「プロジェクト管理にRACIチャートを取り入れたいものの、何から始めたら良いかわからない」
上記のような悩みを抱えてはいませんか。
RACIチャートは、プロジェクトにおいて、求められるタスクを達成するために、関係者の責任や役割分担を明確にする効果的な手段です。しかし、その作り方を十分に把握して活用できているビジネスパーソンはそれほど多くありません。
本記事では、RACIチャートの役割や作成方法などを解説します。活用シーンやメリット、注意点も紹介しているので、プロジェクト管理を効率化したい人にとって必見の内容です。
RACIチャートとは
RACIチャート(レイシーチャート)とは、プロジェクトを構成する各タスクについて、チーム内の誰がどのような役割で携わるのかを表形式で示したものです。RACIチャートを活用すると、プロジェクトの各段階におけるタスクの分担や責任の所在を明確にできます。
名前の由来は以下の頭文字で、表にはR・A・C・Iの役割が振り分けられます。
- Responsible(実行責任者)
- Accountable(説明責任者)
- Consulted(相談先)
- Informed(報告先)
具体的にイメージしやすいよう、以下にRACIチャートの一例を提示します。
担当者 | 佐藤 | 鈴木 | 高橋 | 山田 |
---|---|---|---|---|
要件定義 | A/R | C | – | I |
設計 | A | R | C | I |
開発 | A | C | R | I |
テスト | A | R | C | I |
また、RACIチャートは、応用情報技術者試験(AP試験)のプロジェクトマネジメントや、ITサービスマネジメントの分野で出題されることがあります。
試験対策においては、RACIチャートの各役割の定義や、プロジェクトでどのように適用するかなどを理解しておきましょう。
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RACIチャートにおけるR・A・C・Iの各役割
RACIチャートにおけるR・A・C・Iの各役割は、以下で解説する通りです。
Responsible(実行責任者)
Responsible(実行責任者)とは、タスクの実行に直接責任を負う役割を指します。タスクを誰かに割り振るのではなく、実際に遂行する人です。タスクによっては、実行責任者が以下で解説するAccountable(説明責任者)を兼任する場合もあります。
実行責任者は常に説明責任者に進捗を報告し、タスクを計画どおり完了させなければなりません。
なお、実行責任者に経験や知見がないタスクについては、説明責任者ではなく、Consulted(相談先)に相談して疑問を解消することが一般的です。
Accountable(説明責任者)
Accountable(説明責任者)とは、経営者・ユーザー・取引先などの利害関係者(ステークホルダー)に対して、タスクの進捗や、状況に関する説明を行うことに責任を負う役割のことです。担当するタスクの情報統括・整理などの管理業務も担当します。
実行責任者および説明責任者の役割は、タスクの成功に直接貢献する点でも重要です。また、責任者を明確にしておくことで、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、タスクの達成が効率化されることも期待できます。
Consulted(相談先)
Consulted(相談先)とは、タスクの実行にあたり、メンバーが円滑に業務を進められるよう支援やアドバイスを提供する役割のことです。
具体的には、実行責任者から相談があった際に、課題の全体像を把握して解決に向けたプランニングをサポートします。
Informed(報告先)
Informed(報告先)とは、タスクの進捗や状況報告を受け取る責任を持つ役割です。
相談先と報告先の違いを簡単に説明すると、タスク実行前のプランニング段階やタスク遂行中に相談を受けるのが相談先であり、業務完了後に報告を受けるのが報告先です。
基本的に、報告先はタスクの実行やサポートを直接行うことはないものの、必要に応じてタスクの進行に関してサポートや介入を行います。
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RACIチャートの活用シーン
RACIチャートの活用シーンとして、特に有効なシチュエーションは以下の2つです。
- 多くの意思決定者や専門家が携わるプロジェクトを管理するケース
- 関係者がプロジェクト期間中に複数の役割を兼任するケース
