ゲーム開発におけるタスク管理とは？手法とツールを解説

ゲーム開発は、多くの才能と情熱が結集するクリエイティブな現場ですが、 同時に複雑なタスクが山積するプロジェクトです。そのため、納期がギリギリだったり、機能の担当者が不明瞭になったりした経験はないでしょうか。

本記事では、ゲーム開発におけるタスク管理の重要性・具体的な手法・おすすめのツールなどを解説します。 

ゲーム開発におけるタスク管理のメリット

ゲーム開発におけるタスク管理は、プロジェクトを成功に導くために重要です。 複雑化の一途をたどるゲーム開発において、タスク管理を導入することで、様々なメリットが生まれます。 本章では、ゲーム開発におけるタスク管理の3つのメリットについて解説します。

複雑化する開発の見える化

現代のゲーム開発は、グラフィック・サウンド・プログラミング・シナリオなど、多岐にわたる専門分野が複雑に絡み合って進行します。 タスク管理を導入することで、これらの複雑な要素を見える化し、プロジェクト全体の状況を把握しやすくします。

タスクを細分化して可視化することで、開発者は自分の担当範囲だけでなく、プロジェクト全体の流れの理解が容易です。 個々の作業が全体にどのように影響するかを意識でき、より効率的な作業進行が可能です。

チーム全体の進捗把握と連携強化

ゲーム開発はチームで行う共同作業です。 タスク管理によってチーム全体の進捗状況を共有できれば、スムーズなコミュニケーションを促進でき、メンバー間の連携強化につながります。

例えば、タスク管理ツール上で「キャラクターAの移動処理が完了」と報告すると、 アニメーターはすぐにそのキャラクターのアニメーション作業に取り掛かれます。 このように、タスク管理はチーム全体の足並みを揃え、効率的な開発の実現が可能です。

また、タスク管理・進捗管理・スケジュール管理・工数管理・スタッフ管理を同時に実施することで、取り組みの効果を高められます。

スケジュール管理適正化による納期遅延リスク軽減

ゲーム開発において、納期は厳守すべき重要な要素です。 タスク管理を徹底することで、スケジュール管理を適正化し、納期遅延のリスクを大幅に軽減できます。

また、タスク管理ツールは各タスクの依存関係を可視化し、クリティカルパスを特定することが可能です。 これにより、どのタスクが遅延するとプロジェクト全体に影響を与えるかを把握し、重点的に管理できます。

ゲーム開発のタスク管理における3つのステップ

ゲーム開発におけるタスク管理は、プロジェクトを成功に導くための重要な要素です。本章では、具体的なタスク管理のステップを3つに分けて解説します。

タスクを細分化

大きなタスクを細分化し、各タスクの担当者・必要なスキル・所要時間などを明確にして、より効率的な管理を実現します。例えば、キャラクターモデリングというタスクを、キャラクターデザイン・3Dモデリング・テクスチャ作成・リギングといったタスクに分割するような方式です。

タスクの細分化により、見積もり精度が向上し、担当者がコア業務に集中できる環境構築につながります。

タスクに優先順位をつける

納期・依存関係・重要度などを考慮し、どのタスクから取り組むべきかを決定します。例えば、ゲームのコアとなる機能や、他のタスクの前提となるタスクは優先順位を高く設定しましょう。

優先順位を明確にすることで、チーム全体が重要なタスクに集中し、ボトルネックを早期に解消できます。

進捗状況を定期的に確認

進捗会議・日報・タスク管理ツールなどを活用し、遅延や問題が発生していないかを確認します。進捗状況の確認頻度は、タスクの規模や期間によって調整するのが一般的です。

例えば、短期間で完了するタスクは毎日、長期間にわたるタスクは週に一度など、適切な頻度で確認を行います。進捗状況を可視化することで、問題の早期発見と対応が可能になり、プロジェクト全体の遅延を防止できます。

ゲーム開発の3つのタスク管理手法

ゲーム開発におけるタスク管理は、プロジェクトの成功を左右する重要な要素です。本章では、手軽に導入できるものから、より高度な管理が可能なツールまで、代表的な3つのタスク管理手法を紹介します。

