「プロジェクトマネジメントに取り組むにあたり、PMBOKへの理解を深めたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
PMBOKとは、プロジェクトマネジメントの知識をまとめたものであり、5つのプロセスと10の知識から構成されています。正しく導入することで、コミュニケーションマネジメントを正しく進められます。
本記事ではPMBOKの概要やコミュニケーションマネジメントの関係性について解説します。また、コミュニケーションマネジメントを進める際の流れやコツ、コミュニケーションの方法についても取り上げているため、ぜひ参考にしてください。
PMBOKとは
PMBOKとは、Project Management Body Of Knowledgeの頭文字をとった言葉であり、ビジネスにおけるプロジェクトマネジメントの知識をまとめたものです。
プロジェクトマネジメントを行うにあたって、どのようなプロセスで進めるべきか、それぞれのプロセスでは何を行うか、どのようなインプットが必要でどのようなアウトプットを行うかなど、プロジェクトマネジメントに取り組む人に非常に役立ちます。
PMBOKは、1987年にアメリカのProject Management Instituteが発表したものであり、2025年現在は第7版が展開されています。長い歴史を持ち、改訂を繰り返してきたPMBOKは、プロジェクトマネジメントの幅広い現場で用いられている点が特徴です。
PMBOKの目標
PMBOKの主要な目標は、プロジェクトの品質(Quality)、費用(Cost)、納期(Delivery)の最適化、すなわちQCDの適切な管理にあります。具体的には、プロジェクトの成果物を要求される品質水準を満たしつつ、予算内で効率的に実現し、可能な限り迅速に納品することを目指します。
このQCD管理を実現するために、PMBOKでは、相互に関連する5つのプロセス群と、プロジェクトマネジメントの知識を体系化した10の知識エリアという、二つの重要な要素が定義されている点が特徴です。
PMBOKのメリットと注意点
PMBOKには多くのメリットがある一方で、注意点も少なくありません。以下では、具体的にどのようなメリットと注意点があるのか解説します。PMBOKをプロジェクトマネジメントに取り入れたいと検討中の方はぜひチェックしてみてください。
メリット
PMBOKをプロジェクトマネジメントに採用する大きなメリットは、QCDの管理を効率よくできる点です。先ほども説明したように、PMBOKは5つのプロセスと10個の知識エリアが設定されており、プロジェクトの状況に応じてどのプロセスを実施するのか選択できます。それほど規模の大きくないプロジェクトであれば、このプロセスを選択すれば基本的なQCDの管理を問題なく行えるため、手間がかかりません。
また、PMBOKのプロセスと知識エリアはマネジメントにあたって何をするか、何をする必要がないのか、やるべきことに抜け漏れはないかといった点をふりかえる際に活用できる点も大きなメリットです。
注意点
PMBOKはプロジェクト管理の指針として有用ですが、一律でこのルールを適用するとかえって効率低下を招く場合があります。あらゆるプロジェクトに適合するわけではないため、状況に応じた修正が必要です。
また、PMBOKはプロジェクト遂行者の資質やスキル、イレギュラーな事態への対応には言及が少ない点に留意すべきです。そのため、PMBOKを基本としつつも、プロジェクトの特性に合わせて柔軟に活用し、予期せぬ事態には臨機応変に対応する能力が求められます。
PMBOKとコミュニケーションマネジメントの関係
PMBOKでは、10の知識エリアの1つにコミュニケーションマネジメントを設定しています。コミュニケーションマネジメントは、プロジェクトにおけるステークホルダーとの関係構築や、プロジェクトのスムーズな進行のために欠かせないものです。
PMBOKは、コミュニケーションマネジメントをプロジェクト実施者とステークホルダーの情報に関するニーズを満たすために必要なプロセスであり、プロジェクトを進めるために重要なものであるとしています。ポイントは、ただコミュニケーションを取れば良いものではなく、双方のニーズが満たされるように相手が何を求めているのかを理解する必要がある点です。
コミュニケーションマネジメントとは
コミュニケーションマネジメントとは、コミュニケーションを通して情報管理を行うプロセスのことです。クライアントなどのステークホルダーはもちろん、プロジェクトチームメンバーとの円滑なコミュニケーションを実現するために、コミュニケーションマネジメントは欠かせません。
相手とのコミュニケーションがなければ、進捗状況の確認や課題の把握、成功に向けたアドバイスなどは困難です。また、相手に応じた適切なタイミング、伝え方ができなければ、こちらの意図を正しく理解してもらえず、トラブルにつながる可能性もあります。プロジェクトマネジメントは、このような事態を回避するためにも欠かせないものです。