意思決定者が多かったり、多様な領域の専門家が参加したりする場合の活用をおすすめします。
また、あるタスクで成果物に関する責任を負いながら、別のタスクでは報告先を務める関係者がいるケースでもこの方法は有効です。なぜなら、誰が何を担当しているか、メンバー全員が容易に認識を共有できるからです。
RACIチャートの作り方
RACIチャートの作り方は下記の通りです。
- プロジェクトのタスクとメンバーを特定する
- メンバーにRACIの役割を割り当てる
- メンバーにそれぞれの役割を確認させる
以下では、RACIチャートを実際に作る方法・手順を3つのプロセスに分けてわかりやすく解説します。一度作ったものは、Excel(エクセル)などでテンプレート化しておくと便利です。
基本の作り方を習得し、今後にも役立てましょう。
プロジェクトのタスクとメンバーを特定する
まず、対象となるプロジェクトの進行に必要なタスクをすべてリストアップします。各種タスクは、目標達成に必要な具体的な作業や、関連する意思決定などを明らかにする必要があります。
次に、そのプロジェクトに関与するメンバーを特定しましょう。ここまでの情報を集約すると、タスクの内容を縦軸に、メンバーを横軸に配置した、マトリックス形式の表を作成できるはずです。
メンバーにRACIの役割を割り当てる
続いて、作成したマトリックスの横軸に配置されたそれぞれのメンバーに対して、RACIのいずれかの役割を振り分けます。これにより、各タスクに関与するメンバーの役割を明確にできます。
なお、一つのタスクに対して、一人のメンバーに複数の役割を兼任させることも可能です。また、タスクの内容によっては、役割を振り分けられないメンバーがいることもあります。
メンバーにそれぞれの役割を確認させる
最後に、メンバーや関係者と共有し、役割や責任に関する認識が合っているか確認します。必要に応じて修正や調整を行い、すべての関係者が合意できるようにしましょう。
プロジェクトが進行する過程で、新たなタスクが発生したり、メンバーが変更されたりする場合もあります。その際は、RACIチャートの情報を随時更新し、役割や責任の適切な維持・管理が大切です。
以上の手順に沿って作成すると、タスクの効率的な進行やチーム内のコミュニケーション改善などにつながります。
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RACIチャートを活用するメリット
RACIチャートを活用するメリットは、下記の通りです。
- プロジェクト内でメンバーの責任が明確になる
- スケジュール策定がしやすくなる
- 必要な人材を確保しやすくなる
以下では、RACIチャートを活用するメリットとして代表的な3つの内容をピックアップし、順番にわかりやすく解説します。
プロジェクト内でメンバーの責任が明確になる
RACIチャートを活用すると、各メンバーの役割や責任を明確に定義でき、誤解・混乱・重複などのトラブル発生リスクを最小限に抑制できます。
さらに、役割や責任がはっきりすることで、メンバーが自分のタスクに集中できる環境作りが可能です。加えて、チーム内で誰が何を担当しているのかが視覚的にわかりやすくなるため、メンバー間のコミュニケーションが円滑になり、業務効率の向上にもつながります。
スケジュール策定がしやすくなる
WBSを用いてスケジュール策定をする際、RACIチャートを使うと作業をスムーズに進められます。
WBSとはWork Breakdown Structureの略で、作業分解構成図と訳されます。プロジェクト管理に用いられるツールで、タスクを洗い出して細分化・構造化し、プロジェクトの全体像を可視化できるものです。
WBSの作成に必要なタスクを洗い出す際、RACIチャートを使うと、誰がどのタスクをこなすのかを容易に把握できます。
これにより、各メンバーに担ってもらう役割を想定できることが利点です。メンバーへのタスクの振り分けがしやすくなり、スケジュール策定も容易になることが期待できます。
必要な人材を確保しやすくなる
あらかじめRACIチャートを作成しておくことで、WBSの作成およびスケジュール策定を行う前に、アサイン予定のメンバーに対し、想定している役割について事前に認識を共有できます。
早い段階でアサイン予定のメンバーと役割の認識を合わせることで、WBSの作成およびスケジュール策定前にスキルのミスマッチを防ぐことが可能です。これにより、必要な人材確保など、次のステップへの移行をスムーズに行うことができます。
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RACIチャートを活用する際の注意点