手軽に導入可能にするスケジュール帳・付箋

スケジュール帳や付箋はアナログな手法ですが、初期費用を抑えやすく、手軽に始められるのが最大のメリットです。個人のタスク管理はもちろん、チーム内での情報共有も可能です。

スケジュール帳は、日々のタスクを時間軸に沿って管理するのに適しています。締め切りや予定を書き込むことで、時間管理意識を高められます。

付箋はタスクを可視化でき、優先順位をつけたり、担当者を割り当てたりするのに便利です。壁やホワイトボードに貼り出すと、チーム全体の進捗状況を共有できます。

ただし、スケジュール帳や付箋を用いた管理は、情報共有や変更管理には手間がかかるため、プロジェクトの規模が大きくなるにつれて管理が煩雑になる可能性がある点に要注意です。

汎用性が高いExcel・Googleスプレッドシート

ExcelやGoogleスプレッドシートは、多くの企業で導入されており、汎用性の高いタスク管理ツールとして活用できます。表計算ソフトの機能を活かして、タスクの進捗状況や担当者、締め切りなどを一覧で管理しましょう。 関数やグラフを活用することで、進捗状況を可視化したり、ボトルネックを特定したりすることも可能です。

テンプレートを活用したり、マクロを組んだりすることで、より効率的なタスク管理を実現できます。ただし、属人化によるブラックボックス化には注意を要します。

業務効率化にもつながるタスク管理ツール

タスク管理ツールは、ゲーム開発におけるタスク管理に特化した機能を搭載しており、業務効率化に大きく貢献します。タスクの細分化・優先順位付け・担当者割り当て・進捗管理・コミュニケーション促進など、プロジェクト管理に必要な機能を網羅している点が特徴です。

タスク管理ツールには様々な種類があり、それぞれ特徴や強みが異なります。プロジェクトの規模やチームの構成や予算などを考慮して、最適なツールを選びましょう。

タスク管理ツールの導入によってタスクの進捗状況を可視化し、チーム全体の連携を強化できます。また、ボトルネックの早期発見と迅速な対応にもつながり、納期遅延のリスク軽減も可能です。

ゲーム開発に活用できる5つのタスク管理ツール

本章では、ゲーム開発に特におすすめのタスク管理ツールを5つ紹介します。それぞれの特徴を比較し、最適なツールを見つけましょう。

Lychee Redmine｜高機能かつカスタマイズ性が高いオープンソース

Lychee Redmineは、オープンソースのプロジェクト管理ツールRedmineをベースに、タスク管理・進捗管理・スケジュール管理・工数管理などの機能を追加したツールです。 

Lychee Redmineは、タスクの割り当て・進捗管理・プロジェクトチームとのコミュニケーションを円滑にする機能が豊富で、特にソフトウェア開発プロジェクトでよく使用されています。ガントチャート機能や、日毎の工数消化状況が確認できる機能も使えるため、プロジェクト管理に適しています。

カスタマイズ性の高さも有しているため、社風に合わせた使い方も自在です。

Trello｜直感的な操作でタスクを視覚的に管理

Trelloは、カンバン方式を採用したタスク管理ツールです。カードをドラッグ＆ドロップするだけの直感的な操作感が魅力で、タスクの進捗状況を視覚的に把握できます。チームメンバーとの情報共有も簡単に行えるため、ゲーム開発の現場でも広く活用されています。

Trello｜進捗管理とバグ管理に特化

Backlogは、プロジェクト管理に必要な機能が充実しているツールです。ガントチャートやバーンダウンチャートなど、進捗状況を可視化する機能が豊富に用意されており、チーム全体の進捗状況を常に把握できます。また、バグ管理機能も充実しており、バグの発生から修正までのプロセスを効率的に管理できます。

Slack｜AIによる業務管理やアシストを搭載

ビジネスコミュニケーションツールとして広く知られているSlackは、タスク管理ツールとしての側面も持ち合わせています。チャンネルごとにタスクを整理したり、リマインダー機能でタスクの期日を管理したりといった動作ができます。

また、他のツールとの連携も可能です。例えば、Trelloと連携して、Slack上でタスクの更新情報を確認できるようにしたケースも。AIアシスト機能も搭載されており、業務効率化を実現します。

