PMBOKのコストマネジメントを徹底解説|4つのプロセスと予算超過を防ぐ実践ポイント

プロジェクトリーダーを任されたものの、「予算管理に自信がない」「何から手をつければ良いのかわからない」と悩んでいませんか。特に、上司から「PMBOKに沿ったコスト計画を立ててほしい」と指示され、どこから学び始めれば良いか迷っている方も少なくないでしょう

そんなときに役立つのが PMBOKのコストマネジメントです。自己流の曖昧な管理から脱却し、根拠のある計画と実行を可能にすることで、プロジェクトを安心して前に進められるようになります。

本記事では、PMBOKにおけるコストマネジメントの基本概念から、実務に活かせる具体的なポイントまでをわかりやすく解説します。読み終えたときには、コストマネジメントの全体像を理解し、自信を持って予算管理に取り組めるようになるはずです。

PMBOKにおけるコストマネジメントとは

プロジェクトを成功に導くためには、品質や納期だけでなく、コストの管理が極めて重要です。ここでは、そのための世界標準のフレームワークであるPMBOKと、コストマネジメントの基本的な考え方について解説します。

PMBOKとは

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントの知識やノウハウを体系的に整理したガイドブックです

プロジェクトの立ち上げから計画、実行、監視・コントロール、終結までのプロセスや、スコープ、スケジュール、コストなどの知識エリアごとにベストプラクティスがまとめられており、効率的で成功率の高いプロジェクト運営の参考として活用されています。

コストマネジメントは、このPMBOKで定義されている10の知識エリアの一つです。PMBOKは時代に合わせて改訂されており、最新の第7版では、従来のプロセス中心のアプローチから、より柔軟な「原則」と「成果」を重視する構成に変化しています。

項目 PMBOK 第6版 PMBOK 第7版
構成 10の知識エリア、5つのプロセス群 8つのパフォーマンス領域、12の原則
焦点 プロセス(How) 原則と成果(What & Why)
適用範囲 主に予測型プロジェクト すべてのプロジェクト(予測型、アジャイルなど)
目的 プロジェクトマネジメントの標準化 プロジェクト成功のための指針

PMBOKについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

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コストマネジメントの目的

コストマネジメントの最終的な目的は、定められた予算の範囲内でプロジェクトを完遂することにあります。しかし、その目的は単に「お金を管理する」だけではありません。コストマネジメントを適切に行うことで、次のような重要な目的も達成できます。

メリット 詳細
リソースの最適配分 人員や設備といった限りある資源を、適切に配分できる
意思決定の精度向上 正確なコスト情報に基づき、プロジェクトの方針を客観的に判断できる
ステークホルダーに納得感のある説明ができる 数値とプロセスに基づく管理により、投資対効果や進捗状況を説得力を持って説明できる

コストマネジメントが重要な理由

なぜコストマネジメントはこれほど重要なのでしょうか。それは、コストがプロジェクトの成否に直結するからです。適切なコストマネジメントは、プロジェクトを安定させる土台となります。

特に重要なのは、予期せぬ仕様変更やトラブルへの対応力が高まる点です。しっかりとコスト管理ができていれば、変更がコストに与える影響をすぐに評価し、ステークホルダーと適切に交渉できます。

これにより、プロジェクトの破綻を防ぎ、関係者との信頼関係の維持につながります。

PMBOKに基づく4つのコストマネジメントプロセスとは

PMBOKでは、コストマネジメントを4つの具体的なプロセスに分けて定義しています。これらのプロセスを順に実行することで、体系的にコストを管理できるようになります。

ここでは、それぞれのプロセスで何をすべきかを詳しく見ていきましょう。

プロセス1:コストマネジメント計画

最初に、プロジェクト全体のコスト管理に関する「ルール」を決めます。これが「コストマネジメント計画」です。この計画書で、今後のコスト見積もりや管理、コントロールの方針を明確に文書化します。

この段階でルールを明確にすることで、プロジェクトの途中で判断に迷うことを防げます

以下は、コストマネジメント計画書に記載する項目です。

計画項目 説明
測定単位 コストをどの単位で測定するかを定義(例:人月、人日、時間、個数、金額)
精度レベル 見積もりの正確さをどの程度求めるかを明確化(例:±10%、±25%など)
管理のしきい値 予算と実績の差異がどの程度になったら是正措置をとるかを設定(例:10%以上乖離したら対策)
組織会計との連携 WBS要素と会計システムの勘定科目コードを対応づけ、内部管理や報告と整合を取る
パフォーマンス評価の指標 EVMなどを用いて進捗とコスト効率を測定する方法を定める
報告様式 コストに関するリポートの形式や報告頻度を定める

