製品・サービスのライフサイクルが短くなりコモディティ化が進む現代は、新製品・サービスの開発難度が高まっています。VUCA時代と呼ばれ不確実性が高まる中、筋の良いテーマを見つけて製品化・事業化のプロジェクト成功確率を上げるにはステージゲート法の導入が有効です。

本記事では、プロジェクトマネージャーの方に向けて、プロジェクト管理におけるステージゲート法の概要や重要性を解説します。各ステージの手順や実践のコツも紹介しているので、ステージゲート法を導入する際にお役立てください。

プロジェクト管理におけるステージゲート法とは

ステージゲート法(別名:フェーズゲート法)とは、プロジェクトの各段階でゲート(確認項目)を設け、リスクを軽減しつつプロジェクトの成功確率を向上させる手法です。製品開発の場面で多く使用されますが、開発プロジェクト全般に有効です。

この方法では、プロジェクトを複数のステージに分割し、各ステージの間にチェックポイントとしてゲートを設定します。

まず、重要なマイルストーンに基づいてプロジェクトのタスクをステージごとに分類し、各ステージの要件を定義します。次のステージに進む前に、要件が満たされているかを確認する段取りです。

ステージゲート法は、意思決定プロセスを最適化し、プロジェクトの最終結果をより良いものにする目的で導入されます。プロジェクトで発生するミスは、早期に発見しないと後々大きな問題になるケースが多いです。

しかし、計画を進める中で定期的にチェックポイントを設けておくと、問題が早期に明らかになって迅速な対応が可能です。チームメンバーが協力してタスクに取り組む際の明確性も向上します。

ステージゲート法とデザインレビューの違い

製造業に携わる方の中には、ステージゲート法とデザインレビューは同じ意味を表す言葉だと捉えている方も少なくありません。しかし、厳密には異なるので、違いを把握しておきましょう。

デザインレビューとは、製品開発の各段階で生み出された成果物を評価し、次の段階に進むべきかを判断する手法を指します。各フェーズにレビューを設ける点でステージゲート法と共通していますが、目的には大きな違いがあります。

デザインレビューの主な目的は、設計の完成度を高め、技術的な品質を確保する点です。一方、ステージゲート法の目的は、見込みが薄いプロジェクトを早期に見極めて中止し、成功が期待できるテーマに資源を集中させ、事業成功を目指す点にあります。

デザインレビューでは「設計に問題がないか」を評価し、ステージゲート法では「市場にリリースした際に成功する可能性があるか」を判断します。以上の違いから、ステージゲート法はより市場志向であり、経営における意思決定を強力にサポートする手法と言えます。

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ステージゲート法の重要性

急速に変化する社会環境の中で、かつて「ものづくり大国」として栄えた日本の従来のやり方は、限界に達しつつあります。従来得意としてきた、高い技術力による高品質な製品だけでは、競争に勝つことが難しくなってきました。

デジタル技術の進化とグローバル化によって市場はますます多様化し、海外企業の台頭で最先端技術の低コスト化が進む中、今後いかなる戦略を取るべきかの検討が急務です。

従来は、一部の顧客の要望に応えるだけで十分なケースも多くありました。しかし、今後は不確実性を前提に、現時点で見えていない潜在的な顧客のニーズを探り、ターゲットのニーズの深い理解が求められます。

目の前の顧客だけでなく、より広範な市場の声を捉えなければ、革新的な製品・サービスは生まれません。

こうした状況において、ステージゲート法は非常に有効な手法です。不確実性を低減し、全プロセスにおいてテーマやプロジェクトを事業性・採算性の観点から評価し、双方向の対話を通じて市場理解を深められるためです。

ステージゲート法における6つのステージと進め方

ステージゲート法における6つのステージの概要と、各ステージの進め方を紹介します。なお、本章で取り上げるステージは、大規模な投資を伴う新製品・サービスの開発プロジェクトでステージゲート法を用いる場合を想定しています。

上記以外のプロジェクトでは、市場調査のプロセスが省略されるケースも多いです。こうした場合は、一般的に以下の4つがステージとして配置されます。

  • 要件定義
  • 設計
  • 開発
  • テスト
  • 保守

1.新製品・サービスのアイデア生成とコンセプト設定を行う

まずは、これから開発を進めていく新製品・サービスのアイデアを生み出すステージです。市場調査やブレインストーミング、顧客のフィードバックなどを通じて、新しいアイデアを収集します。

次に、生成されたアイデアの実現可能性や市場ポテンシャルを評価し、有望なコンセプトを選定します。コンセプトに基づくプロジェクト要件やステークホルダー、プロジェクト目標の設定までが本ステージに含まれます。

本ステージ通過に必要な評価基準の例としては、アイデアの品質やプロジェクト目標・要件の実現可能性の確認などが挙げられます。

2.ビジネスケースを作成し決裁者にプロジェクト実施を提案する

設定されたコンセプトに基づき、ビジネスケースを作成します。ビジネスケースは、大規模な投資や戦略的な取り組みの実施判断にあたって、組織が得られる価値・利益を説明する文書です。

ビジネスケースには、新製品・サービスの概要やプロジェクトの経済的価値・リスク、リソース要件などを記すのが一般的です。組織の決裁者は、提出されたビジネスケースを参考に、プロジェクトを進めるべきかどうか判断します。

