私たちは、プロジェクト管理やタスク管理にまつわるプロダクトを手掛ける企業の一員として、常に「より良い働き方とは何か」を探求しています。
その一環として、社員がタスク管理や業務の進め方に関する知識をさらに深め、実践力を高めるために社内研修を実施しました。

今回の研修では、チーム内の連携を強化するアプローチに重点を置き、実践的なワークを通して、より効果的で質の高い仕事の進め方について学びました。

本レポートでは、この研修の内容や学びを一部抜粋し、タスク管理や業務改善に興味のある方々に少しでも役立つ情報をお届けできればと思います。

仕事を始めやすくするテクニック

新しいタスクやプロジェクトに取り組む際、多くの人が最初の一歩を踏み出すことに難しさを感じます。しかし、適切なテクニックを用いることで、よりスムーズに仕事を始められるようになります。
手始めに、仕事のハードルを下げ、スムーズに取り掛かるための具体的な方法をご紹介します。

タスクを細分化する

タスクとは、具体的にイメージできる作業を指します。
例えば、「山田さんにメールを送る」というタスクであれば、本文の内容、送信タイミング、CCに誰を含めるか、資料の添付が必要か、といった具体的な要素まで具体化します。

複雑なタスクは小さな作業に分けることで、どこから手をつければよいのかが明確になり、着手しやすくなります。
加えて、担当者、期限、作業時間を明らかにしておくことで、タスクの管理や共有がより円滑に進みます。
細分化されたタスクは、チーム内での認識のズレを減らし、効率的な連携を実現します。

タスクを細分化

タスクに優先順位をつける

タスクの優先順位を決める方法としては、アイゼンハワーマトリクス(時間管理のマトリクスともいう)が有名です。
これは重要度と緊急度に基づきタスクを4つの領域に分けて考える方法ですが、第3領域の「重要ではないが緊急なタスク」に時間を取られやすいので、優先順位を常に見直す必要があります。

時間管理のマトリクス

優先順位付けしたリスト

個人の生産性を向上させるテクニック

タスクの実行方法で注意すべき点の一つは、マルチタスクです
一見効率的に思えますが、複数の作業に手を広げることで集中力が散漫になりミスが増えたりと、結果的に余計な時間を費やしてしまうことがあります。
また、未完了のタスクが気になってしまうというツァイガルニク効果によって脳に余分な負荷がかかりストレスを増大させるなど、精神的な疲労も高まるため、全体的なパフォーマンスを低下させる原因となります。

集中を高めるためのタスクの実行方法

ポモドーロ・テクニック

ポモドーロ・テクニックは、25分間作業、5分間休憩を繰り返すことで集中力を維持し、生産性を高める手法です。このように、時間を一定期間ごとに区切るような管理方法をタイムボックス管理と呼びます。

<基本的な流れ>

  1. 25分間、優先順位の高いタスクから集中して作業する
  2. 5分間休憩を取る(タスクが完了しなくても延長しない)
  3. これを4回繰り返したら、15~30分間の長い休憩を取る

ポモドーロテクニック

この方法は、短い集中と休憩を繰り返すことで集中力を維持しやすくなり、作業効率を向上させることができます。

今回の研修の実施にあたっても、座学とワーク全編にわたってポモドーロ・テクニックが活用されていました。

チームの生産性を高めるためのテクニック

個人での取り組みが軌道に乗ってきたら、次に重要なのは、チーム全体としてどのように連携し、最大の成果を上げるかです。
チームで仕事を進める際には、ただ各々の役割を果たすだけでなく、互いの動きや進捗を理解し協力して課題に取り組む姿勢が求められます。
ここでは、チームとして効果的に仕事を進めるために意識すべきポイントや、協力しながら課題を解決していくアプローチについて探っていきます。

顧客を中心に考える「フロー効率」の重要性

仕事の進め方やプロセス全体のスムーズさを測る指標として、「フロー効率」と「稼働効率」という2つの考え方があります。

フロー効率は、プロセス全体の流れを最適化する考え方です。「プロセス間の作業をスムーズに受け渡す」「待ち時間をなくす」「ボトルネックの処理能力を上げる」ことを目指します。

フロー効率の例

一方、稼働効率は、あるプロセスで使う人員や設備、資材などのリソースを最大限に活用することを目指す考え方です。「稼働率を上げる(常に稼働する)」「作業時間を短縮する」「コストを下げる」ことを目指します。

稼働効率

稼働効率を重視しすぎると、他の部分で問題が発生することがあります。
例えば、複数の作業者が分業して各々の作業に集中した場合、作業者の稼働効率は上がりますが、品質の低い成果物が作られたり、後工程でそれらの作業を統合する際に情報共有が必要になって余計な時間がかかったり、一部の作業者に負荷が集中したりすることがあります。

稼働効率のデメリット

このように、稼働効率を優先すると、全体の流れに滞りが発生し、顧客体験が悪化する可能性があります。自分の担当作業だけに集中するのではなく、フロー効率を優先して全体の流れを意識しながら協力しあうことで、コミュニケーションの改善やさまざまな無駄が削減され、より迅速に高品質なものを提供できるようになります。

