WBSは、プロジェクト達成に必要なタスクを分解して細かく抽出・整理をするプロジェクト管理手法です。
WBSを実施すれば、タスクが明確になる、スケジュール管理がしやすくなる、などの効果が得られるため、プロジェクトの進捗管理には欠かせない手法といえます。
しかし「WBSは必要と聞くのでぜひ導入したいが、メリットや具体的な作成方法がわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、WBSについて詳しく知りたい方にむけ、WBSの概要やメリット、作成方法について解説します。
WBSを運用する上での注意点やコツも解説するので、ぜひ参考にしてください。
WBSとはどのような意味か
WBSとは「Work Breakdown Structure」の略で、日本語では「作業分解構成図」といいます。
プロジェクト管理に用いられるツールで、業務の遂行に必要な作業を分解して構造化することで、作業の効率を上げるための図です。
例えば、「カレーライス」を作るとしましょう。
その際に必要なタスクは大きく分けると以下の4つです。
- 材料の調達
- 下ごしらえ
- 調理
- 盛り付け
上記の内「材料の調達」をさらに細かく分解すると、次のようなタスクが必要なことがわかります。
- カレールーを用意する
- ライスを用意する
- 牛肉を用意する
- にんじんを用意する
- たまねぎを用意する など
ほかにも「下ごしらえ」や「調理」などの他のタスクも細かい作業に分解すると、さらに多くのタスクが構造化されます。
このように、WBSでは、あらかじめタスクをすべて洗い出し細分化・構造化することで、プロジェクトの全体像を可視化させます。
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ITビジネスにおけるWBSの特徴
WBSの特徴は、大きなタスクから小さいタスクになるまで分解を繰り返していく「階層構造」にあります。
階層構造で徐々にタスクを抽出する方法は、システム開発をはじめとしたIT関連のプロジェクト管理にも適しており、プロジェクトにおいてWBSを活用する企業も少なくありません。
特に中規模以上のプロジェクトは、達成に必要なタスクも膨大となり抜け漏れも発生しやすいです。
そのため、WBSを用いずにタスクを抽出すると、急なタスクの追加によってプロジェクトの遅延や停滞が発生しやすくなり、最悪の場合、プロジェクトの遅延や品質の低下などの事態が発生する可能性が高まります。
半世紀以上の歴史をもつWBSは、大小を問わず多くのプロジェクトにおけるタスクを明確にしてきました。
WBSを作成することは、プロジェクトを堅実に進めるために必要なさまざまなメリットがあります。
WBSはプロジェクト管理でどのように役立つか
プロジェクト管理でWBSを作成すれば、次のように役立ちます。
- タスクが明確になる
- 役割分担ができる
- スケジュール管理ができる
- チーム内に共通認識が生まれる
- 各作業の関係性がわかる
それぞれの効果について詳しく解説するので、参考にしてください。
タスクが明確になる
WBSを作成すればタスクは明確になります。
本格的にプロジェクトを始動させる前段階で、必要なタスクのすべてを洗い出すからです。
さらに、抽出された作業は階層構造になっています。
構造化によってタスクの漏れが防げるだけでなく、作業の具体性は増していきます。
何をやるべきか最初に判明していれば、後は一つひとつの作業をこなしていくだけですよね。
プロジェクトにかかわらず、WBSを作成して「やるべきこと」をはっきりさせましょう。
役割分担ができる
WBSによって整理されたタスクには、担当者を割り振ります。
すべての作業が洗い出されているため、負担が偏らないように役割分担ができますね。
ポイントは、同じ階層・グループにあるものを、なるべく少人数で担当するということです。
並列になっている類似したタスクを大人数で分けてしまうと、効率が悪くなります。
スケジュール管理ができる
スケジュール管理に関しても、WBSは役立ちます。
なぜなら、タスクが細分化されていることで、それぞれの作業にかかるリソースがわかりやすくなるからです。
WBSにくわえて、ガントチャートのようなスケジュール管理ツールを併用すれば、より詳細に計画を立てることもできます。
プロジェクトを計画通りに進行させるには、WBSで作業を整理するといいでしょう。
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チーム内に共通認識が生まれる
WBSを作成しチーム全体で共有していれば、メンバー全員が作業の全貌を把握できます。
チーム内に共通の認識が生まれることで、同じ方向性でプロジェクトを進められます。
タスクの明確化によりプロジェクトの目的を統一しチームに一体感を生むためにも、WBSの作成はおすすめです。
各作業の関係性がわかる
