プロジェクトの成功を目指す上で、標準的な指針やフレームワークの活用が効果的です。

PMBOKは、プロジェクト管理の体系化された知識や方法論をまとめたフレームワークです。効率的に計画を進行させる道標として機能します。

本記事では、PMBOKの基本概念や構成についてわかりやすく解説します。また、PMBOKを効果的に活用するコツについても触れています。

PMBOKを正しく理解し、自社のビジネスに適用しながら、業務の効率化や成果の最大化を目指しましょう。

フレームワーク「PMBOK」(第6版)とは

PMBOKは、プロジェクトマネジメントに必要な知識や手法を体系的に整理した国際標準のフレームワークです。「Project Management Body of Knowledge」の略称で、日本語では「ピンボック」と呼ばれます。

1987年に米国のPMI(Project Management Institute)がホワイトペーパーとして初めて公表し、1996年に正式な書籍として初版が発行されました。以降、おおむね4年ごとに改訂が行われ、2021年には最新の第7版が公開されています。

当初、第7版は2020年後半に発行予定でした。しかし、新型コロナウイルスの影響や第6版の試験変更などが重なり、発行が遅延した事情があります。

PMBOKは、世界中のプロフェッショナルに向けて設計されており、プロジェクト管理を効果的に進める上で重要なフレームワークです。プロジェクトマネージャーにとっては、理解しておくべき重要な基盤といえます。

PMBOKにおける5つのプロセス群

PMBOK第6版では、プロジェクト開始から終結までの流れを5つのプロセスに分類し、一つひとつ定義付けています。下表に、5つのプロセスと概要をまとめました。

プロセス 概要
立ち上げ

プロジェクトを正式に開始する前に承認を得る段階です。目的や目標、予算、期待される成果を明確にし、プロジェクト憲章を作成します。

また、ステークホルダーの洗い出しと特定も行い、プロジェクトの基盤を整備します。

計画

プロジェクトを成功に導く上で必要な計画を立てる段階です。20種類の具体的な計画手法が含まれます。

目標の明確化と行動計画の策定を行い、プロジェクトの進行がスムーズになる基盤を整えます。

実行 立案された計画に基づき、必要な人材や資源を調達し、プロジェクトを実際に進める段階です。本フェーズは特に多くのリソースを消費するため、進行状況を見ながら計画の修正や再調整を行い、新たな基準(ベースライン)の設定が求められます。
監視・
コントロール
計画通りに進んでいるかを常にチェックする段階です。計画と実際の進捗に差異が発生した場合、迅速に対応策を講じて修正を行います。
終結

プロジェクトや工程の完了を正式に確認する段階です。すべてのタスクが適切に完了しているかを検証します。

また、プロジェクトを通じて得られた知見やノウハウを記録し、将来のプロジェクトでの活用に向けて保管します。単に終了するだけでなく、次に向けた準備が重要です。

PMBOKにおける10の知識エリア

プロジェクトマネジメントを実施する際に求められる知識を10の領域に分け、10の知識エリアとして定義しています。下表に、PMBOKの10の知識エリアと概要をまとめました。

マネジメントの知識エリア 概要
統合 プロジェクト全体を統率し、目標や進行プロセスを調整する役割を担う管理領域。
スコープ プロジェクトの範囲を明確化して、必要な成果物や作業を定義し、目標達成の可能性を高める管理領域。
スケジュール プロジェクトの円滑な進行に向けてスケジュールを作成し、時間を効率的に管理する領域。
コスト 必要な費用を適切に見積もり、予算を設定・管理する領域。
品質 成果物やプロセスがクライアントの要求を満たし、適切に利用できる状態にあることを保証する領域。
資源 必要な人材や資源を適切に調達・管理し、チームを編成する管理領域。
コミュニケーション 関係者間の円滑な情報伝達を確保する管理領域。
リスク 発生する可能性のあるリスクを特定し、評価・対策を講じる領域。
調達 プロジェクトで必要な製品やサービスを外部から調達し、契約・進捗管理を行う領域。
ステークホルダー プロジェクトに関係する内外の利害関係者を管理する領域。

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フレームワーク「PMBOK」(第7版)での変更点

現在の最新PMBOKは、2021年7月に改訂された第7版です。本章では、第6版から第7版への改訂にあたって変更された代表的な内容を紹介します。

「5つのプロセス群」から「12の原理・原則」に変更

PMBOKの第6版まで採用されていた「5つのプロセス群」は、第7版から「12の原理・原則」に置き換えられました。12の原理・原則は、プロジェクト遂行の際に指針となる基本的なルールを示したものです。

