株式会社アジャイルウェアでは、2020年12月2日(水)に、オンラインイベント「Lychee Redmineユーザ会2020」を開催しました。基調講演として、株式会社レッドジャーニー代表/政府CIO補佐官の市谷 聡啓氏にご登壇いただき、「正しいものを正しくつくる~プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメント~」をテーマにお話しいただきました。本記事では、大好評だった市谷氏の講演をダイジェストで紹介します。

市谷 聡啓氏プロフィール

サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサー、アジャイル開発の実践を経て、自らの会社を立ち上げる。それぞれの局面から得られた実践知で、ソフトウェアの共創に辿り着くべく越境し続けている。

本日は、DX時代のプロダクト作りに必要な2つのマネジメント、プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントについて、対立ではなく、どちらの概念も必要だというお話をしていきたいと思います。

DXとは何か?

私は、現在、レッドジャーニー代表として民間企業のDXを、政府CIO補佐官として省庁のDXを推進支援しています。大げさに聞こえるかもしれませんが、DXは、もはや「国の課題」です。経済産業省を筆頭に国からの発信も増えており、「DX認定制度」や「DX推進ガイドライン」といった公的支援も運用されています。

DXといっても、雲をつかむようでイメージがつきにくいと思いますが、私は、DXとは“組織が想定外の変化でも対応できるようになることを目指す”、そして、“顧客体験をよりよく変える、新しい価値のあるプロダクトやビジネスを生み出すことを目指す”活動だと思っています。つまり、顧客体験の再定義を伴わないDXはDXではないのです。

「構想」→プロダクトマネジメントと「実現」→プロジェクトマネジメントの両輪で

 そんな時代背景のなか、DX推進のために組織に必要なこと、求められる能力は何かというと「構想」と「実現」です。

DX推進人材に関する企業アンケートでも、不足人材の上位はプロデューサーとビジネスデザイナーという結果が出ています。プロデューサーとは、柔軟なプロジェクトマネジメント能力を備えている人材=「実現」する役割であり、ビジネスデザイナーは、新しいビジネスを企画推進する人材=「構想」する役割です。自分たちの「構想」をプロダクトやサービスとして「実現」することがDXですが、これには段階が必要です。このプロダクトがどれだけ成功するか、正解は誰にもわからない。だから、ユーザーや課題、提供する価値など、プロダクトの各段階で仮説を立てて検証していくわけです。これが、私の専門である「仮説検証」と「アジャイル開発」です。

 DXを進めるうえでの段階とは、例えば、ユーザー定義、インタビュー実施、ストーリーボード作成、プロトタイプ開発といったことですが、各段階では、それぞれで仮説を立て、アジャイルに形作って検証するということになります。これを、活動としてしっかりやるためには、プロジェクトとして管理することが求められます。

プロジェクトマネジメントについては、ここ10年位、あまり華々しさがないというか、「プロジェクトマネージャーなんていらないのでは?」「プロジェクトでなくプロダクトをやるべき」といった議論があったりしますが、プロジェクトはタイムボックスの切り方で、プロダクトは成果物、対立軸ではありません。例えば、スクラムのスプリントは1週間とはいえプロジェクトですよね。むしろ、タイムボックスがなく、「年単位でこのプロダクトをやってください」となったらかなり大変です。プロジェクトマネージャーという肩書きはともかく、決めた時間でやりきるためには、プロジェクトマネジメント自体は絶対になくなりません。

求められているのは、「構想」と「実現」どちらかではなく、両輪で走ることなのです。

機動性高いプロジェクトマネジメントで現実に計画を合わせる

もう一つ、最近のプロジェクトマネジメントで重要だと思うことが「傾き」です。

DXをはじめ、アジャイル開発や新技術の導入といった変革時に問題になるのは「傾き」、つまり、どれだけの変化量かということです。変化量がものすごく急な場合は、やはり問題が生じます。例えば、1ヶ月でアジャイルを導入するのは難しいことです。だから、ここでも「段階を取り入れましょう」とよくお話しします。段階がないと、DXもどこから始めたらいいかわかりません。

