スプリントバックログは、アジャイル開発において非常に重要な役割を果たす管理手法です。
スプリントバックログは、スプリント期間中に完了すべきタスクをまとめたリストであり、チーム全体の取り組む作業を可視化し、進捗状況を把握する上で欠かせないツールです。
この記事では、スプリントバックログの概要から作成するメリット、具体的な作成方法まで詳しく解説します。アジャイル開発に役立つ手法ですので、ぜひ最後までお読みください。
そもそもアジャイル開発におけるバックログとは?
システム開発におけるバックログとは、開発プロジェクトで今後取り組むべきタスクや項目をリストアップしたものです。バックログは、開発プロジェクトの初期段階から作成され、開発が進むにつれて必要に応じて更新されます。
バックログに登録される項目は多岐にわたり、優先順位を付けて管理され、優先度の高いものから順に開発が進められることが基本です。
アジャイル開発では開発サイクルを短く区切り、反復的に開発を進めていくスプリントという手法が用いられます。そこで、各サイクルで取り組むべきタスクを明確にするためにバックログが活用されるのです。
また、バックログは開発チーム内で共有され、進捗状況や課題を把握するために欠かせません。その他にも、顧客やステークホルダーとのコミュニケーションツールとしても活用でき、バックログの内容を共有することで、開発の方向性や進捗状況について共通認識を持てることがポイントです。
バックログについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
バックログとは?システム開発プロジェクトにおける重要性とバックログ管理に役立つツール5選を解説
スプリントバックログとは
スプリントバックログとは、アジャイル開発におけるスプリントで取り組むタスクをリスト化したものです。
プロダクトバックログから、スプリント期間内で実現する目標を達成するために必要な項目を選び出し、具体的なタスクに分解して作成されます。つまり、スプリント期間中に取り組むべき作業内容を明確にし、日々の作業を進める上での指針といえます。
スプリントについては以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
スプリントとは?アジャイル開発の効率向上に役立つ考え方を解説
スプリントバックログの目的
スプリントバックログは、以下の目的達のために作成されます。
- スプリントゴールの達成
- スプリントで必要な作業の可視化
- チームの方針決定
- 柔軟な対応
スプリントバックログの目的は、スプリント内で決められたゴールを達成することです。ゴールの達成のためには、必要なタスクを明確化し、チーム内で共有することで、目標達成への意識を高める必要があります。
また、スプリント期間中に取り組むべきタスクを可視化し、進捗状況を把握しやすくすることも目的です。チームがタスクを進めるための指針となり、タスクの割り当てや進捗管理ができることもポイントです。
その他にも、スプリント期間中に発生する変更要求や問題点に柔軟に対応するためにも有効な手法です。適宜見直しや修正することで、急な変更に対しても効率的な意思決定ができます。
スプリントバックログを作成するタイミング
スプリントバックログは、スプリントの開始前に行われるスプリントプランニングと呼ばれる会議で作成されます。スプリントプランニングでは、まずスプリントゴールを決定します。その後、ゴールを達成するために必要なタスクを洗い出し、最終的に作成されるタスクのリストがスプリントバックログです。
スプリントプランニングでは、プロダクトオーナーがプロダクトバックログの中からスプリントゴールを達成するために必要な項目を選択し、開発チームがそれらを具体的なタスクに分解します。
また、スプリント開始前に作成されたスプリントバックログは、スプリント期間中は必要に応じて随時更新も大切です。
スプリントプランニングとは?実施する目的や手順・役立つツールを解説
スプリントバックログとプロダクトバックログの違い
スプリントバックログとプロダクトバックログは、どちらもアジャイル開発で利用されるバックログですが、その役割や内容には違いがあります。
プロダクトバックログは、開発プロジェクト全体の要件や機能追加のアイデアなどをリスト化したものです。開発プロジェクト全体を通じて参照されるものです。
