会社で行うプロジェクトを成功させるためには、その進行状況をきちんと管理することが重要です。

業務内容や使えるリソースを整理し、適切に分担することで、プロジェクトをスムーズに進められるようになります。
反対に、整理・分担がうまくいかないと、プロジェクトはつまずきやすくなるでしょう。

そこで役立つのが、「ベースライン」です。

ベースラインを使うと、プロジェクトに関わるさまざまな要素を一目で確認できます。
これにより、プロジェクトの進行状況が分かりやすくなり、成功に近づくでしょう。

本記事ではベースラインとは何か、どのような種類を活用・設定するのかなどを分かりやすく説明します。

ベースラインとは

一般的に「ベースライン」とは「基準線」を示す言葉であり、音楽業界では低音の楽器パートまたはラインを表す言葉でもあります。

これに対して、プロジェクト分野でのベースラインとは、決裁者や顧客などから許可を得た、成果物を完成させるための具体的な計画・要件のことです。

プロジェクトでは、進行途中で要件・条件が変わることがよくあります。
このような変更をうまく管理するために、最初にベースラインを設定します。

そして、その基準との差異を確認しながらプロジェクトを進めていくことで、効果的に進行状況を監視し、コントロールすることが可能です。

PMBOKの定義

PMBOKでは、ベースラインを「作業プロジェクトのうち承認が済んでいるバージョン」と定義しており、「正式な変更管理手続きを踏んだ場合に初めて変更が認められるもので、実績値との比較基準として用いられるもの」と説明しています。

なお、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクト管理についての知識が体系的にまとめられたガイドブックのようなものです。
通称、「ピンボック」と呼ばれています。

このガイドは、プロジェクトマネジメントの教育と普及を目指すアメリカの非営利団体「PMI」によって作成されました。
現在では、PMBOKは世界中のプロジェクトマネジメントの標準ガイドとされています。

ISO21500の定義

ISO21500では、ベースラインを「モニタリング・管理される、プロジェクト・パフォーマンスと照らし合わせて比較するための参照基準」と定義しています。
つまり、プロジェクトの進行具合を評価し、調整するための基準であると捉えています。

なお、ISO21500とは、プロジェクトマネジメントに関する国際標準のことで、国際標準化機構(ISO)が発行した規格です。
この規格では、一般的なプロジェクトマネジメントの手法とともに、実践的なアドバイスや最良の実践方法も提供されています。

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ベースラインのタイプと活用ケース

特に重要なものとして、4種類のベースラインがあります。
本章では、これら4つがどのような特徴を持ち、どのような場面で使用されるのかを順番にご説明します。

1.スコープベースライン

プロジェクトの範囲を明確にし、目標と成果をはっきりさせるために作成するものです。
これには、主要な目標や必要な成果物の一覧が含まれます。

「プロジェクト範囲の記述書」「作業分解構造(WBS)」「WBS辞書」などを作成するうえで重要であると考えられています。
WBSとは、プロジェクトの各作業を小さな部分に分け、それらを階層的に管理する方法のことです。

2.スケジュールベースライン

プロジェクトが予定どおりに進行しているかをチェックするための指標のことです。
プロジェクト全体の時間枠を示し、その計画の全体像を理解するために利用されます。

プロジェクトの予定そのものとして扱われており、「プロジェクト管理計画」の作成にも役立ちます。

ここでいうプロジェクト管理計画とは、進行方法や監視手段、制御の仕方、プロジェクトをどのように終結するかなどについて明記されたドキュメントのことです。

3.コストベースライン

進行中のプロジェクトの費用状況をチェックするための基準となるものです。

プロジェクトの進行は大まかに「立ち上げ」「計画立案」「実行」「監視・コントロール」「終了」の5段階に分けられますが、このうちコストベースラインは「計画立案」の段階で設定されます。

4.パフォーマンス測定ベースライン(PMB)

これまでに紹介した3つのベースラインをすべて統合したものを指します。

PMBを利用すると、一つの要素の変化が他の部分にどのような影響をもたらすのかを効率的に監視・調整できるようになります。
そのため、プロジェクト全体の進行状況を見極めて適切に管理するうえで、PMBは有用です。

