【保存版】プロジェクト管理ドキュメント入門|種類から作り方まで

プロジェクトの成否は、適切なドキュメント管理にかかっていると言っても差し支えありません。しかし、自己流の管理では限界があり、情報の属人化や共有漏れなどの問題が発生しやすくなります

本記事では、プロジェクトの各フェーズで必要となるドキュメントの種類や、作成・管理の実践的なコツ、さらに業務を効率化するおすすめツールまでを解説します。場当たり的な管理から脱却し、プロジェクトを成功へと導くための確かな知識を身につけましょう。

今回は特に、プロジェクト管理に不可欠なドキュメントを一覧形式で整理し、それぞれの役割や作成フェーズを徹底解説します。

プロジェクト管理にドキュメントが不可欠な2つの理由

プロジェクト管理におけるドキュメントは、単なる作業記録ではありません。プロジェクトという船を目的地まで安全に導くための「海図」や「航海日誌」にたとえられます

本章では、ドキュメントの重要性を2つの側面から解説します。

認識のズレをなくす

プロジェクトは、様々な役割を持つメンバーが協力して進める共同作業です。ドキュメントは、プロジェクトに参加するメンバー全員が共通の理解を持つための「共通言語」として機能します。

例えば、要件定義書がなければ、顧客が望むものと開発者が作るものの間で致命的な認識のズレが生じる可能性があります。「言った言わない」といった水掛け論を防ぎ、全員が同じゴールに向かって進むためにも、文書化された情報は不可欠です

ドキュメントがない場合の問題点 ドキュメントがある場合の効果
口頭での指示が曖昧で、誤解が生じる 目的や仕様が明確に定義され、全員が同じ理解を持つ
責任の所在が不明確になり、タスク漏れが発生する 各担当者の役割と責任範囲が文書で明確化される
会議の決定事項が忘れ去られる 議事録によって決定事項が記録され、いつでも確認できる

プロジェクトの健康状態を可視化

プロジェクトマネージャーは、状況を正確に把握し、適切な意思決定を行う必要があります。そのために重要なのが進捗報告書や課題管理表です。これらはプロジェクトの「健康診断書」と言える存在です

これらのドキュメントによって、「計画と実績の差異」「潜在的なリスク」が客観的なデータとして可視化されます。結果として、マネージャーは勘や経験に頼らず、根拠に基づいた判断を下せるようになります。

プロジェクト管理ドキュメントの種類1:立ち上げフェーズ

立ち上げフェーズで作成するドキュメントは、プロジェクトの基本方針を定め、関係者間で目的意識を統一し、承認を得るために不可欠です

ドキュメント名 目的 主な記載内容
プロジェクト憲章 プロジェクトの目的・目標・背景を定義し、公式な承認を得る ・プロジェクトの背景と目的
・測定可能な目標と成功基準
・ハイレベルな要求事項、前提条件、制約条件
・主要なステークホルダー
・任命されたプロジェクトマネージャーとその責任範囲
要求仕様書 (RFP) 外部のベンダーに提案を依頼する際に、プロジェクトの要求を伝える ・プロジェクトの概要と背景
・システム化の範囲と目標
・必須の機能要件および非機能要件
・提案の提出形式と期限
・選定基準

プロジェクト管理ドキュメントの種類2:計画フェーズ

立ち上げフェーズで定めた方針を、実行可能な具体的なアクションプランに落とし込むのが「計画フェーズ」です。

計画フェーズのドキュメントは、プロジェクトの三大要素である「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」を管理するための設計図です

WBS(作業分解構成図)とスケジュール表(ガントチャート)

プロジェクトを成功させるには、まず「何をすべきか」を洗い出す必要があります。

WBS(作業分解構成図)は、プロジェクトの成果物を達成するために必要な作業を、階層的に細分化して整理する方法です。WBSにより、タスクの抜け漏れを防ぎ、全体像を正確に把握できます。

そして、WBSで洗い出した各タスクを時間軸に沿って配置し、担当者や依存関係を可視化したものがガントチャートです。誰が、いつまでに、何をするのかが一目で分かります。

