失敗しないプロジェクトコスト管理|進め方・成功のコツ・役立つツールを徹底解説

プロジェクトを進める中で、「気づいたら予算をオーバーしていた……」という経験は少なくありません。限られた予算の中で成果を出すことは、スケジュール管理や品質管理と同じくらい大切なポイントです。

本記事では、プロジェクトにおける失敗しないコスト管理の基本から、実務で役立つ進め方や成功のコツを徹底解説します。さらに、日々の業務をラクにする便利なツールもご紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

プロジェクトにおけるコスト管理とは

プロジェクトを成功に導くには、コスト管理が不可欠です。しかし、コスト管理と一口に言っても、具体的な定義や含まれる費用を正確に理解している方は意外と少ないのが現状です。

まずは、コスト管理の定義や重要性、プロジェクトにかかる費用の内訳について解説します。

なぜコスト管理が重要なのか?

プロジェクトにおけるコスト管理は、単なる経費の計算ではありません。承認された予算内でプロジェクトを完了させるための戦略的な取り組みです。

具体的には、計画・見積もり・予算設定・資金調達・マネジメント(コストを管理するための仕組みづくりや運営)・コントロール(その仕組みに基づいて実績を監視し、修正を加えること)といった一連のプロセスを含みます。

適切にコストを管理することで、次のようなメリットが得られます。

  • プロジェクトの収益性が向上する
  • 予算超過のリスクを回避できる
  • ステークホルダーとの信頼を築ける
  • 将来のプロジェクトに活かせる知見を蓄積できる

つまり、自己流のやり方に頼るのではなく、体系的な手法を身につけることが、プロジェクト成功率を大きく高める第一歩となります。

プロジェクトにかかる費用の内訳

プロジェクトのコストを正確に管理するためには、まず「どのような費用が発生するのか」を把握することが重要です。一般的に、プロジェクトコストは次の4つに分類されます。

費用の種類 内容
人件費 プロジェクトにかかわる人員の給与や報酬。多くの場合、全体コストの大部分を占めます。
ツール費用 計画・実行・コミュニケーションに用いるソフトウェアやITインフラの利用料。
間接費 プロジェクトを進める上で間接的に発生する費用(オフィス維持費や管理部門のサポートなど)。
リスク管理費用 不測の事態に備えて確保する費用。「予備費」や「コンティンジェンシー予備」とも呼ばれます。

これらの費用を明確に洗い出し、それぞれの性質を理解することが、精度の高いコスト見積もりにつながります。

コスト管理について、さらに詳しく知りたい場合は、以下の記事をご参照ください。

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コスト管理の基本ステップ

本章では、初心者の方にも実践しやすいよう、コスト管理のプロセスを6つの基本ステップに分けてわかりやすく解説します。

Step1:必要なリソースを洗い出す

コストを見積もる前に、まずプロジェクトを完了させるために必要なリソースをすべて洗い出しましょう。リソースとは単に「モノ」や「カネ」だけを指すわけではなく、以下のようなものも含まれます。

  • 人的リソース(プロジェクトマネージャーやエンジニア、デザイナー、外部委託先のスタッフなど、必要な人員とスキルレベル)
  • 物的リソース(サーバーやPC、ソフトウェアライセンス、作業スペースなど、必要な設備やツール)
  • 時間(各タスクにかかる時間、プロジェクト全体の期間)

リソースの洗い出しが不十分だと、後の見積もりや計画に大きなズレが生じる可能性があります。WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)などを用いてタスクを細分化し、各タスクに必要なリソースを抜け漏れなくリストアップしましょう。

Step2:コストマネジメント計画を立てる

リソースの洗い出しができたら、コストマネジメント計画を策定します。これは、プロジェクトにおけるコスト管理全体の設計図として機能します。

コストを正確に把握・運用するためには、あらかじめ以下の項目を明確に定義しておくことが重要です。

計画項目 内容
測定単位 「人月」「人日」「時間」など、工数やコストを測定する際の単位を統一する
見積もりの精度 見積もりの正確性をどのレベルで求めるかを定義する
コントロールしきい値 計画と実績の間にどの程度の差異が生じたら対策を講じるか、その基準値を設定する
パフォーマンス測定の規則 進捗を測定するための指標(EVMなど)の利用ルールを定める
報告形式 誰に、いつ、どの形式でコスト状況を報告するかを明確にし、フォーマットや頻度を決める
組織の手続きとのリンク 社内の経費精算や購買ルールなど、既存のプロセスとどのように連携するかを確認する

