スクラム開発とは?初心者にもわかりやすく全体像を解説

「スクラム開発に興味はあるけれど、どこから始めれば良いのかわからない」と感じている方は少なくありません。

近年、アジャイル開発の一手法として注目を集めるスクラム開発は、優れた柔軟性と効率性から多くの企業で採用されています。変化の激しい現代において、迅速な対応と継続的な改善を可能にするスクラムは、プロジェクト成功の鍵を握ると言っても過言ではありません。

本記事では、スクラム開発の基礎からメリット、デメリット、実際の進め方までを初心者にもわかりやすく解説します。本記事を読むことで、スクラム開発の全体像を把握し、自信を持ってスクラムを始められます。

スクラムの力を最大限に引き出し、プロジェクトを成功へと導きましょう。なお、本記事では、アジャイル開発におけるスクラムのフレームワークを使った開発手法を「スクラム開発」と定義しています。

スクラム開発の基礎知識

まずは、基礎知識として、アジャイル開発やウォーターフォール開発との関係を踏まえて、スクラム開発の定義・概要や誕生の背景などを解説します。

そもそもアジャイル開発とは

アジャイル開発とは、ソフトウェア開発において、柔軟性と迅速性を重視した手法の総称です。従来の開発手法とは異なり、アジャイル開発では要件や計画を固定せず、開発の過程での変化に対応しながら継続的な価値の提供を目指します。

ウォーターフォール開発との違い

ウォーターフォール開発は、要件定義や設計、実装、テストを順番に進める手法です。各工程を完了してから次に進むので、計画が立てやすい反面、途中での仕様変更が難しい点にデメリットがあります。

一方、アジャイル開発では上記の工程を短いスプリントと呼ばれる期間で繰り返し行い、フィードバックを得ながら進めます。仕様変更や優先順位の変更に柔軟に対応でき、市場の変化に即した開発が可能です。

スクラム開発の定義と概要

スクラム開発は、アジャイル開発の一手法です。名称は、ラグビーのスクラムのようにチームが一丸となって共通の目標に向かって進む点に由来しています。

スクラム開発では、開発サイクルをスプリントと呼ばれる短期間の反復(通常1~4週間)に分割します。そして、各スプリントの終わりに動作可能な製品の一部(インクリメント)の完成を目指します。

スクラムは、透明性、検査、適応といった3つの柱に基づいています。そのため、変化の激しい環境や、顧客のニーズが常に変化するプロジェクトに特に適した開発手法です。

スクラム開発が生まれた背景と目的

1990年代初頭、ソフトウェア開発現場では、ウォーターフォール開発の限界が指摘されていました。プロジェクトの遅延や予算超過、顧客ニーズとの乖離などが頻発し、より柔軟で適応的な開発手法が求められていました。

スクラムは、こうした状況の克服を目的に生まれたアジャイル開発手法の一つです。変化する要件に迅速に対応し、反復的な改善を通じた高品質なソフトウェアの提供を目指しました。

2001年にアジャイルソフトウェア開発宣言が発表され、スクラムを含む新しい開発手法の普及が加速しました。スクラムの主な目的は、迅速な市場投入と高い顧客満足度の実現です。

開発チームは自己組織化され、スプリントで動作するソフトウェアのインクリメントを継続的に提供します。結果として、顧客からのフィードバックを素早く取り入れ、製品を改善できます。

スクラムチームの役割と責任

スクラム開発において、チームの構成と役割の明確化はプロジェクト成功の鍵を握ります。各メンバーが果たすべき責任と役割の理解が重要です。

本章では、スクラムチームを構成する主要な役割と責任について詳しく解説します。

プロダクトオーナー

プロダクトオーナーは、プロダクト価値の最大化に責任を持ちます。単にプロダクトバックログを管理するだけでなく、市場の動向や顧客のニーズを深く理解し、プロダクトの戦略に反映させる役割です。

プロダクトバックログの優先順位付け、スプリントゴールの設定、ステークホルダーとの継続的なコミュニケーションを通じて、プロダクトの方向性を決定します。ビジネスや技術、ユーザーエクスペリエンスの交差点に立ち、データに基づいた意思決定を行う必要があります。