ドキュメント名 目的 主な記載内容
WBS (作業分解構成図) プロジェクトに必要な全作業を洗い出し、構造化する ・主要な成果物 (最上位レベル)
・成果物を構成する要素 (中間レベル)
・具体的な作業タスク (最下位レベル:ワークパッケージ)
スケジュール表 (ガントチャート) 各タスクの期間・担当者・依存関係を可視化し、進捗を管理する ・WBS に基づくタスクリスト
・各タスクの開始日と終了日
・タスク間の依存関係 (先行タスクなど)
・担当者
・進捗状況(進捗率など)

ガントチャートについては、下記の記事も参考にしてください。

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リスク管理計画書・リスク登録簿

リスク管理は、不確実なリスクに備え、プロジェクトへの影響を最小限に抑えるための活動です。具体的には、リスク管理計画書で方針を定め、リスク登録簿で具体的なリスクを管理します

 ドキュメント名 目的 主な記載内容
リスク管理計画書 リスクをどのように特定・分析・対応・監視するかの方法論を定義する ・リスク管理のアプローチと方法論
・役割と責任
・リスクの分類方法
・発生確率と影響度の定義
・報告形式
リスク登録簿 特定された個々のリスクの詳細と対応策を記録・追跡する ・リスク ID
・リスクの内容 (原因と結果)
・発生可能性と影響度の評価
・具体的な対応策 (回避、転嫁、軽減、受容)
・担当者と期日      

また、リスク登録簿の記入例は下記の通りです。

リスクID リスクの内容 発生可能性 影響度 対応策 担当者
R-001 仕様変更の頻発による開発工数の増大 変更管理プロセスを厳格化し、影響範囲を都度評価・承認する プロジェクトマネージャー
R-002 主要な開発メンバーの急な離脱 属人化を防ぐため、ペアプログラミングやドキュメント共有を徹底する 開発リーダー

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コミュニケーション計画書

コミュニケーション不足は、プロジェクトが停滞する大きな要因となります。コミュニケーション計画書は、誰に・何を・いつ・どのような方法で伝えるかをあらかじめ定義し、情報の過不足や伝達漏れを防ぎます

ドキュメント名 目的 主な記載内容
コミュニケーション計画書 プロジェクトにおける情報伝達のルールを定め、円滑な情報共有を実現する ・ステークホルダーの一覧と、それぞれに必要な情報
・情報の種類 (進捗報告、課題共有、意思決定など)
・伝達のタイミングと頻度 (日次、週次、定例会議など)
・使用する伝達手段 (メール、チャット、会議、管理ツールなど)
・各情報の責任者

プロジェクト管理ドキュメントの種類3:実行・監視フェーズ

プロジェクトが実際に動き出すと、計画通りに進んでいるかを常に確認し、必要に応じて軌道修正していく必要があります。

実行・監視フェーズで作成されるドキュメントは、日々の活動を記録し、プロジェクトの健康状態をリアルタイムで把握するための重要なツールです

議事録

会議はプロジェクトの重要な意思決定の場ですが、内容が記録されていなければ、その効果が十分に発揮されません。議事録は、会議での議論の内容・決定事項・担当者・期限付きTODOを明確にするための公式な記録です

議事録によって「言った言わない」といったトラブルを防ぎ、欠席者への情報共有もスムーズに行えます。

ドキュメント名 目的 主な記載内容
議事録 会議での議論と決定事項を正確に記録し、関係者間で共有する ・会議名、日時、場所、出席者
・議題 (アジェンダ)
・議論の要旨
・決定事項
・TODOリスト (誰が、何を、いつまでに行うか)
・次回の議題

進捗報告書

進捗報告書は、計画と実績を比較し、現在の状況を客観的に伝えるためのドキュメントです

ドキュメント名 目的 主な記載内容
進捗報告書 プロジェクトの進捗状況を定量的・定性的に報告し、ステークホルダーの理解と信頼を得る ・報告期間
・プロジェクト全体の進捗概要 (サマリー)
・計画 (ベースライン))と実績の比較(スケジュール、コスト)
・期間中に完了したタスクと成果物
・発生した課題やリスクとその対応状況
・今後の予定

課題管理表

プロジェクトを進める上で、課題の発生は避けられません。重要なのは、発生した課題を放置せず、一つひとつ確実に解決していくことです。

課題管理表は、プロジェクト内で発生したすべての課題を一覧化し、解決プロセスを追跡・管理するためのツールです

ドキュメント名 目的 主な記載内容
課題管理表 発生した課題を記録し、その解決までのステータスを追跡・管理する ・課題 ID
・課題の概要
・発生日と報告者
・重要度と優先度
・担当者と解決期限
・現在のステータス (新規、対応中、完了など)
・対応内容の記録