本ステージ通過には、例えばビジネスケースの合理性の評価が求められます。

3.新製品・サービスの開発を進めてプロトタイプを作成する

開発を進めて、新たに市場に投入する製品・サービスを作り込んでいくステージです。

本ステージでは、製品・サービスのプロトタイプを作成します。併せて、次のステージであるテスト・評価に向けた計画策定の他、内外へ公表し初期顧客の獲得を始める場合もあります。

プロトタイプの品質管理にあたっては、具体的な成果物に対するデザインレビューの活用も重要です。

本ステージ通過に必要な評価基準の例としては、「市場ニーズを満たす仕様を備えているか」「社内外へのプロモーションが十分か」といった確認が挙げられます。

4.テスト・評価でプロトタイプをブラッシュアップさせる

作成したプロトタイプのテスト・評価を実施し、最終的な成果物に近づけていくステージです。試験的に市場に投入し、ユーザーテストを通じて、満足度や市場への適合性などを確認します。

本ステージ通過に求められる評価基準の例としては、見込み顧客の数、顧客ニーズを満たす技術の完成度などが挙げられます。

5.成果物の商品化に向けた準備を行う

テスト・評価の結果に基づき、成果物の商品化に向けた準備を進めていくステージです。テストマーケティング戦略の策定・実行、販売チャネルの整備、製品・サービスの最終調整なども含まれます。

本ステージ通過にあたっては、テストマーケティング結果に基づく事業の成立性、ビジネスプランの妥当性といった判断が行われます。

6.商品を市場に投入する

最後に、新製品・サービスを正式に市場に投入するステージです。販売活動を開始するほか、顧客サポート体制の整備や、継続的な市場モニタリングも行われます。

本ステージゲートは、事業継続を判断するために設けられます。例えば、顧客からの評価や収益結果の良し悪し、不具合発生率の高さや改善方法の有無などが主な評価基準です。

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ステージゲート法を実践する際のコツ

ステージゲート法を効果的に実践する際に押さえておきたいコツを3つ紹介します。

明確な評価基準の設定

各ステージのゲートは、次のステージに進むかどうかを判断する重要なポイントです。ゲートの役割が形骸化しないように注意が必要です。

各ステージの通過時に確認すべき項目の設定およびゲートごとの承認者を明確化した上で、評価漏れを防ぎます。ただし、商品化の失敗を過度に恐れて厳しすぎる評価基準を設定するのは、ステージゲート法の本質に反します。

特に開発プロジェクトの初期段階では、試行錯誤の繰り返しが重要です。なので、初期段階では、「迷ったら承認する」程度の柔軟な基準の設定が望ましいです。

積極的なコミュニケーションの重視

ステージゲート法の導入は、プロジェクトメンバーから否定的に捉えられる場合があります。なぜなら、各ステージにおけるゲートの設定や管理などで手間が増えると感じるためです。

また、ステージゲート法の導入には、マーケティング戦略の策定・実行などが伴います。こうした経験を持たないメンバーは、強い抵抗感を抱きやすいです。

上記の問題を解消するには、プロジェクトメンバーとの積極的なコミュニケーションが不可欠です。その中で、メンバーに対するステージゲート法導入によるメリットのわかりやすい説明が求められます。

加えて、定期ミーティングのような、ステージゲート法導入における問題点を指摘・共有できる場を設けるのも望ましいです。

テンプレート・ツールの活用

テンプレートを活用すれば、ステージゲート法を一から設定する手間を省き、時間の大幅な節約が可能です。重要な意思決定やプロジェクトの進行に集中できます。

テンプレートの使用により、プロジェクトメンバーやステークホルダーに対してわかりやすく情報を提供できる点もメリットです。

また、ステージゲート法を導入する際は、ツールの活用も効果的です。プロジェクトにおける各ステージの進捗状況をリアルタイムで把握でき、管理の効率が向上します。

例えば、プロジェクト管理ツールのLychee Redmineは、各ステージのタスクを視覚的に管理し、進捗状況をチーム全体で共有するのに役立ちます。

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ステージゲート法の導入にはプロジェクト管理ツールの活用が効果的

ステージゲート法は、プロジェクトの各段階でゲートを設け、リスクを軽減しつつプロジェクトの成功確率を向上させる手法です。目の前の顧客だけでなくより広範な市場の声を捉えつつ、革新的な製品・サービスの創出を目指せます。

ステージゲート法を導入する際は、プロジェクト管理ツールの活用が効果的です。プロジェクトにおける各ステージの進捗状況をリアルタイムで把握でき、管理の効率が向上します。

数あるプロジェクト・タスク管理ツールの中でも、Lychee Redmineの導入をおすすめします。作業工程を管理する機能「ガントチャート」やタスク管理機能「カンバン」など、役立つ機能が豊富に搭載されています。

特にガントチャート機能は充実しており、プロジェクト全体の進捗はもちろん、タスクの進捗状況や依存関係も容易に把握できます。多機能でありながら直感的な操作が可能なので、ツール操作に不安がある方でも問題なく利用可能です。

有料プランも30日間は無料でお試しできるので、ぜひ申し込みをご検討ください。

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