スクラムマスター

スクラムマスターは、スクラムチームが効率的に機能する目的で置かれるサーバントリーダーです。スクラムガイドに基づき、チームが自律的に協力し、プロジェクトの障害を取り除く手助けをします。

単にスクラムイベントを円滑に進めるだけでなく、チームが自己組織化され、継続的に改善していく文化の醸成を意味します。例えば、チームメンバーへのコーチング、スクラムの価値と原則の教育、組織全体のスクラム導入の支援を行います。

開発チーム

開発チームは、プロダクトバックログから項目を選び、スプリント内で完了する点に責任を持ちます。開発チームはクロスファンクショナルであり、必要なスキルセット(開発、テスト、設計など)を持つメンバーで構成され、自己組織化されているのが特徴です。

開発チームには、プロダクトの価値を高める目的があります。例えば、高品質なソフトウェアの開発だけでなく、継続的なスキルの向上、新しい技術の導入、チーム全体の生産性向上を図ります。

こうした目的を実現すべく、スプリントプランニングやデイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブなどのスクラムイベントを通じて協力し、進捗を共有し、改善点を特定します。

ステークホルダー

ステークホルダーは、プロジェクトに影響を及ぼす、または影響を受ける外部の人物や団体です。顧客、エンドユーザー、経営陣、営業部門、マーケティング部門など、多岐にわたります。

彼らの意見・要求はプロダクトオーナーを通じて反映され、プロダクトの方向性に影響を与えます。

ステークホルダーとの適切なコミュニケーションの維持は、プロジェクトの成功に不可欠です。単に要望を聞くだけでなく、彼らをプロジェクトの初期段階から巻き込み、定期的に進捗状況を共有し、フィードバックを積極的に求める必要があります。

スクラム開発で使われる専門用語一覧

スクラム開発を効果的に進めるには、専門用語の理解が重要です。専門用語を理解すると、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、プロジェクトの成功に寄与します。

以下に、スクラム開発において頻繁に使われる基本的な用語を紹介します。

用語 定義 詳細
スプリント 短期間の反復作業 通常1〜4週間の期間を設定し、計画されたタスクを完了させる。スプリントの終了時には、完成した機能はリリース可能な状態である必要がある。
リファインメント バックログを整理する期間 1〜2週間に1度、実施するイベントであり、プロダクトバックログ内のストーリー内容や優先順位、見積もりなどの認識合わせを行う。
インクリメント 完成の定義を満たし、リリースできる状態のプロダクト 特定の部品や技術層だけを作り込んでも、利用者に価値がなければ意味がない。一気通貫で利用者に役立つプロダクトが求められる。

スクラム開発のメリット・デメリット

スクラム開発には、メリットもあればデメリットも存在します。本章では、代表的なメリット・デメリットについて詳しく解説します。

メリット

スクラム開発を導入すると、以下のようなメリットがあります。

メリット 詳細
柔軟性が高い スクラム開発は、短いスプリントを繰り返し、仕様変更に迅速に対応できるのが特徴。顧客のニーズや市場の変化に柔軟に対応できる。
コミュニケーションの向上 デイリースクラムを通じて、チーム内のコミュニケーションが活発になる。結果として、問題の早期発見や迅速な対応が可能となる。
スキルアップ チームメンバーが幅広い役割を担うので、個々のスキルアップにつながります。チーム全体のパフォーマンス向上にも寄与します。
働きやすさと楽しさの向上 スクラム開発は、チーム全員が協力し合って進めるので、働きやすさや仕事の楽しさが向上する。結果的に、チームのモチベーション維持につながる。

デメリットと注意点

一方で、スクラム開発には、いくつかのデメリットや注意点も存在します。

デメリット 詳細
計画の不確実性 短いスプリントで進行するので、長期的な計画が不確実になりやすい。こうした問題を避けるには、定期的なバックログの見直しが不可欠。
チームの成熟度 スクラム開発が成功するには、チームの成熟度が重要。経験の浅いチームでは、スクラムのプロセスを効果的に活用できない可能性がある。
コミュニケーションコストの拡大 頻繁なミーティングが求められるので、コミュニケーションコストがかかる場合がある。結果として、開発に充てられる時間が減少する可能性もある。

