プロジェクトをスケジュール通りに進めるのは大変ですよね。
「なんとか予定通りに終わったが、コストが想定以上にかかってしまった」
「スケジュール管理とコスト管理をうまく両立させたい」

上記のような悩みには、EVMが役立つかもしれません。
数式を用いてスケジュールとコストを一元管理できるEVMの概要だけでなく、おすすめのプロジェクト管理ツールを紹介します。
ぜひ参考にしてください。

EVMの概要を紹介

まずはEVMがどういったものなのか、概要を解説します。

EVMはプロジェクト管理手法のひとつ

EVMはEarned Value Managementの略です。
プロジェクト管理手法のひとつで、プロジェクトの実績と進捗を可視化するために用いられます。
プロジェクト管理の単位に時間だけでなく、コストを加えている点がEVMの特徴です。

EVMは1960年代、アメリカの国防総省における規則の一部として規定されたものがもととなっています。
EVMの概念はその後、同じくアメリカのエネルギー省でも採用され、広がりを見せました。

日本では2003年、経済産業省が「EVM活用型プロジェクト・マネジメント導入ガイドライン」を作成し注目を集めました。
EVMは現在、さまざまな企業や組織で活用されています。

従来のコストマネジメントとEVMの違い

従来のコストマネジメントでは、計画時の予算と実際にかかったコストの2つの指標が用いられていました。
しかし、EVMには「出来高」の概念があり、実際に完了した作業の価値を示します。

例えば、1か月の計画予算は500万円で、実際にかかったコストは450万円だったとしましょう。
古典的なコストマネジメントでは、予算に比べて50万円余っていることになります。

しかし、完了した作業は予定の80%である400万円分だけしか進んでいなかったとしましょう。
計画と比べて100万円分スケジュールに遅れが生じているだけでなく、コストは50万円オーバーしてしまっています。
スケジュールと予算の両方を見直す必要がありますね。

EVMを用いれば、納期と予算ともに計画通りに進んでいるか一目で確認でき、いち早く対策を講じられます。

EVMを理解する上で重要な指標4つ

「EVMはEarned Value Managementの略、といわれても何だかよくわからない」という人も多いかもしれません。
EVMを理解するには、さまざまな指標を学んでおく必要があります。

ひとつずつ確認していきましょう。

①PV

Planned Valueの略であるPVは日本語で、「計画価値」や「計画予算」と訳されます。
ある時点までに完了すべき作業における総予算コストの合計を意味し、計画段階で見積もられます。
要するに、計画時に立てた出来高です。

人件費や設備費などのコストを予想して概算されます。
PVを基準値として作業の遅延などが確認できるため、ベースラインと呼ばれることがあります。

②EV

EVMにおいて基本的かつ重要な指標がEVです。
Earned Value、つまり「出来高」を意味するEVは、ある時点において完了している工程の「予算コストの合計値」を表します。

例えば、プロジェクトの予算総額が1200万円、プロジェクト期間が12か月のプロジェクトがあったとしましょう。月々の
作業が均等で割り当てされているのであれば、6か月経過後のPVは600万円ということになります。しかし仮に6か月段階
での進捗が60%と予定より進捗していた場合、この時点でのEVは、1200(万円)×0.6=720(万円)となります。
EVはこの後で説明するAC(実コスト)と比較することでコストの予実確認が出来、コストオーバーになっていないか?
確認できるわけです。

③AC

ACはActual Costの略で「実コスト」を意味します。
ある時点までに投入した実際のコストを合計した値です。
計画通りにプロジェクトが進んでいれば、ACはPVと同じ値となります。

「ある時点までのコストを合計した値であれば、EVと同じではないか」と感じるかもしれません。
EVは予算コストであるのに対して、ACは実際にかかったコストを表します。

④BAC

「完成時総予算」という意味のBACはBudget At Completionの略です。
計画立案の際に算出される数値で、プロジェクトの完了に必要な総予算のことです。

EVを算定する際の根拠となる数値で、計画通りにプロジェクトが進んだ場合のすべての予算を表します。
そのため、EVがBACに到達した時点でプロジェクトは終了となります。

EVMで算出できる4つの数値

EVMの指標を用いれば、さまざまな値を算出できます。
数ある値の中でも、重要な4つの数値を順に解説します。

①CV

「コスト差異」を表すのがCost Varianceです。
値は下記の計算式のとおり、終了した作業の予算コストを合計した値であるEVから、実際のコストであるACを引いて求めます。

計算式:CV=EV-AC

CVがプラスのとき、コストは予算内に収まっていますが、マイナスであれば予算を超過していることがわかります。

計画と実際に発生したコストを比べられるため、プロジェクトのコストパフォーマンスを評価するのに役立ちますね。

②SV

Schedule Varianceの略称であるSVは「スケジュール差異」と訳され、下記計算式で算出できます。

計算式:SV=EV-PV

上記の通り予算コストの合計であるEVと、計画時に予想した予算コストの合計であるPVの差です。

SVがプラスであればプロジェクトは予定より進んでいますが、マイナスであれば計画より遅れていることがわかります。

プロジェクトを進めるにあたり、定期的にSVを算出することで、スケジュールの見直しをおこないます。

③CPI

Cost Performance Indexの略であるCPIは「コスト生産性指標」や「コスト効率指数」と呼ばれ、下記の計算式のとおり、予算の

予実を算出します。

計算式:CPI=EV/AC

CPIの計算結果が1であれば、コストは当初の予定通りです。
1よりも大きければ計画よりもコストは低く抑えられていますが、1よりも小さければ予定より費用がかかっていることがわかります。

