近年、アメリカで生まれた概念のチェンジマネジメントに注目が集まっています。時代やテクノロジーの変化に伴い、日本でも取り入れる企業が増加中です。
チェンジマネジメントは、組織の変革・改革を効率的に成功へ導くためのマネジメント手法です。変化の激しい市場環境で、継続的に企業が成長していく上で欠かせない手法として認識されています。
本記事では、 組織の現状に課題を感じているプロジェクトマネージャーに向けて、チェンジマネジメントのプロセス・進め方を解説します。課題および克服するポイントも紹介するので、組織・プロジェクトにおける変革の遂行にお役立てください。
チェンジマネジメントとは
チェンジマネジメントとは、組織が変革を効果的に進め、成功へと導く管理手法を指します。企業のような組織が成長し続けるには、時代の変化に対応した変革が不可欠です。
しかし、組織内には、変革に対して抵抗を感じる保守的な人々も少なくありません。こうした反発が変革の障害となり、組織内に摩擦を生じさせることもあります。
チェンジマネジメントでは、変化に対して抵抗を感じる人や現状維持を望む人を含めた全社員が変革に順応できるように支援し、変革のスムーズな進行を目指します。
チェンジマネジメントの歴史
チェンジマネジメントの概念自体は、古くから存在します。1990年代にアメリカで流行したBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング:業務プロセス改革)を成功に導く手法として実践されたのをきっかけに、普及が進んだとされています。
バブル崩壊後の日本でも、多くの組織が経営再建を目的に改革を行いました。しかし、人員削減や設備投資の削減といった構造改革に集中し、労使双方の不満を増大させ、結果的に状況が悪化するケースが多く見られました。
こうした失敗の多くは、改革が人の要素を軽視していた点に起因します。ゆえに、組織文化・人といったソフト面を考慮して変革を進める重要性が、改めて認識されるようになりました。
チェンジマネジメントの対象
チェンジマネジメントの対象は、大まかに「組織」「プロジェクト」「個人」の3つに分けられます。下表に、各対象へのアプローチ内容をまとめました。
対象 | アプローチ内容 |
組織 | 組織全体を対象に、経営戦略の改革を推進するアプローチです。プロジェクト・個人単位での変革と並行して行い、効率的な変革を進める組織体制の構築を目指します。 |
プロジェクト |
プロジェクト単位で変革を進めるアプローチです。変革が必要なプロジェクトを明確にした上で、プロジェクトメンバーがいかに変わるべきかを認識させるよう働きかけます。 プロジェクト単位でアプローチすれば、組織全体にもポジティブな影響を与えられます。 |
個人 |
従業員一人ひとりに変革を促すアプローチです。個々の従業員に必要なサポートを検討し、変革の理由を丁寧に説明した上で、適切なタイミングで支援を提供します。 いかなる組織にも変化に抵抗を感じる人は多くいますが、個人単位での地道なアプローチにより、抵抗を和らげながら変革を促進できます。 |
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プロジェクトマネージャーがチェンジマネジメントを実践する重要性
プロジェクトマネージャーは、あくまでもプロジェクトに対して責任を負うポジションです。基本的に、組織の成長は責任の範囲外とされています。
しかし、プロジェクトマネージャーが、組織全体を俯瞰的に見て課題を整理し、解決に向けて取り組む重要性は高いです。組織状態の改善や継続的な業績向上、ひいては自身のマネジメントするプロジェクト成功を目指す上で不可欠な活動だと言えます。
実際、チェンジマネジメントには様々なメリットがあります。例えば、プロジェクトを対象に実践すれば、プロジェクトメンバーのエンゲージメント向上やチーム内の連携強化などが期待できます。
結果的に、組織のプロジェクトの成功確率を高めることに繋がることから、現場のプロジェクトマネージャーがチェンジマネジメントを実践する意義は大きいと言えます。
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チェンジマネジメントのプロセス・進め方
本章では、基本的なプロセス・進め方を6つのステップに分けて解説します。各プロセスですべき内容を順番に解説するので、ぜひ参考にしてください。
1.現状分析と変革の必要性の認識
