよびアジャイルDevOpsの専門家。日立製作所、デロイトトーマツコンサルティングなどを経て現職。大規模アジャイルおよびアジャイルシフト、DXにともなう組織的変革管理(OCM)において、数多くの実践経験を有する。日米欧のプロジェクトマネジメントおよびアジャイル標準に精通し、日米欧3団体の最上位認定を保有。企画・要件整理・設計・開発・テスト・運用・内製化まで、実践型の伴走を行う。これまでに40件以上のプロジェクトマネジメントを経験。日本プロジェクトマネジメント協会のPMBOK講座のほか、私立大学でもプロジェクトマネジメント論の講師を務める。 【保有学位】 【保有資格】 |
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