一方で、スプリントバックログは、プロダクトバックログのうち特定のスプリントで取り組むタスクをリスト化したもので、そこから具体的にどのように作るかを決めます。スプリントバックログになってから詳細なイメージを詰めるので、結果的に、プロダクトバックログよりも細かく記載されたバックログといえます。
つまりスプリントバックログは、全体のロードマップであるプロダクトバックログを達成するための構成要素の一つであるといえます。
スプリントバックログを作成するメリット
スプリントバックログを利用する大きなメリットは、スプリントで取り組むべきタスクを明確に示すことで、チームメンバーは迷うことなく作業に集中できる点です。
スプリントバックログはチーム全体で共有されるため、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、より効率的に開発を進められます。また、ボトルネックになっているポイントも早期に発見できるので、遅延や問題点に対応しやすくなることもメリットです。
その他にも、成果物の品質向上により、顧客満足度を向上させられることもポイントです。スプリントバックログに基づいてタスクを一つずつ確実にこなしていくことで、手戻りを減らし、品質の高い成果物を生み出せます。顧客のニーズに合わせて柔軟に対応できるため、最終的には顧客満足度の向上に貢献できることがメリットです。
スプリントバックログの構成要素
スプリントバックログは、スプリントゴールを達成するために必要なタスクをリスト化したものであり、以下の要素を含んでいます。
- ユーザーストーリー
- タスク名とタスクの説明
- タスクの優先順位
- スプリントのバーンダウンチャート
ここでは、それぞれの構成要素について詳しく解説します。
ユーザーストーリー
ユーザー ストーリーは、要件の誰が何をなぜ求めるのかをすばやく把握するための要素です。スプリントバックログでは、このユーザーストーリーに基づいてタスクを詳細な作業リストに落とし込みます。
ユーザーストーリーは、「[役割]として、[機能]がほしい。なぜなら、[理由]だから」といった形式で記載されます。例えば、「オンラインショップの顧客として、クレジットカード決済機能がほしい。なぜなら、手軽に商品を購入したいから」といった具合です。
ユーザーストーリーは、プロダクトバックログにも登録される要素です。スプリント期間においては、プロダクトバックログに記載された内容を細分化し、より小さなタスクとしてスプリントバックログに取り込まれます。
タスク名とタスクの説明
タスク名とタスクの説明は、ユーザーストーリーを実現するために必要な具体的な作業内容を記述したものです。
- タスク名:作業内容を端的に表すもの
- タスクの説明:作業内容の詳細や手順などを記述したもの
例えば、クレジットカード決済機能を実装するといったユーザーストーリーに対して、以下のようなタスクが作成されます。
- 決済画面を作成する
- 決済APIを連携させる
- テストケースを作成する
タスクの優先順位
タスクの優先順位は、スプリントゴールを達成するためにどのタスクから取り組むべきかを判断するための指標です。優先順位は、タスクの重要度や緊急度、依存関係などを考慮して決定されます。
一般的には、優先度の高いタスクから順にスプリントバックログにリストアップされ、開発チームは優先度の高いタスクから順に作業を進めます。
スプリントのバーンダウンチャート
スプリントのバーンダウンチャートは、スプリント期間中のタスクの消化状況を可視化したグラフです。横軸にスプリント期間、縦軸に未完了タスクの残量をとり、日々の進捗状況を線グラフで表します。
バーンダウンチャートを見ることで、スプリントの進捗状況を把握し、遅延や問題点を早期に発見できます。
スプリントバックログは、これらの要素を含むことでスプリントゴールを達成するための具体的な計画となり、開発チームが効率的に作業を進めるための指針となるものです。
スプリントバックログを作成する4つのステップ
スプリントバックログは、一般的に以下のような手順で作成します。
- スプリントのゴールを明確にする
- スプリントタスクを作成する
- スプリントタスクの優先度を決める
ここでは、スプリントバックログを作成する手順について解説します。
1.スプリントのゴールを明確にする
まず、スプリントのゴールを明確にします。スプリントゴールとは、そのスプリントで達成したい目標を具体的に示したものです。
