リーンキャンバスとは、1枚のシートにビジネスモデルをまとめて記載し、可視化してくれるフレームワークのことです。作成しておけば、ビジネスモデルの共有やアイデアの性が可能です。
本記事ではリーンキャンバスの概要やフレームワークを構成する9つの要素、作成手順などについて解説しています。これから新規事業を立ち上げようとしている方向けの内容となっているため、ぜひ参考にしてください。
リーンキャンバスとは
リーンキャンバスとは、1枚のシートにビジネスモデルをまとめて記載し、可視化してくれるフレームワークです。主にスタートアップ企業や企業内での新規事業立ち上げの際などに用いられています。
もともとは起業家であるアッシュ・マウリャによって提唱されました。ちなみに、リーンキャンバスのリーン(Lean)は英語で「効率的な」といった意味を持っています。
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リーンキャンバスがビジネスアイデアの視覚化に有効な理由
リーンキャンバスにはビジネスに関わる要素があらゆる側面から取り入れられているため、ビジネスアイデアの全体像を視覚化・可視化するのに適しています。1つの要素単体で見ると良さそうに思えても、他の要素と一緒に考えるとそうでもないといったケースは少なくありません。
また、1枚のシートに情報を網羅させることで、必要な情報を把握しやすくなり、チーム全体でのビジネスモデルの共有もしやすいです。
リーンキャンバスを使うことで得られる利点
リーンキャンバスは利用者に様々な利点をもたらしてくれます。ここでは具体的にどのような利点があるのか解説します。リーンキャンバスに興味のある人、導入を検討している人はぜひ参考にしてください。
短時間でアイデアの整理が可能
リーンキャンバスはA4サイズの1枚のシートにビジネスモデルをまとめるため、アイデアの整理が可能です。アイデア自体は豊富にあったとしても、すべての記載は不可能であるため、書き込んでいく過程でアイデアがよりスリム化されていきます。
また、A4サイズのシートであるため、情報を書き込むのにそれほど時間がかからない点も特徴です。情報を整理しながら短い時間で作成できる点はリーンキャンバスの大きなメリットだといえます。
関係者との共有が容易
リーンキャンバスは、情報量が決して多いわけではなく1枚のシートにまとめられているため、関係者とも共有しやすい点が強みです。共有が容易であれば、ビジネスや事業に関して目線を合わせやすくなり、認識の齟齬なども生まれにくいです。
リーンキャンバスの構成要素
リーンキャンバスは以下の9つの要素から構成されています。
- 課題
- 顧客セグメント
- 独自の価値提案
- ソリューション
- チャネル
- 収益の流れ
- コスト構造
- 主要指標(KPI)
- 圧倒的な優位性
ここでは、それぞれの要素がビジネスモデルにおいて、どのような役割を果たすのか解説します。
顧客セグメント
顧客セグメントには、誰に価値を提供するのか、つまり事業のターゲットは誰なのか記載します。顧客セグメントの設定にあたっては顧客をグループ化した上で、どのグループにアプローチするのか/しないのかを決めてください。セグメントは性別や年齢、居住エリアといったデモグラフィック属性をベースに、製品やサービスの利用目的などを踏まえて分類していきます。
また、顧客セグメントを設定する際は、「40代男性」などざっくりとした分け方をするのではなく、「40代男性、都市部のマンションに家族と暮らす、仕事は大手メーカーで管理職、趣味はランニング、休みの日は読書を楽しむ」など具体的な人物像が想像できるくらい詳細に作り込んでください。
顧客の課題
顧客の課題では、先ほど設定した顧客セグメントにとっての課題を記載します。課題は担当者が考えるのではなく、アンケートやインタビューなどを通して明らかにしていくものです。また、課題が見つからない場合は、提供する商品やサービスが必要ない状況を意味しているため、再考が必要です。
独自の価値提案(UVP)
独自の価値提案(UVP:Unique Value Proposition)とは、顧客セグメントの課題に対して、自分たちがどのような価値を提供するのかを記載します。リーンキャンバスの中心に記載される要素であり、ビジネスモデルにおいても重要なものだといえます。なお、ここでいう価値とは、企業が提供する商品やサービスのことです。
ソリューション
ソリューションには、顧客セグメントの課題を解決する方法を記載します。こちらもインタビューなどを通してヒントを得ながらどういったソリューションを提供できるのか、ブラッシュアップしていきます。なお、リーンキャンバスを作成する段階は、まだアイデアの仮説検証前であるため、ソリューションの細部にまでこだわる必要はありません。アイデアをたくさん出すことを意識してください。
チャネル
チャネルは、顧客セグメントに対してどのようなチャネルを使ってアプローチするのかを記載します。流通チャネル、販売チャネル、コミュニケーションチャネルなど、商品の提供方法、プロモーション手段などを検討していきます。チャネルの種類は様々であるため、顧客セグメントの特性や自社の状況などを踏まえて適切なものを選びましょう。