プロセス2:コスト見積もり

次に、計画したルールにしたがって、プロジェクトに必要な総コストを見積もります。作業(タスク)ごとに必要なリソース(人件費、材料費、外注費など)を洗い出し、それぞれの費用を算出しましょう

ここでは、状況に応じて使い分けられる複数の見積もり手法をご紹介します。

見積もり手法 概要 メリット デメリット
類似見積もり 過去の類似プロジェクトの実績コストを参考に類推する 迅速かつ低コストで実施できる 類似性が低いと精度が大きく低下する
パラメトリック見積もり 過去のデータから得た単価などのパラメータを用いて計算する 統計データに基づき、客観的な見積もりが可能 元となるデータの信頼性に精度が依存する
ボトムアップ見積もり 個々のタスクのコストを積み上げて全体のコストを算出する 精度が高い見積もりが可能 詳細なタスク分解が必要で、時間と手間がかかる

プロセス3:予算設定

コスト見積もりが完了したら、それらを統合してプロジェクト全体の公式な予算を設定します。このプロセスで作成される「コスト・ベースライン」は、今後のコスト管理の基準となる重要な成果物です

予算には、見積もったコストの合計に加え、予期せぬリスクに備えるための予備費が含まれます。以下は、予算の構成要素をまとめたものです。

予算の構成要素 説明
アクティビティ・コスト見積もり 各タスクにかかるコストの見積もり
コンティンジェンシー予備 既知のリスクに備えるための予備費
ワークパッケージ・コスト 上記2つを合計した各作業単位のコスト
コスト・ベースライン 全ワークパッケージ・コストの合計、これが管理基準となる
マネジメント予備 未知のリスクに備えるための予備費
プロジェクト予算 コスト・ベースラインとマネジメント予備を合計したもの

プロセス4:コストコントロール

プロジェクトが開始されたら、計画通りにコストが使われているかを継続的に監視し、管理します。これが「コストコントロール」です。具体的には、実績コストを収集し、コスト・ベースラインと比較して差異がないかを確認します。

もし計画から大きなズレ(差異)が生じた場合は、その原因を分析し、必要に応じて是正措置を講じましょう。このプロセスを適切に行うことで、問題が大きくなる前に早期に対処し、プロジェクトを軌道に戻せます

コスト超過を防ぐために意識したいこと

PMBOKのプロセスを理解するだけでなく、プロジェクトリーダーとして常に意識しておくべきポイントがあります。これらを意識することで、コスト超過のリスクを大幅に低減できます。

進捗状況をタイムリーに把握する

プロジェクトで発生する問題は、早期に発見するほど簡単かつ低コストで解決できます。そのためには、プロジェクトの進捗状況とコストを常にタイムリーに確認することが求められます。

週次や日次での定例ミーティングを設けるなど、計画と実績の差異を常に確認できる体制を整えましょう

リスクに備えて柔軟な調整余地を残す

どんなに完璧な計画を立てても、プロジェクトに予期せぬトラブルはつきものです。「予算設定」で解説した予備費(バッファ)をあらかじめ確保しておくことが重要です。

バッファを確保することで、精神的な負担が軽減され、冷静に判断する余裕が生まれます

スコープ変更を適切に管理する

コスト超過の大きな要因の一つが「スコープクリープ」です。これは、プロジェクト進行中に顧客からの要望が次々と追加され、当初の範囲(スコープ)がなし崩し的に拡大してしまう現象を指します。

こうした変更要求に対応する際は、必ずコストや納期への影響を評価したうえで、正式な変更管理プロセスを通じて承認を得ることが重要です。事前にルールを徹底しておくことで、不要な混乱や予算超過を防ぐことができます

実務で役立つ!コストマネジメントの効果的なやり方

基本を理解した後は、その知識をどのように実務へ応用し、成果につなげるかが重要です。ここでは、コストマネジメントの各プロセスをより効果的に進めるための具体的な手法やツールをご紹介します。

WBSで抜け漏れのない工数見積もりを

精度の高い見積もりのためには、WBS(Work Breakdown Structure)の作成が非常に有効です。WBSとは、プロジェクトの成果物を生み出すために必要な作業を、階層的に細かく分解した図のことです。

タスクを細分化することで、作業の抜けや漏れを防ぎ、見積もりの精度を高められます

以下の記事では、WBSについて詳しく解説しています。

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EVM(出来高管理)でコストと進捗を数値で追う

コストコントロールにおいて強力な手法が、EVM(Earned Value Management)です。EVMは、コストとスケジュールの進捗を「出来高」という統一された指標で測定し、プロジェクトのパフォーマンスを客観的に評価します。

