「計画通り進んでいたはずなのに、プロジェクト終盤で遅れが発覚した」
「プロジェクトは完了したが、想定以上にコストがかかった」
上記のような問題は、EVMによるプロジェクト管理で解決できるかもしれません。
今回は、EVMによるプロジェクト管理について解説します。
おすすめのプロジェクト管理ツールも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
EVM(Earned Value Management)はプロジェクト管理手法のひとつ
「Earned Value Management」の略称であるEVMは、プロジェクト管理手法のひとつです。
計画段階での予算や実際にかかったコストなどを考慮し、プロジェクトの進捗状況を数値で分析します。
EVMは1960年代にアメリカで生まれた概念です。
日本では2000年代に入ってから活用されはじめ、プロジェクトのパフォーマンス改善に活用されています。
プロジェクトを客観的に管理するためには、「時間」だけでなく「コスト」も指標にして進捗を判断できるEVMがおすすめです。
EVMで改善できる従来のプロジェクト管理の問題点
EVMは従来のプロジェクト管理手法と比べて、何がすぐれているのでしょうか。
まずは、以前から使われているプロジェクト管理手法の問題点を把握しましょう。
報告基準があいまいでメンバーの主観に左右される
従来のプロジェクト管理手法には「報告基準がプロジェクトメンバーによって異なる」という問題点があります。
例えば、担当者に進捗を尋ねると「予定より少し遅れています」という返答があるとします。
「少し」という表現は主観であり、具体的にどの程度遅れているのかわかりません。
正しい進捗を把握するため、プロジェクトマネージャーは再度、状況を確認する必要があります。
しかし、もう一度進み具合を聞いたとしても、進捗をはかるための客観的な基準がなければ定量的に現状を伝えるのは難しいでしょう。
WBSだけではコストや作業量を評価できない
WBSとは「Work Breakdown Structure」の略で、プロジェクトに必要なタスクを洗い出すために用いられます。
プロジェクト管理にWBSを用いること自体は有効な手段です。
しかし、WBSだけではプロジェクトにかかっている作業量やコストまでは評価できません。
さまざまな指標から現状の進捗を計算し客観的な判断をくだすには、EVMによるプロジェクト管理が必要です。
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プロジェクト管理にEVMが適している理由
EVMはプロジェクトの進捗状況をより正確に把握し、プロジェクトの成功につなげるために役立ちます。
では、EVMでプロジェクト管理をおこなうと具体的にどのようなメリットがあるかをご紹介します。
計画と実績を可視化できる
プロジェクトが完了したとしても、予算をオーバーしていたり納期に遅れてしまったりといったミスがあれば、成功したとはいえないでしょう。
失敗の原因はプロジェクトのスケジュールばかりに意識が向き、正確に状況を把握できていないからかもしれません。
EVMを用いれば、計画と実績の見える化が可能になり、コスト管理とスケジュール管理を両立させることができます。
- 計画予算
- 出来高
- 実際のコスト
上記のような指標から、現状の進捗を計算できるようになります。
計画と実績の差異が明らかになり、従来の管理方法よりも合理的に意思決定をおこなえる点が、EVMのメリットです。
数値で進捗を判断できる
プロジェクト管理に時間とコストという2つの基準を設けることで、より客観的な進捗の把握をおこなえます。
従来の管理方法にはない「コスト」という指標が加わっているため、生産性を正確に判断できるからです。
また、将来予測の精度も高まり、プロジェクトをより成功に導きやすくなります。
何かトラブルが起きても、コストとスケジュールの差異を計算することが可能です。
プロジェクトの影響を最小限に抑えられます。
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プロジェクト管理には現状の把握が重要!EVMの計測値4つ
EVMには多くの指標があります。
基本となる4つの計測値を紹介するので、順に確認しましょう。
①PV
PVとは「Planned Value」の略であり、日本語に訳すると「計画予算」です。
プロジェクトの計画段階で設定された予算のうち「ある時点までに達成すべきタスクの予算コスト」を意味します。
例えば、予算の総額が200万円で、納期が6ヶ月のプロジェクトに取り組むとします。
必要な作業を月ごとに均等に振り分けると、プロジェクト開始3ヶ月で完了すべきPVは全体予算200万円の2分の1にあたる100万円です。
②EV
「Earned Value」の略であるEVは「出来高」のことです。
特定の時点で終了している作業の「計画予算の合計値」を指します。
現時点における成果の実績値を示す重要な指標です。
予算の総額が200万円、半年間のプロジェクトで3ヶ月が経過したときに進捗が全体の40%だとしましょう。
出来高であるEVは、200万円の4割である80万円です。
③AC
「実コスト」を指すACは「Actual Cost」の略称です。
「ある時点までに実際に費やしたコストの合計値」をACと呼びます。
スケジュール通りにプロジェクトが進んでいれば、ACはPVと同じ値になります。
④BAC
BACは「Budget at Completion」の略です。
「プロジェクトにかかる予算の合計値」で、計画段階に算出します。
変わることのない数値なので、プロジェクトのパフォーマンスを評価する基準になります。
BACの正確さがEVMの精度を左右するため、設定に注意が必要な指標です。
EVMで算出できる5つの数値で将来を予測し進捗を管理しよう
EVMの計測値をもとに差出する5つの数値を紹介します。
①SV
「Schedule Variance」の略であるSVは「スケジュール差異」を意味します。