プロダクトバックログアイテムの一部を切り取って、その一覧をスプリントバックログとするため、スプリントバックログは、スプリントバックログアイテムが並んだものです。スプリントバックログを実現したときにどのような姿となるかを想像して、その姿のイメージを言葉にすることでスプリントゴールとする。このとき、個々のスプリントバックログアイテムをさらにタスクレベルに分解することはあるものの、必須ではありません。
スプリントゴールは、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームが協力して決定します。スプリントゴールは、スプリントバックログを作成する上での指針となるため、明確に決めることが大切です。
スプリントゴールを決める際は、プロダクトバックログに基づいて決めることが求められます。つまり、今回のスプリントを達成することで、プロダクトバックログの一部が完成するように取り組むことが大切です。
2.スプリントタスクを作成する
次に、スプリントゴールを達成するために必要なタスクを洗い出します。
プロダクトバックログに登録されているユーザーストーリーの中から、今回のスプリントで取り組むものを選択します。選択したユーザーストーリーをさらに具体的なタスクに分解していきましょう。
タスクを作成する際には、具体的な作業内容を表すものにすることが大切です。また、チームメンバーが理解できる言葉で記述し、チーム全体が同じ目的で取り組めるようにします。
ちなみに、スプリントタスクは1つのタスクで完結できる大きさへの分割がおすすめです。タスク内をさらに細分化する必要がある場合は、別のタスクとして設置しておきましょう。
3.スプリントタスクの優先度を決める
スプリントタスクを作成したら、次に各タスクの優先度を付けます。
優先度は、スプリントゴールを達成するためにどのタスクから取り組むべきかを判断するための指標です。タスクの重要度や緊急度、依存関係などを考慮して決定していきましょう。タスクの優先度の決め方については、後ほど詳しく解説します。
一般的には、優先度の高いタスクから順にスプリントバックログにリストアップされ、開発チームは優先度の高いタスクから順に作業を進めることが一般的です。
スプリントバックログの優先順位の付け方
スプリントバックログは、基本的にはゴールの達成が条件です。つまり、最後までやりきることを前提としたタスクといえるため、最終的には優先順位に関わらず、すべてのタスクを完了することが求められます。
一方で、より効率的にゴールの達成を目指す場合や、万が一スプリントゴールを達成できないような場合に備えて、タスクの優先順位を決めておくことが大切です。
優先順位の付け方には、様々な要素を考慮する必要がありますが、ここでは代表的な3つの要素について解説します。優先順位を設定する際に参考にしてみてください。
緊急度と重要度
タスクの優先順位を決定する上で、まず考慮すべきなのが緊急度と重要度です。
緊急度とは、タスクを完了させるまでの時間的な制約を表し、重要度とは、タスクがスプリントゴール達成にどれだけ貢献するかを表します。一般的には、緊急度が高く、重要度も高いタスクが最優先です。
次に、緊急度は低いものの重要度が高いタスク、緊急度は高いが重要度は低いタスク、最後に緊急度も重要度も低いタスクの順で行いましょう。
タスクの複雑さ
タスクの複雑さも、優先順位を決定する上で考慮すべき要素です。
複雑なタスクは完了までに時間がかかるだけでなく、予期せぬ問題が発生する可能性もあります。そのため、複雑なタスクは優先度を高く設定し、早めに取り掛かるようにしましょう。
他のアイテムへの依存度
タスクの中には、他のタスクが完了しないと着手できないものがあります。依存関係があるタスクは、依存元のタスクよりも優先度を高く設定し、先に完了させる必要があります。
優先順位を決定する際には、これらの要素を総合的に考慮し、スプリントゴールを達成するために最適な順番でタスクに取り組めるようにしましょう。
優先順位を決める手法
先ほども紹介したように、スプリントバックログではタスクの優先度を設定するケースもあります。タスクの優先度を決めるためには、様々な方法がありますが、ここでは以下の代表的な2つの手法を解説します。
モスクワ(MoSCoW)分析
モスクワ分析は、PBIを以下の4つのカテゴリに分類し、優先順位を決定する方法です。
- Must have(必要): プロダクトのリリースに必須の機能。これがないとプロダクトは成立しない。
- Should have(あるべき): ユーザーにとって価値が高いが、なくてもリリースできる機能。