収益の流れ
収益の流れは、検討中のビジネスプランをどのようにして収益化するのかを記載します。ただ単にざっくるとした流れを記載するのではなく、単価・人数・顧客1人当たりの利益の累積、粗利益、さらに1回の取引でどのくらいの収益が見込めそうかといった点まで検討できるように情報を記載しておくのがポイントです。
リーンキャンバスは主にスタートアップや新規事業で用いられるフレームワークですが、これらの組織が展開するビジネスモデルでは、コストの引き下げや商品・サービスの無償提供を行うケースが少なくありません。しかし、このような形ではなかなか収益を上げられないため、どのように収益を上げるのか、ビジネスモデルを検討する段階からしっかりと考える必要があります。
コスト構造
コスト構造には、ビジネスモデルに取り組む際に発生するコストを記載します。ここに記載するコストと先ほどの収益の流れから大体の損益分岐点を把握可能です。
主要指標(KPI)
主要指標(KPI:Key Performance Indicator)には、事業においてどの数値が出れば成功だと判断できるのか、パフォーマンスを測る指標を記載します。指標の種類は様々であるため、自社に合ったものを選べますが、近年では、主にインターネット関連のサービスにおいて「AARRR(アー)モデル」がKPIとして用いられています。これは顧客の行動モデルを表したものです。
圧倒的な優位性
圧倒的な優位性とは、競合他社に対して自社商品・サービス以外の部分で自社が優位である部分のことです。ここでいう優位性とは真似や購入ができないものが該当します。具体的には顧客情報や専門家とのネットワークなどです。一方で情熱やコミットメントなどはたとえその企業の特徴で合っても優位性とはなりません。
リーンキャンバスを作成する手順
リーンキャンバスの作成は、A4サイズの1枚のシートを用意した上で、先ほど紹介した9つの要素を順番に書き出していくだけです。なお書き出す際は、各要素の位置に注意してください。リーンキャンバスでは9つの要素を自由に書くのではなく、以下のような配置で書いていきます。
- シートの左側は商品やサービスについて:課題・ソリューション・主要指標を配置する
- シートの右側はマーケットについて:顧客セグメント・チャネル・圧倒的な優位性を配置する
- シートの中央部分には独自の価値提案(UVP)を配置する
- シートの下側の左にコスト構造、右に収益の流れを配置する
上記のように配置すれば、各要素を書き出していく際、左側にある顧客の課題やニーズからビジネスモデルを検討できます。
なお、リーンキャンバスはビジネスモデルを検討する初期段階に作成するものであるため、9つの要素によってはすぐに埋められないものもあります。そのような場合は一旦空欄にして次に進み、後から埋めてください。他の要素を踏まえた上で再検討すれば、記載する内容が見えてくる可能性があります。
リーンキャンバスのテンプレートの利用方法
リーンキャンバスはシンプルな構造であるため、一から自分で作成できますが、時間をかけたくない場合はテンプレートの利用も選択肢の1つです。Web上でも無料でダウンロードできるものが見つかります。リーンキャンバスの枠組みは基本的に変わらないため、ダウンロードすればすぐに使えます。
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リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスの違い
リーンキャンバスと混同してしまいやすいフレームワークにビジネスモデルキャンバスがありますが、両者は異なるものです。2つのフレームワークはどちらも9つの要素から構成されており、ビジネスモデルを示す際に用いられますが、項目に違いがあります。具体的には、以下の項目が異なる点が特徴です。
- 課題→協力者
- ソリューション→活動
- 主要指標(KPI)→資源
- 圧倒的な優位性→関係
リーンキャンバスは主にスタートアップや新規事業で活用されるフレームワークです。9つの要素を通じて、課題や自社の優位性を分析し、どのように付加価値を提供するかを体系的に検討できます。
一方、ビジネスモデルキャンバスは、既存事業向けのフレームワークです。経営資源やステークホルダーとの関係に重点を置いた9つの要素から構成され、確立された顧客関係や事業活動をもとに、さらなる付加価値創出の方法を探ります。
リーンキャンバスの書き方を理解してプロダクト開発に活かそう
今回はリーンキャンバスの概要や9つの構成要素、作成するメリットなどについて解説しました。リーンキャンバスとは、1枚のシートにビジネスモデルをまとめて記載し、可視化してくれるフレームワークであり、主にスタートアップや企業内の新規事業のビジネスモデルをまとめる際に用いられています。作成にあたっては9つの要素をすべて埋めることがポイントです。あまり考え込まず思いついたアイデアをどんどん書き込んでみてください。また、作成する際はテンプレートの利用もおすすめです。