まず、従業員に変革の緊急性を伝えて意識改革を図ります。変革が求められる理由や、変革により成し遂げたい目的を従業員が理解していない状態では、心理的な抵抗感を払拭できません。
大切なのは、自社が置かれている現状の分析・把握です。変革を避けた場合に陥る危機を従業員に客観的に共有しましょう。
2.変革のビジョン・戦略の策定
変革推進チームを立ち上げた上で、変革のビジョンを固めます。そして、権限・スキル・人脈・人望・評判などが優れた人材をチームに参加させ、旗振り役として変革の推進を任せます。
変革のビジョン策定にあたっては、最終的なビジョンを明確にした上で、実現に向けた戦略の立案を進めます。ハーバード大学ビジネススクール名誉教授のジョン・コッター氏は、優れた変革ビジョンの特徴として以下の点を提唱しています。
- 可視化されている
- ステークホルダーの期待に沿えるような長期的な利益が見込める
- 現実的かつ達成可能な目標である
- 意思決定の方向性が明確に示されている
- 様々な選択を許容する柔軟性が確保されている
- 5分以内に説明可能な内容である
上記を参考に、変革のビジョンを策定すると良いです。
3.メンバー・ステークホルダーからの支持獲得
ビジョン・戦略を設定したら、メンバー・ステークホルダーからの支持獲得に努めます。社内のあらゆるコミュニケーション手段を用いて、ビジョン・戦略の周知徹底に努めましょう。
全体周知として社長による1回限りの説明や、文書の掲示板への掲示といった方法で満足してはいけません。メンバー・ステークホルダーから十分に理解してもらえず、ビジョン・戦略が独り歩きして現場とのズレが生じる可能性があります。
上記を回避するには、一度だけではなく、継続的な周知徹底が重要です。
4.変革計画の実行
ビジョン・戦略を基に具体的な変革計画を策定・実行します。変革計画の策定にあたっては、短期的で達成可能な目標の設定が望ましいです。
たとえ魅力的なビジョンを掲げて効果的に変革を推進しても、なかなか成果が見えなければ従業員のモチベーションは維持できません。まずは短期的な成果が出るような計画を策定し、従業員に改善を実感させるのが望ましいです。
結果として、従業員のモチベーションが向上し、変革のプロセスが円滑に進みやすいです。また、成果に貢献した人に対する表彰や報酬アップの制度を設けるのも効果的です。
5.進捗のモニタリング・評価
変革計画の実行後は、状況をモニタリングし、期待する成果が表れているかを評価します。進捗のモニタリング・評価を通じて、短期的な成果が蓄積してきたら、さらなる改革の推進が求められます。
変革計画が進んでいれば、従業員が変革の必要性を理解し、全社でビジョンを共有できている状況にあります。ゆえに、制度・システムといったハード面を変えても、比較的受け入れられやすいです。
具体的には、インフラを入れ替えたり、変革推進を前提とした人材採用を開始したりするのが望ましいです。
6.変革の定着と継続的な改善
短期的な成果が積み重なり、新しい方法の企業文化への定着が近づいてきました。
変革に向けた取り組みで成果が出た内容は、新たな企業文化として企業に根付かせていきます。反対に、改革を推進する上で馴染まないシステム・構造・制度などは引き続き改善を図ります。
新しい方法を企業文化に定着させるには、以下のポイントの実践が効果的です。
- 新しい方法と組織の成功の関係を社内で発信し続ける
- 次世代リーダーへの能力開発を進めていく
変革のビジョン・戦略を達成するには、最低でも3年以上の期間が必要とされています。時間をかけて変革の重要性を説きながら、次世代に引き継ぐことで、新しい方法を企業文化に定着させられます。
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チェンジマネジメントの課題
変革の過程では、チェンジモンスターと呼ばれる抵抗勢力が大きな障壁として立ちはだかります。チェンジモンスターは、変化に対する恐れや反発から改革を妨げる心理的・人間的な要素を指す総称です。
変革を成功させるには、まずチェンジモンスターの理解が求められます。下表に、チェンジモンスターの例と特徴を紹介します。
チェンジモンスターの例 | 特徴 |
タコツボドン | 自分の担当範囲に固執し、他の分野に目を向けようとせず、外部からの意見やアプローチを否定する。まるでタコつぼに閉じこもっているように、他との協力を避ける。 |
ウチムキング | 社内での評価を最優先し、社内の常識と外部の状況とのギャップには無関心。 |
