仕事のなかで「ベースライン」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
ベースラインとは、プロジェクト管理をはじめ、タイポグラフィやスポーツ、音楽など幅広い環境で使われるキーワードです。
ベースラインになじみがない人にとっては、どのようなときに使えばいい言葉なのかよくわかりませんよね。
そこで今回は、プロジェクトマネジメントにおけるベースラインの役割やメリットを詳しく紹介します。
ベースラインの意味を知っておけば新しい効率化ができるので、ぜひ最後までご覧ください。
ベースラインとは
プロジェクトマネジメントにおけるベースラインとは、あらかじめ設定されるプロジェクトの指針です。
予算やスケジュール、成果物など、プロジェクトの管理要素ごとにベースラインが設定されます。
プロジェクト開始後は、実測値とベースラインを比較しパフォーマンスを計測します。
例えば、スケジュールのベースラインが、2週間以内の完了となっていると仮定しましょう。
実際にプロジェクトを開始し、完了までに3週間かかるとわかった場合、スケジュールに問題があるとわかります。
作業スピードを上げたり、スケジュールを見直したりと、何らかの改善行動をとらなければなりません。
ベースラインは、プロジェクトの実行過程において実測値を正確に評価するために欠かせない指標です。
ベースラインと実測値のズレを早期に発見すると、納期遅延や予算超過などの問題を回避しやすくなります。
ただし、ベースラインを頻繁に変更すると、プロジェクトの作業成果物を正確に測定することが困難となります。
プロジェクトに大きな変更があった場合のみ、ベースラインを再設定するとよいでしょう。
ベースラインの代表的な2つの定義
プロジェクトマネジメントにおけるベースラインの定義は、提唱者によって異なります。
中でも代表的な例として、以下2つの定義が存在します。
- PMBOK
- ISO21500
それぞれの特徴を順番に説明します。
PMBOKにおけるベースライン
PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントの知識を体系的にまとめたものです。
もともとはアメリカの「PMI」という非営利団体によって作られたもので、現在ではプロジェクトマネジメントの世界標準となっています。
PMBOKにおけるベースラインは「作業プロダクトの承認済み版」と定義されています。
また「正式な変更管理手続きを踏んでのみ変更可能であり、実績値との比較基準として使用される」ともあります。
ISO21500におけるベースライン
ISO21500は、プロジェクトマネジメントの国際標準です。
ISO21500は、プロジェクト管理のパフォーマンスを向上した概念と、プロセスを提供するために開発されました。
プロセスとベストプラクティスの実装を目的としています。
ISO21500では、ベースラインを「監視され、管理されるプロジェクト・パフォーマンスと照らして比較するための参照基準」と定義しています。
プロジェクト全体では、作業内容の基準値や予定値として比較することが多いです。
ベースラインを変更する場合
ベースラインは簡単に変更するものではなく、本当に必要なときだけおこないます。
例えばプロジェクトの予定額が増えたり納期が伸びたりなど、プロジェクトの計画に大きな変更があったときのみベースラインを変更しましょう。
ベースラインを簡単に変更するとプロジェクトにブレが生じるので、失敗につながりやすいからです。
参考:統合変更管理(Perform Integrated Change Control)とは何か?その手法を解説
ベースラインに関する4つの要素
ベースラインには、以下の4つの要素があります。
- スコープ・ベースライン
- スケジュール・ベースライン
- コスト・ベースライン
- パフォーマンス測定ベースライン(PMB)
プロジェクトマネージャーやチームはベースラインの4つの要素を比較しながら、プロジェクトの進捗を確認します。
それぞれの要素を順番にみてみましょう。
1.スコープ・ベースライン
スコープ・ベースラインとは、プロジェクトの作業範囲を確認するために作成されるものです。
基本的には、以下のようなプロセスを実行することで作成されます。
- スコープ定義
- 要求事項収集
- WBS作成
ベースラインに定められたスコープは、プロジェクトのサイクルを通して監視、検証、コントロールの対象です。
2.スケジュール・ベースライン
スケジュール・ベースラインとは、プロジェクトの進行状況との比較になる基準値スケジュールのことです。
プロジェクトの作業やフォロー作業をはじめ、これまでの過程をタスクごとにスケジュールへ当てはめます。
3.コスト・ベースライン
コスト・ベースラインとは、プロジェクトにかかる予算の基準値です。