コミュニケーションマネジメントの目的
コミュニケーションマネジメントの目的は、適切なコミュニケーションを通してプロジェクトを成功へと導くことです。コミュニケーションが不十分なために認識が合わずトラブルが起こり、プロジェクトが頓挫するケースは少なくありません。コミュニケーションを定期的にとり、状況把握ができれば、進捗状況の遅れや現場での課題などもすぐに認識でき、問題が大きくなる前に対処できます。
このように、プロジェクトにおけるリスクを早い段階で取り除き成功へと導くためにも、プロジェクトマネジメントは欠かせないものです。
PMBOKにおけるコミュニケーションのプロセス
本章では、PMBOKにおいてコミュニケーションがどのようなプロセスで行われるのかを解説します。コミュニケーションの重要性は理解しているものの、流れや意識する点がわからない方はぜひ参考にしてください。
立ち上げ
コミュニケーションのプロセスの前提となるのが、プロジェクト開始前の立ち上げ段階です。ここではプロジェクトの具体的な目的や予算、成果などを明確にした上でステークホルダーの特定を行います。誰がプロジェクトにおける重要人物なのかがわかれば、その後のコミュニケーションも取りやすくなるため、重要なプロセスといえます。
計画
計画は、コミュニケーションマネジメントにおける最初のプロセスです。このプロセスでは、その名の通りプロジェクトの計画立案を行います。立ち上げの段階で設定した目的や目標を達成するために、具体的にどのような作業を行う必要があるのかを計画書に落とし込んでください。
例えば、情報はどのように保存するか、最終的な情報の廃棄方法はどうするか、ステークホルダーへの情報伝達方法はどのように行うか、コミュニケーションにおける責任者は誰なのかといった点が挙げられます。作成した計画は、コミュニケーションマネジメントにおける指針となるものですが、プロジェクトの進行途中でも定期的に見直され、必要に応じて修正する必要があります。
実行
実行プロセスは、作成した計画に基づいてプロジェクトを実行に移す段階です。計画書の内容に沿ってステークホルダーとの情報共有やコミュニケーションを行い、プロジェクトを進めます。必要に応じてコミュニケーションをとる場として会議を設定したり、ヒアリングの機会を設けたりするケースもあります。
また、情報伝達手段として複数のツールやプラットフォームの利用を想定する場合、どれが適切なのかを場面に応じて判断し、使い分ける必要があります。PMBOKにおけるコミュニケーションのプロセスの中でもリソースを要する段階であり、コミュニケーションマネジメントの成否を大きく左右するプロセスです。
コントロール
コントロールは、プロジェクトを進めていく中で、当初の計画通りに進んでいない点がないかをチェックし、必要に応じて計画の見直し・修正を行う段階です。業種や業界に関係なく、プロジェクトが当初の予想通りに進むことは多くありません。進めていく中で想定外の事態が発生したり、トラブルが発生したりするケースもあります。
また、コミュニケーションの取り方にステークホルダーが満足していないケースも想定されます。このような場合、状況を踏まえた上で課題を明確にし、対処できるように計画を修正しなければなりません。
終結
終結は、PMBOKにおけるコミュニケーションの最後の段階です。ここまでのプロセスが問題なく完了していることを確認した上でプロジェクトを正式に終結させます。ただし、そのまま終了させるのではなく、プロジェクトを通して得た情報やノウハウを蓄積し、次のプロジェクトに活用させることが大切です。
コミュニケーションマネジメントの進め方
以下では、コミュニケーションマネジメントの進め方について解説します。具体的な流れを把握できれば、よりスムーズにコミュニケーションマネジメントに取り組めるためぜひ参考にしてください。
関係者の把握
コミュニケーションマネジメントを進める上で最初に行わなければならないのが、関係者の把握です。プロジェクトにはクライアントをはじめとして、協力会社やプロジェクトチームメンバー、社内の他部署などコミュニケーションが必要となる人がたくさん存在します。
まずはどういった人たちがプロジェクトに関わっているのかを整理してください。その上で相手に対して、有効なコミュニケーション方法やツールは何かを明確にする必要があります。プロジェクトの規模が大きくなるほど関わる人も増えるため、関係者の把握はプロジェクトをスムーズに進めるためにも必要不可欠です。
コミュニケーションの経路の決定
関係者を把握したら、コミュニケーションの経路を決めます。情報を伝える相手やシチュエーションによって適切な経路は異なります。例えば、プロジェクトメンバーに対する情報共有であれば、プロジェクト管理ツールやチャットツールを使うことで全体への共有が可能です。一方でクライアントに流れを伝える場合は、メールが適切といえます。関係者やシチュエーションに応じて、どのような経路でコミュニケーションをとるのかを想定して設定する必要があります。