- Could have(できればほしい): あればさらに価値が向上するが、なくても問題ない機能。
- Won’t have(今回は不要): 今回のリリースでは不要な機能。
モスクワ分析では、Must haveのタスクを最優先とし、Should have、Could have、Won’t haveの順に優先順位を下げていきます。
アイゼンハワー・マトリクス
アイゼンハワー・マトリクスは、スプリントタスクを以下の4つの象限に分類し、優先順位を決定する方法です。
- Do First(重要かつ緊急): 優先的に取り組むべきタスク
- Schedule(重要だが緊急ではない): 計画的に取り組むべきタスク
- Delegate(緊急だが重要ではない): 他の人に任せても良いタスク
- Eliminate(重要でも緊急でもない): 後回しにするか、削除しても良いタスク
アイゼンハワー・マトリクスでは、Do Firstのタスクを最優先とし、Schedule、Delegate、Eliminateの順に優先順位を下げていきます。
スプリントバックログを作成するコツ
スプリントバックログを作成する際は、以下のコツを押さえることがポイントです。
- スプリントの目標を明確にする
- スプリントタスクを細かく設定する
- 定期的にスプリントバックログを見直す
- スプリントの終了後にはふりかえりを実施する
それぞれのコツについて確認していきましょう。
スプリントの目標を明確にする
スプリントバックログを作成する前に、まずスプリントの目標を明確に定めることが重要です。
スプリントの目標は、スプリント期間中に達成すべき具体的な成果であり、チーム全体の指針となります。目標が明確であれば、チームメンバーは目標達成に向けて効率的に作業を進めることが可能です。
目標を設定する際は、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 具体的であること
- 測定可能であること
- 時間制約があること
スプリントバックログは、ゴールを達成できることを前提で作成することから、より現実的な目標を定めることが大切です。
スプリントタスクを細かく設定する
スプリントタスクは、細かく設定することで進捗管理がしやすくなります。タスクが大きすぎると進捗が把握しづらく、遅延の原因となる可能性があります。
タスクの中に複数のタスクが存在するような場合は、複数の小さなタスクへの分割がポイントです。また、タスクの内容が誰にでも理解できるように具体的に記述することも欠かせません。
定期的にスプリントバックログを見直す
スプリントバックログは、作成したら終わりではありません。スプリント期間中は定期的にスプリントバックログを見直し、必要に応じて修正が重要です。
例えば、各タスクの進捗状況を確認し、遅延しているタスクがあれば原因を特定しつつ対策を講じます。その際に、スプリント目標の達成に必要なタスクが不足している場合は追加し、不要なタスクは削除しておきましょう。
その他にも、スプリント期間中には、様々な要因によってタスクの優先順位が変わることも想定されます。より効率的なタスクを遂行するために、必要に応じてタスクの優先順位を変更しましょう。
スプリントの終了後にはふりかえりを実施する
スプリントの終了後には、スプリントで得られた教訓を今後に活かすために、ふりかえり(レトロスペクティブ)を実施します。ふりかえりでは、以下の点を話し合います。
具体的には、以下のようなポイントに分けてふりかえると効果的です。
- 良かった点: スプリントでうまくいった点や、改善された点
- 改善点: スプリントで課題として残った点や、改善が必要な点
- アクションプラン: 次のスプリントに向けて、具体的な行動計画
ふりかえりは、チーム全体の成長につながる貴重な機会です。積極的に意見交換を行い、次回のスプリントに活かしましょう。
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スプリントバックログで効率的な進捗管理をしよう
本記事では、アジャイル開発におけるスプリントバックログについて解説しました。
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今回紹介した作成手順をもとに、スプリントバックログで効率的な進捗管理をしましょう。
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