時間軸ベースで結果と比較により、プロジェクト全体のコストパフォーマンスを測定、監視、コントロールできます。
プロジェクト全体の期間中、どれくらいの予算を配分しなければいけないかを明確にします。
コストの見積もり結果から、プロジェクトスケジュールの工程ごとに必要な資金を算出可能です。
4.パフォーマンス測定ベースライン(PMB)
パフォーマンス測定ベースラインとは、これまでの3つのベースラインを完全に統合したものを指します。
ベースラインがすべて統合されている場合、スケジュールの遅れによってコストにどのような影響があるのかなどを把握できます。
何らかの要素に変更があれば、ほかの要素への影響を効率よく監視・管理できる点が特徴です。
プロジェクト全体のパフォーマンスを測定するためにも、パフォーマンス測定ベースラインは必要不可欠な要素になります。
ベースラインでプロジェクト管理をする2つのメリット
ベースラインでプロジェクト管理をするメリットは、以下の2つです。
- プロジェクトの進捗状況を測定できる
- パフォーマンスの測定結果が次回の参考になる
それでは順番に解説します。
1.プロジェクトの進捗状況を測定できる
1つ目のメリットは、プロジェクトの進捗状況を測定できる点です。
ベースラインは、プロジェクトのスケジュールやコストを測定するいわば物差しのようなものです。
現行の「プロジェクトが遅れているのか・円滑に進んでいるのか」を判断するには、比較対象となるスケジュールベースラインの存在が欠かせません。
万が一、スケジュールベースラインよりも実測値が遅れている場合は、担当者の変更や納期延長などの対処が必要です。
プロジェクトの状況把握と対処の迅速化を図れる点も、ベースラインを活用するメリットと言えます。
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2.パフォーマンスの測定結果が次回の参考になる
2つ目のメリットは、ベースラインで測定した結果が、次回以降のプロジェクトに活かせる点です。
プロジェクト終了後に、コストやスケジュールなどの作業成果物を、ベースラインと比較することで、パフォーマンスのよい点・改善点を測定できます。
例えば、予算計画で考慮できていなかったコストや、想定上の工数を要する成果物に気づくなど、さまざまな改善点が見つかるはずです。
反対に、実績がベースラインを超過する、高パフォーマンスな領域も確認できます。
次回以降のプロジェクト計画に上記の測定結果を盛り込み、実行を繰り返すことで、改善サイクルを好転させられるでしょう。
ベースライン欠如で発生する3つの問題点
プロジェクトにおいてベースラインが欠如していると、以下のような問題が発生します。
- スケジュールの遅延
- 品質管理の問題
- 変更管理の問題
上記3つすべての落とし所が、ベースラインの存在には必要です。
ベースラインが欠如すると、プロジェクトが納期までに間に合わなくなったり、クライアントが求める仕上がりにならなかったりする恐れがあります。
1.スケジュールの遅延
どのようなプロジェクトにも、スケジュールの設定は必要不可欠です。
いつまでにプロジェクトを完了させるのかを決めておかなければ、クライアントにも迷惑がかかります。
スケジュール・ベースラインを作成すればプロジェクトの進行状況をスケジュールと比較できるので、納期に余裕をもたせられるでしょう。
同時進行するプロジェクト数が多くなるごとに管理が必要になるため、ベースラインの存在は必要です。
2.品質管理の問題
ベースラインがなければ、プロジェクトにおける作業範囲の確認が難しくなります。
例えば、アパレルショップで服を売るのにしても、商品である服の特徴を理解していなければ説明もできません。
何をどうすればいいかの基礎を明確化するには、スコープ・ベースラインを意識する必要があります。
プロジェクトのサイクルを回すためにもベースラインは重要です。
3.変更管理の問題
プロジェクトに変更があった場合、ベースラインが構築されていなければ以前との変更した箇所を把握しづらくなります。
プロジェクト開始時の水準からどれほど変更されたのか、またコスト・スケジュールなどがどれほど変化するのかを把握するには、変更前の基準が必要です。
例えばシステム開発のプロジェクトで、追加の機能開発が入ったとします。
ベースラインを定めていれば、追加分のタスクやそれに伴うスケジュール・コストの変化を把握できます。
変更事項を追跡してプロジェクトを管理するためにも、ベースラインは必要です。
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効率的なプロジェクト管理のためにベースラインを取り入れましょう
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