スクラム開発のメリットを生かしつつ、デメリットを克服するには、チーム内での効果的なコミュニケーションとプロセスの最適化が鍵です。

スクラム開発の進め方

スクラム開発を効果的に運用するには、基本的なステップの理解と適切な実施が重要です。以下ではスクラム開発の主要プロセスを、順を追って詳しく説明します。

1.プロダクトバックログ

プロダクトバックログは、プロジェクトの要件、機能、改善点、修正などを優先順位付けしてリスト化したもので、プロダクトオーナーが管理します。スクラムチームにとって、開発すべき価値を最大化する唯一の情報源です。

プロダクトバックログは動的なもので、市場の変化やフィードバックに基づいて継続的に更新されます。

2.スプリントプランニング

スプリントプランニングは、次のスプリント(通常1〜4週間)で何を達成するかをチーム全体で計画する重要なイベントです。プロダクトオーナーがスプリントの目標を提示して、開発チームが担当する作業を選択し、計画を立てます。

本ステップでは、プロダクトバックログから優先順位の高い項目を選び、スプリントバックログとして設定します。

3.デイリースクラム

デイリースクラムは、チームが毎日15分程度の時間で進捗状況を確認し合う短いミーティングです。本ミーティングでは、以下の3つの質問を中心に話し合います。

  • 前回のデイリースクラムから何を成し遂げたか
  • 次のデイリースクラムまでに何をする予定か
  • 現在抱えている課題や障害は何か

デイリースクラムを通じたチームの進捗状況の共有や障害の特定により、スプリントゴール達成に向けた調整を行えます。

4.スプリントレビュー

スプリントレビューは、スプリントの成果物をステークホルダーに披露し、フィードバックを得るイベントです。得られた意見を基に、次のプロダクトバックログの調整を行います。

レビューは、チームが顧客の期待に応えているかを確認し、必要な調整を行う機会として役立ちます。

スプリントレビューの大まかな進め方は、以下の通りです。

  1. プロダクトオーナーがスプリントゴールを説明する
  2. 開発チームが完成したプロダクトインクリメントをデモンストレーションする
  3. ステークホルダーが成果物を評価し、フィードバックを提供する
  4. プロダクトオーナーがフィードバックに基づいてプロダクトバックログを更新する

5.スプリントレトロスペクティブ(ふりかえり)

スプリントレトロスペクティブは、チームがスプリント全体をふりかえり、プロセスの改善点を見つけるミーティングです。チームは、何がうまくいったか、何がうまくいかなかったか、次のスプリントで何を改善できるかを議論します。

そして、次のスプリントをより効果的に進められるよう、具体的なアクションを決定します。レトロスペクティブは、チームの自己改善を促進し、より効率的で効果的な働き方を目指す重要な機会です。

上記のステップを継続的に繰り返せば、スクラム開発は継続的に改善され、変化に柔軟に対応し、プロジェクトの成功に導けます。スクラムは、透明性、検査、適応といった3つの柱に基づいており、チームが常に学習・改善し続けることが奨励されます。

スクラム開発のよくある課題と解決策

スクラム開発を進める中で、プロジェクトチームが直面しがちな課題と解決策を紹介します。課題に対する効果的なアプローチを理解しておくと、スクラムをより効率的に導入できます。

課題1: 期限内に複数の施策をスクラムで開発したい

複数の施策を同時に進めると、チームのリソースが分散し、進捗管理が難しくなる場合があります。以下の対策を講じると、効率的な開発を実現可能です。

各施策の主担当を決める

各施策に対して主担当者を配置すると、責任の所在が明確になり、タスクの進捗管理が円滑化します。主担当者は施策の進捗を定期的に報告し、全体のスケジュール管理の役割を担います。

主担当者は、単なる進捗報告だけでなく、ボトルネックの特定と解決、チーム間の調整も行う必要があります。例えば、Jタスク管理ツールで担当者を明確化し、進捗状況を可視化するのが有効です。

全体スケジュールを可視化する

プロジェクト全体のスケジュールを一目で把握できるよう、ガントチャートやカンバンボードを活用しましょう。結果として、チーム全員が現状を把握し、スムーズなコミュニケーションを促進できます。

