標準作業手順書(SOP)とは、すでに作り方が確立されている製品の仕様や製造手順などを文書に表したものです。手順書を作成しておけば、経験や知識の有無に関係なく、誰でも一定以上の品質の成果物を作れます。また、無駄な作業が減るため、結果的にコスト削減にもつながる可能性があります。この記事では標準作業手順書の概要や作成手順、作成するメリットなどについて解説しています。業務の品質のばらつきを改善したい方、属人化を防止したい方などはぜひ参考にしてください。
標準作業手順書とは?基本と重要性の解説
ここでは:標準作業手順書がどのようなものなのか、その概要について解説します。何について示した手順書なのか、マニュアルとの違いはなんなのかといった点について解説しているため、ぜひ参考にしてください。
標準作業手順書(SOP)とは何か?
標準作業手順書とはすでに作り方が確立されている製品の仕様や製造手順などを文書に表したものです。SOPと呼ぶこともありますが、これは「Standard Operating Procedures」の頭文字をとったものです。標準作業手順書の名の通り、作成しておくことで作成時の作業を標準化できるため、完成品のばらつきや品質の違いを防げます。標準作業手順書は製造業をはじめとして、医療や農業など様々な業界、業種、企業で使用されています。
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マニュアルとの違いとは?
標準作業手順書と似たものにマニュアルがありますが、両者は厳密にいうと異なるものです。それぞれの概要を以下の表にまとめました。
|
標準作業手順書 |
マニュアル |
用途 |
業務単体の手順を解説 |
業務プロセスおよび関連する情報をまとめている |
目的 |
成果物の質を維持する |
全体像の把握を通して自律的に業務遂行できるようにする |
使用者 |
対象業務の経験が浅い人 |
業務に関わる人全員 |
記載する情報 |
業務の基本的な手順 |
業務に関するあらゆる情報 |
標準作業手順書は業務単体の手順を記載しているものです。特定の業務のやり方を説明するものだと考えてください。一方のマニュアルも製造の手順など、業務のやり方を記載していますが、それだけでなく関連する情報も記載している点が特徴です。例えば、業務に対する考え方、その業務を行う背景、注意点などが体系的に記載されています。
この点から、マニュアルの目的は業務の全体像の把握であり、読んだ人が自律的に業務に取り組めるようになることだといえます。一方の標準作業手順書はあくまでも対象の業務における成果物の品質維持が目的です。さらに標準手順作業所の使用者が新入社員など業務の経験が浅い人であるのに対して、マニュアルは業務に関わる人全員です。
このように似たようなものでも、それぞれ用途や目的、使用者が異なるため、作成時に混同しないようにしてください。
標準作業手順書の作成手順とポイント
ここでは標準作業手順書を作成する際の手順と作成時のポイントを紹介します。業務の標準化を目的として手順書を作成したいものの、どのように作れば良いのかわからないといった方はぜひ参考にしてください。
手順1:目的と対象業務の明確化
作成にあたって最初にしなければならないのが標準作業手順書を作成する目的と手順書に載せる対象業務の決定です。標準作業手順書を作成して、何を達成したいのか、新入社員の教育なのか、属人化防止なのかなど目的を明確にしましょう。
業務の数は多いため、基幹となるものを選びます。また、課題解決を急がなければならない業務なども優先的に選択可能です。そして、業務の中でもどのプロセスを記載するのかも決めなければなりません。例えば、ある業務の中でもミスが発生しやすい特定のプロセスについてのみ標準作業手順書を作成するといった形です。
対象業務を決める際は、誰が使用するのか、どのような場面で使用するのかといったことまで考慮しておくとスムーズに進められます。仮に業務知識を持っているものの、当該作業の経験がない人であれば、基礎的な内容まで説明する必要がありません。
手順2:作業手順の詳細な記述
標準作業手順書の作成目的や対象業務が明確になったら、引き続き手順を詳細に記述してください。ここで手順に抜け漏れがあると作業でもミスが発生する可能性が高まり、成果物の品質維持が難しくなりかねません。作業手順の記述にあたっては、細かい作業までしっかりと書くようにしてください。経験者からすると書かなくてもわかると思えることでも初心者にとってはまったくわからないものであるため、その点を考慮する必要があります。使用する人が誰なのかにもよりますが、初心者を対象としている場合は難しい言葉などを使わないようにしてください。
手順3:関係者からのフィードバックと承認
