コミュニケーションマネジメントとは？計画書や実践のコツを紹介

「コミュニケーション不足が原因でプロジェクトが頓挫した」そのような経験はありませんか。

プロジェクトを成功させるためには、技術力や資金力だけでなく、関係者間のスムーズなコミュニケーションが不可欠です。本記事では、プロジェクトを円滑に進めるためのコミュニケーションマネジメントについて解説します。

コミュニケーションマネジメントの基礎知識から計画書の重要性、そして実践におけるポイントまで、プロジェクトマネージャー必見の情報をまとめました。

ぜひ、本記事を参考に適切なコミュニケーションマネジメントを実践して、プロジェクトを成功に導きましょう。

コミュニケーションマネジメントの概要

まずは、コミュニケーションマネジメントについて詳しく解説します。

コミュニケーションマネジメントとは

コミュニケーションマネジメントとは、プロジェクトにおけるコミュニケーションを効果的に計画、実行、監視、コントロールするプロセス全体を指します。

プロジェクトを成功させるには、プロジェクトチーム内だけでなく、ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションが不可欠です。具体的には、誰が、いつ、どのような情報を、どのような方法で伝達するかを明確にし、関係者間の情報共有を円滑に進めるための活動を行います。

コミュニケーション不足は、誤解や手戻り、遅延、そして最終的にはプロジェクトが失敗する原因にもなりかねません。そのため、コミュニケーションマネジメントはプロジェクト成功の鍵を握る重要な要素といえます。

適切なコミュニケーションマネジメントによる効果は以下の通りです。

効果	詳細
プロジェクト関係者間の共通理解の促進	ステークホルダーのニーズや期待を把握し、目標や進捗状況を共有すると、プロジェクトに対する理解を深められる
問題の早期発見と解決	定期的なコミュニケーションを通じて潜在的な問題を早期に発見すると、迅速な対応が可能になる
ステークホルダーの満足度向上	適切な情報提供と積極的な対話を通じて、ステークホルダーの期待に応え、満足度を高める
チームワークの強化	オープンなコミュニケーションを促進し、チームメンバー間の信頼関係を築き、協力体制を強化できる

PMBOKとは

PMBOK（Project Management Body of Knowledge）とは、プロジェクトマネジメントに関する知識体系のことです。プロジェクトを成功させるために必要なプロセス、知識、スキル、ツール、技法などが体系的にまとめられています。

プロジェクトマネジメントの国際基準として認知されており、多くの企業や組織でガイドラインとして活用されています。また、以下の5つのプロセス群と10の知識エリアで構成されている点も特徴です。

プロセス群	知識エリア
立ち上げ 計画 実行 監視・コントロール 集結	統合マネジメント スコープマネジメント スケジュールマネジメント コストマネジメント 品質マネジメント 資源マネジメント コミュニケーションマネジメント リスクマネジメント 調達マネジメント ステークホルダーマネジメント

なお、PMBOKは以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

コミュニケーションマネジメントの手順

コミュニケーションマネジメントは、計画を立てるだけでなく、実行、そしてコントロール段階を経て、プロジェクト全体を成功に導きます。以下では、具体的な手順を解説します。

計画書を作成する

最初に、プロジェクトにおける羅針盤である計画書を作成しましょう。計画書はプロジェクトの関係者を特定し、それぞれの情報ニーズ、コミュニケーション方法、頻度などを明確にします。

計画書作成の具体的な内容としては、以下の項目が挙げられます。

• ステークホルダーの特定と分析
• コミュニケーションの目的と目標
• コミュニケーション手段の選定
• コミュニケーション頻度の決定
• 情報伝達の責任者
• コミュニケーション記録の方法
• コミュニケーション効果の測定方法

計画を実行する

次に、計画書に基づいて、関係者への情報提供、会議の開催、進捗報告など、具体的なコミュニケーション活動を実施します。計画を実行する際は、計画書の内容を遵守し、関係者との間で一貫性のあるコミュニケーションを心がけることが重要です。

計画実行のポイントは以下の通りです。

• 計画書に沿った情報提供の徹底
• 定期的なコミュニケーションの実施
• 透明性の高い情報共有
• 関係者からのフィードバック収集

コミュニケーションをコントロールする

コミュニケーションマネジメントの最後の段階は、コミュニケーションのコントロールです。計画の実行状況をモニタリングし、問題点や改善点があれば計画を修正します。

コントロールの具体的な内容は以下の通りです。

• コミュニケーション活動のモニタリング
• 問題点の特定と分析
• 計画の修正と改善
• 関係者への情報共有

コミュニケーションマネジメントの計画書とは

コミュニケーションマネジメント計画書は、プロジェクトにおけるコミュニケーションを戦略的に管理し、成功へと導くための羅針盤です。以下では、コミュニケーションマネジメント計画書について詳しく解説します。

計画書の重要性

コミュニケーションマネジメント計画書は、プロジェクトを円滑に進めるために不可欠です。計画書がない場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