自分たちの到達したい目的地を立て、たどり着くまでに必要な各段階を逆算で構想する、これをプロジェクトマネジメントとして、もっと取り入れましょうと言うことです。もちろん、どんどん構想はアップデートしていき、機動性の高いプロジェクトマネジメントを行うべきです。正解がない状況に対しては、「現実に計画を合わせる」ことが大切で、従来の「計画に現実を合わせて、とにかく頑張って寝ずに働け」ではありません。

これまでのプロマネそのままではないので、ハードルはあるかもしれませんね。そこで、こういった変更許容性のあるプロジェクトマネジメントに大事な基本を1つ、お話ししようと思います。

タスク管理の重要性=すべての仕事は「理解」から始まる

プロジェクトマネジメントに重要な観点はいろいろありますが、一番手前で問われるのは、すべての仕事は「理解」から始まると言う事なんですね。うまくいかない状況では、自分の理解が足りないだけでなく、チームメンバー・関係者・顧客など双方の理解不足が問題の根幹にあります。

例えば、理解不足には、
・誰が何をやっているかわからない
・誰かが忙しくて全て止まる
・全体的に状況がわからないいから、次に何をすべきか発想できない
など、いろいろありますが、そのままだと、指示待ちが増え、組織が非活性化します。そして、誰かと仕事をしている感覚が薄まり、そのプロジェクトから心が離れてしまいます。理解不足が破綻につながるのです。ここでいう理解不足は、そんなに深い話ではなく、実は相手の状況を知らないだけであることが多いのです。

この課題を解消するために、ヒントになるのはダニエルキムの「成功循環モデル」です。このモデルにある「関係の質」は、「理解の質(わかりみの質)」とも言えます。理解が浅い状態、目の前のことだけしか理解できない状態では悪循環が発生することがありますが、「わかりみが深まるモデル」では、自分の役割、チームの中でのお互いの役割を理解して、成功につながる循環を回します。自分だけでなく、全体状況がわかるからこそ、的を得た行動がとれるということです。

さらに、仕事を進める上で、タスク管理は基本ですね。このタスク管理というのは、まさに、「分かる」ための手段なんです。自分は何をしなければいけないか、チームは何をしなければいけないか、この基本を軽視してはいけないのですね。これはDXプロジェクトのチームでも最初に問われることです。

分断を乗り越える姿勢

理解不足というのは、つまりは相手との分断です。この分断と言うのが非常にやっかいで、DXチームでも必ず存在しますし、日本の組織がどこも抱えている課題です。役割、職位、組織、世代など分断だらけの中で、変革し結果を出すのは、かなり難しいことです。

コロナ禍のこの1年、物理的な分断も起こっています。分断をどう乗り越えるかと考えていた時、「エクストリームプログラミング」を読み直したんです。20年前の本ですけど、「自分から変わる」と言うことが最初から最後まで書いてあります。「相手が乗り越えてくれたらいいのに」とか「めんどくさいことやらなくても、うまくいったらいいのに」ではなく、「自分から進まなきゃいけない」ということです。これは、まさに分断を乗り越える姿勢なんですよね。

 そして、そのときに大事なのは<コミュニケーション、シンプリシティ、フィードバック、勇気、リスペクト>だとあります。確かに20年前から書いてあったなぁと。まさに、これは、分断の深まる今、必要なことです。コミュニケーションで分断をつなぎ直す。シンプリシティで複雑なものを単純にする。正解がないなか実行するにはフィードバックも不可欠です。分断を超えるには勇気が必要です。そして、最後のリスペクトですが、相手を尊重してお互いに乗り越えましょうとことが大事だと思います。

皆さんにとっての良い旅を!

ということで、プロダクトマネジメントもプロジェクトマネジメントも大事ということから、分断を乗り越える姿勢までお話してきました。

「やり過ごしていけば何とかなるだろう」と言うような、そんな状態ではもはやありません。数年先を想像した時に、このまま何も変わらないのでは?と思うなら、そこから目をそらさず、「自分で超えるしかない!」と、ある種の諦めの気持ちで動き出してください。今、うまくいってないなら何をやっても結果につながりますから。そういった心づもりでやっていくことが、これからは必要だと思います。

皆さんにとっての良い旅を!

すべての機能を無料で
30日間お試し

シンプルなUIで大規模な案件も一気に見える化
タスクの漏れを防いでプロジェクトを前に進めます

「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」公式アンバサダー 前田敦子 「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」
公式アンバサダー 前田敦子
Pocket

このエントリーをはてなブックマークに追加