これにより、「予算は消化しているのに、作業がまったく進んでいない」といった状況を早期に発見できます

EVMの主要指標 略称 計算式 意味
計画価値 PV 計画完了率 × 総予算 ある時点までに完了する予定だった作業の予算額
出来高 EV 実際完了率 × 総予算 ある時点までに実際に完了した作業の予算額
実コスト AC (直接入力値) ある時点までに実際に投入したコストの合計
コスト効率指数 CPI EV / AC 1より小さいとコスト超過(非効率)
スケジュール効率指数 SPI EV / PV 1より小さいとスケジュール遅延(非効率)

EVMについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の関連記事もご覧ください。

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運用段階でのコスト削減策

予算を設定した後も、運用段階でのコスト管理を工夫することで無駄を削減できます。例えば、クラウドサービスやソフトウェアライセンスは利用量を定期的に見直すことで、余剰な契約を減らし費用を最適化できます

また、既存契約に含まれるボリュームディスカウントや早期支払い割引を活用することも有効です。さらに、同等品質の代替品やサービスを検討すれば、品質を維持しながらコスト削減につなげられます。

これらの取り組みを継続的に実施することで、予算内での効率的なプロジェクト運営が可能となります。

プロジェクト管理ツールで一元管理を

Excelなどを使った手作業によるコスト管理は、更新漏れや計算ミスが起こりやすく、管理に多大な工数がかかります。この対策として、プロジェクト管理ツールの導入が有効です。

プロジェクト管理ツールを導入すれば、コスト、工数、進捗といった情報の一元管理が可能です。情報がリアルタイムで共有され、リポートも自動で作成されるため、管理業務が大幅に効率化されます。

その結果、プロジェクトリーダーはより本質的な課題の解決に集中できるようになります

Lychee Redmineでコストマネジメントを効率化しよう

PMBOKのコストマネジメントを実践するには、適切なツールの活用が成功のカギです。プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」は、ここまで解説してきたコストマネジメントの各プロセスを強力にサポートします

コストと工数を一元管理できるツールとして

Lychee Redmineは、タスクの階層化によるWBS作成と、それをガントチャートでの可視化・編集から、メンバーの実績工数の入力、そしてコストの自動計算までをシームレスに行えます。

人件費単価を設定すれば、工数実績からリアルタイムにコストが算出されるため、Excelでの煩雑な計算や転記作業が不要です

Lychee Redmineの機能 説明
ガントチャート タスクの親子関係や依存関係を可視化し、ドラッグ&ドロップで直感的に調整可能
工数リソース管理 メンバーの工数実績を簡単に入力・集計し、人件費を正確に把握できる
コストレポート プロジェクトごとの予算と実績コストを一覧で確認できる

プロジェクトの見える化で予算超過を防ぐ

Lychee Redmineを使えば、EVMの主要指標であるCPIやSPIの推移をグラフで簡単に確認可能です。プロジェクトの健全性が一目でわかるため、コスト超過やスケジュール遅延の兆候を早期に察知し、迅速な対策を打てます。

「見える化」によって、属人的な管理から脱却し、データに基づいた的確なプロジェクト運営を実現します

プラン 月額料金 利用機能
フリー 無料
  1. 基本機能
  2. カンバン
スタンダード 900円
  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
プレミアム 1,400円
  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
  5. 工数リソース管理
  6. EVM
  7. コスト管理
  8.  CCPM
ビジネス[無料トライアルはこちらをお試しできます] 2,100円
  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
  5. 工数リソース管理
  6. EVM
  7. コスト管理
  8. CCPM
  9. プロジェクトレポート
  10. カスタムフィールド
  11. チケット関連図
  12. グループの階層化機能

予算超過を防ぎ、計画通りのコストマネジメント遂行を

コストマネジメントは、単に予算を守るための守りの活動ではなく、プロジェクトの価値を最大化し、成功へ導くための積極的なマネジメント手法です。

まずは「コストマネジメント計画」を立て、自社のプロジェクトにおけるコスト管理ルールを明確にしましょう。世界標準のフレームワークであるPMBOKを取り入れることで、予算超過の不安を減らし、自信を持ってプロジェクトを推進できるはずです

さらに、その実践を効率的かつ効果的に支えるのが Lychee Redmine です。ガントチャートや工数・コストレポートを一元管理できるため、チーム全体で「見える化」されたコストマネジメントを実現できます。

まずは30日間の無料トライアルで、Lychee Redmineの効果を体感してください。予算超過を防ぎ、プロジェクトを成功に導く第一歩を踏み出しましょう。

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