カコボウレイ | 過去の経営者が推進した事業に固執し、たとえ業績が悪化しても、撤退や見直しの議論を避ける。 |
ノラクラ | 変革を避ける目的で、様々な理由を挙げて言い訳をし、行動を先延ばしにする。 |
ミザル・キカザル・イワザル | 「見ざる・聞かざる・言わざる」を貫き、改革の波を静観してやり過ごそうとする。 |
マンテン | すべてのリスクを排除した完璧な報告書がなければ、行動に移らない。 |
カイケツゼロ | 問題を指摘するのは得意だが、実際の解決策を提示できない。 |
参考:株式会社 ボストンコンサルティンググループ:「チェンジモンスター」
チェンジマネジメントを成功させるポイント
前章までの内容を踏まえて、チェンジマネジメントを成功させるポイントを2つ紹介します。
チェンジモンスターを味方につけて力を借りる
チェンジモンスターは変革を阻む要因となり得るので、教育や説得を行うといった対処が必要です。協力が得られるようになれば、変革のスピードが上がります。
例えば、現状の業務に固執して新しい業務を受け入れようとしない従業員に対しては、モチベーションの向上が必要です。給与や労働条件の見直し、人間関係の改善、キャリアアップのプランを提示するなど、将来に希望を持てるような施策を講じるのが効果的です。
仕事の進行を妨げるような否定的な意見ばかり述べる従業員には、創造的な思考を促します。代替案を提案してもらうなど、単に批判するだけでなく建設的な議論に参加させるような意識づけを行います。
否定的な発言に対して、感情的に反応するのは避けましょう。冷静に対応すれば、関係の悪化を防ぎ、より良い職場環境を維持できます。
プロジェクト管理ツールを活用する
前述の通り、チェンジマネジメントのプロセスでは、現状分析や進捗のモニタリングなどを行います。これらを効果的に行うには、プロジェクト管理ツールの活用が効果的です。
例えば、Lychee Redmineには、プロジェクトの進捗・品質・コストの状況分析をわかりやすく集約できる「プロジェクトレポート」の機能が備わっています。変革計画に対する現状の可視化・共有もできるので、計画の意識が高まりチームの足並みが揃います。
また、ガントチャートやカンバンの機能を活用すれば、変革計画の進捗状況やパフォーマンスの可視化も可能です。多機能でありながら直感的な操作が可能なため、ツール操作に不安がある方でも問題なく利用できるのも魅力です。
Lychee Redmineには無料プランと有料プランが用意されています。無料プランは一部機能を利用でき、有料プランからガントチャートをはじめプロジェクトを管理する様々な機能が利用できるため、有料プランの利用がおすすめです。
プラン | 月額料金 | 利用機能 |
フリー | 無料 |
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スタンダード | 900円 |
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プレミアム | 1,400円 |
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ビジネス[無料トライアルはこちらをお試しできます] | 2,100円 |
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現在、すべての有料プランが30日間無料で使える無料トライアルが実施されているので、高機能なタスク管理ツールを試してみたい場合は、ぜひ利用してみてください。
チェンジマネジメント遂行に伴うプロジェクト管理ではLychee Redmineが有効
チェンジマネジメントは、組織が変革を効果的に進め、成功へと導く管理手法です。プロジェクトメンバーのエンゲージメント向上やチーム内の連携強化が期待でき、組織としてプロジェクトの成功確率アップにつながります。
チェンジマネジメントのプロセスを効果的に進めたい場合は、プロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。数あるプロジェクト管理ツールの中でも、Lychee Redmineの導入をおすすめします。
Lychee Redmineは、ガントチャートやカンバンなどタスク・プロジェクト管理に役立つ機能を豊富に備えています。プロジェクト規模や人を選ばずに使えるので、非常に使い勝手が良いです。
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