PMBOKの5つのプロセス群とは?知識エリアとの関係性も解説

プロジェクトマネジメントには、「PMBOK(ピンボック)」というプロジェクト管理のガイドブックがあります。PMBOKの中には、プロジェクトを成功に導くためのプロセス群が明確に示されています。

しかし、その概念や役割、具体的な活用方法が難しく感じられる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、PMBOKのプロセス群について、初心者向けに解説します。また、プロセス群に連動する10の知識エリアも紹介します。

プロジェクトマネジメントのスキルアップを目指す方、PMBOKを学んでキャリアアップを図りたい方は必見です。プロジェクト成功の鍵、PMBOKのプロセス群を一緒にマスターしましょう。

PMBOKの概要

PMBOKの概要

まずは「PMBOKとは何か」について解説します。

そもそも「PMBOK」とは

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントに関する知識体系をまとめ、標準化したガイドブックです。発行しているのは、アメリカに本部を置くプロジェクトマネジメント協会(PMI)という非営利団体です。

PMBOKにはプロジェクトを成功させるためのノウハウや手法が体系的に記述されています。そのため、プロジェクトマネジメントの「事実上の世界標準」として広く認知されています。

また、定期的に改訂されており、最新のプロジェクトマネジメントの動向やベストプラクティスが反映されている点も特徴です。初版が発売されたのは1996年で、2025年4月現在では第7版が販売されています。

PMBOKはプロジェクトマネージャーにとってのバイブルとも言える存在であり、プロジェクトの立ち上げから終結まで、各段階で必要な知識やスキルを提供してくれます。

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PMBOKの重要性

PMBOKの活用には、以下のようなメリットがあります。

メリット 詳細
プロジェクト管理の標準化 プロジェクト管理のプロセス、知識エリア、用語などを標準化することで、プロジェクトチーム全体の共通認識を醸成し、コミュニケーションを円滑にする
プロジェクト成功率の向上 リスク管理、品質管理、コミュニケーション管理など、プロジェクトの成功に不可欠な要素を網羅しており、これらの要素を適切に管理することで、プロジェクトの成功率を高められる
国際的な通用性 PMBOKは世界中で広く認知されているため、PMBOKの知識を持つことは、国際的なプロジェクトに参加する上で有利になる

第6版から第7版の変更点:知識エリアの廃止

PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系として、長年にわたりプロジェクト成功の指針となってきました。しかし、プロジェクトを取り巻く環境は常に変化しており、PMBOKもその変化に対応するため、改訂を重ねています。

2025年4月現在、PMBOKの最新版は、2021年10月に発行された第7版です。

第7版における変更点は、第6版にあった「知識エリア」がなくなり、「8つのパフォーマンス・ドメイン(行動領域)」に変わったことです。内容は、従来のプロセスベースのアプローチから、原則とパフォーマンス領域に基づくアプローチへと大きく転換しました。

これは、プロジェクトマネジメントがより迅速に進化しており、過去の版のプロセスベース指向では、価値実現の全体像を示すことが困難になったためです。

しかし、第7版が発行されたとはいえ、プロジェクトによっては第6版の手法を採用している場合があります。

第6版の手法を採用しているプロジェクトに第7版のノウハウを適用する場合、手間やコストがかかるからです。そのため、第6版の「10の知識エリア」と「5つのプロセス」には、一定の需要があるといえます。

PMBOKの5つのプロセス群

PMBOKの5つのプロセス群

PMBOKは、プロジェクトを管理するために、一連のプロセスを5つのプロセス群に分類しているのが特徴です。5つのプロセス群は、プロジェクトのサイクル全体を通して、相互に連携しながら実行されます。

各プロセス群を理解することで、プロジェクトの各段階で何を行うべきか、どのように進めるべきかが明確になります。

プロセス1:立ち上げ

立ち上げプロセスは、プロジェクトを正式に開始する段階です。プロジェクトの目的や必要性を明確にし、プロジェクトの承認を得るための活動を行います。

主要なステークホルダーを特定し、プロジェクトの概要を定義することも重要なタスクです。立ち上げプロセスの主な活動と目的は以下の通りです。

主な活動 目的
プロジェクト憲章の作成 プロジェクトの目的、スコープ、責任者を正式に定義する
ステークホルダーの特定 プロジェクトに関わるすべての利害関係者を特定し、そのニーズや期待を把握する