ボトルネックを発見する”カンバン”

カンバン

カンバンは、1つのタイムボックス内で進行中のタスクの状況を「見える化」する手法です。
カンバンボードを使うと、未完了タスクの滞留を発見することができます。また、チーム全体で進捗を共有でき、タスクを完了させる意識が高まります。

同時に進行するタスク数を制限することで、プロセスの中でボトルネックがどこにあるかも明確になり、さらなる改善の手がかりを得ることができます。
このような方法は、カンバン方式でよく使われる『WIP(Work In Progress)制限』という仕組みにも基づいており、チームの負荷バランスを取りつつ、生産性を最大化するための効果的なアプローチです。

ステータス

フロー効率を高める”ペアワーク”・”モブワーク”

ペアワーク

ペアワークは、作業者(ドライバー)とサポート役(ナビゲーター)がペアを組んで進める方法です。
ドライバーは自分がしようとしていることを声に出して進め、ナビゲーターはドライバーがスムーズに進められるようにアドバイスします。
この方法は、作業の受け渡し時間がなく、リアルタイムでレビューを行うようなもので、手戻りなく作業のスピードを上げることができます。

ペアワーク

モブワーク

モブワークは、1人のドライバーと複数のナビゲーターで作業を進める方法で、ナビゲーター同士が相談しながらドライバーに作業指示を出します。
合意形成を早めたり参加者全員への知識の共有がタイムリーに実施されます。

モブワーク

モブチーム

実際にやってみた

個人とチームの生産性向上を目指し、フロー効率を意識したペアワークやモブワークと、ポモドーロ・テクニックを組み合わせて実践しました。
2時間(4ポモドーロ分)にわたる取り組みでは、価値提供のスピードと品質を重視し、メリハリのある作業を体験しました。

感想

ペア・モブワークは複数人で同じ作業に取り組むため、無駄に時間がかかるように見えますが、実際に体験してみると、レビュー待ちでタスクが終わらないストレスもありませんし、参加者が積極的に意見を出しあうことで、あっという間に品質の高いものをつくることができました。
さらに、参加者全員が同じ作業に関与することで、知識やスキル、よりよいやり方がチーム全体に共有されるので、これを続けることでタスクの属人化も防げそうだなと思いました。

研修内で上がったQA抜粋

  • Q.複数のチームに所属している場合、どのようにペア・モブワークを行うべきでしょうか?
    A. 稼働比率を事前にチームと共有し、どのチームでいつ・どのぐらい働くのか、業務時間をあらかじめ設定すると調整がしやすくなります。

  • Q.期限がある作業が多く、ペア・モブワークをする時間の余裕がありません。どうしたらいいでしょうか?
    A. 期限の調整やスコープの調整をして余裕をつくることから始めましょう。
    稼働効率を高めて分業することによって一時的にスピードを得るよりも、知識共有や高品質なものを生み出すために協働することで、長期的には安定した速さを得られるようになります。

  • Q.モブワークをしても、話す人が固定化されてしまい、ただ見ているだけの人が出てきそうです。
    A. ドライバー以外のメンバーにも意見を求める時間を意識的に設けるとよいでしょう。参加者は『自分はどんな貢献ができるか』を考えながら参加することが大切です。
    「話してはいけない」「間違ったらどうしよう」といった不安を減らすために、失敗を許容する文化や、意見を受け入れる態度をチーム全体で意識しましょう。

  • Q.経験や知識が豊富な人の意見を優先しがちで、自分の意見を出すのが難しく感じます。
    A. 臆さず意見を出しましょう。採用されなかったとしても、その理由が明らかになることでチームとしてのナレッジは溜まるはずです。
    結果的に、短時間で正しい意思決定をすることに貢献していると感じられるでしょう。

  • Q.全ての作業をペア・モブワークで行うべきですか?
    A. 調査など、複数人で一緒に作業をすることが極端に非効率的なものは分担しても構いませんが、常にお互いに声をかけ合い、状況を共有することが重要です。

  • Q.リモートワークではひとりで集中して仕事をしていました。今までのやり方と違いすぎて、いきなり常時ペア・モブワークの働き方に変えるのはしんどいです。
    A. フロー効率を高めることで得られる効果は非常に大きいです。SlackやZoom、仮想オフィスなどのツールを活用して、まずは自分の画面を見せながら作業をすることに慣れましょう。
    自分が困ったときや誰かが困っている状態を発見したときにすぐに声をかけてペア・モブワークを始めるのが理想です。

まとめ:フロー効率を重視してチームのパフォーマンスを向上させよう

今回の研修では、ペアワークやモブワーク、ポモドーロテクニックなどの有用性を実体験しました。
フロー効率を意識することで、より迅速にかつ質の高い成果物を提供できそうでワクワクしました。また、チームで一緒に働くことの良さも感じることができました。
アジャイルウェアでは、これらの手法を日常的に取り入れ、チームが一丸となって目標を達成できるように常にカイゼンを続けています。
ペアワークやモブワークによる協働、ポモドーロテクニックによるメリハリ、意外といいですよ。
このレポートが、みなさんのチームの何かの役に立てたら幸いです。