• 情報伝達の遅延や誤り：必要な情報が適切なタイミングで伝わらず、誤解や手戻りが生じる
• ステークホルダーの不満：情報が不足している、または一方的な伝達により、ステークホルダーの不満が高まる
• プロジェクトの遅延や失敗：コミュニケーション不足が原因で、意思決定が遅れたり、誤った方向に進んだりする

プロジェクトには様々なステークホルダーが存在し、それぞれ異なる情報ニーズや期待を持っています。

計画書に記載する項目

コミュニケーションマネジメント計画書には、プロジェクトの規模や特性に応じて様々な項目があります。一般的には、以下の要素が含まれます。

• 会議体
• 書式、内容、詳細度など伝達すべき情報
• 伝達が必要なタイミングと頻度
• 情報伝達の責任者
• 情報を受け取る個人または部門・企業
• 情報伝達の手段や技術
• 共有用語集

計画書を作成するメリット

計画書を作成するメリットは以下の通りです。

メリット	詳細
明確なコミュニケーション戦略	誰に、何を、いつ、どのように伝えるかを明確にすると、効率的かつ効果的な情報伝達を実現できる
ステークホルダーの期待管理	プロジェクトの進捗状況や課題を定期的に共有すると、ステークホルダーの期待を適切に管理し、信頼関係を構築できる
問題の早期発見と解決	コミュニケーションを通じて潜在的な問題を早期に発見し、適切な対策を講じることで、リスクを軽減できる
チームの協力とモチベーション向上	オープンなコミュニケーションを促進すると、チームメンバー間の協力関係を強化し、モチベーションを高める
プロジェクトの成功率向上	上記すべてのメリットが組み合わさり、最終的にプロジェクトの成功率向上に貢献する

コミュニケーションマネジメントを実践する前に決めておくこと

コミュニケーションマネジメントを効果的に実践するためには、計画段階でいくつかの重要な事項を明確にしておく必要があります。

事前に決めておくことで、プロジェクトのスムーズな進行と関係者間の連携強化につながります。

関係者を把握する

プロジェクトに関わるすべてのステークホルダーの明確な把握は、コミュニケーションマネジメントの基本です。

ステークホルダーとは、プロジェクトの成果に影響を与えたり、影響を受けたりするすべての個人またはグループのことです。プロジェクトメンバー、顧客、スポンサー、サプライヤーなどが含まれます。

各ステークホルダーの役割、責任、情報ニーズを理解すると、適切なコミュニケーション戦略を立てられます。

コミュニケーション経路を整備する

情報がスムーズに伝達されるように、コミュニケーション経路の明確な整備も重要です。誰から誰へ、どのような情報を、どのような手段で伝達するかを定義すると、情報伝達の遅延や誤りを防げます。

特に、大規模なプロジェクトや複数のチームが関わるプロジェクトでは、コミュニケーション経路の整備が不可欠です。

コミュニケーション経路を整備する際には、以下の点を考慮しましょう。

• 情報伝達の方向性：一方通行の情報伝達にとどまらず、双方向のコミュニケーションを活性化する仕組みを構築する
• 情報伝達の手段：メール、チャット、会議、報告書など、適切なコミュニケーション手段を選択する
• 情報伝達のタイミング：必要な情報を、必要なタイミングで伝達できるように計画する

責任者を決める

責任者を明確にすると、タスクの実行漏れや責任の所在不明確さを防げます。誰が、いつ、何を、どのように行うのかを明確に定義し、責任者に権限と責任を与えることが重要です。

責任者は、コミュニケーション計画の実行、モニタリング、改善を担当します。

コミュニケーションの頻度を決める

コミュニケーションの頻度の適切な設定は、情報共有の不足や過剰を防ぎ、関係者間の連携の強化に重要です。

プロジェクトの進捗状況、ステークホルダーのニーズ、コミュニケーションの目的に応じて、最適な頻度を決定しましょう。頻度が少なすぎると情報共有が不足し、多すぎると関係者の負担になる可能性があります。

以下の点を考慮しながら、適切なコミュニケーション頻度を考えてみましょう。

• プロジェクトの重要度と緊急度：重要な情報や緊急性の高い情報は、頻繁に共有する
• ステークホルダーの関与度：関与度の高いステークホルダーとは、頻繁にコミュニケーションを取る
• コミュニケーションの目的：情報共有、意思決定、問題解決など、目的に応じて頻度を調整する

コミュニケーションマネジメントを成功させる3つのポイント

次に、コミュニケーションマネジメントのポイントを3つ紹介します。

5Cを意識する

コミュニケーションマネジメントを成功させるためには、5Cへの意識が重要です。5Cとは、以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。

要素	内容
Correct（正確性）	情報を正確に伝えること。誤った情報や曖昧な表現は避け、事実に基づいた情報を共有しましょう。
Concise（簡潔性）	情報を簡潔に伝えること。冗長な表現や不要な情報を避け、要点を絞って伝えましょう。
Clear（明瞭性）	情報を明確に伝えること。専門用語や業界用語を避け、誰にでも理解しやすい言葉で伝えましょう。
Courteous（礼儀正しさ）	相手に敬意を払い、礼儀正しくコミュニケーションを取ること。相手の意見を尊重し、建設的な対話を心がけましょう。
Complete（完全性）	必要な情報を網羅的に伝えること。情報が不足していると、誤解や混乱を招く可能性があります。必要な情報はすべて伝えましょう。