Asana｜多様なプロジェクト管理機能でチームをサポート

Asanaは、プロジェクト管理に必要な機能が網羅されたツールです。タスク管理・進捗管理・スケジュール管理・ファイル共有など、様々な機能を搭載しており、チーム全体のプロジェクト管理を強力にサポートします。

Asanaは、自動化機能も充実しており、タスクの割り当てや期日の設定などを自動化することで、業務効率の大幅な向上に期待できます。

Wrike｜豊富な分析・レポート機能を搭載

Wrikeは、プロジェクト管理だけでなく、業務の分析やレポート作成にも力を入れたツールです。タスクの進捗状況やチームメンバーの稼働状況などを可視化し、データに基づいた意思決定を支援します。また、カスタマイズ性の高いレポート機能も搭載されており、必要な情報を必要な形式で出力できます。

ゲーム開発のタスク管理におけるよくある失敗と対策

ゲーム開発におけるタスク管理は、プロジェクトの成否を左右する重要な要素です。しかし、適切な管理が行われていない場合、様々な問題が発生し、開発の遅延や品質低下につながることがあります。

本章では、ゲーム開発のタスク管理でよくある失敗とその対策を解説します。

タスクの洗い出し不足

タスクの洗い出し不足は、プロジェクトの初期段階でよく見られる失敗です。必要なタスクがリストアップされていないと、後になって予期せぬ作業が発生し、スケジュールが大幅に遅延する可能性があります。また、タスクの抜け漏れは、担当者の負担増加や品質低下にもつながります。

おもな対策は以下の通りです。

WBS（Work Breakdown Structure）の活用	プロジェクト全体を、より小さく管理しやすいタスクに分割します。各タスクの依存関係や必要なリソースを明確にし、抜け漏れを防ぎます。
チーム全体でのブレインストーミング	プロジェクトに関わるメンバー全員でタスクを洗い出すことで、様々な視点からの意見を取り入れることができます。
過去に実施したプロジェクトの参照	過去のプロジェクトで発生した問題点や改善点を分析し、今回のプロジェクトに活かすことで、同様の失敗を繰り返さないようにします。

優先順位付けの誤り

優先順位付けを誤ると、重要なタスクが後回しにされたり、不要なタスクに時間を費やしたりして、プロジェクト全体の進捗に悪影響を及ぼします。タスクは、下記の点に留意して優先順位をつけるようにしましょう。

重要度と緊急度のマトリクス	タスクを「重要かつ緊急」「重要だが緊急でない」「緊急だが重要でない」「重要でも緊急でもない」の4つの象限に分類し、優先順位を決定します。
依存関係の考慮	タスク間の依存関係を考慮し、他のタスクの完了を待つ必要があるタスクは、優先順位を高く設定します
納期とリソースの制約	納期が迫っているタスクや、必要なリソースが限られているタスクは、優先順位を高く設定します。
定期的な見直し	プロジェクトの進行状況や外部環境の変化に合わせて、タスクの優先順位を定期的に見直します。

コミュニケーション不足

ゲーム開発は、プログラマー・デザイナー・プランナーなど、様々な専門分野のメンバーが協力する共同作業です。そのため、チーム内のコミュニケーションが不足すると、情報伝達の遅延・認識のずれ・担当範囲の曖昧さなどが発生し、タスクの遅延や品質低下につながります。

コミュニケーション不足のおもな対策は以下の通りです。

定期的なミーティングの実施	チーム全体での進捗報告や情報共有のためのミーティングを定期的に実施します。
コミュニケーションツールの活用	チャットツールやタスク管理ツールなど、チーム内のコミュニケーションを円滑にするためのツールを活用します。
書類の共有	プロジェクトに関する書類（仕様書・設計書・スケジュールなど）を共有し、メンバー全員が最新の情報を把握できるようにします。
積極的な情報共有	問題点や変更点が発生した場合には、速やかにチーム全体に共有し、対応策を検討します。

タスク管理の最適化がゲーム開発の成功につながる

ゲーム開発は、世界的に堅調な成長を続ける分野です。また、効率的なゲーム開発には、タスク管理が欠かせません。

タスク管理の適正化には、様々な要素があり、それぞれの理解を深めることが大切です。なぜなら、タスク管理の要素の理解を深めることで、総合的な適正化につながるためです。

この機会に、タスク管理ツールを用いた最適化を検討してはいかがでしょうか。