立ち上げプロセスは、プロジェクトの成功を左右する重要な最初のステップです。プロジェクトの目的を明確にし、関係者の合意を得ることで、その後のプロセスを円滑に進められます。

プロセス2:計画

計画プロセスは、プロジェクトの目標を達成するための詳細な計画を策定する段階です。スコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクなど、プロジェクトのあらゆる側面を詳細に定義します。

プロジェクトマネジメント計画書を作成し、プロジェクトの実行に必要なリソースやタスクを明確にします。計画プロセスの主な活動と目的は以下の通りです。

主な活動 目的
スコープ定義 プロジェクトで何を行い、何を行わないかを明確にする
WBS(Work Breakdown Structure)の作成 プロジェクトの成果物をより小さく、管理しやすいタスクに分解する
スケジュール作成 タスクの順序、期間、必要なリソースを決定し、プロジェクト全体のスケジュールを作成する
予算作成 各タスクに必要なコストを見積もり、プロジェクト全体の予算を作成する
リスク管理計画 プロジェクトに影響を与える可能性のあるリスクを特定し、対応策を計画する

計画プロセスで作成されたプロジェクトマネジメント計画書は、プロジェクトの実行と監視・コントロールの基準です。計画が不十分だと、プロジェクトの遅延や予算超過、品質低下などの問題が発生する可能性が高まります。

プロセス3:実行

実行プロセスは、計画に基づいてプロジェクトを実行し、成果物を生み出す段階です。プロジェクトチームを組織し、必要なリソースを割り当て、計画されたタスクを実行します。

進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて計画を修正することも重要です。実行プロセスの主な活動と目的は以下の通りです。

主な活動 目的
タスクの実行 計画に基づいて、プロジェクトのタスクを実行する
チームマネジメント プロジェクトチームを組織し、必要なスキルを持つメンバーを配置する
コミュニケーション ステークホルダーとのコミュニケーションを円滑に行い、情報共有を徹底する
品質保証 成果物が品質基準を満たしていることを確認する

実行プロセスは、プロジェクトの成果を直接生み出す段階です。計画通りに作業を進めるだけでなく、予期せぬ問題が発生した場合には、迅速かつ適切に対応する必要があります。

プロセス4:監視・コントロール

監視・コントロールプロセスは、プロジェクトの進捗状況を監視し、計画との差異を分析し、必要に応じて是正措置を講じる段階です。パフォーマンス測定、変更管理、リスク管理などを行い、プロジェクトが計画通りに進んでいることを確認します。

監視・コントロールプロセスの主な活動と目的は以下の通りです。

主な活動 目的
進捗管理 プロジェクトの進捗状況を定期的に確認し、計画との差異を分析する
変更管理 プロジェクト計画の変更を適切に管理し、影響を評価する
リスク管理 リスクの発生状況を監視し、対応策を実行する
パフォーマンス測定 プロジェクトのパフォーマンスを測定し、目標達成度を評価する

監視・コントロールプロセスは、プロジェクトを成功に導くために不可欠です。進捗状況を常に把握し、問題が発生した場合には迅速に対応することで、プロジェクトの遅延を防げます。

プロセス5:終結

集結プロセスは、プロジェクトを正式に完了させ、関係者への報告や文書の整理を行う段階です。プロジェクトの成果物を確認し、顧客の承認を得て、プロジェクトチームを解散します。

プロジェクトの教訓を文書化し、今後のプロジェクトに役立てることも重要なタスクです。集結プロセスの主な活動と目的は以下の通りです。

主な活動 目的
成果物の引き渡し プロジェクトの成果物を顧客に引き渡す
プロジェクトの完了確認 プロジェクトがすべての要件を満たしていることを確認する
文書の整理 プロジェクト関連の文書を整理し、保管する
教訓の文書化 プロジェクトで得られた教訓を文書化し、今後のプロジェクトに役立てる