特徴は、変化への適応を強く意識した内容になっている点です。テーラリング、複雑性への対応、リスク管理、順応性や柔軟性などが定められています。

ただし、抽象度が高く、汎用的に設計されています。そのため、実際に活用する際は、各プロジェクトの状況や特性に応じて具体化し、調整する必要があります。

下表に、12の原理・原則の要点をまとめました。

項目 概要
スチュワードシップ 請け負った仕事を誠実かつ責任を持って行う。
チーム お互いに尊重しあえるチームを作る。
ステークホルダー 利害関係者と連携し、関心やニーズを汲み取る。
バリュー 価値を重視する。
システム思考 プロジェクト全体をシステムと捉え、各要素がいかに影響し合っているのかを考える。
リーダーシップ マネージャーに留まらず、プレイヤーもリーダーシップを持ち合わせた方が、プロジェクトとして円滑に進行する。
テーラリング 目標・環境・状況に応じて、カスタマイズしたり、組み合わせたりして組織内外の資産を活用する。
品質 プロセスと結果において品質を重視する。
複雑性 複雑性の軽減に向けて現状を分析・構造化し、シンプルでわかりやすい構造に落とし込む。
リスク リスクを認識し、適切に対処する。
順応性・回復力 変化に対応する力、挫折・失敗から迅速に回復する力を備える。
チェンジマネジメント 現状に対して良い変化・変革を起こす。

「10の知識エリア」から「8つのパフォーマンス・ドメイン」に変更

PMBOK第6版の「10の知識エリア」は、第7版から「8つのパフォーマンス・ドメイン」に改められました。プロジェクトを効果的に遂行する上でカバーすべき活動領域が示されています。

具体的な手法・手順よりも、各ドメインがプロジェクトに及ぼす影響の理解が重視されているのが特徴です。以下に、8つのパフォーマンス・ドメインの各項目を整理します。

項目 概要
ステークホルダー 利害関係者に対する働きかけ。
チーム チームに対するリーダーシップやマネジメント。
開発アプローチ・
ライフサイクル
成果物に相応しい開発手法や、成果物の提供リズム・サイクル。
計画 成果を生み出す上で求められる組織化、調整機能。
プロジェクト作業 効果的・効率的プロセスに基づく作業進行。
デリバリー ステークホルダーに対する価値提供。
測定 パフォーマンスの測定。
不確実性 リスクに向けた対処。

フレームワーク「PMBOK」を活用するメリット

PMBOKの活用は、プロジェクトの効率性や成功率の向上に加え、全体の透明性を高め、関係者間のコミュニケーションの円滑化にも寄与します。本章では、PMBOKのフレームワークを活用する代表的なメリットについて解説します。

プロジェクト管理業務の属人化を防げる

プロジェクト管理でフレームワークを活用しない場合、担当者ごとに管理の質にばらつきが生じやすいです。プロジェクト管理に優れた人材がいても、独自の管理方法に依存していると、担当者が抜けた際に円滑な進行が難しくなるリスクがあります。

一方で、フレームワークを導入すれば、プロジェクト管理が特定の個人に依存するリスクを軽減できます。いかなるメンバーが担当しても、一定の品質を維持しつつプロジェクトの推進が可能です。

世界基準のプロジェクト管理ノウハウを習得できる

PMBOKを活用すれば、国際的に認められたプロジェクト管理の知識と手法を習得できます。

PMBOKに基づくマネジメントノウハウは、業種や規模を問わず幅広いプロジェクトで応用可能です。プロジェクトの特性に合わせて必要な要素を選んで活用すれば、より効果的にマネジメントを行えます。

初心者でもプロジェクト管理について体系的に理解しやすい

PMBOKの導入により、初心者のプロジェクトマネージャーでも効果的に成果を挙げることが可能です。フレームワークを利用すると、プロジェクトの進行が体系立てられ、計画に沿った進捗が期待できるからです。

例えば、プロジェクト全体をPMBOKの枠組みで整理すると、業務の進め方が明確になり、計画に沿った円滑な運営が可能です。大きなトラブルがなければ、プロジェクトを効率的に進行できます。

そのため、プロジェクトマネージャーを育成する際にはPMBOKの活用が有効です。基礎的なマネジメントスキルを習得すると同時に、実際のプロジェクトを成功へと導く手法を身につけられます。

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フレームワーク「PMBOK」をプロジェクト管理に用いる際のポイント3選