コミュニケーションの責任者を選定
コミュニケーションをとるにあたり、最終的な責任者は誰なのかを決める必要があります。責任者の設定は、プロジェクトメンバーにとって、コミュニケーションに関する疑問点や不安を確認する相手が明確になる点で有効です。また、クライアントにとっても、何かトラブルがあったときに誰に確認すれば良いのかが明確になるため、責任者の選定は欠かせないプロセスだといえます。
コミュニケーションの頻度の設定
コミュニケーションをどのくらいの頻度で行うのかについても決めておく必要があります。例えば、緊急性の高いものは即座にコミュニケーションを行うものの、進捗状況の報告は週に1回など、一定のタイミングで行うといった形です。密なコミュニケーションを取れるに越したことはありませんが、コミュニケーションをとることは、相手のリソースを奪うことにもつながりかねません。業務に支障が発生しない範囲で定期的にコミュニケーションを取れる頻度を設定してください。
PMBOKを活用してコミュニケーションマネジメントに取り組むコツ
本章では、PMBOKを使ってコミュニケーションマネジメントに取り組む際に押さえておきたいコツを紹介します。PMBOKの概要は理解したものの、どのように現場で活かせば良いのかわからない方は参考にしてください。
戦略の策定
まずは、プロジェクト関係者との効果的なコミュニケーションを取れるように戦略を策定してください。例えば、関係者に応じた適切なコミュニケーション経路の設定も戦略の1つです。
また、コミュニケーション頻度を決めておくことで定期的な情報交換・共有が行えます。PMBOKにおけるコミュニケーションマネジメントは、プロジェクト実施者とステークホルダーの情報に関するニーズが満たされた状態を目指すため、相手のニーズを想定した上で戦略策定を行ってください。
5Cを心がける
コミュニケーションをとるにあたっては5Cを心がけることが大切です。5Cとは、コミュニケーションによる解釈のくいちがいを回避するための考え方です。具体的には以下に挙げる、Cから始まる5つの単語のことを指しています。
- Correct:正しい文法や記述でコミュニケーションをとる
- Concise:シンプルな表現を心がけ過剰な言葉を取り除く
- Clear:相手のニーズに合致した明確な表現
- Coherent:論理的な流れを意識
- Controlling:言葉やアイデアの流れをコントロールする
これらの点を意識しながらコミュニケーションをとることで、解釈のくいちがいを回避できる可能性が高まります。
解釈の齟齬への対処法を検討する
5Cを意識していても、コミュニケーションをとる以上、解釈のくいちがいが生じる可能性はゼロではないため、対処法を検討しなければなりません。例えば、コミュニケーションの頻度を多くするだけでも誤解を回避できる可能性があります。また、別途対面でコミュニケーションを取る場を設けることも効果的です。その他にも、やり取りの記録を残せる形でコミュニケーションを取れば、誤解も起こりにくいといえます。
やり取りの内容を記録に残す
先ほども触れているように、プロジェクトにおいてコミュニケーションを取る場合、やり取りの内容を記録に残すこともポイントです。解釈のくいちがいが起こりやすいケースの1つが、言った・言わないが曖昧になる場合です。メールやチャット録音、録画などコミュニケーションの経路にもよりますが、論点を記録に残してトラブルにつながらないようにしてください。
ツールを活用する
ビジネスにおける円滑なコミュニケーションは、生産性向上に不可欠であり、その実現には適切なツールの活用が有効です。状況や相手に応じてツールを使い分けることで、情報伝達の迅速性や正確性を高め、コミュニケーション効率を向上させることが期待できます。
例えば、大人数が参加する会議では、オンラインツールを活用することで日程調整の煩雑さを軽減し、時間や場所の制約を受けずに意思決定を迅速化できます。また、緊急性の高い連絡事項は電話で即座に伝え、その後メールで議事録や詳細情報を共有することで、伝達漏れを防ぎ、認識の齟齬を減らすことが可能です。
多様なコミュニケーションツールが存在する現代において、各ツールの特性を理解し、具体的な活用方法を事前に検討しておくことは、あらゆるビジネスシーンにおいて的確かつ効率的なコミュニケーションを実現するための重要な準備と言えるでしょう。
コミュニケーションマネジメントに用いられる主なツール・方法
以下では、コミュニケーションマネジメントでどのようなツールや方法が活用されているかを解説します。多くのプロジェクトで活用できるものを取り上げているため、ぜひ参考にしてください。
対面での会話