WBSによって構造化されたタスクは、それぞれの関係性がわかりやすくなります。
並行可能な業務はもちろんですが「このタスクが終わらないと、こちらの作業は進められないな」ということもわかるため、優先順位も明確になります。
WBSによってタスクの前後関係をはっきりさせると、作業効率が上がりますよ。
WBSを作成する4ステップ
WBSのメリットを最大限に活かし、デメリットをできる限り抑えるためにも、作成手順を学んでおきましょう。
ステップ1:タスクを洗い出す
まずは、プロジェクトに必要なすべてのタスクを洗い出しましょう。
作業の抽出が不十分だと、プロジェクトの進行に支障をきたします。
漏れのないように、細かい作業でも洗い出すことが大切です。
プロジェクトをフェーズごとに分けたり、中間目標となるマイルストーンをいくつか設定したりすると、作業を細分化しやすいですよ。
ステップ2:作業の順序を決める
すべてのタスクが判明したら、順序を決めます。
タスク間の関係性を意識しながら検討しましょう。
例えば、「カレーライス」を作るというプロジェクトがあったとします。
「下ごしらえ」や「調理」といった作業は、「材料の調達」の後でないとできません。
優先度合いや前後関係に注意して、順番を考えましょう。
ステップ3:タスクを構造化する
タスクを洗い出した段階である程度、階層構造になっているかもしれませんが、改めて分解した作業を構造化しましょう。
構造化するとは同じレベルの作業をまとめ、その下にさらに細かな同程度のタスクを並べることです。
つまり、親となるタスクの下に、親要素の達成に必要な子要素を並べることになります。
子要素のすべてをあわせると、親要素が満たされるかどうかを意識しながら構造化しましょう。
ステップ4:担当者を決める
最後に、どの作業を誰が行うのかを決めます。
基本的には、ひとつのタスクにひとりの担当者を割り当てます。
責任の所在を明らかにするためです。
各プロジェクトメンバーの能力を考慮して、適材適所に担当を配置しましょう。
WBS作成のコツ
WBSを効率よく、かつ丁寧に作成するにはコツがあります。
順に確認しましょう。
プロジェクトの目的を意識する
WBSの作成時はタスクを洗い出す前に、プロジェクトの目的を再確認しましょう。
なぜなら、作業の細分化に欠かせないマイルストーンや大きなタスクの洗い出しは、プロジェクトの目的をもとに行うからです。
どこに向かってスタートすればいいかわからなければ、作業を分解しようがありませんよね、
プロジェクトのゴールを明確にしたうえで、WBSを作成しましょう。
すべての作業を洗い出せているか複数人で確認する
WBSの作成は、管理者ひとりでは行わないようにしましょう。
WBSの目的はタスクの漏れを防ぐことです。
しかし、大規模プロジェクトではひとりですべての作業を洗い出し、WBSを作成することは困難です。
見落としのないように複数人で確認しながら、すべての作業を抽出しましょう。
WBSの作成メンバーは、役割の異なる人員で行うと多角的な視点でチェックできます。
また、WBS完成後にも個々の担当者に確認を依頼すると、より漏れが少なくなりますよ。
プロジェクト管理ツールを利用する
プロジェクト管理ツールを活用すれば、WBSの作成効率やスケジュール管理の精度は高まります。
プロジェクト管理ツールには、タスクの洗い出しを補助するものやWBSによって分解した作業をスケジュールに落とし込める機能が備わっているからです。
「大規模なプロジェクトでスケジュール管理が大変」
「WBSを最大限活用したい」
上記のように考えている場合は、プロジェクト管理ツールを導入してはいかがでしょうか。
WBS作成時の注意点
プロジェクト管理を大きくサポートするWBSですが、作成時における注意点も存在します。
次に解説する注意点を把握したうえで作成すれば、よりスムーズなプロジェクト進行が可能です。
作成に時間を要する
WBSを作成するには、それなりの時間が必要です。
特に大規模プロジェクトでは、すべてのタスクを細分化すると膨大な量になるため時間がかかります。
タスクの洗い出し不足やトラブルにより、新たな作業が生まれることも珍しくありません。
計画に変更が生じる度にWBSを更新しなければならず、手間がかかります。
また、WBSが完成しなければ、プロジェクトを進行させることはできません。
ひな形を作ったり、プロジェクト管理ツールを活用したりして効率をよくし、WBSの早期完成を目指しましょう。
プロジェクト後半の作業を予測しにくい
プロジェクト初期のタスクは想定しやすいのですが、後半の作業になればなるほど、どのような業務が必要になるか予測しにくいものです。
特に、クライアントがイメージする成果物が抽象的な場合や、初めて取り組む要素の多いプロジェクトは要注意です。
情報不足から、タスクをすべて想定することは難しくなります。
不明確なタスクがある場合には、無理に作業を細分化しないことが大切です。
