変更要求とは?種類・管理プロセス・判断基準を解説

様々な要因が重なり、やむなく生じた変更要求への適切な対応は、プロジェクトのスムーズな進行に欠かせません。

本記事では、プロジェクトにおける変更要求の基礎知識や種類を解説します。変更要求の発生原因や管理プロセスなども、あわせてご覧ください。

【基礎】変更要求とは

変更要求とは、プロジェクトの進行中に発生する、プロジェクト計画・スコープ・成果物、またはその他の要素に対する修正や追加の正式な提案・手続きです。プロジェクトの初期段階で予期していなかった事態や、外部環境の変化・技術的な制約など、様々な要因によって発生します。

プロジェクトにおける要求変更の重要性

プロジェクトにおいて変更要求は、生じさせないのが基本ですが、やむなく発生する場合があります。例えば、市場のニーズが変化し、計画していたものに変更を加える必要がある場合などです。

やむなく発生した変更要求には、適切な管理のもとで対応することが大切です。変更要求に適切な対応をとることで、プロジェクトを成功に導けます。

変更要求が無視された場合のリスクと影響

変更要求を無視することは、プロジェクトに深刻なリスクと影響をもたらす可能性があります。具体的には、品質の低下やステークホルダーとの関係悪化などです。

変更要求を無視するのは、一時的な手間やコストを回避できるかもしれませんが、長期的にはより大きな損失につながる可能性があります。変更要求には、迅速かつ適切に対応することが重要です。

変更要求の種類

変更要求の内容は多岐にわたります。本章では、プロジェクトでよく見られる変更要求の種類を解説します。

是正処理

是正処理とは、計画から逸脱したプロジェクトの成果物やプロセスを修正するための変更要求です。製造業において製品の品質が基準に満たない場合に、製造プロセスや材料の変更を求める場合が該当します。

予防処置

予防処置は、将来起こりうる問題や不具合を未然に防ぐための変更要求です。ソフトウェア開発中にセキュリティ上の脆弱性が見つかった場合に、事前に修正パッチを適用する場合です。

不具合修正

不具合修正は、製品やシステムに発生した不具合を修正するための変更要求です。Webサイトでリンク切れが発生した場合や、ソフトウェアでエラーが発生したケースが該当します。

更新

更新は、製品やシステムの機能改善や性能向上を目的とした変更要求です。ソフトウェアのバージョンアップや、Webサイトのデザイン変更などが該当します。

変更要求のおもな発生原因

変更要求は、プロジェクトの進行中に様々な要因によって発生します。本章では、変更要求の発生につながる、おもな3つの原因を解説します。

要件定義があいまい

あいまいな要件定義は、開発チームとクライアントの間で認識のずれが生じてしまいます。そのため、あいまいな要件定義は、変更要求が発生する原因です。

例えば、クライアントの要望を十分に聞き取れていなかったり、要件の優先順位が明確でなかったりすると、開発が進むにつれて「やっぱりこれも必要」「これは重要度が低いから後回しで良い」といった変更要求が出てくることがあります。

外部環境が変化

市場の動向や法規制の変更、競合他社の動きなどの変化に対応するために、システムの仕様や機能の変更が必要となる場合があります。 

例えば、新しい法律が施行された場合、システムがその法律に準拠するような変更が必要です。また、競合他社が新しい機能をリリースした場合、自社のシステムも同様の機能を追加することが求められます。

技術的制約

技術的な制約に起因して当初の計画通りに開発を進めることができない場合は、代替案を検討する必要が生じる場合があります。

例えば、開発中に使用していたライブラリがサポートを終了した場合、別のライブラリに移行する必要があります。また、新しいプログラミング言語の使用により効率的な開発が可能になる場合、言語変更の検討が必要です。

変更要求管理のプロセス

変更要求は、プロジェクトの進行において避けられない場合があります。大切なのは、変更要求の管理を適切に行うことで、プロジェクトの遅延や品質低下を防ぎ、最終的な成功へと導くことです。本章では、変更要求の受付から検証までの一連のプロセスを解説します。

変更要求を受付

まずは、変更要求の内容を明確に記述した申請書を受領します。変更のリクエストはプロジェクトメンバー全員が提出でき、申請書には、以下の情報を含めるのが一般的です。

  • プロジェクト名
  • 変更要求の提出者
  • 変更要求の提出日
  • 変更要求の具体的な内容
  • 変更要求の理由
  • 変更要求による影響範囲(予想)
  • 変更要求の優先度

変更要求の受付担当者は、申請書の内容を確認し、必要に応じて提出者に詳細な情報をヒアリングします。不明な点や曖昧な点があれば確認し、変更要求の内容を正確に把握します。

影響分析

影響分析とは、変更要求がプロジェクト全体にどのような影響を与えるかを評価するプロセスです。具体的には、以下の項目について分析します。

  • スケジュールへの影響
  • コストへの影響
  • 品質への影響
  • リソースへの影響
  • リスクへの影響

影響分析の結果に基づいて、変更要求の承認可否を判断します。変更によって得られるメリットが、デメリットを上回る場合に承認されるケースがほとんどです。影響分析の結果は、変更管理委員会(CCB)などの関係者の承認が必要です。

PMBOKでは、プロジェクト全体のスケジュールの比較基準となる「ベースライン」を作成し、どこまで変更するか否かで変更要求を区別することがあります。

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実装とテスト

実装担当者は、変更要求の内容に基づいてシステムなどを修正します。実装作業は、計画に基づいて実装・テストを実施し、適切に動作するかを確認します。テストでは、以下の項目を確認します。

