プロジェクトのリーダーやマネージャーに任命されたものの、以下のような悩みを抱えている方は少なくありません。「タスクの担当者や期限が曖昧」「メンバーから報告がなく、遅れに気づけない」と悩みを抱える方は、進捗管理の仕組みを見直すサインです。
本記事では、進捗管理の基本的な考え方から、明日からすぐに実践できる具体的な方法やおすすめツールまでわかりやすく解説します。
本記事を読んで、管理業務の負担を減らし、自信を持ってプロジェクトを成功へと導きましょう。
進捗管理とは
進捗管理とは、単にメンバーの作業を監視する行為ではありません。プロジェクトを計画通りに完了させ、成功に導くための活動全般のことです。
具体的には、プロジェクトの計画と実績の間に生じるズレを早期に発見し、原因を分析します。問題を解決するための対策を講じることで、プロジェクトが目標から逸れるのを防ぎます。
つまり、進捗管理はプロジェクトの健康状態を常に把握し、問題があればすぐに対処するための役割を担うものです。
進捗管理の4つのメリット
適切な進捗管理を行うと、プロジェクトチームは多くのメリットを得られます。本章では、代表的な4つのメリットを解説します。
タスクの漏れを防げる
プロジェクトでは、多くのタスクが複雑に絡み合っています。誰が担当するのか決まっていなかったり、タスク自体が見落とされたりするケースも少なくありません。
進捗管理によってすべてのタスクを洗い出し、担当者と期限を明確にすると、タスクの抜け漏れを未然に防止可能です。誰が何を担当しているかが一覧でわかり、責任の所在が明確化するため、各メンバーが安心して自分の作業に集中できます。
優先順位が可視化される
すべてのタスクが同じ重要度を持つわけではありません。中には、プロジェクトの成否を左右する重要なタスクや、他のタスクの前提となる緊急性の高いタスクも存在します。
進捗管理を行う過程で、各タスクの重要度や緊急度を評価して優先順位をつけるのが一般的です。結果としてチーム全体が「今、何に集中すべきか」を共有でき、リソースをもっとも効果的なタスクに集中投下できます。
情報を共有しやすくなる
進捗管理を逐一口頭で実施していては、意外と時間と手間がかかります。そのため、進捗管理の仕組みが整っていれば、誰でもリアルタイムでプロジェクトの最新状況を確認できます。
また、不要なコミュニケーションコストが削減されるだけでなく、認識のズレも防止可能です。全員が同じ情報を見ているため、会議もスムーズに進み、より本質的な議論に時間を使えます。
タスクを公平に割り振れる
特定のメンバーにばかり仕事が集中するのは、チームの生産性を下げる大きな要因です。誰がどれくらいのタスクを抱えているのかが見える化されると、リーダーは業務量の偏りを客観的に把握できます。
結果、各メンバーのスキルや負荷状況に応じて、タスクをより公平かつ適切な再分配が可能です。メンバーのモチベーション維持や、チーム全体のパフォーマンス向上に直結します。
進捗管理の4ステップ
進捗管理は、決まった手順に沿って進めれば誰でも効果的に行えます。本章では、基本的な4つのステップを紹介します。
1.タスクを洗い出す
まず、プロジェクトを完了させるために必要な作業(タスク)を、思いつく限りすべてリストアップします。タスクの大小や順序は気にせず、抜け漏れがないよう書き出しましょう。
書き出しには、大きな作業を小さな作業単位に分解していくWBS(Work Breakdown Structure)が有効です。
例えば、新機能リリースのような大きなタスクは、要件定義・設計・開発・テストといった具体的なタスクに分解できます。
2.優先順位をつける
洗い出したすべてのタスクを緊急度と重要度の2つの軸で評価し、優先順位を決定します。一般的には、以下の4つの領域に分類するアイゼンハワー・マトリクスを用いるケースが一般的です。
重要度: 高 | 重要度: 低 | |
---|---|---|
緊急度: 高 | 第1領域:すぐやる (例:システムの致命的なバグ修正) |
第2領域:人に任せるか、効率化する (例:定例会議の議事録作成) |
緊急度: 低 | 第3領域:いつやるか計画する (例:次期バージョンの機能企画) |
第4領域:やらない (例:直接成果につながらない資料の装飾) |
上記のマトリクスを使うことで、チームが本当に集中すべきタスクが明確化します。
3.スケジューリングする
優先順位が決まったら、各タスクに担当者と期限(開始日と終了日)を設定します。タスクの難易度や担当者のスキル、他のタスクとの依存関係を考慮して、現実的なスケジュールを組みましょう。
スケジュールは後述するガントチャートなどを使って可視化すると、プロジェクトの全体像が把握しやすくなります。無理な計画は遅延の原因となるため、ある程度の余裕を持った計画をおすすめします。