例えば、プロジェクトの進行スケジュールが遅れてしまったとき、その遅れが予算面にどのような影響を及ぼすかをすぐに理解できるようになります。

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ベースラインを活用する意義・メリット

本章では、ベースラインを活用する意義・メリットとして代表的な3つの項目をピックアップし、順番に解説します。

プロジェクトのパフォーマンスをチェック・調整する

ベースラインは、プロジェクトの進行状況を評価するための基準点となります。
作業が進行する中で、もともと設定していたベースラインと実際の進捗状況を比較することが可能です。

これにより、プロジェクトの範囲・時間計画・予算が目標通りに達成されているか(あるいは目標からずれているか)などを把握し、早期に問題を修正できるようになります。

具体的には、事前に設定したパフォーマンス測定ベースラインと、実際の進行状況を比較することで、どの程度進んでいるのか、どのような状況にあるのかを的確に理解することが可能です。

ステークホルダーと情報共有を行う

スコープ・スケジュール・コストという3つの側面のベースラインを同時に活用することで、ステークホルダーは「これらの要素の変更がプロジェクトの成功にどの程度影響を及ぼすのか」を容易に理解できるようになります。

これにより、予定外の要求を制限し、計画外の作業拡大を防ぐ効果が期待できます。

今後の予測精度を高める

プロジェクトが終わった後、実際の結果をベースラインと比べることで、最初の予測がどの程度正確だったかを確認できるようになります。

これにより、例えば、予算を計算する際に見落としていたコスト・時間がかかりすぎたタスク・無駄になった作業など、次回の計画を改善するための情報を得ることが可能です。

実際の結果と予定を比較分析することで、予想よりも良かった点・悪かった点を明らかにできます。
この教訓をもとに、次回の計画をより正確に立てられるようになるでしょう。

例えば、今回のプロジェクトにおいて、チームメンバーの急な欠勤により納期が1週間遅れたケースを想定します。
この経験からは、予想外の欠勤に対応できるよう、プロジェクトのスケジュールには余裕を持たせておくべきだという教訓が得られるでしょう。

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ベースラインを設定する方法

プロジェクト管理計画を適切に作るためには、ベースラインを設定することが重要です。
本章では、その設定方法を分かりやすく6つの手順に分けて説明します。

1.スコープの設定

まず、プロジェクトのスケジュールや予算に影響を与える要素となる「スコープ」のベースラインを設定します。

具体的な手順としては、まずプロジェクトで完成させるべきすべての成果物をリストにまとめます。
そして、それぞれの成果物を実行可能な副成果物に分ける流れです。

具体例をあげると、「就職イベントを開催する」という成果物は以下のような副成果物に分けられます。

  • イベント会場を予約する
  • ケータリングサービスを予約する
  • ゲスト講演者を決定する
  • リマインダーメールを送信する

さらに分かりやすくするためには、成果物や副成果物を視覚的に整理するための「WBS(作業分解構成図)」を作ることも望ましいです。

WBS(作業分解構成図)では、プロジェクトのタスクをいくつかのレベルに分けて記載します。
一番上のレベルには大きな目標を置き、その下のレベルにはその目標に寄与する成果物や部分成果物を配置するという流れです。

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2.スケジュールの策定

次に、スケジュールベースラインを設定します。
このときには、各成果物や部分成果物に具体的な完成期限を設け、さらにプロジェクト全体が完了する期日も決めます。

具体的かつ現実的な期限を設定し、タスクの間にどのようなつながりや順序があるかもはっきりさせましょう。

例えば、先の「就職イベントを開催する」という成果物のケースを想定すると、リマインダーメールを送る前に、ゲスト講演者のリストを作り終えておく必要があるといった具体的な進行順を設定することが望ましいです。

3.予算計画の策定

続いて、コストベースラインを作ります。

具体的な作成手順としては、まずプロジェクトで作り出す成果物やその部分成果物に必要な資源を一覧にします。
そして、それぞれの資源にどれだけの費用がかかるかを見積もる流れです。

最終的な予算表には、各成果物や部分成果物に関する費用項目・必要な資源・その見込み費用を含めます。
また、いつその資源が必要となり、いつ費用がかかるのかを示す時間軸も準備しましょう。

さらに、それぞれの費用項目の責任者とプロジェクト全体でどれだけの費用がかかるかの合計額も書き加えることが望ましいです。

4.変更管理プロセスの決定

ここまでで3つのプロジェクトベースラインを決めたら、変更管理プロセスを策定し、チーム・ステークホルダーから変更をリクエストされた際に、どのように対応するかについて説明します。

