工程の切り替わりが激しいアジャイル開発において要件を適切に管理するには、精度の高い要件定義が求められます。
開発過程で生じた情報を随時整理し、要件を管理する仕組みも必要です。
しかし、「要件定義の流れがわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、要件定義の流れや要件管理に役立つツールを紹介します。
ぜひ参考にしてください。
アジャイル開発における要件管理・定義とは
アジャイル開発における要件管理・定義は、プロジェクトを進めるにあたって土台となる重要な要素です。
アジャイル開発と要件管理・定義、それぞれの概要を解説します。
そもそもアジャイル開発とは
システム開発における手法のひとつであり、以前よりも短い期間で開発できるのがアジャイル開発です。
従来は以下の手順で段階的に進め、仕様書を用いて工程間の意図を伝えるというウォーターフォール開発が主流でした。
- 分析
- 設計
- 実装
- テスト
一方、アジャイル開発では上記の手順を1週間から1ヶ月という短い期間で区切って開発を進めます。
完成するのはシステムの一部分ですが、同じ手順を繰り返すことで徐々に最終の成果物に近づけます。
ひとつずつ工程を進めるウォーターフォール開発では、実際に動作するシステムを確認できるのは、プロジェクトの終盤です。
完成するまでの間、クライアントは文書で仕様を理解しなければならず、誤解が生じるリスクもあります。
しかし、短期間で同じ工程を繰り返すアジャイル開発では、動作を確認できるシステムを一定感覚でつくり出せます。
顧客のニーズを反映しながらプロジェクトを実施でき、より希望にそったシステムを効率よく開発可能です。
要件を管理・定義するとは
「要件」とは、システム開発において「顧客の要望を実現するための手段」のことです。
要件と似た用語に「要求」があります。
要求は「クライアントが要望している仕様」を意味します。
そして、顧客の要求を聞き取ることで、システム化の範囲や機能を具体化し要件をまとめるのが要件定義です。
「クライアントの要求を要件に落とし込むフェーズ」と言い換えてもいいでしょう。
顧客のニーズは、開発の途中で変わることも珍しくありません。
はじめに定義した要件をプロジェクトの進行中も適切に管理し、プロジェクト開発を円滑に進めましょう。
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要件定義の重要性
要件定義はシステムの方向性を決めるフェーズであり、プロジェクトの進捗に影響する重要な工程です。
要件定義のような上流工程で認識の齟齬があると、その後の進捗全体に影響が生じます。
定義した要件はクライアントの要求が変わることも念頭におき、柔軟に管理しましょう。
特に、開発期間が数年に及ぶ大規模なプロジェクトでは、発注した企業の方針そのものが変わり、要求が大きく変更される場合もあります。
クライアントの目的を意識し互いの認識に差が生まれないよう注意しながら、要件を定義し管理しましょう。
アジャイル開発で要件を管理・定義する19の手順
アジャイル開発における要件定義・管理の流れを解説します。
19の手順をひとつずつ確認しましょう。
①実施計画の作成
まずは、「実施計画」を作成します。
以下の流れで、計画を策定しましょう。
- 目的のヒアリング・設定
- ステークホルダーの洗い出し・分析
- リスクの識別
システム開発における具体的な目的を整理するだけでなく、要件漏れや過剰要件が生じないよう調整しましょう。
②機能要件の定義
「機能要件」の定義では、開発するシステムに必要な機能を一覧にしてまとめます。
作成した一覧は要件定義の核となります。
開発する過程で新たに必要になった機能があれば、すぐに反映しましょう。
③データ要件の定義
「データ要件」では次のような3種類のデータを定義します。
インプットデータ | ユーザーがシステムに入力する情報や他のシステムから移行するデータ |
アウトプットデータ | ユーザーへ出力する情報や外部システムに提供するデータ |
内部データ | 開発するシステムが内部で蓄えるデータ |
インプットデータとアウトプットデータを確定させたのち、内部データを整理しましょう。
④画面要件の定義
「画面要件」の定義では、ユーザーがデータを参照したり登録したりするときに見る画面を決めます。
どのような画面でいかに表示や処理をおこなうかなど、画面に関連する要件をまとめましょう。
⑤帳票要件の定義
画面要件の一部に「帳票要件」があります。
帳票の目的は、証拠や履歴を残すことです。
統計データをまとめたレポートや、印刷用に整形された画面をどのように表示するかを定義します。
⑥バッチ要件の定義
「パッチ要件」のパッチは、一定の期間で蓄えられた膨大なデータを一括処理することを指します。
バッチ要件の定義は、データ処理の方法や実行するタイミングなどを決める工程です。
⑦外部I/ F要件の定義
「外部I/ F要件」の定義では、開発対象が外部のシステムと連携する際に必要となるデータをまとめます。
外部のシステムがかかわるため、一度定義すると修正が難しいという特徴があります。
⑧例外処理要件の定義
「例外処理要件」の例外処理とは、ハードウェアの故障や入力データのミスなどの異常が発生した場合に、プログラムを中止し別の処理をおこなうことです。
例外となりうるシーンを洗い出し、処理の仕方を検討しましょう。
⑨セキュリティ要件の定義
システムには顧客データや売上データなど、漏えいが許されない情報が多く保存されることも珍しくありません。
