プロジェクト計画書の重要性をなんとなくわかっていても、プロジェクト計画書の具体的な内容や作成方法については詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、プロジェクト計画書の基本・構成要素・無料テンプレートの活用法などを解説します。プロジェクトを成功に導く計画書作りのポイントも、あわせてご覧ください。
【基礎知識】プロジェクト管理の計画書とは?
プロジェクト計画書は、プロジェクトを成功に導くための羅針盤です。計画書なしにプロジェクトを進めることは、航海図を持たずに海に出るようなもの。
どこへ向かっているのか、どのように進むべきかわからず、遭難してしまう可能性も高まります。本章では、プロジェクト計画書の基本的な知識として、作成する目的と重要性について解説します。
プロジェクト計画書を作成する目的
プロジェクト計画書を作成するおもな目的は、以下の3点です。
- プロジェクトの成功確率を高める: 計画段階で目標・スコープ・スケジュール・リソース・リスクなどを明確にできるため、プロジェクトの全体像を把握しやすくなり、関係者全員が同じ方向を向いて進むことができます。
- 関係者間の共通認識を醸成する: プロジェクト計画書は、プロジェクトに関わるすべての関係者(顧客・チームメンバー・上層部など)に対して、プロジェクトの目的や進め方について共通の理解度の向上を促進できます。
- プロジェクトの進捗を管理しやすくする: 計画書に沿ってプロジェクトを進めることで、進捗状況を把握しやすくなり、問題が発生した場合にも迅速に対応できます。
プロジェクト計画書の重要性
プロジェクト計画書は、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。計画書の作成によって、以下のような効果が期待できます。
効果 | 詳細 |
---|---|
リスクの軽減 | 潜在的なリスクを事前に特定し、対応策を準備できるため、プロジェクトの遅延や失敗を予防できる。 |
効率の向上 | タスクの優先順位付けやリソース配分を最適化でき、プロジェクトの効率を向上させられる。 |
コミュニケーションの円滑化 | 関係者間の情報共有を促進し、認識のずれを解消することで、コミュニケーションを円滑化できる。 |
品質の確保 | 品質基準を設定し、達成するためのプロセスを定義することで、プロジェクトの品質を確保できる。 |
コスト削減 | 無駄な作業を排除し、リソースを有効活用することで、プロジェクトのコストを削減できる。 |
プロジェクト計画書は、単なる書類ではなく、プロジェクトを成功に導くための強力な武器です。計画書をしっかりと作成し、活用することで、プロジェクト成功確率の大幅な向上に期待できます。
プロジェクト計画書を構成する8つの要素
計画書に記載する要素を一つひとつ丁寧に詰めていくことで、プロジェクトの成功確率は格段に向上します。本章では、プロジェクト計画書を構成する主要な8つの要素を解説します。
プロジェクトの全体像を把握する「プロジェクト概要」
プロジェクト概要は、計画書の冒頭に記載され、プロジェクトの全体像を簡潔に伝える役割を担います。プロジェクトの名称・目的・期間・背景などをまとめ、プロジェクトの全体像を共有します。プロジェクトに関わるすべての関係者が、共通認識を持つための重要な要素です。
SMARTの原則に基づいた「目標設定」
目標設定は、プロジェクトのゴールを明確にする重要な要素です。SMARTの原則(Specific:具体的・Measurable:測定可能・Achievable:達成可能・Relevant:関連性・Time-bound:期限付き)に基づき、具体的で測定可能な目標を設定することで、プロジェクトの方向性を明確にし、進捗状況を客観的に評価できます。
例えば「顧客満足度を向上させる」という目標であれば「3カ月以内に顧客満足度調査を実施し、満足度を10%向上させる」のように、より具体的で測定可能な目標に落とし込むことが重要です。