PMBOKのメリットを最大限に引き出すには、単に手順を踏むだけではなく、ポイントを押さえた活用が重要です。本章では、PMBOKをプロジェクト管理に用いる際に意識すべきポイントを解説します。

プロジェクトの性質や規模に応じて柔軟に適用する

PMBOKは、基本的に参考ガイドとして利用するのが適切です。主な理由は、次の3点にあります。

  • 大規模なプロジェクトを想定した作りで、小規模な案件には適用しにくい
  • プロジェクト管理の具体的な手法や、トラブル発生時の解決策が含まれていない
  • 複数のプロジェクトを同時に進める場合には向いていない

予期せぬトラブルが発生した際、PMBOKでは「こう対処すべき」といった具体的な方法が示されておらず、自ら状況に応じた判断が必要です。また、小規模プロジェクトや複数案件を並行して進める際には、適用範囲外となるケースもあります。

PMBOKを活用する際は、基本的な枠組みや知識を補う参考資料として利用しましょう。プロジェクトの規模や特性に応じた柔軟な対応策の検討が重要です。

管理スキルやコミュニケーション能力の研鑽も行う

プロジェクトマネージャーは、予想外のトラブルにも柔軟に対応していく必要があります。現在のようにビジネス環境が急速に変化する中では、従来型の手法だけでは対応が難しい場面も増えています。

PMBOKへの過度な依存は、リーダーシップの発揮や判断力の向上を妨げる可能性があるので注意が必要です。PMBOKを基盤にしつつ、経験を積んで実務スキルを備えると、プロジェクトの成功確率が高まり、変化に強いマネジメントが行えます。

また、PMBOKの活用にあたっては、柔軟なコミュニケーション能力の養成も意識しましょう。PMBOKは標準的な管理手法を提供しますが、具体的なスキルやチーム間の連携方法については記載されていません。

プロジェクトでは、様々な立場や個性を持つメンバーやクライアントとの調整が求められます。相手の特性を理解した上での適切な対話が信頼関係構築のカギです。

プロジェクト管理ツールを活用する

プロジェクト管理ツールは、プロジェクト管理に必要な機能を搭載し、プロジェクト管理の業務効率を向上させるツールです。

プロジェクト管理では、予実管理、スケジュール管理やコミュニケーションの管理、会議、書類や情報の共有など様々なタスクがあります。プロジェクト管理ツールを利用すれば、一括管理が可能です。

また、ツールの導入により、以下のようなメリットも期待でき、プロジェクト管理の効率化が図れます。

  • 管理工数を削減できる:容易に入力でき、メンバーが入力した内容も反映される
  • 状況の可視化ができる:メンバーの稼働状況やプロジェクトの進捗度合いがわかる

数あるプロジェクト管理ツールの中でも、Lychee Redmineの活用をおすすめします。

Lychee Redmineは、 7,000社以上の導入実績を持つプロジェクト管理ツールです。ガントチャートをはじめ、カンバンなどの進捗管理に役立つ機能が多く備わっている点が特徴です。

また、操作性に優れており、見やすく使いやすいUIが用意されているので、IT初心者でも安心できます。

フリープランは、基本機能(ワークフロー・通知設定・ファイル共有・Wiki)とカンバン機能のみと機能が限定されています。有料プランはガントチャートをはじめ、さらに多くの機能が利用できます。

プラン 月額料金 利用機能
フリー 無料
  1. 基本機能
  2. カンバン
スタンダード 900円
  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
プレミアム 1,400円
  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
  5. 工数リソース管理
  6. EVM
  7. コスト管理
  8.  CCPM
ビジネス[無料トライアルはこちらをお試しできます] 2,100円
  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
  5. 工数リソース管理
  6. EVM
  7. コスト管理
  8. CCPM
  9. プロジェクトレポート
  10. カスタムフィールド
  11. チケット関連図
  12. グループの階層化機能

30日間の無料トライアルを実施しているので、プロジェクト管理に役立つツールの導入を検討している方は、ぜひ無料で試してみてください。

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フレームワーク「PMBOK」とLychee Redmineでプロジェクト管理を効率化

PMBOKは、プロジェクト管理の基本を体系化したフレームワークとして、世界中で広く活用されています。柔軟性と適応性から、様々な業界や規模のプロジェクトに応用可能であり、プロジェクトの成功率アップを目指せます。

PMBOKを効果的に活用するには、プロジェクトの性質や規模に応じた適用に加えて、管理スキルやコミュニケーション能力の研鑽も意識しましょう。業務効率を向上させるには、プロジェクト管理ツールの導入も効果的です。