特定の時点における実績をあらわす「EV」と計画時の予算である「PV」を用いて、以下の式で求めます。
EV-PV=SV |
SVがプラスの値になれば、プロジェクトは予定より早く進んでいます。
しかし、マイナスの値を示した場合には、注意が必要です。
プロジェクトに遅れが生じていることになるので、スケジュール調整をおこないましょう。
②CV
CVは「コスト差異」のことであり、「Cost Variance」の略称です。
実際にかかったコストである「AC」と出来高の「EV」の差で算出します。
EV-AC=CV |
上記の計算によりCVがプラスのとき、その時点でのコストは予算内に収まっています。
一方、マイナスの値がでれば、予算をオーバーしていることがわかります。
③SPI
SPIは「Schedule Performance Index」の略です。
スケジュールの進捗をあらわす数値で、ある時点での成果である「EV」を計画時の予算「PV」で割ることで求めます。
EV/PV=SPI |
「スケジュール効率指数」を意味するSPIは、1より大きいか小さいかで評価します。
SPIが1よりも大きいとき、プロジェクトは計画よりも早く進んでおり、順調です。
もし、1よりも小さい値なら、想定より遅れています。
スケジュールの見直しをおこないましょう。
④CPI
「Cost Performance Index」の略であるCPIは「コスト効率指数」を意味します。
出来高の「EV」を実コストの「AC」で割って算出します。
EV/AC=CPI |
計画時のコストと実際にかかっている費用に、どの程度の差があるのかがわかります。
CPIが1よりも大きければ、計画よりもコストを節約できています。
1より小さければ、想定以上にコストが費やされているので、注意してください。
⑤EAC
EACは「Estimate At Completion」の略です。
「完了時コスト予測」を指すEACを求めると、現在のペースでプロジェクトが進んだ場合、最終的にかかるであろうコストかがわかります。
EACを求めるには「残作業コスト予測」のETCを次の式で算出しなければいけません。
(BAC-EV)/CPI=ETC |
ETCを求めたら、実際のコストであるACを足します。
ETC+AC=EAC |
少し手間がかかりますが、将来予測のために重要な値です。
EACを算出し、どのような対応が必要か検討しましょう。
EVMでプロジェクトを管理するなら使いたいツール5選
EVMを算出してプロジェクトを管理するなら、プロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。
プロジェクト管理ツールには、進捗管理や情報管理に役立つ機能が多く備わっています。
EVMの算出結果と照らし合わせて、効果的な対策を練りましょう。
おすすめツール5選を紹介するので、自身のプロジェクトに合いそうなものがあれば、ぜひ利用してください。
①Lychee Redmine
「Lychee Redmine」は多機能でありながら、操作性も高く初心者でも扱いやすいプロジェクト管理ツールです。
- タスク管理
- ガントチャート
- カンバン
- ダッシュボード
スタンダードプランでは、上記のようなプロジェクト管理に役立つ基本的な機能を利用できます。
Lychee Redmineでは、登録されている期日や工数のデータを元にEVMを集計・計算しグラフにします。
EVM機能の活用により、実際のコスト(EAC)が当初の予算(BAC)内に収まるかの予測や、納期遅延や予算超過の検知などが可能です。
また「ベースライン比較」を使い基準日を2つ設定すれば、基準日ごとにデータを重ねて比較できます。
そのため、仕様追加で予算変更があっても、変更に応じた指標が得られます。
有料プランでも30日間、無料で体験することも可能です。
Lychee Redmineの優秀さを確かめてはいかがでしょうか。
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②Clarizen
引用:Clarizen
「Clarizen」は世界的に導入実績のあるクラウド型のプロジェクト管理ツールです。
品質やコストといったプロジェクトの情報を可視化できます。
アプリケーションのインストールは不要で、クラウド上での使用が可能です。
リアルタイムでプロジェクトを管理できます。
③Time Krei
引用:Time Krei
「Time Krei」は以下の3者の視点で、プロジェクトの情報を管理・分析できるプロジェクト管理ツールです。
- 管理職
- 従業員
- 経営者
EVMを用いた進捗やコスト状況の確認も可能です。
④TeamSpirit
引用:TeamSpirit
勤怠管理や経費精算を一元化できるプロジェクト管理ツールに「TeamSpirit」があります。
プロジェクトメンバーが日常的に使用する機能が、ひとつにまとめられている点が特徴です。
日常業務を効率化して生産性を上げたい場合は、ぜひ利用してください。
⑤クラウドログ
引用:クラウドログ
「クラウドログ」は蓄積したデータから、プロジェクトにおける働き方や損益をリアルタイムで確認できるプロジェクト管理ツールです。
シンプルなデザインのため使いやすく、ITに詳しくない人でも使用できます。
勤怠管理や日報の機能もあり、リモートワークにもおすすめです。
EVMでコスト管理とスケジュール管理を両立させよう
EVMは、時間管理とコスト管理を両立できるプロジェクト管理手法です。
時間に加えてコストを指標に加えるため算出に手間はかかりますが、精度の高い将来予測ができます。
SVやCVなどの数値を算出し、プロジェクト管理に役立ててはいかがでしょうか。
EVMでプロジェクトを管理する場合は、スケジュール管理に役立つツールを合わせて使うと効果的です。
プロジェクト管理ツールは数多くありますが、多機能でカスタマイズ性の高い「Lychee Redmine」がおすすめです。
ぜひLychee RedmineとEVMを組み合わせ、プロジェクトの生産性を高めてください。