プロジェクトの範囲を明確にする「スコープ定義」
スコープ定義は、プロジェクトで何を行い、何を行わないかを明確にするプロセスです。プロジェクトの範囲を明確に定義することで、プロジェクトの肥大化を防ぎ、リソースの浪費を抑制できます。スコープ定義には、成果物・タスク・期限などを具体的に記述します。
例えば、Webサイトリニューアルプロジェクトの場合、Webサイトのデザイン変更・コンテンツの刷新・SEO対策など、プロジェクトに含まれる要素を明確に定義します。同時に、既存システムの改修・多言語対応など、プロジェクトに含まれない要素も明記することで、関係者間の認識のずれを防ぎます。
WBSでタスクの細分化・ガントチャートで可視化「スケジュール管理」
スケジュール管理は、プロジェクトの各タスクをいつまでに完了させるかを計画し、進捗状況を管理するプロセスです。WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)を用いてタスクを細分化し、ガントチャートで可視化することで、プロジェクト全体のスケジュール把握が容易です。WBSは、プロジェクトのスコープをより詳細なタスクに分解し、ガントチャートは、各タスクの開始日・終了日・担当者などを視覚的に表示します。
必要なリソース(人員・予算・設備)を洗い出す「資源計画」
資源計画は、プロジェクトに必要な人員・予算・設備などのリソースを洗い出し、確保するプロセスです。必要なリソースを事前に把握し、計画的に確保することで、プロジェクトの遅延や中断を防止できます。資源計画には、各リソースの必要量・調達方法・コストなどを記述します。資源マネジメント計画を参考にしましょう。
潜在的なリスクの特定・対応策を準備「リスク管理」
リスク管理は、プロジェクトに影響を与える可能性のある潜在的なリスクを特定し、対応策を準備するプロセスです。リスクを事前に特定し、対応策を準備することで、リスクが発生した場合の影響を抑制できます。リスク管理には、リスクの種類・発生確率・影響度・対応策などを記述します。
例えば、システム開発プロジェクトの場合、技術的な問題・人員の不足・予算の超過などのリスクを想定し、それぞれに対する対応策を準備します。
関係者間の情報共有方法を定める「コミュニケーション計画」
コミュニケーション計画は、プロジェクトの関係者間の情報共有方法を定めるプロセスです。効果的なコミュニケーション計画の策定により、関係者間の認識のずれを防ぎ、円滑なプロジェクト運営を実現できます。コミュニケーション計画には、情報共有の頻度・方法・担当者などを記述します。
具体的には、プロジェクト会議の開催頻度・報告書の提出頻度・情報共有ツールの利用方法などです。
品質基準を設定・達成するためのプロセスを定義「品質管理」
品質管理は、プロジェクトの成果物が品質基準を満たしていることを確認し、品質を維持・向上させるためのプロセスです。品質基準を設定し、達成するためのプロセスを定義して顧客満足度を高め、プロジェクトを成功に導きます。品質管理には、品質基準・品質保証活動・品質管理活動などを記述します。
ソフトウェア開発プロジェクトを例にした場合は、バグの発生率・システムの応答速度・ユーザビリティなどの品質基準を設定し、テスト・レビューなどの品質保証活動を実施します。
プロジェクト計画書の無料テンプレートと活用方法
プロジェクト計画書は、プロジェクトを成功に導くための羅針盤です。しかし、ゼロから作成するのは時間も労力もかかります。そこで役立つのが無料テンプレートです。本章では、自社のプロジェクトに合ったテンプレートの選び方・活用方法・おすすめのテンプレートについて解説します。
自社のプロジェクトに合ったテンプレートの選び方
数多くのテンプレートが存在する中で、自社のプロジェクトに最適なものを選ぶために、下記4つのポイントを押さえておきましょう。
選び方のポイント | 詳細 |
---|---|
プロジェクトの規模と複雑さ | 小規模プロジェクトにはシンプルなもの、大規模プロジェクトには詳細なものを選ぶ |