変更管理ログ

プロジェクトの途中で無秩序な変更が発生すると、スコープの肥大化(スコープ・クリープ)を招き、プロジェクトが破綻する原因になりかねません。

変更管理ログは変更要求を記録し、影響を評価した上で、正式な承認プロセスを経て管理するためのドキュメントです

ドキュメント名 目的 主な記載内容
変更管理ログ 発生した変更要求を一元管理し、承認プロセスと影響を記録する ・変更要求 ID
・要求内容と理由
・要求日と要求者
・影響分析 (スコープ、スケジュール、コストへの影響)
・承認/却下の結果と日付
・対応状況

プロジェクト管理ドキュメントの種類4:終結フェーズ

すべての作業が完了し、成果物が納品された後、プロジェクトを正式に締めくくるのが終結フェーズです。

終結フェーズのドキュメントは、プロジェクトの完了を宣言するとともに、今回の経験から得た教訓を組織の資産として今後に活かすために作成されます

ドキュメント名 目的 主な記載内容
プロジェクト完了報告書 プロジェクトが公式に完了したことを宣言し、最終的な成果をまとめる ・プロジェクトの最終的な成果と目標達成度
・最終的なスケジュールとコスト (計画との比較)
・プロジェクト全体の評価 (成功点、反省点)
・ステークホルダーからの最終承認
教訓ドキュメント (Lessons Learned) プロジェクトを通じて得られた学びや知見を記録し、組織のナレッジとして蓄積する ・プロジェクトで上手くいったこと (成功要因)
・プロジェクトで問題となったこと (失敗要因)
・今後のプロジェクトに向けた具体的な改善提案
・キーワードやカテゴリ

プロジェクト管理ドキュメントの管理・運用の4つの鉄則

ドキュメントは、作成するだけでなく、適切に管理・運用されてこそ、その価値を発揮します。本章では、ドキュメント管理を形骸化させないための4つの鉄則をご紹介します。

バージョン管理を徹底する

ドキュメントは、プロジェクトの進行とともに常に更新されていきます。最新版がわからない場合は、古い情報に基づく手戻りなど、致命的なミスにつながります。

バージョン管理を徹底し、誰もが常に最新の正しい情報にアクセスできる状態を維持しましょう。最新のファイルにバージョン情報や更新日を記載する、誰が・いつ・何を更新したかを追跡できるようにする、などの対策が有効です。

保管場所とフォルダ構成を標準化する

ドキュメントが個人のPCや部署ごとの共有サーバーに散在していると、必要な情報を探すだけで多くの時間が無駄になります。ドキュメントの保管場所は一元化し、誰が見ても直感的に理解できるフォルダ構成のルールを定めましょう

フォルダ構成のルールとしては、フェーズやドキュメントの種類ごとに分類するように定めると良いです。

アクセス権を適切に管理する

プロジェクトの情報には、関係者外秘の機密情報も含まれます。一方で、必要なメンバーが必要な情報にアクセスできないと業務が滞ってしまいます。

情報のセキュリティと利便性を両立させるために、役割に応じたアクセス権の管理が重要です

テンプレートを活用する

毎回ゼロからドキュメントを作成するのは非常に非効率です。また、作成者によって品質やフォーマットがバラバラになるリスクもあります。

よく使うドキュメントは事前にテンプレート化しておき、誰が作成しても一定の品質を担保できるようにしましょう。テンプレートの活用により、作成工数が削減できる他、記載漏れも防げます。

適切なドキュメント管理でプロジェクトを成功に導こう

ドキュメントの作成・管理は、単なる事務作業ではなく、チームの認識統一・課題の可視化・将来への学びの蓄積を実現するために欠かせない活動と言えます。ただし、Excelやファイルサーバーだけで管理しようとすると、バージョン管理の煩雑さや情報共有の遅れといった新たな問題が発生しがちです

そこで重要なのが、専用のプロジェクト管理ツールを活用することです。タスク・ドキュメント・コミュニケーションを一元管理することで、情報の鮮度を保ちながらプロジェクトをスムーズに推進できます。

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