プロジェクト進行中に少しずつ、タスクを洗い出しましょう。
WBSと合わせて使うと生産性が上がるツールの紹介
WBSとあわせて使うと生産性が上がるプロジェクト管理の手法を次の3つ紹介します。
- チケット関連図
- ガントチャート
- マインドマップ
それぞれについて詳しく解説します。
1. チケット関連図
チケット関連図はプロジェクト管理ツールである「Lychee Redmine」に搭載されている機能です。
Lychee Redmineをはじめ、いくつかのプロジェクト管理ツールにおいては、タスクを可視化や編集のしやすい「チケット」という形で管理しています。
チケット関連図は、該当するプロジェクトにかかわるチケットの親子関係を画面上にすべて表示するもので、使用によってタスクに抜け漏れがないかを直感的に把握可能です。
WBSは、タスクが縦に一覧で表示されることが一般的です。
そのため、タスクの量が増えると確認しにくくなる点もありますが、チケット関連図を利用すれば、そういった抜け漏れも防止しやすくなります。
フリープランは基本機能(ワークフロー・通知設定・ファイル共有・Wiki)とカンバン機能の限定された機能しか利用できませんが、有料プランはガントチャートをはじめすべての機能が利用できます。
有料プランは30日間の無料トライアル期間を提供しています。無料期間終了後も自動課金されることもないためリスクなく始められ、その価値を実感できるはずです。
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2. ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクト管理するために使用される表です。
WBSによって抽出したタスクに時間軸のグラフつけて作成することが一般的で、作成によりスケジュールやタスク進捗の可視化や共有が可能となります。
WBSは、プロジェクト達成に必要なタスクの抽出には向いていますが、プロジェクト開始後の進捗管理や、タスク間の依存関係の把握には向いていません。
そのため、WBSとあわせてガントチャートを作成することで、タスクの抜け漏れを防ぐだけでなく、進捗管理も行えるようになります。
3. マインドマップ
マインドマップは頭の中の情報を図で表すための手法です。
具体的には、プロジェクトにおける成果物など、メインとなる事象からつながりのある事柄を放射状に展開し思考を可視化していきます。
頭の中だけで情報を整理しながらWBSを作成した場合、思考が整理しきれずタスクの抜け漏れが発生しやすくなります。
WBSの作成前にマインドマップを用いて思考を整理しておけば、より精度の高いWBSが作成可能となるでしょう。
WBSと組み合わせると生産性の向上が見込めるツール
WBSと組み合わせると生産性の向上が見込めるツールを次の2つ紹介します。
- カンバンボード
- タスク管理ツール
それぞれ詳しく解説します。
カンバンボード
カンバンボードは、作業やタスクを可視化しタスクの進行を管理する手法で、アジャイル開発の管理などに使われています。
カンバンボードを使用すれば、プロジェクト全体のタスクや、各メンバーのリソースが適切かどうかが視覚的に把握できます。
その結果、全メンバーに適切にタスクを割り振れるようになるため、チーム全体の生産性向上につながります。
例えば「Lychee Redmine」が備えるカンバン機能では、メンバーの負荷状況を全員がリアルタイムに把握できます。
そのため、手の空いているメンバーは、負荷状況に応じて他メンバーのタスクを引き継げるので、プロジェクトの停滞を未然に防ぐことが可能です。
タスク管理ツール
タスク管理ツールは、タスク管理をはじめスケジュール管理やリソース管理など、プロジェクト進行をサポートする機能を備えたツールです。
例えば、タスク管理ツールの1つである「Lychee Redmine」には、タスク管理やガントチャート、タイム・リソースマネジメントなど、プロジェクトをサポートする多くの機能が備わっています。
また、操作性もよくサポート体制も充実しているため、ツール操作に不慣れな人であっても安心して利用できます。
WBSを有効活用してプロジェクトを成功させよう
作業分解構成図であるWBSはプロジェクトのタスクをすべて洗い出すことで、作業の見落としを防ぎます。
タスクが明確になったりスケジュール管理ができたりと、多くのメリットがあります。
しかし、WBSの運用には時間がかかるというデメリットも。
WBSをうまく活用するには、プロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。
プロジェクト管理ツールの中でも「Lychee Redmine」の有料プランであれば、WBSの効果を高めるチケット関連図やガントチャートといった機能があります。
WBSを扱う場合は、ぜひLychee Redmineの導入も検討してみましょう。