コミュニケーションの内容を記録する

コミュニケーションの内容の記録は、後々のトラブルを防ぐために非常に重要です。口頭でのやり取りだけでなく、メールやチャットでのコミュニケーションも記録しておきましょう。

記録する際には、以下の項目を意識するのがおすすめです。

• 日付と時間
• 参加者
• 議題
• 決定事項
• ToDo
• その他特記事項

以上の情報を記録しておくと、後から内容を確認したり、関係者間の情報共有に役立ちます。記録方法は、議事録を作成したり、プロジェクト管理ツールを活用したりするなど、プロジェクトの規模や特性に合わせて選択しましょう。

ツールを活用して効率化を図る

コミュニケーションマネジメントを効率的に行うには、適切なツールの活用が不可欠です。プロジェクトの規模やメンバー構成に合わせて、最適なツールを選びましょう。

以下に、代表的なコミュニケーションツールを紹介します。

ツール	特徴	用途
ビジネスチャットツール （Slack、 Microsoft Teamsなど）	リアルタイムでのコミュニケーションが可能。ファイル共有やビデオ会議機能も搭載。	日常的なコミュニケーション、情報共有、チーム内での連携
プロジェクト管理ツール （Asana、Trelloなど）	タスク管理、進捗管理、情報共有が可能。	タスクの割り当て、進捗状況の把握、プロジェクト全体の管理
Web会議ツール（Zoom、 Google Meetなど）	オンラインでの会議や打ち合わせが可能。画面共有や録画機能も搭載。	遠隔地とのコミュニケーション、大人数での会議、プレゼンテーション
グループウェア（サイボウズ Officeなど）	スケジュール管理、ファイル共有、掲示板など、組織内の情報共有を促進する機能が豊富。	組織全体の情報共有、スケジュール調整、業務効率化

コミュニケーションマネジメントにおけるよくある課題と解決策

プロジェクトにおけるコミュニケーションは、計画通りに進まないこともあります。

以下では、コミュニケーションマネジメントでよくある課題と解決策を具体的に解説します。

課題1：情報伝達の遅延と誤り

情報伝達の遅延や誤りは、プロジェクトの進行に深刻な影響を及ぼします。タスクの遅延、誤った判断、手戻りなど、様々な問題を引き起こす可能性があります。

情報伝達の遅延や誤りを防ぐには、コミュニケーションルールを明確化し、徹底しましょう。具体的な解決策は以下の通りです。

解決策	詳細
コミュニケーション計画の作成	誰が、いつ、どのような情報を、どのように共有するかを明確にする
コミュニケーションツールの選定	プロジェクトに適したコミュニケーションツール（メール、チャット、会議など）を選定する
レスポンス期限の設定	質問や依頼に対するレスポンス期限を設定し、迅速な対応を促す

課題2：ステークホルダーの意見の相違

プロジェクトには様々なステークホルダーが存在し、それぞれ異なる意見や期待を持っています。意見の相違を放置すると、対立や混乱が生じ、プロジェクトの進行を妨げる可能性があります。

ステークホルダーの意見の相違を解消するには、定期的な進捗報告とフィードバックの機会を設けることが重要です。具体的には以下の通りです。

解決策	詳細
進捗報告会の実施	定期的に進捗報告会を実施し、プロジェクトの状況を共有する
個別面談の実施	必要に応じて個別面談を実施し、ステークホルダーの意見や懸念をヒアリングする
アンケートの実施	アンケートを実施し、ステークホルダーの満足度や意見を収集する

課題3：コミュニケーション不足によるモチベーション低下

プロジェクトメンバー間のコミュニケーション不足は、孤立感や不安感を生み、モチベーション低下につながる可能性があります。

コミュニケーション不足によるモチベーション低下を防ぐには、コミュニケーションツールを活用し、メンバーのコミュニケーション能力を向上させることが重要です。具体的には以下の通りです。

解決策	詳細
コミュニケーションツールの導入	チャットツール、ビデオ会議ツール、プロジェクト管理ツールなどを導入し、コミュニケーションを活性化する
コミュニケーション研修の実施	コミュニケーションスキル向上のための研修を実施する
チームビルディングの実施	チームの結束力を高めるためのイベントやアクティビティを実施する

適切なコミュニケーションマネジメントでプロジェクトを成功に導こう

プロジェクトの成功には、技術力や資金力に加え、効果的なコミュニケーションが不可欠です。

適切なコミュニケーションはプロジェクトの進行をスムーズにするだけでなく、ステークホルダーの満足度向上やチームワークの強化につながるため、プロジェクトの成功に大きく貢献します。

ぜひ適切なコミュニケーションマネジメントを身につけて、プロジェクトマネジメントに活かしてみましょう。