集結プロセスは、プロジェクトの締めくくりです。プロジェクトの成果を評価し、得られた教訓を共有することで、組織全体のプロジェクトマネジメント能力向上に貢献します。

PMBOKの10の知識エリア

PMBOKの10の知識エリア

PMBOKでは、プロジェクトマネジメントを効果的に行うために、10の知識エリアを定義しています。

10の知識エリアは、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。プロジェクトマネージャーはこれらの知識を習得し、適切に適用する必要があります。

以下では、PMBOKの10の知識エリアについて解説します。

知識エリア1:統合マネジメント

統合マネジメントは、プロジェクトの各要素を調整し、全体をまとめる役割を担います。

プロジェクト憲章の作成から、プロジェクト計画の策定、実行、監視、コントロール、そして終結まで、プロジェクトの全段階を通じて、他の知識エリアを統合し、プロジェクト目標の達成を目指します。

プロジェクト全体の成功に不可欠な知識エリアです。

知識エリア2:スコープマネジメント

スコープマネジメントは、プロジェクトの範囲を明確に定義し、管理するための知識エリアです。プロジェクトに必要な作業を定義し、不要な作業を排除することで、プロジェクトの目標達成に集中します。

スコープ定義が曖昧だと、プロジェクトの肥大化や遅延につながる可能性があるため、非常に重要なプロセスです。具体的には、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成)を作成し、プロジェクトのスコープを詳細に定義します。

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知識エリア3:タイムマネジメント

タイムマネジメントは、プロジェクトのスケジュールを管理するための知識エリアです。

  • アクティビティの定義
  • 順序付け
  • 資源の見積もり
  • 期間の見積もり
  • スケジュールの作成とコントロール

を行います。

ガントチャートやクリティカルパス法などのツールを活用し、プロジェクトの遅延を防ぎ、期日内に完了させることを目指します。

知識エリア4:コストマネジメント

コストマネジメントは、プロジェクトの予算を管理するための知識エリアです。

  • 資源の見積もり
  • コストの見積もり
  • 予算の作成
  • コストのコントロール

を行います。

EVM(Earned Value Management)などのテクニックを用いて、コスト超過を防ぎ、予算内でプロジェクトを完了させることを目指します。

知識エリア5:品質マネジメント

品質マネジメントは、プロジェクトの成果物が顧客の要求を満たすように品質を管理するための知識エリアです。

  • 品質計画
  • 品質保証
  • 品質コントロール

を行います。

品質基準を明確に定義し、品質基準を満たすためのプロセスを確立し、継続的に改善していくことが重要です。

知識エリア6:資源マネジメント

資源マネジメントは、プロジェクトに必要な人的資源や物的資源を計画、獲得、管理するための知識エリアです。プロジェクトチームの編成、役割分担、育成、評価など、人的資源の最適化を図ります。

また、設備、資材、インフラなどの物的資源の調達と管理も行います。

知識エリア7:コミュニケーションマネジメント

コミュニケーションマネジメントは、プロジェクト関係者間の情報伝達を円滑にするための知識エリアです。

  • コミュニケーション計画
  • 情報の配布
  • パフォーマンスの報告
  • ステークホルダーとのコミュニケーション管理

を行います。

効果的なコミュニケーションは、プロジェクトの成功に不可欠です。

知識エリア8:リスクマネジメント

リスクマネジメントは、プロジェクトに影響を与える可能性のあるリスクを特定、分析、評価し、対応策を計画、実行、監視するための知識エリアです。

リスクを事前に特定し、適切な対応策を講じることで、プロジェクトへの影響を最小限に抑えることを目指します。

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知識エリア9:調達マネジメント

調達マネジメントは、プロジェクトに必要な製品、サービス、または結果を外部から調達するための知識エリアです。

  • 調達計画
  • 調達の実行
  • 調達のコントロール

を行います。

契約交渉やベンダー管理も含まれます。

知識エリア10:ステークホルダーマネジメント

ステークホルダーマネジメントは、プロジェクトのステークホルダー(利害関係者)を特定し、必要な情報を収集して、保管・伝達を管理するための知識エリアです。

ステークホルダーのニーズを理解し、適切なコミュニケーションを図ることで、プロジェクトの成功を支援します。

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PMBOKのプロセス群と知識エリアの関係性

PMBOKのプロセス群と知識エリアの関係性

PMBOKのプロセス群と知識エリアは、プロジェクトマネジメントを成功させるための2つの重要な要素です。プロセス群はプロジェクトのライフサイクルにおける段階を示し、知識エリアはプロジェクトマネジメントに必要な専門知識を表します。