RACIチャートを活用する際の注意点は、下記の通りです。
- RACIを担わないメンバーの役割は可視化できない
- 情報の詳細を記載しにくい
- タスクの変更に対応しにくい
活用すると、様々なメリットが期待できる一方で、少なからず注意点もあることを以下で把握しておきましょう。
RACIを担わないメンバーの役割は可視化できない
RACIチャートでは、RACIを担わない担当者の役割は可視化できません。なぜなら、プロジェクトにはRACIの担当者以外にも多数の人が携わりますが、メンバー全員を対象にしているわけではないからです。
プロジェクトに携わるすべてのメンバーの関係性は判断できない点を把握しておきましょう。
情報の詳細を記載しにくい
RACIという4つの役割のみでタスクの業務と責任の範囲を決めるため、タスクに関する情報の詳細を記載しにくい点もデメリットと言えます。
とはいえ、業務範囲と責任範囲を詳細に決めておかないと、特定のメンバーに過大な責任を負わせてしまいかねません。そこで、別途補足資料を設けることで、各役割の作業内容・責任の範囲などに関する内容を補うことをおすすめします。
タスクの変更に対応しにくい
RACIチャートは、プロジェクトの役割と責任を明確にするために有用ですが、タスクの変更に対応しにくいという課題があります。なぜなら、RACIチャートが一度設定されると、その役割と責任が固定されがちだからです。
プロジェクトの進行中にタスクの内容や範囲が変更される場合、RACIチャートの更新が必要です。更新作業には一定の手間がかかりますが、タイムリーに行われないと、関与するメンバーが最新の役割を把握できず、混乱や責任の曖昧さが生じる懸念があります。
そのため、RACIチャートを運用する際には、定期的な見直しと柔軟な対応スキルが重要です。また、変更管理プロセスを明確にし、変更が発生した際には迅速に対応するための体制を整えることが求められます。
RACIチャートに関するよくある質問
以下では、RACIチャートに関するよくある質問をピックアップして解説します。
RACIチャートにおけるRとAの違いとは?
RACIチャートにおけるRとAの違いとは、Rは「実行する人」、Aは「最終的な責任を持つ人」という定義の違いです。
R(実行責任者)は、タスクや活動の実行に直接関与する人やチームを指します。具体的には、実際に作業を行う役割を担い、タスクが完了するまでの責任を負います。複数の人がRとして指定される場合もありますが、誰が何をするかを明確にすることが重要です。
一方でA(説明責任者)は、タスクや活動の最終的な結果に対して責任を持つ人を指します。
Aの役割を担う人は、タスクが適切に完了するかどうかの最終判断を下し、結果に対する説明責任を持ちます。通常、Aは1人に限定され、その人が意思決定権を持ちます。
スムーズなプロジェクト進行のためには、この二つの役割を明確に区別し、それぞれに適切な人を割り当てることが重要です。
RACIチャートとRASICチャートの違いとは?
RACIチャートとRASICチャート(レイシックチャート)の違いは、Supportive(支援者)の有無です。RACIチャートは4つの役割を定義しますが、RASICチャートには5つ目の役割が追加され、タスク実行の支援を行う人を明確にします。
支援者はR・A・C・Iに対して支援を提供する役割を担います。必要に応じてリソースやアドバイスを提供し、タスクの達成をサポートする存在です。支援者の役割を定義すると、チーム間の協力やリソースの効率的な活用の促進が期待できます。
どのチャートを使用するかは、プロジェクトの性質や組織のニーズなどを踏まえて選択しましょう。
RACIチャートを使ったプロジェクト管理にはLychee Redmine
RACIチャートとは、特定のプロジェクトの各タスクについて、チーム内の誰がどのような役割で関わるかを表形式で示したものです。
うまく活用すると、プロジェクトの各段階におけるタスクの分担や責任の所在を明確にできます。ただし、RACIチャートには情報の詳細を記載しにくい、タスクの変更に対応しにくいなどのデメリットがあります。特に、プロジェクトの進行中に変更が頻発する環境では、最新情報のタイムリーな共有が困難です。
そこで、RACIチャートを効果的に活用するために、プロジェクト管理ツールの導入をおすすめします。Lychee Redmineはリアルタイムでプロジェクトの状況を把握でき、7,000社以上の企業が導入しているツールです。
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