4.進捗を管理する
計画を立てたら、後は実行するのみです。しかし、プロジェクトは計画通りに進まないこともあります。そのため、定期的に進捗状況を確認し、計画と実績のズレを把握しましょう。
朝会や週次定例などで進捗を報告する場を設けると、問題が発生した場合はすぐに共有でき、対策を講じるサイクルが回ります。
進捗管理に便利な手法
進捗管理を効率的に行うには、先人たちが生み出した様々な管理手法を知っておくと便利です。本章では、特に代表的な3つの手法を紹介します。
WBS
WBSとは、作業分解構成図のことです。プロジェクト全体を大きなタスクから小さなタスクへと、階層的に分解していく手法を指します。
タスクの洗い出しを構造的に実施でき、作業の抜け漏れを防ぐのに非常に効果的です。プロジェクト全体の作業範囲が明確になり、より正確な工数見積もりやスケジュール作成の土台として機能します。
ガントチャート
ガントチャートは、縦軸にタスク・横軸に時間を配置し、各タスクのスケジュールを棒グラフで示したものです。プロジェクトの開始から終了までの流れや各タスクの期間、タスク間の依存関係を視覚的に把握できます。
「いつまでに、何をすべきか」が一目瞭然となり、プロジェクト全体のタイムラインを共有するのに最適な手法です。多くのプロジェクト管理ツールに標準機能として搭載されているほか、Microsoft Excelでも作成可能です。
カンバン
カンバンは、もともとトヨタ自動車の生産方式から生まれたタスク管理手法です。未着手・作業中・完了といったステータスごとにレーン(列)を設け、タスクを書いたカードを移動させて進捗を管理します。
タスクの流れがシンプルに可視化されるため、チーム全体の作業状況を直感的に把握できます。特に、日々のタスクが流動的に発生するような業務や、個々のタスクの進捗状況をリアルタイムで追いたい場合に有効です。
進捗管理が失敗する主な原因
多くのチームが進捗管理に挑戦するものの、うまくいかずに形骸化してしまうケースも少なくありません。主な背景には、以下の3つの原因があります。
チーム内の信頼関係が不十分
進捗管理が監視や詰問の場になると、メンバーは正直な報告をためらう可能性があります。「遅れていることを報告すると怒られる」といった雰囲気では、問題が表面化するのは手遅れになってからです。
そのため、リーダーは、進捗報告がチームで問題を解決するためのポジティブな活動であることを伝え続ける必要があります。メンバーが安心して「困っています」と伝えられるような心理的安全性の高い環境を築くことが、進捗管理を機能させるために重要です。
タスクの全体量を把握できていない
プロジェクトリーダー自身が、プロジェクトに必要なタスクの全体像を把握できていないケースも少なくありません。タスクの洗い出しが不十分では計画にない突発的な作業が次々と発生し、スケジュール通りに進みません。
各タスクにかかる工数(時間)の見積もりが甘いことも、遅延の大きな原因です。過去の類似プロジェクトのデータを参考にしたり、担当するメンバーに直接ヒアリングしたりして、できるだけ精度の高い見積もりを心がけましょう。
プロジェクトのゴールが共有されていない
「本プロジェクトは何のためにやっているのか」といった目的・ゴールがチーム内で共有されていないと、メンバーはタスクをただの作業として認識してしまいます。そして、予期せぬ問題が発生した際に自律的な行動と判断が難しくなります。
トラブルを回避するには、プロジェクトの開始時に、目的や成功の定義をチーム全員でしっかりと共有しましょう。ゴールが共有されていれば、各メンバーは自分のタスクがゴール達成にいかに貢献するのかを理解し、モチベーション高く業務に取り組めます。
進捗管理を成功させる3つのコツ
進捗管理を形骸化させず、プロジェクトを成功に導く武器とするには、いくつかのコツがあります。本章では、特に重要な3つのポイントを紹介します。
進捗率の定義を明確にしてチームで共有する
「〇〇のタスク、進捗状況は?」と聞いたとき、「50%ほどです」といった返答があったとします。しかし、50%が何を意味するのかは、人によって解釈がバラバラです。
こうした認識のズレを防ぐために、進捗率の定義を具体的なルールとして定めておきましょう。例えば、以下のように客観的な基準を設けることで、誰が報告しても同じ認識を持てます。
進捗率 | タスクの状態 |
---|---|
0% | 未着手 |
25% | 関連資料の調査・確認完了 |
50% | 設計・構成案の作成完了 |
75% | 実装・制作物のドラフト完了 |
100% | レビュー・修正を経て完了 |
定期的に進捗を確認・共有する機会を設ける