これらを事前に整備しておくことで、プロジェクト中のコスト把握や調整がスムーズになり、管理の精度も大きく高まります。

Step3:費用を見積もる

計画で洗い出したリソースを、金額に置き換えるステップです。見積もり精度はプロジェクトの成否に直結するため、前提条件を明確にしつつ慎重に進めてください。

代表的な見積もり手法には、以下のようなものがあります。

見積もり手法 概要 向いている場面
トップダウン見積もり 類似プロジェクトの実績や専門家の知見から、全体コストを大まかに算出する 企画初期の概算、投資可否の判断
ボトムアップ見積もり タスクを細分化し、各タスクのコストを積み上げて全体を算出する 計画確定時の精緻見積もり、発注前
パラメータ見積もり 「1機能あたり」「1行あたり」などの生産性パラメータを過去データから導き、規模に乗じて算出する 同種案件が多い場合、見積もりの標準化
三点見積もり 各タスクの最楽観・最頻・最悲観の3値を出し、重みづけ平均で算出する ばらつきが大きい/不確実なタスク

 

使い分けのコツ

  • 初期は「トップダウン+パラメータ」で概算し、計画確定時に「ボトムアップ」で精緻化する
  • 不確実性が高い部分は「三点見積もり」で振れ幅を把握し、前提と仮定を必ず文書化する
  • 見積もりには予備費(コンティンジェンシー)を組み込み、変更時は根拠と影響範囲をセットで更新する

Step4:予算を設定する

見積もりが完了したら、いよいよ正式なプロジェクト予算を策定します。ここで重要なのは、単に見積もり額を合計することではないという点です。

プロジェクトのスケジュールに沿って、費用が「いつ」「どのくらい」発生するのかを時系列で整理し、計画を立てます。こうして作成されるタイムラインに基づく予算計画をコスト・ベースラインと呼びます。

コスト・ベースラインは、プロジェクトの進行中にパフォーマンスを測定する際の基準です。計画と実績を比較して差異を把握するための「指標」として機能するため、必ず関係者の承認を得て、正式な予算として確定させましょう。

以下の記事では、プロジェクトの予算管理について詳しく解説しています。あわせてご参照ください。

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Step5:進行中にコストを管理する

プロジェクトが始まったら、計画と予算を基準にコストを継続的に管理していく段階に入ります。実績コストをタイムリーに把握し、常にコスト・ベースラインとの差異を監視すること が重要です。

この際によく使われるのが EVM(Earned Value Management:アーンド・バリュー・マネジメント) という手法です。EVMでは次の3つの指標を用いて、プロジェクトの健全性を客観的に評価します。

  • PV (Planned Value:計画価値)現時点で完了しているはずの作業に割り当てられた予算額
  • AC (Actual Cost: 実績コスト)現時点で実際に発生したコストの総額
  • EV (Earned Value: 出来高)現時点で完了した作業を、当初の予算額で評価した価値

これらを基に、次の指標を算出して効率を測定します。

指標 計算式 解釈
コスト差異 (CV) EV – AC プラス=予算内、マイナス=予算超過
スケジュール差異 (SV) EV – PV プラス=前倒し、マイナス=遅延
コスト効率指数 (CPI) EV / AC 1以上=効率的、1未満=非効率的
スケジュール効率指数 (SPI) EV / PV 1以上=順調、1未満=遅延

これらの数値を定期的にモニタリングすることで、問題の兆候を早期に察知できます。結果として、手遅れになる前に是正策を講じ、プロジェクトの健全性を保つことが可能になります。

Step6:実績を分析し改善につなげる

プロジェクトが完了した後も、コスト管理のプロセスは終わりではありません。最終的にかかったコストと当初の予算を比較し、差異がなぜ生まれたのかを分析しましょう。

具体的には、以下のような分析を行います。

  • 予算超過した場合、原因はどこにあったのか(見積もりの甘さ、予期せぬトラブル、仕様変更など)
  • 予算内で収まった場合、成功要因は何か(効率的な作業プロセス、コスト削減の工夫など)

分析結果を教訓として文書化し、組織全体で共有しましょう。ふりかえりによって得られたデータや知見は、組織の貴重な財産となります。

次のプロジェクトで見積もりを行う際の信頼できる「過去データ」となり、コスト管理の精度を継続的に向上させていくサイクルが生まれます。

コスト管理を成功させる4つのポイント

本章では実際のプロジェクトで失敗しないための、実践的な4つのポイントをご紹介します。

実績データを蓄積し、活用する仕組みを整える

コスト管理を成功させる上で最も重要なのは、信頼できる実績データです。感覚的な見積もりから脱却するためには、まず現状を正確に把握することから始めましょう。

日々の作業にかかった時間(工数)や実際に発生した費用を、手間がかかっても記録し続けてください。客観的なデータがあれば、勘や経験だけに頼らず、説得力のある見積もりを作成できます。

まずはチーム内で、作業時間を記録する習慣付けから始めましょう。

予期せぬコストに備えてバッファを設ける

どれだけ綿密に計画を立てても、プロジェクトには予期せぬトラブルや仕様変更がつきものです。楽観的な見通しだけで予算を組んでしまうと、いざというときに対応できず、プロジェクトが頓挫する恐れがあります。