業種と業界 | 自社の業種に特化したテンプレートを選ぶと効率的 |
必要な要素 | プロジェクトに必要な要素が網羅されているか確認 |
使いやすさ | 直感的に操作できるか、カスタマイズしやすいかを確認 |
テンプレートの活用方法
テンプレートはあくまでも雛形です。そのまま使用するのではなく、自社のプロジェクトに合わせてカスタマイズすることが重要です。カスタマイズの際は、下記のポイントを参考にしてみましょう。
活用方法 | 詳細 |
---|---|
全体像の把握 | テンプレートの構成と項目を確認 |
不要な項目の削除 | 自社プロジェクトに不要な項目は削除 |
必要な項目の追加 | 不足している項目は必要に応じて追加 |
具体的な情報の入力 | 数値データやスケジュールなどを入力 |
定期的な見直し | プロジェクトの進捗に合わせて計画を修正 |
テンプレートを見直した際は、必要に応じた項目の追加・削除なども検討します。プロジェクトの状況に合わせて必要な情報を精査することで、効率的な進行につながります。
プロジェクト計画書の無料テンプレート
プロジェクト計画書の無料テンプレートとして代表的なものに、MicrosoftのWord・Excel・PowerPointのテンプレートが挙げられます。プロジェクト計画書のテンプレートとして活用できるものは、おもに下記の3種類です。
- プロジェクトの進捗レポート(Power Point):プロジェクト関係者に進捗を伝えたいときに便利。プロジェクトの進捗状況・成果物・目標などのスライドがある。
- ガント プロジェクト計画シート(Excel):タスク別のプロジェクト進捗状況を可視化できる。数値の変更のみで簡単にガントチャートを作成できる。
- レッスン計画予定表(Word):カレンダー形式でプロジェクトの大まかな進捗を可視化できる。ただし、メモのスペースが少なく、詳細情報は別に管理する必要がある。
- ビジネスレポート 本格的なデザイン(Word):プロジェクト計画に対してコメントをもらいたいとき向け。プロジェクトの概要をレポート形式で記載できる。
上記のテンプレートは、いずれもカスタマイズできるため、プロジェクトに応じた項目の追加や削除ができます。なお、Microsoftのテンプレートは、進捗状況の管理や確認を目的としたテンプレートが多いため、次章で解説するIPAのプロジェクト計画書のサンプルをはじめとしたものと併用するのがおすすめです。
IPAのプロジェクト計画書サンプルの活用方法
プロジェクト計画書を作成する上で、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が提供するサンプルは非常に有用です。本章では、IPAのサンプル入手方法と活用事例を解説します。
IPAが提供するサンプルの入手方法
IPAは、プロジェクト管理に関する様々なドキュメントを公開しており、その中にプロジェクト計画書のサンプルも含まれています。IPAの公式サイトからサンプルをダウンロードする手順は以下の通りです。
- IPAの公式サイトにアクセスする。
- サイト内検索で「プロジェクト計画書 サンプル」などのキーワードを入力して検索する。
- 検索結果から、該当するサンプルを探し、ダウンロードする。
IPAが提供するドキュメントは、組込みソフトウェア開発向けのプロジェクトマネジメントガイドをはじめとして、特定の分野に特化したものもあります。自社のプロジェクトの特性に合わせて、適切なサンプルを選択することが重要です。
サンプルの活用事例|業種・規模別
IPAのプロジェクト計画書サンプルは、様々な業種や規模のプロジェクトで活用できます。以下は、IPAのプロジェクト計画書サンプルの活用事例です。
業種・規模 | 活用事例 | ポイント |
---|---|---|
中小規模のソフトウェア開発 | プロジェクト計画書のテンプレートとして活用 | IPAのサンプルをベースに、自社の開発プロセスに合わせてカスタマイズすることで、効率的に計画書を作成できる。 |