④SPI

SPIはSchedule Performance Indexの略称であり、日本語になおすと「スケジュール生産性指標」

や「スケジュール効率指数」となります。具体的には下記の計算式で表されます。

計算式:CPI=EV/AC

スケジュールの進捗を示すSPIが1のとき、プロジェクトは計画通りに進んでいます。

1よりも大きければ、当初の計画よりも早くプロジェクトが進行しています。
しかし、1よりも小さいときは計画より遅れているため、スケジュールを調整しなければいけません。

EVMがプロジェクト管理に適している大きな理由

多くの指標を用いるEVMは煩雑さが感じられるかもしれません。
しかし、EVMはプロジェクト管理に有用です。

EVMの大きなメリット2つを紹介します。

①スケジュール・コストの同時管理が可能

プロジェクトが終了したとしても、納期に間に合わなかったり予算をオーバーしたりした場合、成功したとはいえませんよね。

しかしながら、従来のプロジェクト管理手法では、スケジュール管理中心の考え方であり、計画に対し遅れがないか?といった
観点でしか管理できませんでした。

これに対しEVMはコスト指標が管理要素として加わる為、これまでの手法以上に合理的な判断をしやすくなりました。
単純な遅れに対する手当だけでなく、現段階の断面におけるコスト消費状況などが見えることで、プロジェクト成功に向けた
正しい判断が下せるのです。

例えば、これまでの手法では進捗率しか見えない為、仮に進捗遅れが発生していたとしても抜本的な対策を見出すのが難しい
状況でした。これに対しEVMではコスト状況が見えるため、「進捗は遅れているが、コスト消費は予定より少ない」といった
状況が見えてきます。

上記のような状況であれば、計画通りのコストを使った対応が出来ていない可能性があるわけですから、よりコストをかけ、
遅れを取り戻す、といった具体的な対策を打ち出せるわけです。

このようにEVMはスケジュールとコストを同時管理できることで、早期判断が可能となるのです。

関連記事はこちら>>EVMのプロジェクト管理が失敗するのはエクセルを使うせい

②高い精度によるプロジェクト予測が可能

コスト要素が加わることは各断面での判断をしやすくするだけでなく、高精度の将来予測も可能となります。

例えば、プロジェクト進捗が50%の段階で、予算進捗も50%であればこのまま予定通り完了するだろう予測が立てられます。
プロジェクト進捗は40%と遅れているものの、予算進捗が30%であるならば、遅れはあるもののよりコストは掛けられるため、
よりコストをかけて遅れを取り戻すことで十分リカバリーできる、という予測が立てられるわけです。

このようにスケジュール・コスト両方を同時管理することは、より明確な将来像を予測出来、結果早期、かつより正しい対策が
可能となるわけです。

EVMを実行できるプロジェクト管理ツール5選

EVMの概念を理解しても、自力で計算するのは大変ですよね。
そこで、プロジェクト管理ツールの導入をおすすめします。

プロジェクト管理にEVMを取り入れられる便利なプロジェクト管理ツール5つを順に見ていきましょう。

①Lychee Redmine

Lychee Redmineはシンプルなタスクから大型のプロジェクトまで対応可能です。
以下のような多くの機能を備えているため、自由度が高くカスタマイズ性にも優れています。

  • EVM
  • ガントチャート
  • カンバン
  • タイムマネジメント
  • リソースマネジメント など

Lychee RedmineでEVMをおこなえば、EVやPVなどの指標をグラフで確認できるのもポイントです。
無料で使えるフリープランも用意されているのでお試ししてみるのはいかがでしょうか。

関連記事はこちら>>プロジェクトの進捗管理はLychee Redmineがおすすめ!

 

②Clarizen

引用:Clarizen

Clarizenは、スケジュールやコストなどのプロジェクトに関わる指標を一元管理できるツールです。
クラウド型のシステムなので、複数の拠点で作業を分析できます。

最短1ヶ月での利用も可能なため、期間限定のプロジェクトにも適しています。

③Time Krei

引用:Time Krei

Time KreiはEVMを用いたスケジュール管理とコスト管理をおこなえます。

EVMの知識がなくても、ボタン1つでプロジェクトの管理者側が知りたい情報を可視化できるため、課題解決に有効です。
プロジェクトメンバーの予定や実績の管理もできるため、適切な人員配置にも役立ちます。

④TeamSpirit

引用:TeamSpirit

工数や経費だけでなく勤怠・就業管理も連動しておこなえるのがTeamSpiritのメリットです。

働き方改革プラットフォームとして利用でき、従業員の働き方を可視化することで、生産性の向上や内部統制の強化を支援してくれます。

⑤クラウドログ

引用:クラウドログ

直感的な操作で工数を登録できるクラウドログは、ITの知識がなくても使いこなせるよう設計されたツールです。

プロジェクト管理機能だけでなく、日報や勤怠管理システムと連動させることも可能で、プロジェクトの進行に関係するさまざまな要素を一括で管理できます。

EVMを理解してプロジェクト管理に活かそう

今回はEVMの概要に加え、さまざまな指標や計算式などを解説しました。
コスト管理とスケジュール管理を両立できるEVMは、プロジェクト管理にうってつけです。

また、EVMを実行するには、プロジェクト管理ツールが便利です。
Lychee RedmineにはEVMだけでなく、ガントチャートやカンバンなどのプロジェクト管理に役立つ多くの機能が用意されています。

プロジェクト管理にEVMを用いる場合は、Lychee Redmineを試してはいかがでしょうか。

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