手順書を一通り作成したら普段当該業務を担当している社員や上司など関係者に確認してもらい、フィードバックをもらってください。作成者と現場の担当者では知識や経験、視点が異なるため、ギャップが生まれる可能性は十分にあります。わかりにくい部分や間違っている部分がないかチェックしてもらった上で必要に応じて修正をし、最終的な承認をもらいます。
なお、作成後はどのように運用していくのか、更新はどのタイミングでどのような方法で行うのかといったことも決めなければなりません。例えば、新しい機材が導入され、業務内容に変化が起こったときに更新をするといった形です。
標準作業手順書のテンプレート活用法
標準作業手順書は、MicrosoftExcelなどを使って一から作成できますが、より効率よく作成したい場合はテンプレートの活用がおすすめです。ここではテンプレートの活用方法や使用時の注意点を紹介します。
無料テンプレートの使い方
標準作業手順書のテンプレートの中には、Web上で無料でダウンロードできるものもあるため、すぐに手に入れることも可能です。
デザインやレイアウトを自分で考える必要がないため、作成の手間がかかりません。
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テンプレートを使った手順の標準化と注意点
テンプレートは手間をかけずに手順書を作れるため非常に便利だといえますが、あくまでも一般的な雛形である点に注意してください。つまり、必要に応じて自社で使用するのに適した形にしなければなりません。自社のニーズを完全に満たしたテンプレートを見つけるのは難しい可能性があるため、完全に一致するものだけではなく、少し修正すれば使えそうなものも含めて探してみてください。
標準作業手順書を活用するメリットと成功事例
ここでは標準作業手順書の活用によってどういったメリットがあるのか解説します。また、実際に手順書を導入した企業はどのような成果を収めたのかについても取り上げているため、今後などが標準作業手順書の導入を検討している企業の担当者はぜひ参考にしてください。
SOPによる業務効率化のメリット
標準作業手順書の導入は以下のようなメリットをもたらしてくれます。
- 業務の効率化とコスト削減
- 品質と安全性の向上
- 属人化の防止と教育時間の短縮
1つ目に関しては、標準作業手順書の作成により、手順書を読めば基本的には誰でも同じ水準で業務をこなせるようになるため、業務で無駄が発生しません。手順がわからないために時間がかかったり、ミスによって修正する必要が出てきたりといったケースも起こりにくくなると考えられるため、結果的に時間やリソースといったコストの無駄遣いも削減できます。
標準作業手順書には作業の進め方が一から記載されているため、一定の品質以上の成果物を作り上げられます。また、機械やシステムなどの扱い方も記載しておけば、ミスによるトラブルや怪我といったリスクも軽減できます。標準作業手順書の作成には時間がかかりますが、それだけの時間をかけるだけのメリットはあるといえます。
標準作業手順書は属人化防止にも活用可能です。これは手順書を読めば業務を進められるため、ベテラン社員の経験や勘などに頼る必要がなくなるためです。なれないうちはスピードに違いが出る可能性もありますが、経験年数に関係なく誰でも同じ作業をこなせるようになれば人材採用も行いやすいです。さらに新入社員や異動してきた社員への教育にも活用できるため、教育にかかる時間をできるだけ短くしたいといった企業にもぴったりです。
実際に活用して成功した企業の事例
標準作業手順書を実際に導入した企業は少なくありません。例えば、自動車部品を作るある企業では、製造ラインの各ステップに対してそれぞれ標準作業手順書を作成しました。手順書を用意したことで、作業員の違いに関係なく一貫した品質で部品を作れるようになり、部品の廃棄率減少に成功しています。
また、標準作業手順書を導入したある病院では、患者入院から退院に至るまでの一連のプロセスを手順書に記載し、標準化しました。これによって患者の平均入院期間が短くなり、満足度向上を実現しました。
その他にも、ソフトウェア開発に取り組む企業では、開発プロセスを標準作業手順書に落とし込んでいます。その結果、プロジェクトの納期遵守率が高まりました。このような結果が実現した理由は、各プロセスにおいて必要なタスクとどういった成果物を作るのかを明確にした上で手順書に反映できていたためです。
標準作業手順書で業務の効率化と品質向上を実現しよう
今回は標準作業手順書の概要やマニュアルとの違い、作成手順などについて解説しました。標準作業手順書とは、すでに作り方が確立されている製品の仕様や製造手順などを文書に表したものであり、作業員の教育や属人化防止、成果物の品質維持などに貢献してくれます。
作成にあたっては手順書を作成する目的や対象業務を明確にし、作業手順を細かい部分まで手順書に記載する必要があります。また、一から作成すると手間がかかるため、オンライン上でダウンロードできる無料テンプレートの活用もおすすめです。