大規模なシステム導入プロジェクト | リスク管理やコミュニケーション計画の参考にする | IPAのサンプルに含まれるリスク管理やコミュニケーション計画の項目を参考に、自社のプロジェクトにおけるリスクや関係者間の情報共有方法を明確に定義できる。 |
組込みソフトウェア開発 | ESMR(組込みソフトウェア向けプロジェクトマネジメントガイド)を参考に、計画書を作成する | IPAが提供するESMR Ver.1.0などのドキュメントを参考に、組込みソフトウェア開発特有の要件を考慮した計画書を作成します。 |
IPAのサンプルは、あくまで参考として活用し、自社のプロジェクトの特性やニーズに合わせて、柔軟に修正・加筆することが重要です。
プロジェクト成功に導く計画書作りのポイント
プロジェクト計画書を作成するときのポイントを知りたいと思う人もいるのではないでしょうか。本章では、プロジェクトを成功に導く計画書作りのポイントを解説します。
計画段階から関係者の意見を取り入れる
プロジェクトを成功させるためには、計画段階から関係者の意見を積極的に取り入れることが不可欠です。プロジェクトに関わるメンバーは、それぞれの専門知識や経験、視点を持っています。プロジェクトメンバーの多様な意見を収集し、計画に反映させることで、より現実的で実行可能な計画を作成できます。
計画段階から意見を取り入れることで、関係者の参画意識を高め、プロジェクトへのコミットメントを促す効果も期待できます。現場の担当者から経営層まで、様々な立場の関係者を巻き込み、オープンな議論を重ねることが重要です。
進捗状況に合わせた定期的な計画見直し
プロジェクトは、計画通りに進むとは限りません。外部環境の変化や予期せぬ問題の発生など、様々な要因によって計画の修正が必要になる場合があります。そのため、プロジェクトの進捗状況に合わせた、計画の定期的な見直しが重要です。
計画の見直しはプロジェクトチーム全体で取り組み、現状の問題点や課題を共有して、改善策を検討します。見直しの頻度は、プロジェクトの規模・期間・複雑さなどによって異なりますが、月に一度を目安に実施します。柔軟な対応を心がけ、状況に適した計画の維持に努めましょう。
コミュニケーションによる密な情報共有
プロジェクトを円滑に進めるためには、関係者間の密な情報共有が不可欠です。プロジェクトの進捗状況・課題・変更点など、必要な情報をタイムリーに共有し、関係者間の認識のずれを防ぎ、スムーズな連携を促進しましょう。
情報共有の方法は、メール・会議・チャットなど、プロジェクトの特性や関係者の状況に合わせて選択します。重要な情報は記録を残し、必要時に参照できるようにするのがポイントです。積極的な情報発信による、透明性の高いコミュニケーションが、プロジェクト成功の基盤を構築する鍵です。
計画通りに進まない場合の柔軟な対応
綿密な計画を立てても、プロジェクトが計画通りに進まない場合もあります。プロジェクトが想定通りに進まないときに重要なのは、計画から逸脱した原因分析と、迅速な軌道修正です。
代替案の検討・リソースの再配分・スコープの調整など、現状に合わせて計画を見直しましょう。また、計画の変更は、関係者全員の理解と協力が欠かせません。変更する理由を説明するとともに、必要な情報の速やかな共有を心がけてください。
プロジェクト計画書でプロジェクトを成功に導こう
本記事では、プロジェクト計画書の基本・構成要素・無料テンプレートの活用法などを解説しました。プロジェクト計画書は、プロジェクトを成功に導くための羅針盤です。計画段階でしっかりと準備できれば、プロジェクトの進行中に発生する様々な問題を未然に防ぎ、スムーズなプロジェクト運営を実現できます。
プロジェクト計画書は、プロジェクトの全体像を把握し、関係者間での共通理解を促進するために欠かせないツールです。計画書に含めるべき要素を把握・リストアップして、万全を期したプロジェクト計画書を作成しましょう。
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