  • 変更要求の内容が正しく実装されているか
  • 既存機能に影響が出ていないか
  • パフォーマンスに問題がないか
  • セキュリティに脆弱性がないか

テストで問題が発見された場合は、修正後に再度テストします。テストを繰り返すことで、品質を確保できます。

変更結果の検証

検証では、変更要求の目的が達成されているか、期待される効果が得られているかを確認します。検証は、ユーザーやステークホルダーなどの関係者と協力して実施しましょう。検証結果に問題がなければ、変更要求は完了です。変更結果は、文書化して関係者に共有します。

変更要求は管理プロセスを適切に実施することで、プロジェクトの変更を効果的にコントロールでき、プロジェクトの成功に貢献できます。

【Q&A】変更要求に関するよくある質問

変更要求が生じた場合に、ふとした疑問が頭をよぎる場合もあるでしょう。本章では、変更要求に関するよくある質問に答えます。

変更要求はすべて受け入れるべきか

変更要求は、プロジェクトに影響を与える可能性があるため、すべてを受け入れるべきではありません。変更要求を受け入れるかどうかは、以下の要素を考慮して慎重に判断する必要があります。

判断基準 詳細
プロジェクトの目標との整合性 変更要求がプロジェクトの目標達成に貢献するかどうかを評価します。目標から逸脱する変更は、原則として拒否すべきです。
スコープ、スケジュール、コストへの影響 変更要求がプロジェクトのスコープ、スケジュール、コストに与える影響を分析します。影響が大きい場合は、実現可能性を慎重に検討する必要があります。
品質への影響 変更要求がプロジェクトの品質に与える影響を評価します。品質を低下させる可能性のある変更は、避けるべきです。
リスク 変更要求に伴うリスクを特定し、評価します。リスクが高い場合は、リスク軽減策を検討する必要があります。
ステークホルダーの意見 関連するステークホルダーの意見を聞き、変更要求に対する支持や懸念を把握します。

変更要求の評価には、変更管理委員会(CCB)などの組織を活用することが効果的です。CCBは、様々な専門知識を持つメンバーで構成され、客観的な視点から変更要求を評価し、承認または却下を判断します。

重要なのは、変更要求を単に受け入れるか拒否するかではなく、プロジェクト全体にとって最善の判断を下すことです。

変更要求が多すぎたときの対処法

プロジェクト中に変更要求が頻発する場合、プロジェクトの安定性を損なう可能性があります。このような状況に対処するためには、以下の対策を検討しましょう。

  • 根本原因の分析:変更要求が多発する原因を特定します。要件定義の不足・コミュニケーション不足・外部環境の変化など、多角的な視点で分析します。
  • 変更管理プロセスの見直し:変更要求の受付・評価・承認・実装・検証といった一連のプロセスを見直し、効率化や厳格化を図ります。
  • 要件定義の強化:要件定義の段階で、顧客とのコミュニケーションを密にし、要件の明確化と合意形成を徹底します。プロトタイプやモックアップを活用し、視覚的に要件を確認することも有効です。
  • スコープ管理の徹底:プロジェクトのスコープを明確に定義し、スコープ外の変更要求は原則として拒否します。スコープクリープ(スコープの拡大)の防止が重要です。
  • コミュニケーションの改善:プロジェクトメンバー・顧客・ステークホルダー間のコミュニケーションを円滑にし、情報共有を促進します。定期的な会議や進捗報告などを活用しましょう。
  • 変更要求の優先順位付け:すべての変更要求を平等に扱うのではなく、プロジェクトへの影響度や緊急度に応じて優先順位を付けます。優先度の高い変更要求から順に対応することで、リソースを効率的に活用できます。
  • 変更ログの活用:過去の変更要求とその対応履歴を記録した変更ログを作成し、分析に活用します。類似の変更要求が発生した場合の参考になるほか、変更要求の傾向を把握し、将来の対策に役立てることができます。

変更要求が多発した場合は、問題の根幹を捉えて解決策を講じ、プロジェクトの安定性を確保するように努めましょう。変更要求を完全にゼロにするのは困難ですが、適切に対応することで多発する事態は回避できます。

変更要求に活用できる管理ツール

変更要求の管理を効率化するためには、管理ツールの活用も有効です。以下は、代表的な管理ツールとそれぞれの特徴です。

ツール名 特徴 メリット
Jira 課題管理・プロジェクト管理・変更管理など、多岐にわたる機能を備える。 柔軟なカスタマイズ性、豊富な連携機能、チーム collaboration の強化に優れる。
Redmine オープンソースのプロジェクト管理ツールで、課題管理・進捗管理・Wikiなどの機能を提供する。 無償で利用可能、シンプルな操作性、プラグインによる機能拡張に優れる。
Backlog タスク管理・バグ管理・Wikiなどの機能を備える。 直感的な操作性、ガントチャートによる進捗管理、チーム作業の促進に優れる。
Asana タスク管理・プロジェクト管理に特化し、シンプルな操作性と視覚的なインターフェースが特徴とする。 タスクの整理・追跡、チーム作業の効率化、進捗状況の可視化に優れる。

管理ツールは、変更要求の受付・追跡・承認・実装・検証といった一連のプロセスの効率的な管理に効果的です。また、変更要求に関する情報を一元管理できるため、情報共有の促進とコミュニケーションの円滑化にも期待できます。

ツールを選ぶときは、プロジェクトの規模・予算・必要な機能などを考慮し、無料トライアル期間を活用しながら最適なツールを選びましょう。

適切な変更要求の管理でプロジェクトを成功へ導こう

本記事では、変更要求の基礎知識のほか、発生原因や管理プロセスなどを解説しました。やむなく変更要求が発生した際は、適切に管理し、再発防止に努めるのが大切です。プロジェクトは、必要に応じて管理ツールを取り入れ、成功に導きましょう。

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