そのため、利用者の認証機能やアンチウイルスソフトなど、セキュリティに関する取り決めを「セキュリティ要件」の定義でおこないます。
⑩完全性要件の定義
「完全性要件」の完全性は、システムが出力する結果の正確さを指します。
完全性は以下の4つで構成されます。
- 開発時のテスト
- 本番変更管理
- 完全性にかかわる機能
- モニタリング
上記の構成要素を確認し、完全性を保ちましょう。
⑪耐障害性要件の定義
「耐障害性要件」は「可用性要件」ともいいます。
可用性の高いシステムは、トラブルによる停止・中断の少ない機能を搭載しています。
ハードウェアの冗長化や予備機の確保により、障害に強いシステムを目指しましょう。
⑫性能要件の定義
「性能要件」の性能とは、プログラムを実行した際の応答時間に代表されるシステムの能力のことです。
性能要件の定義では、平均の応答時間や目標値を遵守できる確率などを記載します。
⑬拡張性要件の定義
「拡張性要件」における拡張性は、システムの運用を開始した後に機能を追加したり性能を向上させたりする能力を指します。
拡張によってシステムの中核部分に大きな変化が生じないように、定義しましょう。
⑭ハードウェア要件の定義
「ハードウェア要件」の定義では、システムで使用するハードウェアを指定します。
利用するサーバーやストレージなどで、指定する必要がある場合には定義しましょう。
⑮ソフトウェア要件の定義
開発するシステムで用いるソフトウェアは、「ソフトウェア要件」の定義で指定します。
OSや開発言語などを定義しましょう。
⑯運用要件の定義
「運用要件」はシステムの稼働中に、サービスを停止することなく提供し続ける環境を整えるために定義します。
運用時間や異常を検知した際の通知プロセスなどを定義しましょう。
⑰保守性要件の定義
「保守性要件」の保守性は、システムの維持や管理のしやすさを意味します。
ハードウェアやOSの刷新に備え、世代交代できるよう要件を定義します。
⑱ログ要件の定義
「ログ要件」は情報の編集や消去といったイベント発生時の操作者や変更点を保管し、トレーサビリティ、つまり追跡性を確保するために定義します。
トレーサビリティを保つために、出力が必要なログの項目を洗い出しましょう。
⑲要件定義書のレビュー
要件定義が完了し「要件定義書」も作成できれば、レビューの工程に移ります。
要求が網羅されているか、関係者間で確認しましょう。
アジャイル開発の要件管理に役立つプロジェクト管理ツール5選
アジャイル開発における要件管理を円滑に進めるには、プロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。
プロジェクト管理ツールには、システム開発にかかわるさまざまな情報を蓄積できる機能が備わっているので、効率よく要件を管理できます。
おすすめのプロジェクト管理ツールを5つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
①Lychee Redmine
「Lychee Redmine」は多機能で大小さまざまなプロジェクトで活用できるプロジェクト管理ツールです。
下記のような基本機能に加え、有料プランでは進捗管理に有効な「ガントチャート」や生産性をグラフと表で確認できる「リソースマネジメント」などを利用できます。
- タスク管理
- ワークフロー
- 通知設定
- ファイル共有 など
要件の定義や管理を含めたプロジェクト全体で、ぜひLychee Redmineを活用してください。
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②Asana
引用:Asana
「Asana」は世界中で利用されているプロジェクト管理ツールです。
スタイリッシュなデザインで、プロジェクトの情報を確認しやすいのが特徴です。
また、連携可能なアプリケーションが多いというメリットもあります。
③Brabio!
引用:Brabio!
プロジェクトの進捗管理に便利なガントチャートを手軽に作成できるツールに「Brabio!」があります。
ファイル共有やメッセージ機能などの基本機能も備わっています。
5人までなら無料で利用できるので、試してはいかがでしょうか。
④クラウドログ
引用:クラウドログ
「クラウドログ」はGoogleカレンダーやOutlookと連携することで、半自動的に工数を入力できるプロジェクト管理ツールです。
さまざまな情報を集計する手間を省ける上に、収支管理や勤怠管理も可能です。
⑤jooto
引用:jooto
「jooto」は約1,800社もの導入実績があるプロジェクト管理ツールです。
シンプルなデザインや複数のプロジェクトを一元管理できる点が強みです。
4人まで無料で使用でき、サポート体制も充実しているので、はじめてのプロジェクト管理ツールにいかがでしょうか。
要件を管理してアジャイル開発を進めよう
一定間隔で同じ手順を繰り返すのが、アジャイル開発です。
顧客のニーズを反映しながら、プロジェクトを進行できるというメリットがあります。
アジャイル開発をより確実に進めるには、要件を正しく管理することが重要です。
適切な手順で要件を定義し、開発途中でも管理を続けましょう。
要件管理の効率を上げたい場合は、プロジェクト管理ツールであるLychee Redmineの導入がおすすめです。
多機能性が魅力のLychee Redmineを活用すれば、情報の収集や共有が手軽におこなえます。
30日間、無料で使用することも可能なので、ぜひ試してください。