計画段階で「予備費(バッファ)」を予算に組み込んでおきましょう。一般的には、予備費としてプロジェクト予算全体の5%〜10%程度の確保が推奨されています。

バッファを設けると、不測の事態にも冷静に対処でき、スケジュール遅延や品質低下を防げます。リスク管理の一環であり、責任あるプロジェクトマネージャーにとって欠かせないスキルです。

進捗とコストを可視化し、チームと共有する

プロジェクトを円滑に進めるためには、進捗状況とコストを「見える化」してチーム全体で共有することが欠かせません。進捗が計画通り進んでいるのか、予算をどのくらい消費しているのかをリアルタイムで確認できれば、問題を早期に発見し、手遅れになる前に対応できます。

特にコストは、管理者だけでなくチーム全員が意識すべき重要な要素です。タスクごとの工数や人件費を可視化し共有することで、メンバーは自分の作業がプロジェクト全体にどのような影響を与えているかを理解できます。その結果、責任感が高まり、チーム全体の生産性向上にもつながります。

専用ツールを導入して管理の手間を減らす

多くのプロジェクトマネージャーがコスト管理にExcelを利用しています。手軽に始められる反面、プロジェクトが複雑化するにつれて、Excelによる管理には次のような限界があります。

  • 煩雑な手作業:関数やマクロのメンテナンスに時間がかかり、入力ミスも発生しやすい
  • リアルタイム性の欠如:各メンバーの進捗が自動で反映されず、情報が古くなりがち
  • 属人化:ファイルを作成した担当者しか更新できず、管理がブラックボックス化する

こうした課題を解決するのが、プロジェクト管理専用ツールです。工数入力や予実管理、リポート作成などを自動化し、管理業務を大幅に効率化します。

ツールを導入すれば、余った時間をより創造的な仕事に使えるようになります。

おすすめのツールを知りたい場合は、以下の記事をご参照ください。

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プロジェクトのコスト管理ツールの選び方

以下に、自社に最適なツールを選ぶための5つの重要な選定基準をまとめました。

基準 詳細
コスト管理機能が充実しているか 最も重要なのは、自社に必要なコスト管理機能が備わっているかどうかです。最低限、工数管理・予実管理・リポート機能・EVM分析機能の有無を確認しましょう。
チーム全員が使いやすいか 高機能でも、現場のメンバーが使いこなせなければ意味がありません。特に日々の工数入力は負担になりやすいため、直感的で操作が簡単なツールを選びましょう。
他のツールと連携できるか 社内で既に利用しているチャットツール、カレンダー、会計ソフトなどとスムーズに連携できるかも重要な検討ポイントです。
サポート体制は十分か 導入時や運用中にトラブルが発生した場合に、迅速かつ的確なサポートを受けられる体制が整っているかを確認しましょう。
費用対効果は見合っているか 利用料金は重要ですが、安さだけで判断するのは危険です。ツールの機能や効果とコストが見合っているかを重視してください。

これらの基準をチェックリストとして活用すれば、自社に合ったツールを効率的に選定できます。

プロジェクトのコスト管理にはLychee Redmineがおすすめ

特にコスト管理を効率化したいと考えている企業におすすめしたいのが、アジャイルウェアが提供するプロジェクト管理ツールLychee Redmineです。7,000社以上の導入実績を誇り、多くの企業でプロジェクトの効率化とコスト削減に貢献しています。

Lychee Redmineの強みは、プロジェクトのコスト管理を支える豊富で実用的な機能にあります。

主なコスト管理関連機能 機能概要
工数リソース管理 メンバーがタスクごとに作業時間を簡単に入力でき、リアルタイムで集計。人件費を正確に把握できます。
コスト(EVM) EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)の主要指標(PV・EV・AC)を自動でグラフ化。進捗とコスト状況を一目で把握可能です。
タイムマネジメント ガントチャートで計画を立て、実績工数と比較することで、計画と実績のズレを早期に発見できます。

これらの機能により、正確なデータに基づいた迅速な意思決定が可能となり、プロジェクトの成功率と収益性の向上に直結します。

さらに、無料トライアル期間も用意されているため、まずは実際に操作性や機能性を体験してみるのがおすすめです。

適切なコスト管理でプロジェクトの無駄をなくそう

プロジェクトにおけるコスト管理は、単に費用を記録する事務作業ではなく、収益性を確保し、予算超過を防ぎ、関係者との信頼を築くための戦略的な活動です。

自己流の管理に頼るのではなく、体系的なプロセスや専用ツールを導入することが、プロジェクト成功の必須条件です。適切なコスト管理を行えば、無駄を削減し、チームのパフォーマンスを最大限に引き出だすことができます。

まずは自社のプロジェクトコストを「見える化」することから始めましょう。

Lychee Redmineなら、日々の工数入力やEVM分析を通じて、計画と実績の差をリアルタイムで把握できます。無料トライアルを活用して、自分の業務にそのまま取り入れられる使いやすさと効果をぜひ体感してください。

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