対面での会話は、最も直接的で情報伝達の基本となるコミュニケーション手段です。会議や商談といった公式な場はもちろん、非公式な雑談もこれに含まれます。対面コミュニケーションの大きな利点は、大人数に対して同時に直接情報を共有できる点と、相手の表情や反応をリアルタイムで把握し、必要に応じて即座に補足説明や軌道修正を行える点にあります。
ただし、対面でのコミュニケーションは、参加者のスケジュール調整に時間を要する場合があります。そのため、日常的な情報共有や簡単な確認事項は他のツールを活用し、対面での会話は、重要な意思決定を伴う会議や、細やかなニュアンスを伝えたい商談、あるいはチーム内の親睦を深めるための機会など、その特性が特に活きる場面に限定して取り入れることが効率的です。
Web会議
直接会ってやり取りしたいものの、日程調整が難しく相手との物理的な距離があるといった場合に有効なのがWeb会議です。Web会議はインターネット環境さえあればどこからでも参加できるため、日程調整ができれば開催できます。相手の表情もわかるため、対面での会話の代替手段としても最適です。
メール・電話
メールや電話によるコミュニケーションは、ビジネスシーンにおいて一般的に用いられている方法です。メールはやり取りの流れを記録に残せるため、解釈のくいちがいを回避するためにも活用すべき手段です。
一方で、メールを読み返信するタイミングは相手に依存するため、急ぎの用事は先に電話で伝え、後からメールでフォローする形が最適といえます。ただし、電話は相手の時間を奪うことになるため、メールと電話をバランスよく使い分けることが大切です。
チャットツール
昨今では、チャットツールもビジネスシーンで活用されています。チャットツールは、メールほどかしこまった文書にならず、気軽にコミュニケーションを取れる点が特徴です。また、ツールによってはリアクション機能がついていて、わざわざ返信しなくてもリアクションをすれば相手に対してメッセージを確認した旨を伝えられます。
もちろんメッセージのやり取りは記録として残るため、後からふりかえることも可能です。コミュニケーションの気軽さから、チャットツールはクライアントや協力会社といった社外の人よりも、プロジェクトチームや他部署の人など、社内での利用に適しています。
プロジェクト管理ツール
プロジェクトにおけるコミュニケーションであれば、プロジェクト管理ツールの活用もおすすめです。プロジェクト管理ツールとは、プロジェクト管理を効率化してくれる各種機能を備えたソフトウェアのことです。
タスク管理や進捗管理、工程表の作成、予算管理など様々な機能を搭載しているため、プロジェクトに関する情報の集約・一元管理が行えます。プロジェクトの状況が可視化されることで、QCDの管理も行いやすくなるため活用を検討してみてください。
コミュニケーションマネジメントにおすすめのツール
コミュニケーションマネジメントに活用できるプロジェクト管理ツールには様々なものがありますが、本記事では、おすすめのツールとしてLychee Redmineを紹介します。
Lychee Redmineは、進捗管理や工数管理、予算管理、リポート作成など、コミュニケーションマネジメントはもちろん、プロジェクトマネジメントにも役立つ様々な機能を搭載したツールです。
進捗管理では、Excelなどの表計算ソフトで作成したWBSヤガントチャートなどをそのままツールに載せ替えでき、ツールの導入をスムーズに行えます。また、タスクを複数の階層で表現し、タスク同士の関連付けを行うことで進捗状況が把握しやすくなる点も特徴です。タスクが誰に集中しているか、手が空いているのは誰なのかなどの情報を認識しやすいため、リソースの適切な分配を行えます。
予算管理に関しては、予算と実際の費用の比較を簡単に行えるため、コスト超過や未消費を早い段階で発見でき、対策を講じられます。
Lychee Redmineを活用すれば、プロジェクトに関する情報が集約され、現場で働くプロジェクトメンバーからプロジェクトリーダーまで一気通貫で使用できます。情報共有もスムーズに行えるため、ぜひ導入を検討してみてください。
PMBOKを参考にコミュニケーションマネジメントに取り組もう
今回はPMBOKの概要やPMBOとコミュニケーションマネジメントの関係などについて解説しました。PMBOKは、プロジェクトマネジメントの知識をまとめたものであり、5つのプロセスと10の知識から構成され、コミュニケーションマネジメントも重要な要素の1つです。
コミュニケーションマネジメントを行うにあたり、関係者の把握やコミュニケーション経路・頻度の設定など様々な点を確認しなければなりません。スムーズなコミュニケーションマネジメントを行うためにも、Lychee Redmineのようなプロジェクト管理ツールの活用も検討してみてください。
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