進捗管理では、計画通りに進んでいるか・問題は起きていないかを、定期的に確認する場が求められます。
例えば、以下のような会議体を設定するのが一般的です。
- 朝会(デイリースタンドアップ): 毎日5〜15分程度で、昨日やったこと・今日やること・困っていることを簡潔に共有する。
週次定例会: 週に1回30〜60分程度で、週単位での進捗確認や課題の議論、次の1週間の計画を行う。
重要なのは、こうした場を報告のためではなく、問題解決のためと位置づけて形骸化させないことです。
プロジェクト管理ツールを積極的に活用する
Microsoft ExcelやGoogleスプレッドシートでの進捗管理には、手軽に始められるメリットがあります。しかし、プロジェクトが複雑化したりメンバーが増えたりすると、更新の手間や情報共有の遅れといった問題が生じがちです。
プロジェクト管理ツールを導入すれば、リアルタイムでの情報共有・タスクの可視化・コミュニケーションの集約などが可能です。管理業務にかかる工数を大幅に削減し、リーダーはより本質的な課題解決に集中できます。
進捗管理に役立つプロジェクト管理ツールおすすめ5選
本章では特に初心者でも使いやすく、多くの企業で導入実績のあるツールを5つ厳選して紹介します。無料プランやトライアルがあるツールも多いので、まずは気軽に試してみてください。
Lychee Redmine
Lychee Redmineは、オープンソースのRedmineをベースに、日本の企業向けに機能を拡張したツールです。ガントチャートやカンバン、リソース管理など、プロジェクト管理に必要な機能が揃っています。
直感的な操作性と手厚い日本語サポートが魅力で、ITに詳しくないメンバーでも安心して利用可能です。進捗管理の見える化に役立つポイントは、以下の内容が挙げられます。
- クラウドで利用でき、導入するだけで進捗管理の見える化につながる
- すべてのメンバーがリアルタイムの進捗を確認できる
- 機能間でデータ連携がされており、ある機能での変更が他の機能にも反映される
フリープランは、基本機能(ワークフロー・通知設定・ファイル共有・Wiki)とカンバン機能の限定された機能しか利用できません。しかし、有料プランはガントチャートをはじめすべての機能が利用できます。
有料プランは30日間の無料トライアル期間を提供しているので、ぜひお試しください。
Trello
引用:Trello
Trelloは、カンバン方式のタスク管理に特化したツールです。付箋を貼ったり剥がしたりするような感覚で、直感的にタスクを管理できるのが特徴です。
シンプルなUIで誰でもすぐに使いこなせるため、個人のタスク管理から小規模なチームのプロジェクトまで幅広く活用されています。
Microsoft To Do
Microsoft To Doは、Microsoft社が提供するシンプルなタスク管理アプリです。個人のToDoリスト管理に特化しており、「今日の予定」機能でその日にやるべきことを整理するのに役立ちます。
Microsoft Outlookとの連携がスムーズなため、メールで依頼されたタスクをリストにスムーズに追加できるのも便利な点です。
Evernote
引用:Evernote
Evernoteは、強力なノートアプリとしても有名です。チェックリスト機能やリマインダー機能を活用すれば、進捗管理ツールとしても利用できます。
会議の議事録・アイデアメモ・参考資料など、プロジェクトに関するあらゆる情報を一元管理できるのが強みです。集約した情報を基にタスクを管理したい場合に適しています。
Taskworld
引用:Taskworld
Taskworldは、タスク管理・プロジェクト計画・チームメッセージングの機能を統合したオールインワンツールです。タスクごとにチャットができるため、コミュニケーションが分散せず、文脈を保ったまま議論を進められます。
タスクの進捗状況を分析するリポート機能も充実しており、チームの生産性向上に役立ちます。
ツールの活用で業務を可視化し進捗管理を成功させよう
進捗管理は、プロジェクトの成功を目指し、チーム全員で現在地を確認しながら進むべき方向を修正していくためのコミュニケーションです。まずは、チームのタスクをすべて洗い出し、Microsoft Excelのテンプレートなどを使って可視化する作業から初めるのも効果的です。
適切な進捗管理は、プロジェクトの管理業務を効率化するだけでなく、チームの生産性を最大限に引き出します。結果的に、プロジェクトを成功へと導く確実な一歩です。業務が複雑化してきたら、本記事で紹介したようなツールを試してみてください。
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