プロセス群と知識エリアを組み合わせることで、プロジェクトの全体像を把握し、効率的な計画と実行が可能になります。

以下の表は、プロセス群と知識エリアの相互作用を視覚的に表現したものです。各プロセス群が、どの知識エリアとどのように関連しているかを示します。

これにより、プロジェクトマネージャーは、特定のプロセスを実行する際に、どの知識エリアの知識を活用すべきかを理解できます。

立ち上げ 計画 実行 監視・コントロール 終結
統合マネジメント プロジェクト憲章の作成 チームマネジメント 進捗管理
変更管理
パフォーマンス測定
成果物の引き渡し
プロジェクト完了の確認
文書の整理
プロジェクトのふりかえり
スコープマネジメント スコープ定義
WBS作成
タイムマネジメント スケジュール作成 スケジュール調整
コストマネジメント 予算作成 コスト調整
品質マネジメント 品質計画作成 品質保証 品質コントロール
資源マネジメント 資源マネジメント計画 資源の獲得
プロジェクトチームの育成・マネジメント
資源コントロール
コミュニケーションマネジメント コミュニケーションマネジメント コミュニケーションコントロール
リスクマネジメント リスク管理作成 リスク対応策の実行 リスク管理
調達マネジメント 調達計画作成 調達実行 調達コントロール
ステークホルダーマネジメント ステークホルダーの特定 ステークホルダーのマネジメント計画作成 ステークホルダーマネジメント ステークホルダーコントロール

PMBOKの注意点

PMBOKの注意点

PMBOKはプロジェクトマネジメントの強力なガイドラインですが、万能ではありません。利用する上で注意すべき点も存在します。

想定外の事態への対応は標準化されていない

PMBOKはプロジェクト管理のノウハウを標準化する一方で、想定外の事態への対応は難しい面があります。プロジェクトの成功には、リスク管理が不可欠です。

PMBOKでもリスクマネジメントは重要な知識エリアとして扱われていますが、予期せぬ問題が発生した場合、PMBOKのプロセスだけでは対応しきれないことがあります。そのため、プロジェクトマネージャーには、状況に応じて柔軟に対応できる能力が求められます。

経験や知識を駆使し、臨機応変な問題解決を図ることが必要です。

プロジェクトマネージャーの育成が必要

PMBOKを効果的に活用するためには、PMBOKの知識を持つだけでなく、実践的な経験と能力を備えたプロジェクトマネージャーの育成が不可欠です。

PMBOKは、あくまで知識体系です。PMBOKを使いこなすには、プロジェクトマネジメントに関する深い理解と、状況に応じた適切な判断力が求められます。

そのため、企業はPMBOKの知識を習得させるだけでなく、OJTや研修などを通じて、プロジェクトマネージャーとしてのスキルを育成する必要があります。チームの編成や人材の育成、物的資源の使用率の管理などもプロジェクトマネージャーの重要な役割です。

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プロジェクトマネージャーとして成長するには、PMBOKプロセス群について理解するが求められます。しかし、実際のプロジェクトでPMBOKの10の知識エリアと5つのプロセス群を管理するのは、非常に大変です。管理のために、人員や時間、コストといった資源も必要です。

また、大規模なプロジェクトになるほどステークホルダーの数も増え、その分プロジェクトマネジメントの負荷が大きくなります。

そのため、限られた資源を最大限に活用しながらプロジェクトを円滑に進めていくには、プロジェクト管理ツールの活用がおすすめです。

プロジェクト管理ツールの中でも、「Lychee Redmine」の有料プランであれば、PMBOKに関連する機能を多数ご利用いただけます。30日間の無料お試しもあるので、使い心地を確かめながら、導入を検討してみてください。

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