さらに、進捗の遅延やリソースの偏りを早期に発見し、適切な対応を取るのが重要です。プロジェクト管理ツールを使用し、タスクの依存関係やクリティカルパスを明確にすると、より効果的なスケジュール管理が可能です。

課題2: 施策の優先順位が頻繁に変わる

優先順位の変動により、開発が混乱する場合があります。こうした状況に対処する方法を以下に示します。優先順位の変更に柔軟に対応しつつ、チームのモチベーションを維持するコミュニケーション戦略も重要です。

スプリント期間を短縮させる

短いスプリント期間(例:1週間)を採用すると、迅速に優先度の高いタスクに対応できます。変化する要件にも柔軟に対応可能です。

ただし、スプリント期間を短くする際は、計画とレビューのオーバーヘッドが増加する可能性があるので、チームの習熟度やタスクの複雑さを考慮する必要があります。また、デイリースクラムの重要性が増し、迅速な意思決定が求められます。

プランニング前にリファインメントを実施する

スプリントプランニングに先立ち、プロダクトバックログアイテムのリファインメントを行いましょう。必要な情報を整理し、優先順位を付け直すと、より具体的な計画の策定が可能です。

リファインメントでは、プロダクトオーナー、開発チーム、ステークホルダーが参加し、タスクのスコープ、受け入れ条件、見積もりなどを明確にします。結果的に、スプリントプランニングの効率が向上し、より現実的な計画を立てられます。

改善タスクのバックログを用意する

優先順位の低いタスクを改善タスクとしてバックログに追加し、将来的なスプリントで対応しましょう。現在は優先度が低くても、将来的には重要になるタスクを見落とすことがありません。

改善タスクは、技術的負債の解消、パフォーマンス改善、ユーザビリティ向上など、多岐にわたります。定期的なバックログの見直し、優先順位の再評価が重要です。

課題3: スプリントレビューを効率化したい

スプリントレビューが長時間化すると、効率が低下します。以下の方法でレビューを効率化しましょう。

プロダクトオーナーが施策の目的やリリース後の数値を共有する

プロダクトオーナーが施策の目的やリリース後の成果を事前に共有すれば、レビューの焦点を明確にし、効果的なフィードバックを得られます。

目標と実績を比較して、施策の効果を定量的に評価し、次のステップを決定する根拠とします。例えば、A/Bテストの結果やユーザーエンゲージメントの指標などを共有するのが有効です。

スプリントレビューを毎週実施する

スプリントレビューをより頻繁に実施すると、フィードバックをタイムリーに収集し、次のスプリントに迅速に反映できます。ただし、レビューの準備に時間をかけすぎないよう、簡潔でわかりやすい資料の作成が重要です。

また、レビューの参加者を適切に選定し、議論が拡散しないように注意する必要があります。

フィードバックの結論を明確化する

レビューの終わりには、フィードバックの結論を明確にし、次のステップを具体的に定めましょう。チーム全体が次に何をすべきかを理解し、スムーズに行動に移せます。

フィードバックの結論は、タスクとしてバックログに追加し、担当者と期日を明確にすると、確実に実行に移せます。また、決定事項はドキュメントに記録し、チーム全体で共有するのがおすすめです。

スクラム開発でプロジェクトを成功に導こう

スクラム開発は、プロジェクトを成功に導く上で効果的なフレームワークです。スクラムの実践によって、チームは迅速に価値を提供し、変化に柔軟に対応できます。

スクラム開発を導入すると、チームはより効率的にプロジェクトを進め、顧客に価値を提供できます。スクラム開発のフレームワークを最大限に活用し、プロジェクトを成功に導きましょう。

プロジェクトの生産性を高める上では、Lychee Redmineの導入も効果的です。ガントチャートやカンバンなどプロジェクト管理に役立つ機能を豊富に備えています。操作性や導入のしやすさに優れており、プロジェクトの規模や人を選ばずに使えるので、使い勝手の良さが評価されています。

有料プランも30日間は無料でお試しできるので、ぜひ申し込みをご検討ください。

プロジェクト管理ツール
30日無料トライアルをはじめる
  • 多機能ガントチャート/カンバン/バックログ/リソース管理/CCPM/レポートなど
  • ・ クレジットカード登録不要
  • ・ 期間終了後も自動課金なし
  • ・ 法人の方のみを対象

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。