これにより、プロジェクト途中におけるチーム・ステークホルダーからの変更提案に対してスムーズに対応できるようになります。

変更管理プロセスは、基本的に以下の流れで進めます。

  1. ステークホルダーが変更リクエストフォームを送信し、変更の重要性に関する情報を提供する
  2. プロジェクトリーダーや部署のリーダーがリクエストの詳細をチェックし、必要なリソースやリクエストのもたらす影響を考慮した後に、リクエストの担当者を決める
  3. プロジェクトリーダーがリクエストを承認するか、拒否するかを判断する
  4. リクエストが承認された場合、ステークホルダーと協力して変更を行う
  5. リクエストを終了し、すべての文書・変更ログ・コミュニケーションをステークホルダーが容易にアクセス可能な共有スペースに保存する

5.ステークホルダーのフィードバックを反映

主要なステークホルダーに対してプロジェクトのベースライン案を示しましょう。
ステークホルダーからの意見・提案をもとに、正式な基準を作り上げます。

このステップは、自身と他の関係者がプロジェクトのスコープ・スケージュール・コストについて理解を共有するために非常に重要です。

6.必要に応じて変更

プロジェクトのベースラインを変更すること自体は可能ですが、頻繁な変更はおすすめできません。
頻繁に変更すると、その存在意義が希薄になってしまうためです。

そのため、変更は本当に必須な状況のみに実施すべきです。
ベースラインを変更すべきケースとしては、例えばチームメンバーが離れてしまい、新たに役割を割り当てる必要が出たときなどが考えられます。

ベースラインはあくまでも目標を示すもので、結果が完全に一致しなくても問題ありません。
スコープ・スケジュール・コストの目標が若干外れても、他の領域でその差を埋められれば、ベースラインを変更する必要はないのです。

例えば、プロジェクトのスコープが広がったとしても、予算や時間を他の領域で節約できれば、全体の基準を見直す必要はありません。

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ベースラインを設定する際はプロジェクト管理ツールの導入がおすすめ

ガントチャートの使いやすさで選ぶならLychee Redmine

ベースラインの設定はプロジェクト管理に必要不可欠ですが、慣れていない方にとってはハードルの高い作業だといえます。そのような方におすすめなのが、プロジェクト管理ツールの活用です。

プロジェクト管理ツールには、ガントチャートをはじめベースラインの作成に役立つ機能が備わっています。プロジェクト管理ツールを活用すれば、未経験者でもベースラインを容易に作成できるようになるでしょう。

また、ステークホルダー全員が容易にベースラインにアクセスし確認できる状態を整えるうえでも、プロジェクト管理ツールの導入は効果的です。

プロジェクト管理ツール選びでお悩みであれば、Lychee Redmineの導入をおすすめします。

Lychee Redmineには、プロジェクトの全体像を把握するためのガントチャート機能やコスト管理機能など、ベースラインの設定・運用に役立つ機能が豊富に搭載されています。

無料プランは基本機能(ワークフロー・通知設定・ファイル共有・Wiki)とカンバン機能の限定された機能しか利用できませんが、有料プランはガントチャートをはじめさらに多くの機能が利用できます。

有料プランは30日間の無料トライアル期間を提供していますので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

プラン 月額料金 利用機能
フリー 無料
  1. 基本機能
  2. カンバン
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  1. 基本機能
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  3. カンバン
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  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
  5. 工数リソース管理
  6. EVM
  7. コスト管理
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  1. 基本機能
  2. ガントチャート
  3. カンバン
  4. ダッシュボード
  5. 工数リソース管理
  6. EVM
  7. コスト管理
  8. CCPM
  9. プロジェクトレポート
  10. カスタムフィールド
  11. チケット関連図
  12. グループの階層化機能

ベースラインを設定しプロジェクト管理を効率化しよう

プロジェクトにおけるベースラインとは、プロジェクトの決裁者や顧客などから許可を得た、成果物を完成させるための具体的な計画・要件のことです。

プロジェクトのパフォーマンスをチェック・調整したり、ステークホルダーとの情報共有を行ったりするうえで大いに役立ちます。

ベースラインの設定・運用をスムーズに行いたい場合、プロジェクト管理ツールの導入を検討しましょう。

最もおすすめのプロジェクト管理ツールは、誰にでも扱えて、ベースラインの設定・運用に必要な機能が豊富に備わっている「Lychee Redmine」です。

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